用語集 か−こ

海水淡水化(かいすいたんすいか) Desalination

 水道水として使用できるレベルまで海水から塩分を除去する処理。蒸発法,逆浸透膜法などが有力とされるが,いずれにせよ膨大なエネルギーが必要で,悪魔の技術と言う人までいる。

快適水質項目(かいてきすいしつこうもく)

 おいしい水の追求を水質項目として具現化したもの。しっかりと研究され公開されている割にはあまり使われていない。

外部経済効果(がいぶけいざいこうか)

 経済波及効果と大体同じような意味。持って回った言い方をするのは,不の影響がある場合(外部不経済)に使うためと推測される。

角落し(かくおと−) Flashboard

 四角い板状の仕切りを水路に落としこんで水をせき止める設備。名前で形態が想像できるという点で,非常に優れたネーミングである。

ガスクロマトグラフ−質量分析計(−しつりょうぶんせきけい) GC-MS

 有機物の構造の分析に関する情報が微量のサンプルで入手できる。これがなければ環境屋がナノやピコと格闘することもなかった。扱いにはある程度の熟練が必要だったが最近の機器はかなり扱いやすくなった。

渇水(かっすい) Drought

 水源地域への涵養が平年に比べて一時的に不足し,必要な水量が得られない状態。日本では継続的に不足するような計画は認可されない。

活性炭処理(かっせいたんしょり) Activated Carbon

 水道版オ○イーター?や○ムコ?...得手不得手はあるが,基本的には何でも吸い取る黒い粉...(^o^)

可撓管(かとうかん) Flexible Pipe

 管に可撓性を与えるための管材料。「撓」の字が規定により「可とう管」と書かれることも多いが,なんか余計わかりにくくなるのでよくないと思う。可撓管を知ってればあなたも立派な水道設計者(^o^ )。

可撓性(かとうせい) Mobility

 構造物や管の継目を固定しないことで応力や変位を逃がす性質のこと。「撓」はたわむ,という漢字。耐震化の鍵を握る場合が多い。

過マンガン酸カリウム消費量 potassium permanganate consumption value

 有機物量の指標。水中で過マンガン酸カリウムによって酸化される物質を定量化したもので,水相中の有機物量の指標として使われる。ヨーロッパ生まれだが日本では水道専用の指標であったためか,平成16年4月付けで,水質基準の有機物の指標から外れ,TOCに切り替わることになった。カメレオンやカメさんと愛称で呼ばれることも。

神様(かみさま) Veteran

 経験により現場の状況を熟知する熟練技術者。水道施設,特に配水施設は大部分が地中に埋設されているうえ,非常に複雑な構造をしているため,どのような操作によってどのような影響が出るのかなかなかわからない。しかし,大概の場合,現場の状況を肌で知っている「神様」がおり, 現場の指揮にあたっているものである。

亀の甲(かめ−こう) Hexagon Structure

 本来はベンゼン環を有する有機化学物質の構造を比喩的にいう言葉。水道では有機化学に関する知識を象徴して言うことが多く,「わしゃ亀の甲が分からんから土木屋になったんじゃ」などの用法で禁忌的に使用される。

カメレオン chameleon mineral

 有機物量の指標である「過マンガン酸カリウム消費量」のこと。長ったらしいのでこういう場合がある。過マンガン酸カリウムの英語名俗称がchameleon mineralであることにその由来があるらしいのは最近知ったことなのだが,語感が似ていることと,滴定の時に色が変わること,もこれを補完していると思われる(英語名もつながりがありそうな雰囲気)。カメさんと愛称で呼ばれることも。

簡易水道(かんいすいどう) Small Water Supply

 英訳のとおり小規模な水道。小規模な方が非効率的なのに財政的に有利...補助制度があるからである。

環境基準(かんきょうきじゅん) Environmental Quality Standard

 環境基本法に水質汚濁に係る環境基準(水質環境基準)の設置義務,基準達成のための促進義務が規定されている。

環境ホルモン(かんきょう−) ED

 報道用語で,公的には「内分泌かく乱化学物質」などという...が,もっとややこしい呼び名もある。作用が強力なものは「毒」や「薬」と呼ばれ,環境ホルモンの仲間には含まれないようである。

監視項目(かんしこうもく) Monitoring Items

 水道水質基準の設定を保留することになった水質項目。10%以上検出されれば継続監視することが必要。

緩速ろ過(かんそくろか) Slow Filtration

 比較的ゆっくりとした速度で砂のろ層に原水を通すことで表層に生物膜が生成し,この効果によって原水から懸濁質と一部の溶解性物質を除去する,浄水処理の一種。

管網計算(かんもうけいさん) Pipeline Network Analysis

 配水管網のなかの水の流れをシミュレーションにより把握し,水道管の最適配置の手がかりを得る手法。計算自体はコンピュータに任せるので一見だれにでも出来そうに見えるが,与える条件の選別や結果の読み取りは経験を積まないと出来ない。

