御遊戯結社
トップ
⇒
むーどす島戦記リプレイ ⇒ 「繋いだ手」
←[ 1話前の話へ]
[このページ]
[次の話へ]→
読み切り小説
「繋いだ手」
カミラ&アスカル
(作者:むーむー)
●目次
〇カミラ・マーモの姫君
〇二人の出会い
〇コッツィ
〇あずまやの秘め事
〇セラフィム
〇サキュバスの夢
〇愛の言葉
〇アスカル・責任と決意
〇ライトネス
〇ウェルスガルド
〇舞踏会
〇繋いだ手
それからというもの、カミラは積極的にリスモアのオルトソン邸や、
ブラスのライトネス邸に、機会を作っては訪問した。
自分がちゃんとアスカルの役に立てる女であることを、
妖魔であっても人間に危害など加えない存在であることを、
ちゃんと分かってもらおうと頑張ったのだ。
ライトネスはその姿を健気だなと思って見ていた。
アスカルが狼藉を働いたとはいえ、聞けば好き合っている仲だったという。
年齢はともかく、いずれはそうなりたいと思っていたようだ。
父親はすぐには受け入れたりはしないだろう。
それなら、自分だけは祝福してやろうと思ったのだ。
ライトネスとしては勘当されている身とはいえ、弟の婚約者、義理の妹になる予定の娘だ。
近い未来にはより親しい仲になる。
なるべく食事やお茶会などで会う機会を設けていた。
カミラは癒しの力に長けているという。
かなり強力な神聖魔法すら使えるというのだ。
ただ、何の神かは分かっていないらしい。
セラフィムに聞いてもそんなことが出来るサキュバスは他に聞いたことが無いとのことだった。
物凄く特殊なケースだそうだ。
力を与えている神は恐らくファラリスなのだろうと思って、
試しにカミラに神聖魔法を使ってもらってみたのだが、
ライトネスには邪悪と断罪する神の声などまるで聞こえてこなかった。
むしろ神聖魔法を使っているその姿を見た時に、あまりに神々しく清々しい気持ちになったので、
自分よりよほど聖女なのではないかと思ったくらいだった。
なるほど、悪魔が生贄に捧げようと執拗に狙ってくる訳だ、と思った。
カミラの性格は献身的でとにかく優しい娘だった。
何か役に立ちたいと、ファリス神殿の奉仕活動にも参加するようになった。
ファリス信者と一緒に週に一度ほど慈善活動をしているが、信者達からの評判は上々で、
みんなを朗らかにするような気のいい娘とのことだった。
ただ、人に触れるだけで催淫してしまう可能性があるので、
カミラはなるべく人と距離を取りながら気を付けて活動しているそうだ。
どれだけ邪な気持ちになるのだろうと思って、ライトネスは試しにカミラの手を握ってみたが、
安らかな落ち着いた気持ちになるだけで、決してやましい気持ちにならなかったのが不思議なくらいだった。
ライトネスとしても多少興味があったので、素直にカミラに聞いてみた。
カミラの話によると、普通にしていると相手をほんわかさせるくらいしか催淫が出来ないらしい。
彼女の力は癒しに特化しているようで、素の力だけだといやらしい気分になかなかさせられない。
とは言えそういう知識はあるので頑張ればいやらしい気持ちにすることは出来るらしい。
でもそれはアスカル以外には絶対にしないので信じて欲しいと言われた。
もはやそれは癒しであって、催淫ではないなとライトネスは思った。
