平成26年12月10日更新
 食事療法は糖尿病治療の根幹です。2型糖尿病の7割の方は食事療法だけでコントロ−ルが可能といわれます。食事療法といっても、特別な食事というわけではありません。糖質、たんぱく質、脂肪の3大栄養素の一定量をとり、ビタミン、ミネラルなどもとることが、治療です。世間に多くのダイエットの方法がいわれていますが、糖尿病の食事療法そして食品交換表を利用することがベストだと思います。
 食事療法でむずかしさを感じるのは、食品を選ぶとき食品の持つ栄養素やカロリ−が各食品によって異なることです。その面倒な部分を分かりやすくしたのが食品交換表です。


糖尿病食事療法のための食品交換表』(第7版 日本糖尿病学会編著・文光堂)900円+税
                      
『糖尿病性腎症の食品交換表』(第2版 日本糖尿病学会編・文光堂) 1400円
   糖尿病性腎症の人のための食品交換表で表1、表3が変わっており(たんぱく質の制限のため)、またエネルギ−調整食品(指示されるエネルギ−量を確保するため)が新たに加わっています。

  糖尿病の食事療法とは
 特別な食事をとるということではなく、過食を避け,偏食せずに,毎日規則正しい食事をすることが大切です。糖尿病は健康食。
 食事療法の原則
 1:太らずやせすぎず、適正な体重を保持し日常の生活に必要な量の食事をして、それ以上余分に食べないように。一日の食事の適正な量は年齢,性別、身長,体重、日々の生活活動量によって違います。
 2:健康を保つために必要な栄養素(炭水化物、蛋白質、脂肪、ビタミン、ミネラル)や食物繊維などが不足したり,偏ったりしない、いわゆる栄養のバランスのとれた食事を取ることが大切です。
 3:腹八分目 脂肪は控えめに 朝食、昼食、夕食 を規則正しく ゆっくりよくかんでたべる
 合併症の予防のために
 1:塩分を出来るだけへらす----高血圧の予防
 2:コレステロ−ルや飽和脂肪を多く含む食品を控えめにする。食物繊維を増やす(高脂血症の予防)

食品交換表を上手に使いましょう
 食品交換表では、私たちが日常食べている多くの食品を、主としてどんな栄養素が含まれているかによって、6つの食品グル−プにわけています。
   第7版(平成25年11月)は第6版、第5版とは 内容も充実し 平成25年3月の 「日本人の糖尿病の食事療法に関す  る日本糖尿病学会の提言」も取り入れたもので、巷に流行する、特に京都で目立つ、糖質制限食の弊害を考慮し食事に  占める炭水化物の割合 として 60%、55%、50% の 3段階の食事配分を列記されています(p28〜p33)。    第6版までは炭水化物の割合は60%でした。
      
食塩が多い食品   食品交換表第7版 P98〜P99
コレステロ−ルが多い食品  食品交換表第7版 P100〜P101 
食物繊維を多く含む食品     食品交換表第7版 P102〜P103
 
食品交換表
糖尿病食事療法のための食品交換表(第7版)』を使用されることをお勧めいたします。
第6版以降では ごはん1単位の重量が55gから50gに変更されています。
 食品交換表第7版では食事にしめる炭水化物の割合として60.、55、50%の3通りを例示し、それらについて1日の指示単位(指示単位20単位)の配分例が掲載されています。

 食品の分類 食品の種類 1単位(80キロカロリ−あたりの)栄養素の平均含有量

炭水化物
1gあたり4kcal

蛋白質
1gあたり4kcal
脂肪
1gあたり9kcal
主に炭水化物を含む食品
表1 穀物,芋,糖質の多い野菜と種実、豆(大豆を除く) 18 2 0
表2 くだもの 19 1 0
主にたんぱく質を含む食品
表3 魚介、肉、卵、チ−ズ、大豆とその製品 1 8 5
表4 牛乳と乳製品(チ−ズを除く) 7 4 4
主に脂肪を含む食品
表5 油脂、脂質の多い種実、多脂性食品 0 0 9
主にビタミン、ミネラルを含む食品
表6 野菜(炭水化物の多い一部の野菜を除く),海藻、きのこ、蒟蒻 14 4 1
 調味料  みそ、みりん、砂糖など  12  3 2 
             
