水質検査装置 Machinary of Examination
作成者  BON
更新日  2003/08/17

 ここでは,水質検査に使用する機器やキットについてとりまとめました。

機器分析用装置 (俗にいう「大物」)
 吸光光度計(大物とはいえませんが) 原子吸光光度計 ICP GC−MS イオンクロマト HPLC
一般検査機器
 顕微鏡 周辺理化学機器 その他の機器 など。一般機器類。
測定キット
 ELISAキット,大腸菌測定キット,携帯用簡易測定機器など。

【備考】
 水道水質ハンドブックの情報をベースに,聞き取りなどを中心にとりまとめました。価格が記述されているのはあくまで参考です。また,ここで示す情報は5年程度前の話なので,最新の機器にはこれらの欠点をクリアしたものがあるかもしれません。


機器分析用装置

 ここでは,各種分析装置に関する情報を掲載します。

(1)吸光光度計

 吸光光度法が適用できる物質の一部はイオンクロマトグラフやICP法で検出できますが,他の方法よりも感度がよい項目(鉄,陰イオン界面活性剤,フェノール類など)の測定には主として用いられます。装置が比較的簡易かつ安価です。前処理(発色処理)が必要,かつ,一度に検出できる項目は一つであるため,検体数が多いと対応が困難となります。

概要

 光電分光光度計を用い,発色処理した試料液の吸光度を測定し目的物質の定量分析を行う方法。

原理  試料に発色剤等の試薬を加え,適切な条件で目的物質と化学反応させると発色する。呈色の強さは目的物質の濃度に比例する。呈色の余色の光(単色光)がセルの呈色液を通った場合,光が吸収される度合(吸光度)は目的物質の濃度に比例する。したがって,吸光度を測定すれば目的物質の濃度を算出できる。吸光度を測定する計器が光電分光光度計。
測定項目  鉄等の金属,アンモニア性窒素等の陽イオン,フッ素等の陰イオン,フェノール等の有機物質等各種の物質が測定できる。固体は分解,溶融の前処理を併用して,気体は吸収液に通気して測定ができる。
特徴  発色反応における試薬,反応条件,呈色液の吸収曲線(各波長における吸光度の変化)は目的物質に特有であるので,物質の確認(同定)が容易である。呈色反応が敏感であり再現性もよいので微量の物質を精度よく測定できる。r/l〜μg/lの濃度を少量の試料で分析できる。迅速分析できるものが多い。操作が簡単であり,装置も安価であるので広く利用されている。
費用  

【備考】


(2)原子吸光光度計

 元素の定量分析を行う方法で,次に挙げるICPよりも設備的には簡易です。前処理は,水銀,ひ素などを除き通常不要ですが,測定項目ごとに中空陰極ランプを取替える必要があり,多くの項目を一度に測定することはできません。

概要 原子吸光分析装置を用い,中空陰極ランプの輝線が試料の原子蒸気層通過する際の吸光度を測定し,主として金属等の定量分析を行う方法。
原理  試料溶液を原子化部(炭素炉等)に滴下し加熱して水分を蒸発させ,塩粒子とする。更に加熱して有機物を燃焼した後高温に加熱すると解離して基底状態の原子になる。この原子の蒸気層に輝線を通過させると,原子が元素特有の波長の光を吸収する。光吸収の度合い(吸光度)は原子の密度に比例する。原子の密度は試料の金属等の濃度に比例するので吸光度を測定することにより,金属等の濃度を定量できる。
測定項目  鉄等の金属,特にカドミウム等の重金属類の水質分析法として重用。水銀は,化学的に還元し,通気して測定セル中に追い出した水銀蒸気の原子吸光現象により分析(フレームレス法)。μg/lレベルの1/10〜1/100まで測定可能。炭素炉又はメタル炉によるフレームレス法は溶液の他,生物試料,固形物等を直接有姿形での分析も可能。
特徴  測定感度が非常に高く(μg/lの濃度),共存元素の影響も比較的小さく,精度もよい。測定所要時間が極めて短く,多本数の試料の分析に便利である。前処理が簡単,又は不要である。懸濁物がなければそのままで分析可能。装置はやや高価であるが,自動化も進められており,能率が高い。元素ごとにランプを変える必要があり,多元素同時分析は不可能。
費用  

