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4時間の盛りだくさんの企画
■山口ホールでブラジルをテーマとした催しがあった。主催は山口ホールの管理運営者である日本管財鰍セが、案内チラシには西宮市の共催、財団法人の西宮市国際交流協会や日伯(日本・ブラジル)協会の後援とあり、半ば公やけのイベントといえる。
■2時45分から6時30分に及ぶ入場無料の盛りだくさんのイベントだった。西宮市の友好都市・ロンドリーナ市の紹介ビデオの上映、ブラジル映画「GAIJIN2」の上映、ブラジル音楽ショーロの演奏、ブラジル現地とのインターネットによる生中継といった内容である。休憩中にはブラジルのお菓子や飲み物の無償提供といったサービスまで準備された。
日系ブラジル人の4代にわたる女性たちの物語
 何といっても圧巻は映画「GAIJIN(ガイジン)2」だった。日系ブラジル人映画監督チズカ・ヤマサキ氏の四世代にわたるブラジル日系移民の足跡を描いた力作だった。南米最大の映画祭での最優秀作品賞や最優秀監督賞など4賞の受賞は伊達ではない。
 10代の若さでブラジルに移民したチトエ、その娘シノブ、孫娘マリエ、曾孫ヨーコの4代にわたる女性たちの物語である。受け継がれていくある家族の歴史を描きながら、同時に家族のルーツを辿る旅路の物語でもある。日系移民の子孫である監督自身の問題意識そのものに違いない。「家族とは何か」「民族とは何か」「愛とは何か」「理解し合うとはどういうことか」「故郷とは何か」などの多岐にわたるテーマが次々に問われる。そうしたテーマを解きほぐすキーワードの一つが「ガイジン」である。ブラジルの日系移民社会でブラジル人をガイジンと呼び、出稼ぎ先の日本で日本人からガイジンと呼ばれる日系ブラジル人。移民国家であり多民族社会であるブラジルにあってそれは奇異な現象だったに違いない。「島国日本が育んだそうした精神風土の特異性にこそ日系移民たちの悲劇の要因があったのではないか」と日系ブラジル人監督は問うているかのようだ。四世代の女性たちを演じた女優陣にも心打たれた。とりわけ老後のチトエの存在感とマリエの苛烈な美しさに魅せられた。
このイベントがもたらしたもの
 日系ブラジル人たちの「日本出稼ぎ」が相次いでいる。今や30万人以上とも言われている。山口にも出稼ぎの日系ブラジル人が20名ほど在住しているようだ。厳しい経済環境で帰国を余儀なくされておりその数は減少傾向にある。彼らを取り巻く環境は日々過酷なものになりつつある。日頃直接関わることのない私たちはそうした現実を知らない。このイベントで提供されたスナック菓子は彼らの手作りである。会場にも何人かの参加があったようだ。
 このイベントがもたらしたものは少なくない。 山口は古来より有馬温泉の道筋にある「街道の町」として発展してきた。旅人たちを温かく受け入れる風土があったと思われる。このイベントが、住民と今日の旅人である在住日系ブラジル人たちとの交流の在り方に一石を投じたことは間違いない。