食事療法の進め方交換表を使ってやってみましょう。少し複雑な記述になりましてすみません。
@:適正なエネルギ−量をきめる  
 性、年齢、肥満度、身体活動量、血糖値、合併症の有無などを考慮してエネルギ−摂取量を決めます。
 通常、男性 1,400〜1,800kcal  女性 1,200〜1,600kcal
 まず、
 1)標準体重を求めましょう!!
     標準体重(kg)= 身長(m)×身長(m)×22
    (例) 157cm、60kgの人    1.57×1.57×22=54.2kg  
        BMI=60/(1.57)×(1.57)=24.4
 2)身体活動度は次の表で。
 
身 体 活 動 度 1日の消費エネルギ-/標準体重(kg)
軽労作(デスクワ−クが主な人、主婦) 25〜30
普通の労作(立仕事が多い職業) 30〜35
重い労作(力仕事の多い職業) 35〜
     
 3)エネルギ−摂取量標準体重×身体活動量
 (例) 女性、40歳、身長157cm、体重60kg 仕事は普通の労作
  1.57×1.57×22×30=1,626 kcal 1,626kcalは約20単位とみなしてください。   
   BMI:BodyMassIndex      20〜24。 25以上肥満

 A:栄養のバランスを考える
 上の計算で摂取エネルギ−量が決まりました。
 つぎに、各栄養素のバランス配分です。次の基本的なモデル表を利用しましょう。
 献立の立て方について
 (1日の指示単位(指示エネルギ−量)(炭水化物55%の場合)の食事の配分例)

 各食事の主食を表1から選び、それにあわせて主菜となる表3,副菜となる表6を組み合わせると食事の大体の 骨組みが出来上がります。表2のくだものは炭水化物が多く、血糖値が上昇しやすいので、各食事にわける。 表4は3食に配分するか間食としてとるようにする。
 
1日20単位の場合について:
   表1、表3、表6 は 朝食、昼食、夕食 について一応均等に割り付けましょう
   表1 についての 各食 3単位はご飯では 150g(小さい茶碗に軽く1杯半)、食パンでは90g(6枚切り1.5枚)茹うどん240g(1玉)になります。
 日本糖尿病学会の糖尿病食事指導の手引 きを参考にして 1日の単位別の各表の配分例を記載いたします。
 非常に見にくい表になっていますが、食品交換表第7版をご覧になってください。

表1:穀物・いも、炭水化物の多い野菜と種実、豆(大豆を除く)   表1 表2:くだもの 表2
表3:魚・貝・いか等・魚介干物等・魚介缶詰・肉と加工品・卵、ト−ズ・対図とその製品 表3 表4:牛乳と乳製品 表4
表5:油脂、脂質を多く含む製品 表5 表6:野菜、海草、きのこ、こんにゃく 表6
1日15単位(1200キロカロリ−)の場合 1日18単位(1,400キロカロリ−)の場合  
食品交換表 表1 表2 表3 表4 表5 表6 調味料
1日の指示単位 6 1 3.5 1.5 1 1.2 0.8
朝食の単位 2 1 1 1.5 1 0.4 0.8
昼食の単位 2 1 0.4
夕食の単位 2 1.5 0.4
間食
食品交換表 表1 表2 表3 表4 表5 表6 調味料
1日の指示単位 8 1 4.5 1.5 1 1.2 0.8
朝食の単位 2 1 1 1.5 1 0.4 0.8
昼食の単位 3 1.5 0.4
夕食の単位 3 2 0.4
間食
1日20単位(1,600キロカロリ−の場合 1日23単位(1,800キロカロリ−)の場合
食品交換表 表1 表2 表3 表4 表5 表6 調味料
1日の指示単位 9 1 5 1.5 1.5 1.2 08
朝食の単位 3 1 1 1.5 1.5 0.4 0.8
昼食の単位 4 1 0.4
夕食の単位 4 2 0.4
間  食
食品交換表 表1 表2 表3 表4 表5 表6 調味料
1日の指示単位 11 1 6 1.5 1.5 1.2 0.8
朝食の単位 3 1 2 1.5 1.5 0.4 0.8
昼食の単位 4 2 0.4
夕食の単位 4 2 0.4
間  食
          1日20単位で炭水化物の割合を60%、55%、50%にした時の単位の配分例
 食事に占める炭水化物の割合       各表の1日の指示単位  
三大栄養素のエネルギ−比率%  
 表1  表2  表3  表4  表5  表6  調味料
 炭水化物      たんぱく質
 