【備考】


(3)誘導結合プラズマ発光分光分析計(ICP法)

 複数の検査項目を一括して短期間に,しかも高感度で行える点が非常に魅力的です。各種の金属,非金属元素の定量,定性分析が可能です。高度な装置であるため,本体及び周辺機器の設置スペースが大きく,換気や冷却水(水道水)の供給が必要であるのが欠点です。お値段も...

概要  光源に高周波誘導結合プラズマを使用した発光分光装置を用い,元素を定性定量分析する方法。
原理  霧状にした試料をドーナツ型構造の高温(約6700°C)のプラズマの中心部へ導入して,元素を加熱原子化・励起させ,励起された原子がより低いエネルギー状態に還移するとき原子が放射する元素固有の原子スペクトル線の光を分光器で分離し,各波長(元素)ごとに発光強度を測定するものである。測光部を多数個装置したマルチ型機では,予め設定された元素を(数は測光部数に同じ)同時に分析することができる。(設定外の元素は測定できない)
測定項目  高温で難解離性の耐火酸化物を生成しやすいベリリウム,ほう素,アルミニウム,バナジウムなどに対しても高感度で測定できる。試料の前処理が簡単で元素のほとんどが発光するので,金属及び非金属元素のいずれも測定できる。非金属のケイ酸,リン,硫黄,ヨウ素も分析できる。As(ヒ素),Se(セレン),アンチモンの分析には必要である。
 水銀はICP以外に専用の分析装置が高感度。また,Pb(鉛)の分析は原子吸光の方が感度が良く,ICPよりも適している。
●超音波ネブライザー付ICP(マルチタイプ)=重金属(鉄マンガン・クロム・アルミニウム・カドミウム・銅・鉄など)の一斉分析が可能。ただし高感度なので硬度が高いと不適当。
●マルチタイプICP=カルシウム・マグネシウム(硬度)の分析に向く。
特徴  燃料ガス炎,アーク等による発光法に比べ安定,感度が格段に向上。精度,感度ともに原子吸光光度法と同等あるいはそれ以上である。超音波ネブライザーを用いると,更に10倍程度感度が上がる。ダイナミックレンジが3〜5桁と大きいため,天然水や水道水を簡単な前処理操作で,比較的高濃度の主成分から低濃度の微量成分まで,同時分析できる。
費用  設備費  35,280,000 円 (イニシャル)

【備考】


(4)ガスクロマトグラフ−質量分析装置(GC−MS法)

 多くの有機化学物質を測定できます。というより,これがないと測定できない項目が多数ある,といった方が正確でしょう。

 農薬や臭気物質はパージトラップ法が,VOCやTHMなどはヘッドスペース法が適していますが,前者で代表できます。その他,監視項目に対しても,固相抽出,液相抽出を併用することにより,農薬やハロゲン化有機物を中心とした多くの水質基準項目の検査が可能となります。物質の分離に必要なカラム部の分離,交換に手間がかかるため,それぞれの方法に適応して2セット導入することが理想です。検体数があれば,の話ですが。

