2000年6月


「インサイダー」 - The Insider - ☆

 マイケル・マン監督、アル・パチーノ、ラッセル・クロウ、クリストファー・プラマー、ダイアン・ヴェノーラ、フィリップ・ベイカー・ホール、リンゼイ・クローズ、デビ・メイザー。

 CBSの人気報道番組"60ミニッツ"(日本では"CBSドキュメント"の名前で一部放送されている)のプロデューサー、バーグマン(アル・パチーノ)が主人公。バーグマンが接触したワイガンド(ラッセル・クロウ)は有名タバコ・メーカーB&W(ブラウン・アンド・ウィリアムソン社)の研究開発部門で元副社長。バーグマンはワイガンドの内部告発を狙うが、B&Wは極秘事項を知るワイガンドに圧力をかける…。

 迫力があり、面白かった。実話ベースというのがなんとも重いけど、それを上手くエンターテイメントに仕上げている。エネルギッシュだけど疲れているといるバーグマンの感じがアル・パチーノにぴったり。ラッセル・クロウも「グラディエータ」と同じ人物とは思えない、渋い演技でよかった。ニューヨークの夜更けや朝方の雰囲気の出し方なんかもいい。
 監督の前作「ヒート」は期待の割に面白くなかったんだけど、これは素晴らしくよかった。

 個人名、会社名はすべて実名という実に硬派な映画。こんな映画を作れてしまうハリウッドは凄い。日本じゃ宗教団体がミサイル飛ばしたりとか、北の駅の少女の映画なんかしか作っている場合か?

「インサイダー」Official Website


「エニイ・ギブン・サンデー」 - Any Given Sunday -

 オリバー・ストーン監督脚本、アル・パチーノ、キャメロン・ディアス、デニス・クエイド、ジェームズ・ウッズ、ジェイミー・フォックス、LLクールJ。

 主人公のトニー(アル・パチーノ)は、プロフットボール・チームのマイアミ・シャークスのコーチ。昔の名門チームも新オーナーのクリスティーナ・パグニアーチ(キャメロン・ディアス)の元で士気が下がりっぱなし。さらにスター選手のジャック(デニス・クエイド)の怪我、代わりの無名選手ウィリー(ジェイミー・フォックス)もお粗末なプレーばかり…。

 まったく、オリバー・ストーンに期待する事は無いので、思ったよりはよかった。最後も結構盛り上がったし。しかし、まあ退屈しないぐらいのレベルだけど。それでも2時間31分は長すぎる。
 金の事しか考えないオーナー、引退寸前の選手、地元ファンとの関係、チームの買収、不協和音の響くチームがまとまっていく…もう、スポーツ映画で常套手段を詰め込んだだけで、なんの新しさも感じなかった。
 女性であるクリスティーナが父の意志を引き継いでチームを維持していく重荷みたいなモノは新しいんだけど、上手くは出てなかったし。
 
→ 「エニイ・ギブン・サンデー」 Official Website


「クロスファイア」

 金子修介監督、宮部みゆき原作、矢田亜希子、伊藤英明、原田龍二、長澤まさみ、永島敏行、桃井かおり。
 幼い頃よりパイロキネシス(念力発火能力)を持つOL青木淳子(矢田亜希子)が主人公。淳子が思いを寄せる同僚の多田一樹の妹、雪江が惨殺される。有力な評論家を父に持ち、未成年のために罰を逃れた主犯の小暮昌樹を淳子は追い詰めるが…。

 原作は、キングの「炎の少女チャーリー(Firestarter)」のパクリに、さらに無理に人間関係、グループの設定の詰め込んでいて、ラストに上手く収束出来なくてあんまり好きじゃなかった。でも、映画は原作を上手く刈り取って、いいスピード感で展開させて好感が持てた。惜しい所は、SFXに金が掛けられずに迫力が出せてない所。「ガメラ」みたいな予算があったら、もっと素晴らしくなったと思うけど。

「クロスファイア」 Official Website


「ナインスゲート」- The Ninth Gate - ☆

 ロマン・ポランスキー監督、ジョニー・デップ、エマニュエル・セイナー ケスラー、フランク・ランジェラ。

 冷酷なブック・ハンターのディーン・コルソ(ジョニー・デップ)は、バルカン出版の社長であり悪魔研究者のボリス・バルカン(フランク・ランジェラ)から、現存するあと二冊の悪魔書「ナインスゲート」を調べる仕事を依頼される。17世紀に悪魔が書き、翻訳したアリスティデ・トルキアは火あぶりとなった伝説の書である。コルソが行く先々でつけ狙われ、殺人が起き、また謎の女(エマニュエル・セイナー)につきまとわれる…。

