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京町家のやど別邸 佛光寺東
Bukkouji Stay
34 00 00.89,135 45 50.61

 夜の帳がひたひたと。暖かい灯りです。入り口の戸が開いている。

 秋の計画は比較的余裕を持って立てられました。11月後半はどんどん満室になっていきましたが、前半はまだ出だしが遅いようで、宿に選択の余地がありました。三井アーバンあたりのシティホテルにしようかとも思ったのですが、やっぱり京都に行くのだから町家でしょうとなり、いろいろ探していくうちにこの宿に行き着きました。あちこちでやってきたヴァナキュラーなもの、土着的なものを追い求める旅というのをここ京都でもやってみよう・・・と、そんなに構えたものでもないのですが、でもそこにしかないものはやはり大切なものです。

 町家の衰退が言われ出したのは高度成長期あたりなのでしょうか。京都が破壊されて行く、何とかしなければと様々な試みが成されてきましたが、最後は経済の論理が勝り一件また一件と減って行く。生活様式の変化がこれに輪をかけ、見捨てられていきました。
 
 それが変わり始めたのは、今でいうリノベーション物件が登場してきた90年代あたりかもしれません。祇園あたりに町家を改装した高級フレンチが登場といったのを見かけるようになり、それがじわじわと広がっていったような。そして気がつけばレストラン、カフェ、雑貨屋と町家を活かしたお店がどんどんと広がっています。
 そして宿にもその波がようやく到着です。確かに柊屋に泊まれば極上の京都を味わえるでしょうが、やはり敷居もお値段も高いもので、もっと手軽に町家を体験出来るものが欲しかったのですが、ようやく登場してきました。町家専用の宿泊サイトも増えてきています。(京町家の宿も気になる所でした)

 この町家での宿泊を後押ししたのが行政です。「京都市旅館業法細則」を平成24年だから2012年に施行しましたが、その中で京町屋を活用して一組の客を泊める場合には、フロントは不要としています(対面で鍵を渡すことは必要)。これによって町家を、業として運営出来るようになったといえるでしょう。Airbnbが最近話題ですが、そんなものではない、れっきとした業としての宿泊施設を普及させることが大事なのです。
 
 こうしたバックアップもあって増えてきた町家宿泊施設ですが、ここ佛光寺東は狭い町家に最小限の改装を施し、宿泊費も抑えて提供しているものです。改装は水回りのみ。バス、トイレ、洗面は入れ替えていますが、居住部分は殆ど手を加えていません。だから入り口も窓も階段も昔のまま。そこさえ理解すれば問題ありません。46m2という広さは住むには最小限でしょうが、泊まる分には十分に広いのです。あまり手をかけていない分、この町家での過去の暮らしが少しは伝わってくるような気がしました。
 
 ロケーションも地下鉄四条駅から歩いて行けるし、錦小路にも近いという便利な所です。ちょっと歩けば美味しそうな店があちこちに。この界隈が一気に気に入ってしまいました。

 チェックインが面白い。宿泊当時は現地待ち合わせという代物で、5時と予定していたのをもう少し早く着きそうですと電話したら、スタッフが急いで現地に行きますのでお待ちくださいという事態に。要は現地には誰もおらず、近くの事務所から駆けつけ、暗証番号を知らせ中の使い方を説明し、チェックアウトはしっかり鍵をかけてくださいというだけのものでした。今は京都駅近くにチェックインカウンターを設け、ここで手続きや荷物預かりも行うようになっているようです。少しずつ進歩していますね。
 
 町家を昔ながらの様式そのままで住むというのはやはり限度があります。土間、トイレ、風呂を昔のままでといわれたらやはりためらうでしょう。だからリノベーションは必要なことです。そうやりながら先人の残したものを大切に使っていく試みを暖かく見守りたいと思います。

1階は2畳+αと4畳半の奥の間。本当最小限です。
土間を中から。一部開閉スタイルです。配管が露出するのはしょうがない。
2階。奥は3畳+α。手前は板張りです。奥に見えるのが吊り床という、京都に多い省スペース床の間(もどきか)。また、仕切りを取り払いワンルームにしているのはよくあるリフォームの手段です。しかしすべて取り払うというのも見事。
風呂は場所はそのままに内部を一新。信楽焼の風呂桶になりました。
避難通路案内でプランが分かります。確かに最小限ですね。
京町家のやど別邸 佛光寺東