危機管理(ききかんり) Crisis Management

 不測の事態に対処するための取組み。「不測の事態だったからしかたない」なんてのは危機管理の意識があれば絶対出てこない釈明である。

技術士(水道部門) (ぎじゅつし(すいどうぶもん)) P. E. Jp

 技術分野のプロであることを示す国家資格なので,部門を併記する義務がある。受験には技術と経験のほかに体力が必要(当時は7時間で400時詰16枚記述だったがH13からは少し変更になった様子)なため,一部には「記述士」とも呼ばれていた。公式の英語表記も平成13年から変わったらしい。

基本計画(きほんけいかく) Foundation Planning

 長期的展望のもとに水道の進むべき道筋を探る作業。水道分野におけるフィージビリティスタディです。

吸光光度計(きゅうこうこうどけい) Absorptiometer

 発色処理した試料液の吸光度を測定し目的物質の定量分析を行う装置。水質測定装置のなかでは安価で,その割に適用対象が広い。

給水区域(きゅうすいくいき) Supply Area

 水道事業において水を供給する区域のこと。施設効率に決定的な影響を与える割には早い段階で政策的に決まってしまう。

給水人口(きゅうすいじんこう) Customer

 水道のお客の数のこと。区域の考え方が重要なのでこのような言い方になるようである。

給水量(きゅうすいりょう) Amount of Water Supplyr

 給水区域の一般の需要に応じて給水するため,水道事業者が定める事業計画上の給水のこと(水道用語辞典から)。給水管から出る水は使用水量といい,給水量ではないので注意。

急速ろ過(きゅうそくろか) Rapid Filtration

 あらかじめ懸濁質を凝集,フロック化しておくことで,高い効率で懸濁質の除去を行う浄水システム。特に大規模な上水道の浄水場で主流。

急速ろ過池(きゅうそくろかち) Rapid Filter

 急速ろ過システムの仕上げ処理で,砂層にて凝集沈澱池で除去できなかった懸濁質を除去する池。同じ砂ろ過でも緩速ろ過とは全く異なる設備。設計思想や技術力の差が最も顕著に現れる,ことがある。

凝集剤(ぎょうしゅうざい) coagulant

 水の中の不純物のうち主として水に混じっている不純物同士がくっつくよう電気的に中和する作用をもった薬品。

凝集助剤(ぎょうしゅうじょざい) coagulation aid

 水の中の不純物のうち主として水に混じっている不純物同士がくっつくよう電気的に中和する作用をもった薬品=凝集剤の働きをよくするための薬品。主として,水を凝集しやすいpHにするpH調整剤と,不純物の代わりを努める凝集促進剤がある。

クーラーの効いた部屋からの指示(くーらーのきいたへやからのしじ)

 つらい現場作業をしているときに本部から作業の要求がくること。暑い時期に使う。同義語「暖房の効いた部屋からの指示」。

首長(くびちょう) President

 市町村のリーダーをひっくるめてこう呼ぶ。「シュチョウ」と読むと「主張」などと紛らわしいためらしいが,私のように「組長」と間違って認識していた人(はずかし〜)は多いのではなかろうか。だって,結構ぴったりきたりするし。

組継ぎ(くみつぎ) 

 埋設配管を地上で接合してから地中に埋設する方法。継手に不均等力がかかり,漏水の原因になりやすいが,施工が容易になるのでこっそり行われるケースが多い。「丘継ぎ」ともいう。組継ぎを前提とした管種の採用,継手の開発がコスト縮減の鍵を握る(と筆者は勝手に考えている)。

クリプトスポリジウム Cryptosporidium

 病原性原虫の一種。水系を媒体に拡散し,塩素消毒では十分に不活化できない。現代の水道水質管理のキーワードの一つ。

クロラミン Chloramine

 結合残留塩素の主となる物質で,塩素とアンモニアの結合物。遊離残留塩素と合わせて全塩素と呼ばれ,消毒効果のある消毒剤全体を指すようになる。

群井

 複数の井戸が影響範囲内にあり,これを同時に取水するときの影響を検討する設計手法。

傾斜版 Inclined Plate

 沈殿池の効率を飛躍的に向上する設備。一つのアイデアが世界を変える好例。

ケツをまくる Run away

 事態を放り出して逃避すること。一度やると二度と社会復帰できない。

原子吸光光度計(げんしきゅうこうこうどけい)