 脂質
 60%  10
 1
 4.5
 1.5
 1  1.2  0.8  60.0  17.5  22.5
 55%  9  1  5  1.5  1.5  1.2  0.8  55.7  17.9  26.4
 50%  8  1  6  1.5  1.5  1.2  0.8  51.4  19.4  29.4
肥満例では減量目的に50%を選択することを考慮しても良い。タンパク質や脂質の割合が増加するので注意する必要があります。医師の指示のもとに実施していただきたいと思います。
極端に炭水化物を減らした食事療法(40g以下にも)が巷間、特に京都の一部病院で行われていますが極端なやせ、筋肉の脆弱(サラセミア)などの悲惨な例もお聞きしています。
          
B 交換のル−ルとチェック
 
同じ表の食品同士を自由に交換し、献立を変えてみましょう。調味料やアルコ−ル、お菓子などの嗜好品はカロリ−が高く、コントロ−ルを乱す原因になりますので、十分に医師の指示に従ってください。
 時々、ご自分の食事を(1日分を)紙に書き出して計算してはいかがでしょうか。外食のチェックに役立ちます
C その他の注意
 1)食事は朝、昼、夕にほぼ同じカロリ−をとるようにしましょう。
 2)肥満、高血圧、高脂血症、高尿酸血症などを合併している場合、極力酒は控えましょう。
 3)砂糖は出来るだけ少量に。
 4)高血圧、腎臓病を合併している人は食塩の制限を。1日7gくらい。減塩の工夫。糖尿病性腎症や腎臓病のある人は特に医師に意見をお求め ください(食塩、たんぱく質、ミネラルなど)。
 5)お酒について:
   医師の指示によりますが、高血圧、高脂血症などの無い人は・・・・日本酒は銚子1本、ウイスキ−はシングル2杯まで、ビ−ルは中ビン1本(350ml)くらいまでに。
 6)甘いお菓子やジュ−ス: 一度きっぱりとやめましょう。まず、3週間我慢しましょう。
 7)どか食い、まとめ食いはやめましょう
   3食きちんと食事は抜かずにとることが大切です。
   エネルギ−が低く、消化吸収されにくい野菜や、海草などを先にとり、ご飯は一口食べたら10回以上噛む・料理は大皿でなく数枚の子皿に。
 8)残業で帰宅が遅いとき: 夕方に軽く食べておく。

D 外食料理について:食品交換表第7版 90ペ-ジ
 1:外食料理は一般に表1と表5の食品が多く、表6の野菜が少ない。
 2:表1の食品は指示単位にあわせて残しましょう。
 3:油を多く使った料理は少量に。
 4:野菜は一品料理をとるか、その日の家庭の食事で補いましょう。
 5:ほとんどの外食は食塩含有量がかなり多く、注意が必要です。
 6:丼物、すしなどの単品やごはんものは栄養バランスが偏ります。定食など品数の多いメニュ−を選びましょ   う。 
 7:和風の定食など、出来るだけ表1、表3、表6の食品のバランスが良いものを選びましょう。      
   カレ−ライスなどのごはん物・・・7〜9単位。親子丼など丼物・・・7〜9単位。
   うどん、そば類・・・4〜6単位。 中華めん料理・・・5〜8単位。スパゲッティ・・・7〜9単位   

日本糖尿病学会の提言:日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言-                       http://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?page=article&storyid=40
F 米国糖尿病学会の食事療法に関する声明(2013):
 今回の声明では,全ての糖尿病患者に適した“one-size-fits-all(唯一無二の)”食事パターンは存在しないとの見解を表明。また,各患者が積極的に自己管理や教育に関わり,食生活の見直しを含む治療プランに医療者と共同で臨むことが不可欠である点も強調した。各患者の治療目標の達成と維持に向けて,患者ごとにさまざまな食事パターン〔地中海食,ベジタリアン食,糖質制限食,低脂質食,DASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食〕が受容可能であるとしている。

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