概要  ガスクロマトグラフ(GC)と質量分析計(Mass Spectrometer)を連結した分析装置(GC-MS)により物質を定性,定量分析する方法。
原理  GCで単離,単一成分の物質にイオン化部で電子を衝突させてイオンをつくり,直流電圧で加速しイオン分析管で磁場又は電場をかけるとイオンの飛ぶ方向が曲がる。この曲率はイオンの質量と電荷の比m/zに従うため,この関係を示すマススペクトルを得る。これは個々の物質に特有なので,データ解析して物質を同定し,イオン強度から定量する。
測定項目  微量の試料で有機物の化学構造に関するデータが豊富に得られ,多成分が混在している試料の分析が容易に短時間に高感度でできる。
●PT(パージアンドトラップ)−GC−MS=農薬,臭気物質(ジェオスミン,2メチルイソボルネオール)
●HS(ヘッドスペース)-GC-MS=VOC(トリクロロエチレンなど)
●固相や液相のカラムと組み合わせるなどの方法で,実にさまざまな物質を測定可能。ただし,コンタミの問題などから,一つの機器であまり多くのタイプの物質を測定することは好ましくない。
特徴  GCは多成分を含む試料を各成分に分離し,MSで各成分のマススペクトル等を得,同定ができる。
費用 設備費
 63,000,000 円 (イニシャル)〜2セット
 3,500,000 円 (イニシャル)〜固相抽出装置

【備考】


(5)イオンクロマトグラフ装置

 毎月検査項目の測定に活用できるため,使用頻度は比較的高いといえます。特に,ふっ素の重点監視を実施する上で大きな役割を果すことが期待できます。また,分離カラムの変更により,チウラムの測定も可能。フェノールも一応分析可能ではありますが,精度的には吸光光度法のほうが優れているとされています。

概要  イオン交換カラムを用いた高速液体クロマトグラフの一種であり,陽オン又は陰イオンの系統分析を行う。
原理  低交換容量で強塩基(又は酸)性のイオン交換樹脂を充填した分離カラムに試料を通過させると,イオンはイオン結合によりカラムに吸着する。次に溶離液を流すと,カラムに対する親和性の相違によって各イオンは分離し,それぞれ特有の移動速度でカラムから流出する。これを検出器でとらえ,クロマトグラフを画いて流出時(保持時間)から定性,ピーク面積から定量分析する。
測定項目  陰イオン,陽イオン,アンモニア性窒素,アルカリ金属,アルカリ土類金属,有機酸,陰イオン界面活性剤,フェノール類などの分析に用いられている。
 特に,無機イオンの微量分析に威力を発揮,分析の省力化に適する。(フッ素,塩化イオン,硝酸性窒素,亜硝酸性窒素など)なお,フェノールも分析可能だが,感度が4アミノーアンチピリン法の方が良いとされる。
特徴  前処理,試験操作が簡単で,多成分の一斉分析,同時定量ができ,試験廃液の発生量が少ない。短時間に分析測定ができ,自動試料注入装置及びコンピューターの利用により自動測定,省力化が図れる。他の試験方法による測定値と高い相関があり,測定精度や感度も同等以上である。
費用 設備費 13,000,000 円(イニシャル,チウラム分析カラムは含まない)

【備考】


(6)高速液体クロマトグラフ装置(HPLC法)

 法定水質基準項目の一つ,チウラム(農薬起源有機物)の公定検査法は,固相抽出−HPLC法です。この他,一部の農薬試験など,ガスクロマトグラフで測定の困難な水溶性の高分子有機物質を主に担当することができます。

概要  カラムを流れる物質(移動相)が液体の場合のクロマトグラフで,水溶性有機物を各成分ごとに分離して定性,定量分析する方法。
原理  送液ポンプで送られている移動相に注入された試料中の物質が,カラム内に充填された固定相(充填剤)に分配される力の差により,カラムを通過する間に単一成分に分離されて,カラム端に到達する。これを検出器で測定し,クロマトグラフを画き保持(到達)時間から成分を定性し,ピーク面積から定量分析を行うものである。
測定項目  多種の有機物分析に重用。ガスクロマトグラフで分析が難しい分子量の大きい有機物の分析が可能。ゲル浸透クロマトグラフ法は,分子量(分布)の測定も可能である。
費用 設備費 7,500,000 円 (イニシャル)

【備考】


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