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読み切り小説
「繋いだ手」
カミラ&アスカル
(作者:むーむー)
●目次
〇カミラ・マーモの姫君
〇二人の出会い
〇コッツィ
〇あずまやの秘め事
〇セラフィム
〇サキュバスの夢
〇愛の言葉
〇アスカル・責任と決意
〇ライトネス
〇ウェルスガルド
〇舞踏会
〇繋いだ手
アスカルとカミラが幸せに浸っているその頃、カミラの後見人セラフィムと、
アスカルの父ウェルスガルドの会談が続いていた。
アスカルとカミラの仲について、どうするか、が決まってしまう会談だった。
アスカルがカミラの部屋に入り込んでいるのを発見したとセラフィムがメイドから連絡を受けた段階で、
テレポートの使える魔術師に依頼し、リスモアに使いを出しオルトソン家に会談を要請していたのだ。
セラフィムは自死するつもりだったので、この会談はコッツィに交渉させようとしていた。
だが、死ななくてよくなったなら、全力で自分がこれを成功させるつもりだった。
ウェルスガルドは当然のことながら、人間の貴族でもない妖魔のサキュバスが相手など認めるつもりはない。
ウェルスガルドの主張はこうだった。
妖魔のサキュバスがアスカルに憑りついて悪さをしている。
息子は誑かされたのだ。
サキュバスは男を誘う存在なのだからそれが目的で息子に近づいたと考えるのが普通だろう。
どうせ無理やり屋敷に誘い込んで言うことを聞かせたのだろう。
子供が山の上の屋敷にそうそう簡単に入れる訳がない。
どうせお前たちもそうなるのを承知で招き入れたのだろう。
年端もいかぬ子供を誑かして取り込むつもりだったのだろうがそうはいかぬ。
ヴァリスの国内でこんな勝手をしたのだ。
出ていくなら見逃してやるが、居続けるなら根絶やしにしてやるぞ。
…と、戦争をする気で脅してきた。
セラフィムは涼しい顔でそれを聞いていた。
どんなに罵倒されても、嫌な顔一つしなかった。
事実や証拠がまるで無く、推測に基づく主張であることが明白だったのだ。
会談にはもう一人関係者を呼んでいた。
アスカルの姉、ブラス村代表のライトネスだった。
事はブラスで起こっている、お互いメンツに関わることで双方引くのは難しい、
ともすればこの場所で戦争になりかねないと、セラフィムが連絡をしていたのだ。
ライトネスはオルトソン家から勘当されているということになっているが、
実際には関係が続いてるので、入ってもらうことにした。
というよりも、入ってもらった方が、絶対に上手くいくと、セラフィムには分かっていた。
ライトネスは10分ほど遅れて到着した。
相当慌ててきたようだった。
シャーロットは関係者では無いので来ないように言ってあったので、ライトネス一人だった。
それを待っていたかのように、セラフィムは速やかに反撃を開始した。
セラフィムの主張はこうだ。
アスカルが自らの意思でカミラのいる屋敷に夜這いに来たのだ。
我々の警備の隙をつき侵入してきた。
見つかれば殺されると知っていてもだ。
本人がそう言っている。
マーモの旧王室の正当な後継者をよくも傷物にしてくれたな?
