Travel                              VOL.6


POTUGAL/SPAIN bU

旅行6日目 朝7時にはもうホテル1階のレストランにいた バイキングの朝食
一人深刻な顔をしてツアーガイド嬢がクロワッサンをほゝばっていた
「実は昨夜……」と低い声で話始める  「○○さんご夫婦のことで これから日本大使館に行って来ます」
昨夜 ホテルの夕食に和服でレストランに現れた夫婦だ 
夕食が済んでからカジュアルな服装に着替えて 買い物にホテルを出たようだ 
ホテルの正面から数十メートル 4〜5人の男に襲われた ご主人は顔を地面に向けて押さえつけられ 
婦人は仰向けに倒されウエストに着けていたシークレット帯からパスポートや現金を全て奪取された
「つい怒ってしまいました 外出はしないでと言ったのにって」
「皆さんには ○○さんは体調を崩されてホテルで休むと話しますので…」とガイド嬢
今日1日の観光に動揺を与えないようにとのことらしい

彼女は「マドリッドは ここのところ治安に問題がありますから〜」と長々と注意して皆を送り出す
「○○さん下痢でもしたのかしら」「風邪かしら」……バスはホテルを離れた

爽やかに晴れたマドリッドの市内はクリスマス前の賑わい 
古い建物と 近代的なビルと様々な景観の街角をバスはゆっくりと進む
約70kmのトレドに向かう

うわぁ〜 何ともいいようもない嘆声が思わず出た
ヨーロッパでも最古と言われるこの街……まのあたりにした感動というか 言葉を失した
タホ川(Rio Tajo)に隔てられて要塞化された街の遠景は 遙か前の時代にタイムスリップしてしまう
西暦前190年に始まったと言われるこの街の歴史 やがてローマ帝国の消滅後
西暦569年西ゴート族の王レオビヒルドが首都にする
降って712年アラビア人によって より美しくより要塞化された 
その700年後1085年キリスト教徒の(アルフォンソ6世)支配下になる
 ユダヤ アラビア キリスト3民族が共存し活躍した時代を経て 
16世紀カルロス5世によってスペインの首都になった TOLEDOの絶頂期だ

1561年フェリペ2世が首都をMADRIDに移す この頃からトレドの衰退
ひいてはヨーロッパに於けるスペインの衰退も始まったと言われる

いまトレド市はTOLEDO県の県都 城壁で囲まれた市街(法で新規建造物は禁じられている)と
城壁外の新街区に約5万人を越える人が居住している
13世紀の都市に今も営々と営みが続いているのだ 凄い!

13世紀の橋を渡りながら 何故か身震いに襲われる
城壁に囲まれた都市の 迫るような景観 色彩 佇まい 見る者を圧倒せずにはおかない
タホ川を渡って振り返る トレドの全景は「この旅の集大成!」と……

高さ45m 巾57m 長さ113m 70の円形天井 88柱列 750のステンドグラス カテドラルに入る 
装飾の限りを尽くした建物はゴシック建築の粋 天井 壁面どのパートを取っても芸術の塊 
「住み着いて 丹念に観察したい」なんて妄想に駆られる サント・トメ教会
此処にエル・グレコの傑作「オルガス伯の埋葬」がある
世界最重要絵画と言われているこの大きな絵に出逢えた
画面最前列左側に少年がいる(グレコの息子 ホルへ・マヌエル)
彼の胸のポケットからハンカチがはみ出ている そこにグレコのサインと1585年と書かれてる 
中央やや左側ジーとこちらを見据えた目をしたグレコ自身が描かれている 
壮大な構図 主題を描いたこの絵
この絵だけを見に来るためにトレドを訪れる人がたくさんいるそうだ
ジックリと 間近に鑑賞できた

TOREDOの全景をまた眺める この景観はこれからも脳裏から離れることはないだろう
胸の高鳴りは バスに戻っても止むことはなかった
バスはきびすを返して MADRIDへ
スペイン広場 さほど広くない一角にドンキホーテが馬に乗っている
アジア系の観光客が 像によじ登って順番に記念写真を撮っている

次はPRADO Museumだ マドリッドの空は青い
世界3大美術館と言われる此処 
EL GRECO  VELAZQUEZ  GOYA等絵画に詳しくない者にも耳にしたことのある
そうそうたる画家の絵がある 静かな館内に先生に引率された10人程の幼い子ども達が
静かに絵の前で説明に聞き入っている 
どれを見ても 一度は画像等で目にしたことのある名画ばかり

王女を中央に 左に筆を持ってキャンバスに向かっているVELAZQUEZ自身
遠景の鏡には我々(鑑賞者)側から映っている国王夫妻が描かれている

ヌードと着衣の同じポーズの「Maja」 Maha 着衣
Maha ヌード ファシスト抵抗から「黒」に向かうGOYA
こんなに間近に こんなにゆっくりと
鑑賞できるなんて感激だ
名画はこんな雰囲気で見れば 私のような者にも感動が直に伝わる
(絵の専門家でもない者が これ以上絵画について書かないほうが……)


ホテルに戻る 8時からのディナーまで休息
都心から少し離れたホテルなので レストランの途中までバス… 降りてしばらく歩く
「男性の方は周りをガードして 間を開けずに歩いて下さい」
ガイド嬢は前夜の事件に懲りてかなり神経過敏になっている
「此処はサファリ? シマウマの一団かな」なんて笑った
パエリアやら何やら たくさんのスペイン料理 ワインの酔いが爽やかだ

さて いよいよ明日は帰路のフライトだ 
がまたしても思いがけない出来事があろうとはこの時想像も出来なかった 

                                H.oda


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