技術管理 Engineering Management
作成者  BON
更新日  2007/03/11

 平成13年度より,技術士の部門に「総合技術管理部門」が新設されることになりました。すべての技術分野にまたがる部門ではありますが,単独で意味がある部門ではなく,それぞれの専門分野においてエンジニアリング,マネジメントを行うための基礎的な能力を問う部門と思われます。

 何の因果か私めも受験することになりました。よって,試験までのしばらくの間,この関係のページを中心に作業しました。受験料を1万ウン千円払ってるんでなるべく受験回数を減らしたいですし...ただ,単純に単語を覚えるお勉強ではまったく意味がありません。よって,水道技術との絡みを中心に,具体的に検討してみたつもりです。

 もう一点,私は物覚えが悪いので,自分が把握しやすいよう勝手に省略したりしてます。言葉についてはあんまし信用しないでね。(^_^)ゞ

経済性管理
 リソース(4M)に対して出力(PQCDSM)を最大にするための営み。
人的資源管理
 組織の構築に関する論や労務管理など。私の苦手分野。
情報管理
 このページを見れる人ならあまり改めて勉強することもなかとでしょ?
安全管理
 危機管理や安全性の確保のための管理技術です。
社会環境管理
 環境対策です。比較的なじみやすいですかね。

 また,技術士試験関係としてこちらも参考にしてください。

技術士制度−関連サイト
 技術士試験制度の項目へどうぞ。

【参考】
 「技術士制度における総合技術管理部門の技術体系」日本技術士会...様々な分野にまたがる部門であるということは,裏返せば明確な技術体系がないということではないかという指摘があります。このため,この本がないと,どのような分野を対象にしているのかすら分かりません...必携です。まずはこの本で体系化されている内容を骨格にすえました。あと,実体験やイメージトレーニング,日経ビジネスの記字とかを切りぬいて蓄積していたのが役に立ちそうです。


 総合技術監理の根本には,今日におけるの技術的なアプローチが様々な技術分野にまたがって相互に影響しあうようになってきたうえ,事故防止や環境負荷低減などの社会に与える影響にも考慮するなど,高い倫理観は必要になってきた現状があります。

 経済性管理,人的資源管理,情報管理,安全性管理,社会環境管理,の5つのタームに分類整理されていますが,その根本原理としてリスクマネジメント(そのまま総合管理技術と訳されるの概念があります。

 また,この技術体系が部門化された背景には,国際的な技術者の相互承認に関する流れがあります。関連の情報としてISO関係の経緯を少しだけ(よそ様のサイトですが)

【日本適合性認定協会】
 ISO等,各種のマネジメントシステム関係について。

【備考】


経済性管理

 限られた資源(入力=4M)で最大の効果(出力=PQCDSM)を得るための調整管理に関する技術です。

 キーワード:管理=事業企画,事業計画,品質管理,工程管理,原価管理(コスト管理),設備管理,計画・管理の数理的手法

1)事業の企画(基本計画)

 事業の目的や規模を明確化する段階。一般分野ではフィージビリティスタディ(FS),水道事業では基本構想から基本計画,認可申請までがこれにあたりますが,100%経済性のみでは判断されない特殊性から実施の決定は基本構想レベルで行われるのが普通です。

計画段階
 基本構想・基本計画,認可設計などについてはこちら。

 事業の実施決定をうけ,生産計画が行われます。現在の水道界では,この部分に対するコンサルタントの関与は限定的ですが,今後はより重要になっていくことが予想されます。

2)品質管理

 品質管理の概念は日本で発展したそうで,TQC (Total Quality Control),最近ではTQM (Total Quality Management)という呼称がついています。TQMには,選定/理由/現状=解析=対策=確認+標準+反省のステップがあり,これをQCストーリーというそうです。また,QCを行うためにはQC7つ道具(層別図,パレート図,樹枝図/度数分布図,散布図,工程管理図/チェックリスト)と俗称される分析方法を駆使するのが一般的です。

 品質管理は,計画>管理>保証>改善の4つのパートで整理されます。水道の品質は水量,水質,水圧,の3つですが,その利用用途が健康に直接影響することから国が関与する形で行われてきたことと,競争が基本的に発生しにくい事情から,製品の品質に関するQCは比較的甘いようにも思います。

3)工程管理(施工管理)

 生産の時間的側面,納期の遵守を目的とし,時間の短縮や効率化を図るものです。事業の企画を受け,実際上の「作業」(生産活動の最小単位)や,その組み合わせたる「手順」(生産活動を行うための作業順序)をコントロールすることがその中心になります。主として以下のような単位で構成されます。

  1. 手順計画(作業や資材調達の手順の明示)
  2. 負荷計画(需要変動への生産対応,人員労務調整)
  3. 日程計画(中−小日程,フォワード/バックワードスケジューリング)
  4. 進行管理・進捗管理(作業手配と実績管理,POPシステムによるJust in time 方式など)

4)原価管理(コスト管理)

