2014.7.17改訂

糖尿病とは
  食事をすると膵臓からインシュリンというホルモンが分泌され,筋肉などの細胞が血液の中からブドウ糖を取り込んで,エネルギ−として利用するのを助ける働きをしています。インシュリンの作用が不足するとブドウ糖を利用できなくなり、血液中のブドウ糖値(血糖値)が高い状態になります。この状態が持続するのが糖尿病です。血糖値を正常に保つ(血糖をコントロ−ルする)ことにより、高血糖による合併症を防ぐことが大切な病気です。
 糖尿病はコントロ−ルする病気です
  インシュリンの作用不足に次の2つがあります。
    @ 膵臓のインシュリンを作り出す能力が低下する。
    A インシュリンに対する細胞の感受性が悪くなる(インシュリン抵抗性)。

糖尿病のいま:
  2013年の厚生省の調査では「糖尿病と強く疑われる人」は950万人(男性15.2% 女性8.0%)、「糖尿病の予備軍」は1100万人(初めての減少 男性12.1% 女性13.1%)で両者を合わせると、2050万人ともいわれ男性では27.3% 女性では21.0%になる。治療を受けている人は半分にも満たないとのことです。
 2014年の世界の糖尿病患者は4億2200万人、1980年の1億800万人と比べ約4倍に増加しています。特にアジア・太平洋地域での増加が著しく、糖尿病の原因の一つでもある肥満も増加している。
  11月14日は世界が団結して糖尿病に立ち向かう日として国連が認定した「世界糖尿病デ−」で、糖尿病治療に欠かせないインスリンを発見したカナダのバンティング博士の誕生日にちなんでいます。

糖尿病への階段:
 @生活習慣 A遺伝 B加齢

 @生活習慣:食べ過ぎ、運動不足、ストレス、アルコ−ル、外食産業、自動車社会、肥満など。
      いわゆる
生活習慣関連病。
 A遺伝:親戚に糖尿病の人はおられませんか?
 B加齢:運動不足、身体機能の劣化など


糖尿病のタイプ:
 @T型糖尿病(インシュリン依存型)
  小児や若い人に多く、、インシュリンの分泌が絶対的に不足し、体外からのインシュリン補給が欠かせない。
 AU型糖尿病(インシュリン非依存型)
  中高年に多く、日本人の糖尿病の95%がこのタイプです。遺伝素因のほかに、生活習慣の要素が大きくかか  わっています。治療は食事療法、運動療法が基本ですが、経口血糖降下剤やインシュリンの注射が必要な場合  もあります。
  インシュリンの分泌不足とインシュリン抵抗性(肝臓、筋肉、脂肪などの細胞がブドウ糖を利用するのにインシ  ュリンが必要ですが、うまく利用されない)のために発症します。

 Bその他のタイプ
  薬剤性、内分泌疾患、膵臓疾患、肝臓疾患、妊娠など

糖尿病の症状と診断:
人に多いU型糖尿病では、多くの場合無症状です。糖尿病がひどくなると多尿、口渇、多飲、多食、体重減少、足のしびれなどの症状が出てきます。U型糖尿病は無症状の時期に見つけることが大切で、基本健診などの受診をお勧めいたします。
 朝食前の血糖値が126mg/dl以上、または食後で200mg/dl以上あれば、それだけで糖尿病が非常に疑わしいことになります。110mg/dl以上のときはさらに詳しい検査を実施します。詳しい検査として75gのブドウ糖の経口負荷試験を行います。また、HbA1c(過去1〜2ヶ月の血糖状態を反映しています)が5.6%以上のときも糖尿病の可能性を考えます。
糖尿病の治療:
 なぜ、治療が!!
1:口渇、多飲、疲労感などの不快な症状を起こさないように。また、血糖値が著しく高くなるときに起こる糖尿病性昏睡にならないために。
2:血糖はもとより、血液中の脂肪(コレステロ−ルや中性脂肪)など、代謝状態を出来る限り正常化するために。
3:合併症を予防し、天寿を全うするために。
4:快適な社会生活を続けるために。

 糖尿病の治療は、合併症の発症、進行を予防するために、高血糖を是正すること(血糖のコントロ−ル)が基本で、そのためには食事療法・運動療法・薬物療法の3つが柱となります。なかでも、食事療法・運動療法が基本です。日本でも最近、それぞれの学会から高脂血症の治療、高血圧症の治療についてガイドラインが出されていますが、糖尿病のある方には、無い方に較べて、治療についてより厳しい基準が提案されています。





 @ 食事療法:難しいように思われますが、自転車の練習と同じです。しっかり身につけましょう。
  • 血糖値が急上昇するので、空腹時には芋類など糖質を多く含むおやつを食べないこと。
  • 糖質の多い野菜(芋・かぼちゃ・れんこん・とうもろこし等)を食べる時には、おやつではなく食事の一品として食べること。
  • 糖質の多い食品を食べる際には、ごはんなどの主食の量を少し減らすこと

参考書として次の本をお勧めします。
『糖尿病食事療法のための食品交換表(第七版)』 日本糖尿病学会編著  文光堂 900円+税 CD-ROM版2800円

      
 性、年齢、身長、体重、身体活動量、病態などを考慮して摂取して頂くエネルギ−量(食べる量)を決めます。
 栄養のバランスのとれた、適正なエネルギ−量の食事が大切です。
                             
もう少し詳しくは 次をクリックしてください。・・・ 糖尿病の食事療法

 A 運動療法:運動によりインシュリンの細胞での働きが高まり、血糖コントロ−ルがしやすくなります。血行が良くなり、ストレスの解消、皮下脂肪の減少、生活の活動度が高まるなど、多くの効果があります。
運動の種類としては、出来るだけ全身を動かす有酸素運動が推奨されます。出来るだけ、毎日の無理のないウオ−キングが最も薦められます。
運動療法を行ってはいけない場合もありますので、まず医師のメディカルチェックを。
          
もう少し詳しくは 次をクリックしてください。・・・ 運動療法

B 薬物療法:最近、特にこの数年 作用機序の異なるお薬 (DPP-4阻害薬、SGLT2受容体阻害薬)が出てきました。病態にあわせてお薬を考えていくのが医師の大切な仕事です。薬剤としては経口剤とインシュリン注射があります。お薬についてここで述べることは適当でないと思いますので省略します。
どのような先生に見てもらうのが良いか
 じっくりと話を聞き、今まで罹患した病気や家族の病歴などを聞き、食事や運動などの基本的なことのあらましを話してくれる内科の先生。病気の時期によりますが、直ぐに血糖を下げる薬を出す先生には《クワバラ、クワバラ》で退散しましょう。
 

糖尿病の合併症:   

@ 網膜症:

 網膜(カメラのフイルムに相当します)の細い血管がもろくなって視力障害を、そして最終的に失明になります。糖尿病の人は 必ず 眼科の先生に 眼底の検査をしていただきましょう。
A 腎症:

 身体の中で生じた老廃物は腎臓から尿として排泄されます。高血糖が持続すると蛋白尿やむくみが出現し、腎不全、尿毒症へと進行します。
B 神経障害:

 神経障害には末梢神経(脳や脊髄を中枢神経といいますが、そこへの通信線とお考えください)の障害と自律神経(自分の意志と別に身体のハ−モニ−をとっている)の障害があります。下肢のしびれや身体の変調、性機能障害などを起こしてきます。
C 動脈硬化による心筋梗塞や脳卒中
  食後の高血糖が関係いたします。
D その他:
 感染症にかかりやすいなど
E 急性の合併症:
 糖尿病性昏睡、低血糖昏睡、胃腸障害など。
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