カミラは乙女だったのになんてことをしてくれる。
それも疲れ果てて意識を失うまで体力を消耗させられ、
同衾しているところを周囲の人間に見られてしまった。
なんとか口止めはしているが、バレた日にはもう他に嫁の行き先がない。
本来なら王室復興のため、清らかな身であるべきだったが、こうなっては仕方がない。
リスモア領主の息子とやらで我慢してやるから責任をとって嫁にもらえ。
そうすればこのことは門外不出の秘密とするし、争いにするのも勘弁してやる。
そうでないならマーモの民の死力を賭してお前たちを皆殺しにしてやる。
事と次第によっては、恩義があるライトネスの弟であっても生かしてはおかないぞ。
…と、譲歩の姿勢も見せつつ、受け入れられないなら全面対決の姿勢を崩さなかった。
一部、事実とは違うことを言っているが、セラフィムは敢えてそう言った。
勝算があったのだ。
これを聞いたライトネスは、アスカルを見つけたら数回殴りつけてやるくらいの勢いで激高した。
ブラコンのライトネスですら、乙女を傷物にした、というのは許せないことだったのだ。
ただ、アスカルが誑かされたのなら、話は別だ。
サキュバスに逆らえる男はいない。
その場合はカミラを許さない。
カミラには出て行ってもらう、と言った。
セラフィムは余裕しゃくしゃくの顔で、カミラを信じられないというなら、
アスカルの話だけ聞けば良い、と提案した。
ウェルスガルドはにんまりと笑っていた。
カミラとアスカルの二人は、事の経緯を聞くとして、会談している場所に呼び出された。
カミラの発言は禁じられ、アスカルだけが問いただされた。
セラフィムがかいつまんでこの場の趣旨を説明する。
ウェルスガルドの主張と、セラフィムの主張の要点を伝える。
最後に、カミラが誑かしたのか、アスカルが夜這いをしたのか。それを聞きたいと。
セラフィムはアスカルにこう言って、証言を促した。
「カミラに誑かされたのなら素直にそう言えば良いわ。
サキュバスに逆らえる男はいない。
その場合には、こちらは全面的に謝罪をするし、償いもさせてもらう。
ちゃんと、責任をもって、発言をするようにね?」
アスカルは、こう言い切った。
「セラフィム様の主張の通りです。一切相違ありません。
自分から夜這いをしました。カミラは悪くありません。
全責任は自分が取ります。
さきほどカミラには結婚を申し込みました。了承も得ています。
どうか、私たちの結婚を認めて欲しいです」
ウェルスガルドは目を丸くして驚き、言葉を失っていた。
ライトネスはそれを聞いて光の速度でアスカルを殴りつけた。アスカルが壁まで吹っ飛ばされる勢いだった。
セラフィムは優しく微笑んでいた。
カミラは事実とだいぶ違うことを言われたので、何かを言おうとしたが、発言を禁じられていたので躊躇した。
その躊躇している間に、アスカルが殴られたので、慌ててライトネスを妖力で包んで止めようとした。
だが恐ろしいことにライトネスはカミラの圧倒的な妖力をもってしても、
何事も無かったかのようにアスカルに近づいていく。
最大限の妖力を使ってもまったく効果が出ず、ライトネスはそのまま続けてアスカルを何度も殴りそうだったので、
カミラはライトネスに縋り付き、アスカルへの暴力をやめるよう泣きながら懇願していた。
その姿を見てライトネスは拳を下ろさざるを得なかった。
ライトネスは女の嘘には敏感だ。
だがカミラは本気でアスカルを庇おうとしている。
嘘など感じない。
女をここまで想わせたのだ。
男なら、責任なんて取って当然だ。
…嘘を付いてるのはセラフィムとアスカルだ、などとは思わなかったのだ…。
ライトネスはアスカルに対して相当怒っているようで、カミラが話し合いのために
場を和ませようと癒しの力を使ったのだが、それでも全く怒りが収まらないくらいだった。
セラフィムはその抵抗力の高さを見て、改めてライトネスは敵に回さないと決めたのだった…。
ライトネスは、責任もちゃんと取れないような男なら、今後リスモアと取引など出来ないと言った。
そうとう固い意志で言っている。
これはアスカルに言ったつもりだったが、アスカルはそもそも全責任を取ると言ってるので、
