活性炭処理 Activated Carbon Treatment
作成者  BON
更新日  2002/11/28

 活性炭処理とは,粉末,粒状の活性炭と水を接触させ,水に含まれる比較的溶けにくい溶解性物質を吸着除去する処理です。

活性炭処理
 活性炭のより微量有機物等を吸着する方法。
高度処理の概要
 高度処理の概要に関する情報。

【参考】
 活性炭処理施設実施設計,活性炭処理実験や実際に浄水場で運用しているところへ行って聞いた話などのメモがこのページのベースです。


活性炭処理 Activated Carbon Absorption

1)原理

 水に油が浮かんでいるときに紙を浮かべると油は紙に吸い取られます。これは,油が水よりも紙(有機物)との親和性が強いため,こちらに吸着するためです。おなじように,水と活性炭を接触すると,水に比較的溶けにくい物質ほど活性炭の方にくっつく傾向を示します。これが活性炭吸着の原理です。

活性炭処理槽の例

 イタリアはポレッジ浄水場の活性炭処理槽です。現地での説明では,特に水質的には必要はないが,安全装置として取り付けているとのことでしたが,廻りは一面のトウモロコシ畑でしたから,農薬や肥料原因の汚染への対応なんじゃないかなと思われました。

2)特徴

 対応範囲が広いこと,臨時使用が可能であること,活性炭は水に溶けないために水中に反応生成物を残さないこと,などが特徴です。

 臭気への対応としてはかなり古くから導入されたようで,水道水質ハンドブックによりますと,昭和29年にはすでに脱臭を目的として活性炭処理を導入した事例があるとのことです。異臭味,色度,陰イオン界面活性剤,フェノール,残留塩素,THM前駆物質など,比較的水の中の存在量が少ない割に影響を及ぼす物質を吸着(吸い取る)することができます。

 活性炭吸着には粉末活性炭法(PAC)と粒状活性炭法(GAC)があり,前者は施設を設けず一回使用で汚泥とともに回収する方法(活性炭を薬剤のように使用する),後者は活性炭接触槽を設けて比較的粒の粗いものを用いる方法(活性炭を接触剤のように使用する)です。粉末活性炭の投入方法にはさらに乾式と湿式があります。

 また,活性炭自体にもいろいろ種類があり,原料によって植物系(椰子ガラ)や石炭系などがありますが,他にも繊維状活性炭など機能性を高めたものもあるそうです。また,研究論文レベルでは重金属を選択的によく吸着する活性炭がある,などといったものも見たことがあります。なんでも,孔径に特徴のある活性炭は,特殊な処理性能を示すことがあるらしいそうです。ただ,抗菌性活性炭,なんて怪しげなのも流布されているようで(浄水器の売りこみで聞いた),要調査,といった段階です。私的には。

3)注意点

 使用済の活性炭交じりの汚泥は産業廃棄物としても厄介です。また,活性炭自体のコストが比較的高いとされています。ただし,少量の活性炭が混じった浄水汚泥は,家庭園芸用の土として加工して使うと,活性炭が家庭内のいやな臭いなどを吸着するとして人気になっているという話も伺いました。

 粉末活性炭の場合,導入当初はその投入作業が大変でした。粉末活性炭は特に水質が悪化した場合(渇水時など)に限定して使用できるメリットがあるのですが,投入設備をもたない場合,人力で袋の封を切ってどさどさと入れていたわけです。当然,粉塵で体中,鼻の穴のなかまで真っ黒になりますし,視界が遮られて池に人が落ちることもあったとか...コピーのトナー交換をカートリッジなしでやることをイメージしてみてもらえればなんとなく想像がつくのではないかと思います。現在では,投入作業はかなり自動化できるようになっており,ドライ炭,ウェット炭それぞれに自動投入装置を備えた浄水場が各地にあります。

 また,粒状活性炭では,その吸着能力の寿命が対象とする物質によってかなり異なるので,設計時の活性炭ライフの検討には注意が必要です。破過が早く始まる有機塩素化合物などを対象にする場合,活性炭の交換は頻繁にならざるを得ません。

4)オゾン処理との組合わせ

 活性炭の寿命は原水水質で全く変わるため,一般論はありませんが,大体半年から2年程度であれば御の字でしょう。しかし,オゾン処理と組み合わせて生物活性炭処理にすることで,活性炭の寿命は飛躍的に延びるそうです。

 ずっと使用できるわけではありませんが,某県K浄水場の例では,それまで2年程度だったのが4年まで延長でき,機械的な強度が十分でなくなること,若干の処理性能の低下に目をつぶれば,さらに8年程度まで処理性を有したとのことです。

 なお,生物活性炭処理を行っている場合,活性炭槽から生物処理の役割を担っている微生物や水生生物が漏出する場合がありますので,最近では活性炭処理設備は最終のろ過池の前に設けるのが普通になっています。この際,後凝集として,活性炭処理設備の後でごく微量(3-5mg/L程度)の凝集剤を添加してからろ過池にてこれを除く形になっていることが多いようです。

【備考】


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