 「ローズマリーの赤ちゃん」以来のポランスキーのホラー映画は、いかにもポランスキーといった映像世界を見せてくれる。悪魔の書「ナインスゲート」の謎が、観客を離さない。ラストはちょっと余計な感じがしたが、面白かった。

「ナインス・ゲート」Official Website


「スティグマータ聖痕」 - Stigmata -

 ルパート・ウェインライト監督、パトリシア・アークエット、ガブリエル・バーン 。

 ピッツバーグの美容院に勤めるフランキー・ペイジ(パトリシア・アークェット)に、両腕の手首から流血するという聖痕現象が突然起きる。バチカンの奇跡調査員であるアンドリュー神父(ガブリエル・バーン)は無神論者のフランキーに聖痕現象は起きないと一度は判断を下すが、古代の言葉をしゃべり、古代の文字を壁一面に書くなどの奇怪な現象は続く…。
 荒い部分もあるし、テンポのあんまりよくないのだけど、観た後の印象はいい。キリスト教の根源を説き、教会を真っ向から否定するような表現を許容する米国映画のふところの深さを感じた。この映画をヴァチカンがどういう風に観たのか興味ある。

 ガブリエル・バーンは「エンド・オブ・デイズ」の悪魔役から、今度は神父役。

→ 「スティグマータ聖痕」 Official Website


「千里眼」

 麻生学監督、松岡圭祐原作脚本、水野美紀、黒木瞳、柳葉敏郎、矢島健一、田口トモロヲ、根津甚八。

 "ミドリの猿"を名乗るナゾのテロ集団が日本各地でミサイルで攻撃。催眠状態で操られるテロリストに対抗するため、"千里眼"のあだ名を持つ心理カウンセラー友里佐知子(黒木瞳)、自衛官の岬美由紀(水野美紀)が事件を追う。
 原作では主人公が元自衛官のカウンセラーだったが、映画では現役自衛官になっているなど変更も多い。まあ、詰まらない部分は原作そのままだから同じだけど。
 ちゃちな合成など、映画的な情けない部分もあるが。

 水野美紀のアクションシーンのみが拾い物。少林寺拳法をやっていただけあって、動きが非常に奇麗。ワイヤーアクションはややハデ過ぎるけど、香港ぽくて面白い。

senrigan.net 松岡圭祐倶楽部 (このサイト、超判りにくい)
原作「千里眼」感想
原作「千里眼ミドリの猿」感想


「ビッグ・ダディ」- Big Daddy -

 デニス・デューガン監督、アダム・サンドラー制作脚本主演、リス ティ・スワンソン、コール&ディラン・スプラウス、ジョン・スチュワート。

 ソニー(アダム・サンドラー)の32歳にもなって定職にもつかずにふらふらとした生活に、恋人のバネッサ(リスティ・スワンソン)も愛想をつかしてしまう。そこに現れた一人の子供ジュリアン(コール&ディラン・スプラウス)は、実は中国に出張しているルームメイトのケビン(ジョン・スチュワート)の一夜をともにした相手が生んだ子供だった。バネッサを取り戻すために、ソニーは懸命にジュリアンの世話を焼き、大人になった自分をアピールするが…。

 子供のままの大人が、子供を育てるという一つの笑いどころが、実はあんまり面白くない。単にだらしがないだけで、共感を得られない。やがて成長していく姿にも、感動が無く、多少のホノボノ感しかなかった。アダム・サンドラーは、前の「ウォーター・ボーイ」が傑作だったし、「ウェディング・シンガー」もよかっただけに残念。やはり

 子役のコール&ディラン・スプラウスは、双子でジュリアン一役をやったらしい。

「ビッグ・ダディ」 Official Website


「グラディエータ」- Gladiator - ☆

 リドリー・スコット監督、デビッド・フランゾーニ脚本、ラッセル・クロウ、ホアキン・フェニックス、コニー・ニールセン、ジャイモン・ハンスウ、デレク・ジャコビ、リチャード・ハリス、オリバー・リード。

 西暦180年、大ローマ帝国が舞台。皇帝マルクス・アウレリウス(リチャード・ハリス)は、次期皇帝の座を信頼する部下であるマキシマス将軍(ラッセル・クロウ)に譲ろうとしていた。しかし、皇帝の息子コモドゥス(ホアキン・フェニックス)は皇帝を暗殺、マキシマスをも罠にかけ殺しかける。マキシマスは剣闘士奴隷(グラディエーター)として生き長らえるうちに名を上げ、再びローマに戻る事となる…。