実質上、ウェルスガルドに向かった言葉となってしまった。
カミラがアスカルに罪がないことを弁明しようと何かを言い出しそうな雰囲気だったので、
セラフィムは、用は済んだからと、さっさと二人を追い返した。
こうしておけば余計なことも言われず、アスカルが帰り道にきちんと説明してくれるだろうことを見越していた。
ウェルスガルドは、まさか8歳の息子がはっきりとした意志でもって、
年が5つも上のサキュバスの女を襲い、手籠めにしたと証言するなど想定もしていなかった。
それも、面倒なことに相手は亡命中とはいえマーモの旧王室の姫君。
決して家柄の悪くない女だったのだ。
国の問題ということではないが、自治領内の有力者に手を出してしまったのだ。
揉み消すのも難しい。
おまけにライトネスが完全に敵になってしまった。
今やブラスの戦力は本物だ。戦で強引に始末も出来ない。
聞けばライトネスはブラスの各種族・各組織の兵力に対して戦時戦力を強制的に提供させる権利を持っているという。
神官戦士やら魔術師、聖騎士、暗黒騎士、暗黒魔術師に加え、カノンのレジスタンスですら
召集されれば直ちに仲間になるというのだ。
それ以外にダークエルフやらジャイアント、ドワーフ、オーク、ハーピーなどの兵が組織化されてると聞く。
海賊船や軍船などの海軍戦力すら持っているのだ。
ライトネスがその気になれば、リスモアなど軽く消し飛ぶ。
リスモアどころかヴァリスの首都ロイドですら戦いとなれば守れるかも怪しかった。
アスカルには相応の罰を与えるが、それはうちうちの問題だ。
勘当などの手段も使えない。
そんなことをすればそれこそライトネスがリスモアに攻めてきかねない。
アスカルに対外的な責任を取らせないとならないのだ。
ウェルスガルドは苦虫を噛み潰したような顔で、アスカルとカミラの仲を了承せざるを得なかった…。
今後の二人の生活をどうするかということになった。
セラフィムの提案はこうだった。
カミラはブラスを出ず、アスカルがリスモアとブラスを行ったり来たりする生活が良いのではないかと。
要は今まで通りだ。
リスモアとブラスはテレポートポータルでの移動も容易なので、移動は問題なく現実的な選択肢だった。
ウェルスガルドとしても望むところだったので了承した。
また、アスカルは成人になっていない8歳なので婚約を表明する時期等についてはしばらく猶予が欲しいこと、
カミラがサキュバスであることを隠さないとリスモアでは生きていけないので
しばらくはマーモの人間の姫君としておいて欲しいと付け加えた。
これはセラフィムとライトネスも必要な措置だろうと納得した。
セラフィムは婚約の表明の時期を引き延ばし過ぎないよう釘は刺していた。
時間は日々過ぎていく。
女の大事な時間をいたずらに無駄にされるのは困ると。
ライトネスは、二人がブラスで生活をするということなら協力は惜しまない、と言った。
元々、皆が笑って暮らせる場所を提供したかったのだ。
種族や国を超えて付き合うのが難しいのを実感しているからこそのブラスなのだ。
二人が幸せになるなら、ぜひここを使って欲しかったのだ。
会談はこうして終わった。
ほぼ、セラフィムの狙った筋書き通りに事は進んだのだった。
セラフィムはアスカルが狸寝入りしているのが分かっていた。
事実を問い正すとして呼び出せば、きちんと「責任」を取ってくれると信じていたのだ。
アスカルも、セラフィムがカミラに確認していたことが何に使うものなのか、
寝たフリをしながら聞いていて理解していた。
どう答えて「責任」を取らなければならないか、ちゃんと分かっていたのだ。
カミラは、帰り道にセラフィムとアスカルのやりとりの真意を聞いた。二人は何の相談もしてないのに、共同で嘘を付いてくれたのだ。よく上手くいったものだと思う。
カミラとアスカルが結婚をするためには、付いてもらわなくてはならない嘘だったのだ。それについては、感謝していた。確かに、なんでも正しく言えばいいという訳では無さそうだった。
ただ、嘘をついて騙してしまったという罪悪感だけは、カミラの中に残り続けていた。
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