ライトネスはいやらしいのはあまり好きで無いので、カミラのこうしたところは好感が持てた。
サキュバスだからと偏見を持って見ていたことは素直に謝罪した。
しばらくそうして会っていたのだが、ライトネスにはちょっとだけ気になることがあった。
たまにだが、カミラが何かを言いたそうな顔をしてこちらを見ている時があるのだ。
だが、他の目があるからなのか、言い出せないような、そんな雰囲気だった。
アスカルの夜這いがあった事件から、3カ月ほど経った頃、ライトネスとカミラはお茶会をしていた。
今日はセラフィムもシャーロットもおらず二人だけだった。
セラフィムが急用で来れないと聞いたライトネスは、これはチャンスと思い、
シャーロットにもチェリーにも席を外してもらい、二人だけにしたのだ。
何となくだが、こうすれば、カミラの言いたいことが聞けるのではないかと思ったのだ。
無理に聞くつもりはなかった。
言い出さないならそれはそれで待つつもりでいた。
小一時間ほど世間話やカミラの奉仕活動の話などを聞く。
特に変わったことも無く、これは自分の気の回しすぎだったかなと、
ライトネスが思い始めたころ、おもむろにカミラがうつむきながら話を切り出してきた。
「……ライトネス様……。今日は、どうしても、お伝えしなければならないお話があります……」
「うん。聞くよ……」
「……申し訳、有りませんでした……!」
カミラは床に跪きながら、ライトネスに謝罪をしていた。
本当は自分がアスカルを誑かして誘惑してしまっていたこと。
いやらしいことなどは全くしていなかったが、ひたすら自分の力を使って、
彼が自分を好きに思ってしまうように操ってしまっていたこと。
彼が自分の屋敷に危険を冒して訪れたくなるほど好きに思わせてしまったのは自分のせいであること。
彼はあの日、実際には自分に危害など一切加えておらず、自分は傷物になどなっていないこと。
彼は潔白なのにも関わらず、私を庇って嘘を付いてくれていること。
自分は彼と一緒になりたくて、その嘘にすがって、今まであなたを騙し続けていたこと。
自分は結婚などする資格も無いほど、嘘にまみれた邪なサキュバスなのだということ。
カミラは泣きながら、全部話していた。
ライトネスは聞いているうちに、やっぱりな、と納得していた。
アスカルを殴ってしばらくした後、ちょっともやもやと残る感情があったのだ。
そのもやもやの正体が、今分かった。
もやもやしていたのは何か。
男として、アスカルがそんなことをするだろうか、では無かった。
女として、アスカルにそんなことをさせるだろうか、だった。
いくら男と女と言えど、8歳と13歳の男女だ。
アスカルはだいぶ成長が早かったが、カミラとて早熟な女だった。
カミラを初めてアルトハルトの牢屋で見たとき、12歳というのは嘘だと思ったくらいだ。
顔は童顔だが、体付きは大人の女にしか見えなかった。
多分、1、2年もすれば、自分やセラフィムと同じくらいの体付きになるだろう。
それに加えて驚くほどの可愛さだ。
男を誘惑するなどたやすいだろうなと思っていた。
なので、傷物にされた、と聞いた時、若干の違和感があったのだ。
子供の力に大人が負けるか?
