TODAYVOL.7 MAIL

SPACE99  

北風は冷たかった】
【普賢岳を覚えていますか?】 【ちびとも日記】bV 【フリーマーin札幌】 【“生”の終りを…】
【おいしい?】 【ちびとも日記】bU 【親は‥(病棟から)】 【幼い頃の……】
【ちびとも日記】bT 【ちびとも日記】bS 病院(或は医師)に思うこと 【ちびとも日記】【bR】
【いま 母は元気です】 燕尾服の〜 【ちびとも日記】bQ 【ちびとも日記bP】
写真というもの 決断 生体肝移植 ターミナルケア 患者さんは多いです
どうする!“ゴミ” 癌 その時貴女だったら? インフォームド・コンセント 「かあさん!…」を応援
患者さんを 父を 心が通じなければ WATASHI 母さん!頑張ろう
父が…… クリニックの今 「WATASHI」読みました YUN TODAYbQ
YUN TodaybP
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【普賢岳を覚えていますか?】


私は、縁あって長崎県島原市に在住しています。
この10月で、まる6年になりました。

島原市の西方には、有明海が広がり、東方には山が望めます。
一歩外に出ると、大自然の懐中です。ここに住む人達は、その恩恵を十分に受け、
 普賢岳
           遠く普賢岳を望む

田舎ながらものびのびと暮らしています。
春は、浜でアサリを掘り、野の花に手を伸ばし、
夏になると、子供達は、
樫の幹からカブトムシを取り、
小川に群れ飛ぶ蛍を見つめ、
秋には、どんぐりを拾い、
トンボを追いかけ、
冬は煌く星座に見とれて、白い息を吐きます。
とても幸せな環境・・・・です。
ここ何年かは、平穏に繰り返されている四季の移り変わり。
都会育ちの私には、この永遠に不動とも思える環境が、9年前に一変したとは、信じ難い事でした。
198年振りの普賢岳の噴火によって・・・・。
6年前、私がここに嫁いだ頃、庭の草木の葉は、白い灰で覆われていました。
初回の噴火から3年が経過していました。でも毎日毎日、灰が降り積もるのです。
島原市全土が、色を忘れてしまったかのような風景でした。
夜ともなれば、家の窓からは、真っ赤に流れる火砕流が、不気味な音とともに見て取れました。
11月17日という日は、普賢岳に噴火の予兆とも思える2本の煙が立ち昇った日です。
1990年の11月17日の事です。翌年の、6月に大火砕流が発生し、
44名もの命が消えました。
そのうち、12名は、町の消防団の方々でした。一般市民、報道関係者、焼き尽くされ、
骨さえ見つからない‥そんな壮絶な亡くなり方の人もいました。
皆さん、消防団ってご存知ですか?ボランティアの地域防災集団です。
私は、この地に来るまでは、その存在すらしりませんでした。
実は、私の義父がその消防団の団長をしています。もう、20余年になります。
その方達の慰霊碑が建つまでは・・・と義父は団長を続けてきました。

1999年、11月17日、慰霊碑の除幕式があります。土石流、火砕流が流れ着いた最後の場所、
海岸の埋立地にその碑は、花と共に建立されました。9年目にしての、鎮魂。
義父の悲願は、慰霊碑を建てて団長を退く事でした。義父は、今年で69才になります。
これで、この災害は忘れられていくのでしょうか?
普賢は、今も、私の家の西南に鎮座しています。
平成新山とおとなしい名を貰い、一億立方メートルの溶岩ドームを抱えて・・・。
今なお、直下型の地震がくれば、水無川の火山噴出物と合わせて、崩落するそうです。
そうなった時、また、どんな被害が起きるのか? 想像もできません。
最近の世界各地の、悲惨な災害のニュースを見るたび、
人の叡智の及ばない、天の力に圧倒され、驚くばかりです。だからこそ、私達は、
災害をもたらされた地域の人間は、その災害の真実を見つめないといけないと思うのです。
そして、次世代へわたせるバトンをつくっておく。

198年前の、普賢の怒りを人は忘れていました。それも被害を大きくした一因だと思います。
人は災害を他人事のように考えます。特に、天災などは、情報としてメディアに流れて行くと、
メディアを通して知った遠方の方々は、
可哀想だが、自分の所には落ちなかった「悲劇の箱」って思うのではないでしょうか?
その地域にたまたま落ちた・・ 残酷な神が落とした「悲劇の箱」って。
私も実はあの「阪神大震災」の直前まで、関西に在住していました。
関西を離れて後、あの地震が起こり、
遠い地で目にした、耳にした情報は、あまりにもショッキングな…、
しかしその悲惨さを肌では実感できない悲劇でした。
その後、偶然にも大きな災害のあったこの地に移り住み、
真実として私が知り得た事は、災害の悲劇を、天が与えた以上に大きくするのは、
「人間」そのものだという事実です。悲劇の箱の中には、必ずしも
善良な方々の悲劇のみがが詰まって入る訳ではない。利己的で営利的な人間が、
さらに悲劇を大きくしているという事なのです。
世界中の災害がそうだとは、いい切れませんが・・・
報道関係者が巻きこまれてしまったのも、報道という名を借りた、
人間の営利追求の結果…と言ったら言い過ぎでしょうか?
義父の話からは、いろんな隠蔽された事実を知る事ができます。
メディアには流れていない、(故意に流されない) 地元ゆえの知りえる真実。
しかし、それをそのまま世間に発信できないもどかしさ。
我々が暮らす世間の、悪の部分のような気がします。全ての真実を、発信できることによって、
また、それを受け、考察する事によって、
「人」は、学習できるのであろうに・・・・と考えます。

いつ落とされるかわからない「悲劇の箱」に対して、どんな対応をすれば、または、していれば
被害が最小限に食い止められるかと。
普賢岳
     1階部分が土石流に埋まった民家


最近のあまりある災害情報に、
地球はどうなるのだ?という危機感を持ちながらも、
加速度を増して、増えつつあるインターネットが、
それを救う鍵を握っているような気がします。
今までのメディアとは違う発信手段。
そんな気がしてなりません。                                                            
                                                          
               Tamaki/s

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