香港旅行中に読む。
蔵前仁一が妻の小川京子と共に旅した1989年10月からおよそ一年の旅の記録。東京から鹿児島、沖縄、西表島から台湾の高尾へ入る。船で国外へ出るというのがなかなかいい風情である。さらに台北、香港、タイ、カトマンズ、パキスタン、イラン、トルコへと続く。
特に中東の雰囲気が良くて旅心を誘われる。
最近のキングらしく、ストーリ的な面白さよりも文章のノリで読ませる。ただ、やはり冗長な感じはいなめない。
暴力的な刑事の夫ノーマン、その妻ローズは結婚14年間にして逃げる事を決意する。この追跡劇が、ちょっとクーンツ的かなと思う。超自然的な部分は、ラストの方にはちょっとしか出てこない。
迷信、その背後に民俗学的な考察を期待していたのだけど、単に迷信の羅列であってそれ以上のものはまったく無い。実に表面的でつまらない。
巻末に参考文献の一覧があるけど、これから抜粋しただけで書ける様な本。
このKAEWADE夢新書は「うわさの科学」が面白かったから期待していたのだが…。
とっくの昔に読んでいたのだけど、感想を書いていなかった…。固い本の割には、これだけベストセラーの上位に長期間入っているのは珍しい限り。内容的にも面白いが、日本語に対する感覚が敏感になるという意味では非常に有益な本だと思う。
でも、「日本語誤用・慣用小辞典」、「日本語誤用・慣用小辞典<続>」の方が楽しめて読めたかなあ。
クーンツ、1977年の作品。日本での初版は1980年、今回の版は1999年2月は新装版初版となる。クーンツが再注目されているのが判る。
追い詰められ射殺された殺人犯が最後に呼んだ名前が、透視能力者のメアリー・バーゲン。その夜からメアリー・バーゲンは凄惨な殺人現場の幻視に見舞われる。サイコ・ミステリーとオカルトを巧みに組み合わせ、推理物としても成立している。このストーリーテーリングの巧みさは、20年前であってもさすがにクーンツ。最近の作品よりは設定がゴチャゴチャすぎて洗練された感じはしないけど。
「日本語誤用・慣用小辞典」の続編。
正編から見ると、多少ネタ切れ君ではあるけれど、結構面白い。
カウンセラー岬美由紀、もと航空自衛隊員が主人公。松岡圭祐のお得意である心理カウンセラーに加えて、ミリタリーサスペンスに、テロ、新興宗教とかなり盛り沢山。しかし、ちょっとやり過ぎで話が広がり過ぎてしまった気がする。
「催眠」よりも、エンターテイメントとして映画化を意識している気がする。また、私には鈴木光司を意識しているよう思える。鈴木光司の「リング」シリーズは、全体のテーマと読者側のズレから、偶然の産物に近いと思うが、松岡圭佑はかなり意図的にシリーズを作っている。
→ 映画「千里眼」感想
→ 「千里眼ミドリの猿」感想
神奈川新聞に1994年6月から1995年6月まで連載されたもの。
香港ではここ数年、家常菜と呼ばれる広東の家庭料理が流行っているけど、この本に出てくる料理もそのような路線。日本人向けの料理が選ばれているし、材料も日本で手に入るものを選んでいるので純粋な広東のモノとは違うけど実用的。家庭での火力でうまく作る方法とか、爆香みたいな基本を押さえているのもいい。
しかし、中国料理の調味料の三種の神器は酒、塩、化学調味料とか書いているのはいただけない。できるだけ化学調味料なんか使わないのを書くべきなのに。
実際に横浜中華街で広東家庭料理を売りにしているのは天龍菜館ぐらいしかないけど、もっと流行って欲しいものである。香港にはいっぱいあるのに。
香港旅行の途中で読む。
1989年田畑書店刊行「スクリーンの向こうに見える台湾」を改訂改題したもの。
副題の通り、映画から台湾の歴史を眺めたもので、台湾の複雑な統治の歴史や民族関係を上手くまとめている。統治時代、戦後すぐの映画はまるで判らないけど、侯孝賢監督「非情城市」の二・二八事件みたいな歴史的事件をあらためて読むのは勉強になる。
新しいとこでは、「河」「青春神話」の蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)や、「カップルズ」「エドワード・ヤンの恋愛時代」のエドワード・ヤンなど。
「閉鎖病棟」を読んだ勢いで、続いて帚木蓬生を読む。
臓器移植をテーマにしている医療サスペンスもの。新任の看護婦の主人公が、無脳症児という言葉を偶然に聞くことから病院の闇の部分の真相を追うことになる。
「閉鎖病棟」のヒューマンドラマっぽさが無く、サスペンス性が強い。個人的には「閉鎖病棟」の人を見る暖かさ、人情味の方が好き。
香港に行く飛行機の中で読む。
著者は「なっちゃんの写真館」の星野知子。
単なるタレントの旅行エッセイと見くびってはいけない。ドキュメンタリー番組の旅行の話だけど、タイトル通りにかなりのヘビーな旅。ペルー、シベリア、雲南省と、なかなか面白そうな所に行っているので楽しめる。あまり役に立たないかもしれないけど、人の失敗や努力は読んでいて面白い。
香港旅行中に読む。
「時刻表2万キロ」など鉄道紀行の宮脇俊三。旅行中の読書向きかと思って香港で読んだけど、鉄道オタク100%だった(^^;)。
北京-広州2313キロ、上海-烏魯木斉(ウルムチ)4079キロ、大連-哈爾浜(ハルビン)944キロ、成都-昆明1100キロ。文章からは著者のワクワクする気持ちが上手く伝わってくるのだけど、いざ自分がその場所にいたら、変化の無い車窓の風景にうんざりしてしまいそうな気がする。
香港旅行の途中で読む。
生っ粋の江戸っ子の著者が、田舎が欲しいという思いから、寒村に家を建て、地元に溶け込んでいこうとする顛末。最初の土地に惚れ込んでいく所あたりは面白かったのだけど、後半は人間関係の苦労ばかりで、特に女一人暮らしの苦労という部分ばかりだった。
玉村豊男の「種まく人-ヴィラディスト物語」を連想させるが、スタンスは似ているようで実は違うように感じた。