本当に純潔を守りたいなら、はねのけるくらいはするはずじゃないか?と。
それを出来なかったのでなく、むしろ受け入れたのではないかと、薄っすら思っていたのだ。
だが、アスカルが全てを認めたので、その思いは頭から消えてはいた。
今となって思うのは、アスカルを殴った後、カミラが縋り付いてまで止めたのは、
アスカルを本当に好いていたからだろう。
そうすると、アスカルを誘って誑かしたというのは、間違いないのだろうなと感じた。
だが……今の話を信じるなら、腑に落ちないこともある。
実際にはカミラは純潔のままだという。
つまりアスカルは手など出していないということだ。
カミラの手を触れたり、神聖魔法を使うところを見たり、
普段の奉仕活動の話を聞いていて思うことがある。
この子は、体に色気はあるが、色気のある誑かし方をする感じには見えない。
むしろ、穏やかな清々しい気持ちにさせてしまうだろう。
たぶん、純潔というのは本当のことだろうと思う。
アスカルは誑かされてはいたが、欲望の赴くままに襲ったりなどしていない。
単に愛する者の側にいたくて、屋敷に行ったのだろう。
実際には純潔など奪っていないのに、奪っていることにしてまで、守りたかったのは何か。
あの状況で、私や父や周りのことを考えたら、誰が一番、酷い目にあうことになっていたのか。
私に殴られても、アスカルは決して言葉を翻さなかった。
誰を守るためか。
答えは明白じゃないか。
好きな女を守りたいがために、汚名を着てでも、全てを引き受けることができる男。
……なんだ。あの子はちゃんと、立派な男になってたんじゃないか。
弟の成長を感じて嬉しくなる。
アスカルへのわだかまりが無くなった。
清々しい気分になる。
そんな思いに浸ってるライトネスをよそに、カミラは悲愴な顔で懺悔の言葉を続けていた。
「私はライトネス様の信用に足る者では有りません……。
アスカルを誑かしたなら、私は許されない。
ブラスから出ていかなくてはならない。
あの会談では、そのように約束されていたと聞いています……」
約束というほどでは無かったが、似たようなことは言った記憶はある。
「アスカルから聞いています……。
ライトネス様は約束を違える者は決して許さない方だと……。
私はアスカルを誑かしたのです。本当ならここにいてはいけないはずです……。
あなたに嘘をずっと付いたまま、この数か月、過ごしてしまいました……」
ライトネスは色々思うこともあったが、一旦は全て聞くことにした。
懺悔とは、全て、聞かなくてはならないものなのだ。
「アスカルには、決して誰にも言ってはならないと言われていたのです。
でも、それでは私は……、彼の優しさに甘えて、彼の嘘に守られて、彼の名誉をひたすらに貶めて、
ただぬくぬくと守ってもらうだけの存在になってしまいます……。
私とて、彼とずっと一緒にいたい……。でも、これは間違っています……。
一番最初に誑かしたのは私なのです。
私はこれを償わなければならない……。
それでここを離れることになったとしても、彼を悪者にするよりはずっと良い……」
カミラは泣き続けている。
話はどうやら終わった気がする。
ライトネスは色々言うことを考える。
……うん。面倒臭くなってきた。
こういうのは考えたら負けだ。
思った通りにとりあえず行動する。
答えは後からきっと付いてきてくれる。
「なるほど。言いたいことは、分かった。
確かに、許せないな……。
それも許せないことが二つもある。
罰を与えないといけないし、私の言うことも最後まで黙って聞いてもらわないとならない。
……いいな?」
カミラは跪いたまま顔を上げる。
泣いたままではあったが、ちゃんと頑張って聞こうとしていた。
静かに頷く。
何を言い渡されるにせよ受け入れるという、決意を秘めた顔だった。
「うん。良い覚悟だ。
まず立て。今から罰を与える」
カミラは急いで立ち上がる。
静かに沙汰を待つ。
「お前は私の可愛い弟を誑かした。
これは許されないことだ。
私の罰の与え方は決まっている。
……今からお前を一回殴る。
それで一つ目は許してやる」
カミラは、アスカルが殴られたところを思い出す。
いくら小さい子供とはいえ、壁まで吹っ飛んでいく勢いだった。
これは、死罪に等しいのかもしれない……。
だが、それならそれで仕方ない。
「……お願い、いたします……」
「ん。歯を食いしばれ」
カミラは強く目をつぶり、ぎゅっと口を強く結ぶ。
さようなら、アスカル……!