 かつて「ベン・ハー」、「スパルタカス「クレオパトラ」、「ローマ帝国の滅亡」と、壮大なスケールの史劇スぺクタルの名作が作られた。「グラディエータ」は、まさに史劇スペクタクルの復活。面白かった。
 オープニングのゲルマニアの戦いの戦闘場面から迫力満点。その後の展開はまさに、息をもつかせぬというスピード感。闘技場の場面も色々と工夫があり、変化を付けて飽きさせない。
 コモドゥス、王妃など、それぞれの心理の変化も見事。何よりも"国民の支持"の重みを上手く使っているのに関心した。

 コロッセオを中心とするローマのCGの作り方も美しく迫力あった。行った事あるので、なんか余計にリアルに感じる。ちなみに、カンピドーリオ広場の中央の騎馬像が皇帝マルクス・アウレリウス。

「グラディエータ」 Official Website


「すずらん 少女萌の物語」

 黛りんたろう監督、橋爪功、柊瑠美、池内博之、黒木瞳、萬田久子、石倉三郎。主なキャストとスタッフはTVと同じらしい。
 北海道、明日萌(あしもい)駅に置き去りにされ、駅長の次郎(石倉三郎)に育てられた萌(柊瑠美)が主人公。ある日、萌は列車にひかれそうになった所を、秀次(池内博之)という謎の青年に助けられる…。

 NHK連続テレビ小説の「すずらん」の映画版。TVで広めて映画でさらに儲けるなんて商法をNHKまでやりだしたかと不安になる。
 元のTVドラマを観ていないのだけど、とにかく詰まらなかった。時間の無駄。
 萌はかわいいだけで芸が無い。駅長はいい人なだけで面白みが無い。罪人を匿う漁師の親方なんか面白いのにほとんど活かされてない。もう、どうにもならない話な上に、どうしようもない終わり方。


「鬼教師ミセス・ティングル」- Teaching Mrs. Tingle -

 ケヴィン・ウィリアムソン監督、ケイティ・ホーム、ヘレン・ミレン、ズバリー・ワトスン、マリサ・カフラン。
 「スクリーム」の脚本家、ケヴィン・ウィリアムソンの初監督作品。
 オハイオ州の小さな町、グランズボロー高校に通うリー・アン(ケイティ・ホーム)が主人公。一人働き育ててくれた母のため、リー・アンはなんとかハーバード大学への奨学金を得ようとするが、ミセス・ティングル(マリサ・カフラン)に試験問題盗難の疑いをかけられる…。

 高校を舞台とした青春物語に、「9時から5時まで」的な復讐劇をからませているのだけど、なんか中途半端。ミセス・ティングルは徹底的にヤな奴でもなく、生徒側も悪い部分が多く、結局みんなそれほど悪くないという生ぬるい状況。
 ミセス・ティングルの仕掛ける心理戦みたいなモノが面白いが、ほんの上っ面で終わっていた。

「鬼教師ミセス・ティングル」Official Website


「プランケット&マクレーン」- Plunkett and Macleane -

 ジェイク・スコット監督、ゲイリー・オールドマン制作総指揮、ロバート・カーライル、ジョニー・リー・ミラー、リヴ・タイラー。
 舞台は18世紀の半ば、社会的事件にもなった実在の「紳士強盗」をベースにした物語。強盗のブランケットは、聖職者の息子のマクレーンと出会い、二人のコンビで社交界に紛れ込み強盗を計画する…。
 まあ、面白いし、展開もいいし、かっこいいんだけど、どっか満足出来ない所がある。エンターテイメントとしても物足りないし、社会的な視点が鋭いというのでもない、中途半端な所を感じるからかもしれない。
 リヴ・タイラーは重要な役割だけど、あまり活躍しなかった。ロバート・カーライルも、今回はあまり存在感がなかった。
  
 ちなみに監督のジェイク・スコットは、リドリー・スコットの息子。

「プランケット&マクレーン」Official Website


「トプカピ」- Topkapi - NHK-BS

 ジュールス・ダッシモ監督、
 イスタンブール、トプカプ博物館の短剣を盗もうとする大胆な計画。
 NHK-BSのトルコ特集の絡みで放送されたもの。子供の頃に観た映画の中で「007ロ/シアより愛をこめて」と並んで記憶に印象的だったもの。トルコ旅行の記憶が新鮮なうちに、また観たいと思っていたので、いいタイミングだった。

 実際にほとんどの場面をトプカプ宮殿の中でロケをしているのに驚いた。屋上のシーンまで、ホントにトプカプ宮殿らしい。ストーリはまあ、前に観たのと同じような印象。「黄金の七人」シリーズなど、こういう泥棒ものは好き。
 主演の「日曜はダメよ」のメリナ・メルクーリ。

 やっぱり「ミッション・インポッシブル」の宙づりのシーンは、この映画そのままだと思う


Movie Top


to Top Page