 中空陰極ランプの輝線が試料の原子蒸気層通過する際の吸光度を測定し、主として金属等の定量分析を行う方法。重金属などの測定に威力を発揮するが,扱いは少々厄介。

検出端(けんしゅつたん) Sensor

 水質やその他の情報を読み取る部分のこと。センサーを感じでこう書く。

顕微鏡(けんびきょう) Microscope

 見えないくらい小さなものを見えるようにすることができる装置。ただし見える範囲は狭くなるので,狙ったものが見えるようにするにはそれなりの準備とテクニックが必要。

懸濁質(けんだくしつ) Suspended Solid

 水に溶けないが水に混じる,いわゆる「濁り」のこと。通常は土の成分がほとんど。

原単位(げんたんい) Supply unit

 計画値に説得力を持たせるため,人口予測や生産量見通しのように分かりやすい指数を説明変数にして,これに一人あたりの使用水量などの「平均値など」を乗じて目的の値を導くことがある。この「平均値など」のこと。これにフレーム値を乗じて計画値を推計する。

検討中(けんとうちゅう) Considering

 懸案,事案について,各方面の情報や調査結果を考慮して結論を出すために必要となる可能性のある作業を行っている状態のこと。結論が出ることを保証するものではない。同義語=「サボタージュ中」

広域水道(こういきすいどう) Wide Area Supply

 複数の事業体にまたがって整備される水道。面積は関係ない。

公共下水道(こうきょうげすいどう) Public sewerage system

 とどのつまりは,終末処理場がある下水道。つまり,都市下水路は対象に含まれないということになる。

公共用水域(こうきょうようすいいき) Public Waters

 公共下水道を除くすべての公共の用に供される水域をいい,河川,湖沼,港湾,沿岸海域並びにこれに接続する公共溝渠,灌漑用水路などを含む。つまり,都市下水路は対象に含まれるということになる。

公社(こうしゃ) Authority

 国や地方自治体などが全額出資して設置する法人。発展途上国など水道事業体が公社の形をとっているケースが多い。日本では少し事情が異なり,水道事業体が個別抱えるサービス公社を指す。OBや出向者が中心になり,給水関係や運転監視のほか,窓口対応,資料整理,清掃,といった様々な業務に携わっている。

更生工法(こうせいこうほう) Refresh

 水道で更生というと,管路の更生工法を指すことが多いようである。主として錆対策として行う工事のこと。

硬度(こうど) Hardness

 原語を知ってなぜ「硬度」なのか分かった(^o^)。ミネラルウォーターのミネラルのこと。適当に含まれるとおいしいが,多いと配管内にこびりついたり腹を下したりする。

高速液体クロマトグラフ(こうそくえきたい−) HPLC

 チウラムのせいで水道屋も勉強しなければならなくなった装置。一部の有機物を測定するのに使用。もちろん気楽に扱える代物ではない。

誤字(ごじ) Miss script

 文章などに含まれる正しくない文字や表現のこと。一般には記述する者の国語力が不足していたり,十分なリソースを与えないことによって発生する。
 ただ,役所によっては,日本語としては全く正しくても,内輪の決め事に抵触しているという理由で誤字とされることがある。さらに,その内輪の決め事どおりになっているかを専門にチェックする人を置いている場合すらある...何をかいわんや,である。

コスト縮減(−しゅくげん) Cost reduction, Cost savings

 許容リスクと装置性能を精査し,過剰性能部分を削減することによってコストを下げる行為。リスクの精査を怠ると,性能は変えずに値段を下げろといういじめ運動になりかねないので注意が必要。

小人さん(こびと−) Dwarves

 徹夜続きで朦朧としているときの仕事のことで,「小人さん状態」などという。童話で出てくる靴屋の小人に由来している。童話の小人さんはしっかり仕事をしてくれたが,現実の小人さんはミスが多いので,意識がもどってからしっかりチェックすることが重要。

コモンキャリッジ Common Carriage

 導送水管などの施設を複数の事業体が共同で使用する方法。電話において,NTTの所有する家庭への引きこみ線が,新電電各社で有償で使用されているのと同じような形態。英国では民間水道会社の競争促進の手段として導入について検討され始めている。託送ともいう。

転がす(ころ−) Unfix

 固定せず,もしくは簡易な固定のみで露出配管すること。動かしてもいいというわけではない。

コンタミ Contamination

 主として水質分析時によく使う言葉で,測定しようとした物質が試験対象以外の原因によって検出されてしまうこと。以前は微生物の測定時に問題になったが,最近ではとんでもなく微量まで測定する項目(内分泌かく乱物質など)の研究が増えたため,より注意が必要になっている。