 財務諸表などによってコストとして把握される経営資源の消費を管理することで,理想標準(Goal),正常標準(Standard),現実的標準,のうち適当な標準原価を選定してこれを予定原価とします。ABM (Activity Based Coasting /Management)のような手法により,消費する時間,コスト,リソースなど(コストドライバ)を作業単位(アクティビティ)に分解し,製品ごとに発生した原価を把握する手法も採用されはじめていますし,最近では企画・設計段階での原価管理,すなわち原価企画の重要性が広く認識されるようになってきています。

 水道事業の場合,施工をはじめてからのフィードバックが設計施工分離によって効き難い分,フィードフォワードによって設計時点における原価低減−工事費や維持管理費の低減−を図ることが重要で,これにかかわるコンサルタントの責任は大きいものと思います。

5)設備管理(施設維持管理)

 設備の生産性を高めるための概念で,水道では通常「維持管理」と呼ぶものです。信頼性(壊れない),保全性(壊れても治せる),経済性(安く運営できる),3つの要素から構成され,ひっくるめて「設備の管理特性」と名づけられてます。計画と保全の両方の段階を総合的に取り扱うことによってこれを高めることができ,民営化の概念の大きな支柱にもなっています。

地震対策
 保全の種類の事例として参考になります。

6)計画・管理の数理的手法

 OR (Operations Research)とは,数理的な手法を用いた合理的経営手法の研究の総称で,水道屋さんなら「土木計画学」などで学んだ内容が中心になっていると考えていいでしょう。実作業は大体わかりますが,横文字で略されるともう忘れてますからなんとも...ということで,キーワードを整理列挙しておきます。

【参考】


人的資源管理

 人的資源管理では,組織の構築やインセンティブなどについて扱います。我々技術系のコンサルにはなかなか委託してもらえない分野ですし,水道事業の場合はあまり汲々と取り組んでいるようにはみえない。第一,労働組合のないところで育ったんで...悩ましい分野です...まあ愚痴ってもしかたない,おべんきょおべんきょ。

 キーワード:労務=人の行動と組織構造,労働関係法と労働管理,人的資源計画,人的資源開発

1)人の構造と組織

組織の形態 職能別
 研究,開発,営業,生産...
事業部制
 給水,浄水,配水,料金
マトリックス
 双方を有機的に結合

2)労働関係法と労働管理

3)人的資源計画

4)人的資源開発 (Human Resource Development)

 組織の構成員の教育訓練のこと。理念や目標,対象者,方法を明らかにし,実施後のチェックが重要です。QC活動もOJTの一種として大きな効果を生み出すものとされています。

東京都水道局 研修・開発センター

 東京都水道局さんが玉川浄水場の敷地内に設置された研修センター。内部には実地研修用の管路や盤などが置いてあって,いろいろなスキルの基礎を学ぶことができます。また,研究成果なども陳列されています。見学に行ったとき(06年ごろ)に撮影。

【参考】
うーん,ホントに噛み砕いただけだなぁ...


情報管理

 キーワード:情報=通常業務における情報管理,緊急時の情報管理,ネットワーク社会における情報管理,情報ネットワーク,情報セキュリティ

 情報管理の重要な注意点は,通常時と緊急時でその対応が大きく異なることです。インターネットなど最近の情報技術に関する話は大体分かるのでかなり省略しました。

1)通常時

 意思決定レベルに応じて必要な情報が手に入ることが重要。従来型のPRはもとより,積極的な情報開示によって信頼を醸成しつつ,競争に関する情報には十分なセキュリティが必要です。

【特許庁
 特許庁に必要な情報があるでしょう。ネタ本にはもっと細かいアドレスものってましたが(^o^)

2)緊急時

 緊急時には平時と異なる情報管理が必要になります。特に水道分野では,早期発見情報収集情勢分析情報伝達広報告知の手順をたどりますが,最低でも,情報収集体制と項目情報の伝達ルートを確保しておき,短時間で情勢分析ができるだけシミュレーションによる訓練を行っておくべきでしょう。

地震対策
 緊急時対応の事例として参考になります...ってこればっかり出してもねぇ...
報道
 緊急時の報道について。PRの一種としてまとめました。

3)ネットワーク

4)情報防御

【国立情報学研究所】
 セキュリティポリシーとか。いろいろありますが豊富過ぎて迷うかも。

【参考】


安全管理

 キーワード:事故防止=リスク管理,労働安全性管理,未然防止活動・技術,危機管理,システム安全工学手法

 事故防止の観点から認識されることが多かった分野ですが,近年,危機管理の重要性を嫌が応にも認識させる事件が多発しており,組織全体を揺るがすようなケースもかなり多くなってきました。薬害エイズ,東海村,雪印,狂牛病...枚挙に暇がありません。特に日本ではこれまで軽視される傾向があったのですが,技術屋はそれではいけませんね。