その直後、強烈な衝撃がおでこに走る。
火花が飛び散るような、そんな衝撃。
ぱちこーん!!!!という衝撃だった。
おでこの真ん中あたりが割れたのでは無いかと思うくらいだった。
その後、痛みが全く引かず、ひたすらじんじんと痛い。
カミラは眼を開ける。
おでこを触ってみるが血などは出ていないようだ。
ちょっとおでこがぽっこり膨らんでいる気がする。
ライトネスは笑っていた。
「あはははw 酷い顔だな。w 美人が台無しだ。
痛いなら治療して良いぞ。w」
「あの……これは……」
カミラは治癒を念じる。
彼女は高位の神聖魔法であっても無詠唱で発動出来るのだ。
まっとうな神官でも難しい芸当だ。
痛みはゆっくりとではあるが引いていき、おでこの腫れもなくなったようだ。
「ま、約束通り、一回、殴った。デコピンだったけどな」
「そ、それではあまりにも……これで罰というには……」
「うるさい、黙れ。文句を言うな。
最後まで黙って聞く約束だったんじゃないのか?」
ライトネスの顔がちょっと不機嫌になる。
カミラは最後まで聞くという約束だったことを思い出す。
口をきつく結び、言葉が出ないようにする。
「次に許せないこと。
それは、お前が、アスカルとの約束を破っているということだ。
何のためにアスカルが汚名を着てまでして、お前を守ってるか、分からないのか?
お前のやっていることは、自己満足だ。
それは、本当に許されないことだぞ?」
カミラは衝撃を受けた。自己満足……。
真実を話そう、アスカルは悪くないと言おうとしていたつもりだった。
それは自分にとっては正しいことだった。
だが、ただそれだけだった。
アスカルが、何のためにそうしてくれているのか。
歯を食いしばって、あれよりも痛い拳の痛みに耐えてまで、全てを飲み込んでくれたのは、
何のためだったのか……。
カミラは泣きながら、ライトネスにこう言ってしまっていた。
「……罰を、お与えください……」
ライトネスはちょっと困ったような顔をしながら、カミラに念押しをする。
「お前、意外と約束を破る女だな?
さすがに、次やったら、お前を信じられなくなるぞ……?」
カミラは自分が情けなくなってきた。
本当だ。ついさっきした約束さえも守れていない。
言い訳をしたり、すぐに赦しを請うてしまうのは、自分が傷付くのが嫌だからだ。
自分勝手で弱いからだ。
これは直さなくてはならない。
ちゃんと、態度で示さなくてはならない。
自分が変わらなくてはならないのだ。
今度こそ、口を開かない覚悟で、カミラはライトネスを見つめる。
ライトネスの言うことを全部聞こう。そう決意した。
カミラのその目をじっと見つめたあと、ライトネスは表情を柔らかくしてカミラに優しく語りかける。
「なぁ、カミラ……。
私が約束を破る奴が嫌いなのはな?
それが、信義にもとるからだ。
人の世は、信頼や信用に基づいて出来ている。
互いに相手の信頼や期待を裏切らないように、誠実に生きていかなくちゃ、
みんなが勝手なことをやりだしたら、争いごとは無くならないし、誰も幸せにはならない。
どんな小さな約束でも、それを破って良いと思い始めたら、大きな約束など決して守れない。
ましてや人を愛することや、誰か大事なものを守ることなど、決して出来ないんだ」
カミラはその言葉の重みをしっかりと受け止めて聞いていた。
「だから、私は約束を頑張って守る。
お前も約束をしたなら、ちゃんと守れ。
…ただな?
お前がアスカルとの約束を破ってまで、私にそれを教えてくれたのは、嬉しかった。
おかげで、私は自分の弟が、女をきちんと愛して守れる男に成長したのだと、知ることが出来た。
これでアスカルのことをちゃんと信じることが出来るようになった。
…本当に、ありがとう。
私はお前を信じることにした。
弟の側にいて、ちゃんと愛を育んでくれる者として認められる。
きっかけとして誑かしたのは、さっきもう赦した。
だからちゃんと添い遂げて欲しいと思う。
アスカルとの約束を破ったのは、アスカルとお前の約束だ。
私との約束じゃない。
なので私には関係がない。
私はこの話を聞かなかったことにする。良いな?」
カミラはライトネスの優しさに涙し、何度も頷いていた。
ライトネスはすっきりとした顔をして微笑むと、優しくカミラを抱きしめた。
「じゃぁ、私としては許せないことは無くなった。
もう黙って聞く必要はない。
でも、実は、まだいろいろ言いたいことがあるんだ。
相談に乗ってくれるかな?」
「……はい、もちろんです……」
「私といくつか約束をして欲しい。
さっきまでのは赦すための命令に近い話だったけど、これはお願いの話だ」
「どんなお約束でしょう……?」
ライトネスは意志のこもった強い目でカミラを見つめる。
「一つ目。
アスカルと結婚しろ。何があってもだ。
そのためには、あれこれ悩むな。なりふり構うな。
……できるか?」
「はい……!もちろんです……!」
「そのために困難があったとしたら、いくらでも、なんでも協力してやる。
ちゃんと頼れ。な?」
「……ありがとうございます!」
カミラは嬉しくなってしまう。
こんなに頼もしい協力者など、他に望めない。
「二つ目……。
これはまず、質問だが……。
アスカルと結婚するのが確実なら、カミラは私の義妹に絶対なるよな?」
「はい……必ずなります……」
「なら、私の家族ということだ」
「そう思ってもらえるなら、こんなに嬉しいことはないです……」
「じゃぁ、今から接し方を変える。
これに早く慣れて欲しい」
「……接し方……ですか?」
「そう。これからはカミラを妹として見るのでよろしくね?」
ライトネスの口調が一気に変わった。
急に女っぽくなった。
カミラは戸惑ってしまう。
「隠してる、という訳でもないんだけどね?
これが家族の中での私……」
「そう、なんですか……普段のあの感じは……」
「あれはね。子供の頃からの夢の姿なのよ。
誰もがかっこいいと思う英雄になりたかったの。
英雄譚に出てくる英雄が好きでね?
子供のころは真似事をして、剣を振り回してよく怒られたんだけども……。
結局諦めきれなくて、騎士にまでなって。
しまいにはドラゴン殺しの英雄になっちゃったw」
「……なれちゃう、ものですか……」
「まぁ、なっちゃったものはしょうがない……w」
「どうして、みんなには見せないんですか……?
凄く自然な感じがするので、隠すことではないかと……」
「うーん……。そのうち分かってくれると思うけど……。
この私は、結構、拗ねるし、いじけるし、やきもちも焼くし、根に持つし……。
そういうのって、女なら誰にでも多少はあるでしょう?」
カミラは頷く。
そういう点で言ったら、自分は多少どころかそればっかりだ。
素直に言う。
「私なんて、そればっかりで……。
だから、アスカルが賭けのせいで好きと言ってくれなくて、
私はそれでおかしくなって狂ってしまいました……」
「ああ……。そういうことだったのね……。
あいつめ……。
それは、アスカルを殴っておかないといけないわね……」
「あ、やめてください。それはダメです……」
「冗談よw
…こういう自分自身の嫌いなところって、わざわざ見せたい訳じゃないじゃない?
恥ずかしいだけだし。
…なので、他のみんなには、かっこいいとこだけ見てもらいたいっていう、
良い顔したいだけなのよ。
私は器用じゃないから、やるなら、きっちりやらないと出来ないので、ああなってるだけ……」
「分かりました……。
では今後はライトネス様がそういう方だと理解して接するように……」
言い終わらないうちにライトネスからデコピンを食らう。
痛くはなかったが、ちょっとびっくりする。
「こらぁ。呼び方が違うでしょー?」
「えと……あの……」
ライトネスがじと目で見ている。
カミラはおずおずと呼びなおす。
「ライトネス……お義姉さま……」
「よし!w」
頭を撫でられる。
カミラは嬉しくなった。
本当に姉であると思って抱き着く。
心地良かった。
「今後は身内しかいない時はそう呼ぶのよ?