1)リスク管理と危機管理

 リスク管理は危機が起こらないようにする活動,危機管理は危機に際してその拡大を防ぐ対応,という形で分けて考えられますが,明確に分離すべき内容ではないようです。

リスク管理
 水道におけるリスク管理について整理したページ。今回概念を追加。

2)労働安全衛生管理

 労働安全法,OHSAS18000シリーズなどで法的,国際的に規定される概念。労働災害による直接・間接の被害はきわめて大きく,その撲滅のために,事業者責務の明確化,計画策定,体制確立,危険防止措置,機械等の規制,資格条件などが定められています。

人災
 水道施設における事故についてとりあつかいました。

3)未然防止活動

 定期点検活動(想定どおりに運営されているか,非定常のトラブルのタネがないか,の2点)QCサークルなどの小集団活動,ヒヤリハット運動,フェールセーフ(構造安全,人間の安全行動,安全側制御),など,具体的な取組みを分かりやすく説明する呼称がついています。

 また,システムの信頼性を上げるためのエレメントとしては,Fault Avoidance (故障しない,しにくい), Fault Tolerance(バックアップがある), Fail soft(部分稼動でもある程度の機能を確保する), Fool proof(間違った操作ができない),などの概念が紹介されています。水道を含む土木技術では,一般にFault Tolerance や Fail soft が中心になっているようです。

 機械と人間が協調して働く場合,隔離,停止を基本とし,これらを立証することでインターロック(安全確認システム)を構築します。この場合,危険検出ではなく,安全確認型のシステムとすることが必要です。

4)危機管理 Crisis Management

 組織内問題,組織外問題,産業災害,自然災害,犯罪,その他の不測事態(Contingency)に対して,Safety & Security によって安全を担保することを危機管理といいます。事態が進展してから対応策を検討する時間的猶予はありませんので,平時から進行分担復旧の3つのシナリオをマニュアルとして作成しておく必要があります。

 危機管理活動には,準備(最悪の事態を準備),峻別(危険とチャンスの認識),遂行(危機の分析,対応策の選定をリーダーシップのもと遂行),環境防御(ダメージの最小化),解決復帰再発防止,の8つの基本要素があるとされています。

 危機管理マニュアルでは,対象や目標を明確化したうえで,組織別,災害別,平時/緊急別に整理します。また,更新や訓練について言及することが必要です。

 また,マニュアルには,実行担当,判断基準,入手情報,実施方法,活動項目,使用機材,の6つをかならず記載します。付帯して,マニュアルに付属のチェックリストを添付し,緊急時に必要な情報を見やすいようにします。

5)システム安全工学手法

 リスク管理のときに出てきたイベントツリー,フォールトツリーのほか,チェックリスト,FMEA,HAZOPなどの手法が提案されています。

【参考】


社会環境管理

 キーワード:環境=環境評価,環境アセスメント,ライフサイクルアセスメント,産業廃棄物管理,環境アカウンタビリティ,環境経済評価手法

 環境問題は,環境汚染,廃棄物,生態系破壊,の3つに分けることができる,とネタ本では主張しています。水道技術は環境とのかかわりを取り扱う比重が比較的大きく,イメージがつかみやすい分野ですね。

1)社会的な環境評価

環境基本計画【環境省】
 環境省所掌,環境基本計画について。
環境に関する法令集【(財)九州環境管理協会】
 「九州で最高の陣容を誇る環境専門のコンサルタント」の名に恥じないすばらしいサイトです。

2)企業(事業体)からみた環境評価

 企業財務と同じく環境対応についても説明責任を果たすべきである,という「環境アカウンタビリティ」の考え方を基本理念に,環境への対応を計画・行動を評価するシステムが提案されるようになってきました。

環境保全への取組み
 こちらに併せてまとめました。

3)産業廃棄物管理

 基本的な方針については「環境基本法」「廃棄物処理法(廃掃法)」にまとめられていますが,再生資源利用促進法,容器包装リサイクル法,家電リサイクル法,大気汚染防止法など,関連法規も多数あります。国際取引についてはバーゼル条約,ロンドン条約などで規制を網がかけられます。

 これらの考え方の根本には,「汚染者負担の原則(Polluter Pays Principle)」があり,これを実現するために,排出者に伝票が帰ってくることを特徴とするマニュフェスト制度が採用されています。

 廃棄物には一般廃棄物と産業廃棄物の区分がありますが,これらのうちでも特に被害を生ずる恐れがあるものを特別管理一般廃棄物(PCB,病原性,ばいじん),特別管理産業廃棄物として厳重に管理するよう規定されています。

 汚泥,し尿,がれきなどが産業廃棄物の8割を占めるそうですが,水道では汚泥処理処分が非常に大きなテーマでしょう。こちらをご参考ください。

汚泥処分
 汚泥の種類と処分について。法適用範囲についても言及。

 関連して,すべての化学物質について,生産,保管,消費などすべての情報を把握するための制度,いわゆるPRTRに関係した動きもこれを制度からバックアップしているといえるでしょう。

【備考】


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