これが二つ目に言いたかったこと」
「はい。嬉しいです……w」
「最後、三つ目。
今日のこの話は、二人だけの秘密。
アスカルやセラフィにも言っちゃダメ。
あと、嫌な予感がするので釘をさしておくけど、父には絶対に白状したらダメ。
この約束は私も守らなくてはならない。
カミラと私は共犯者。これは女の生涯の約束。
良いわね?」
父とはウェルスガルドのことだ。
実はカミラは、ウェルスガルドにも言わなくてはならないと思っていたので、ヒヤッとした。
「その顔、絶対言う気だったよね?
それをしたら、私はカミラを二度と信じなくなる。
一番やったらいけないことだからね?
今日のこの話は、女同士の絶対の秘密。
これを約束しないとか、破るとか、そんなだったら、
本気でカミラを滅ぼすつもりで、戦うことになるよ?
どう?」
カミラは決意を込めて言う。
今までの、言われたから約束した、というようなものではない。
本気で、絶対に、死ぬ気で、自らが約束して守る、そういう決意だった。
「守ります。
この秘密は自分の死とともに墓に埋葬されるまで、きちんと持って死んでいきます」
「よし。いい返事。w」
一人の少女が決意を秘め、今日、女へと成長する。
正しさや善意だけではない。
辛さや苦しみや嘘をも飲み込んで、守るべきものを守る意思を持ったのだ。
弱いままではいられない。
自分は強くならなくてはならない。
変わらなくては手に入らないものがある。
そして、それを見守ってくれる優しい協力者にも恵まれた。
手助けされ、一歩一歩、少女は着実に女へと歩みを進めていくのだ。
二人は抱きしめ合う。
お互いが同じ嘘を共有し合う共犯者として、一緒に罪を背負いながら生きていく。
裏切りは許されない。
今日、聖なる乙女の姉妹が、ここに誕生したのだった。
←[ 1話前の話へ]
[このページ]
[次の話へ]→
●本コンテンツについて
・本コンテンツは同好者の間で楽しむために作られた非公式リプレイ内のショートストーリーです。
・個人の趣味で行っておりますので、のんびり製作しております。気長にお待ちいただきながらお楽しみください。
・原作の設定とは無関係の設定が出て来たりしております。あくまでこちらのコンテンツは別次元のお話と思ってください。
・本コンテンツの制作にあたり、原作者様、出版社様とは一切関係がございません。
・TRPGを行うにあたり、皆が一様に分かる世界観、共通認識を生んでくださった原作者様と、
楽しいゲームシステムを販売してくださった関係者の方々に、深く感謝申し上げます。
●本コンテンツの著作権等について
・本コンテンツのリプレイ・ショートストーリーの著作権はむーむー/むーどす島戦記TRPG会にあります。
・本コンテンツのキャラクターイラスト、一部のモンスターイラスト、サイトイメージイラスト等の著作権は、
むーむー/マーコットPさん/アールグレイさんにあります。
・その他、原作、世界観、製作用素材については以下の権利者のものとなります。
●使用素材について
・本コンテンツは以下の製作者、原作者、製作素材等の著作物を使用して製作されています。
【プレイヤー】
・トゥナ・P
・マーコットP
・ヤトリシノP
・むーむー(GM)
【挿絵・イラスト】
・マーコットP
・むーむー
【キャラクター(エモーション・表情差分)】
・マーコットP
・むーむー
【使用ルール・世界観】
・ロードス島戦記
(C)KADOKAWA CORPORATION
(C)水野良・グループSNE
・ロードス島戦記コンパニオン①~③
原案:安田均、水野良、著者:高山浩とグループSNE
出版社:角川書店
【Web製作ツール】
・ホームページデザイナー22
(ジャストシステム)
【シナリオ・脚本】
【リプレイ製作】
・むーむー
【ショートストーリー・小説製作】
・トゥナ・P
・マーコットP
・ヤトリシノP
・むーむー
(むーどす島戦記TRPG会)
【製作】
・むーむー/むーどす島戦記TRPG会