新・座頭市 第1シリーズ
池田博明
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「日曜日にはТVを消せ」No.9 PART2
1977年5月8日 (更新2007年5月1日)
"勝新・新座頭市"特集
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新・座頭市 第1シリーズ 池田博明 TVの『新・座頭市』(第一シリーズ)は1976年の10月から翌年の4月まで放映された。 『新・座頭市』(第1シリーズ)のうち勝新演出作品は「情けの忘れ雛」「わらべ唄が聞える」「雪の別れ路」「月の夜に女が泣いた(仕込杖が怒りに燃えた)」「契り髪」「旅人の詩」の6本。 1978年に第2シリーズが、1979年に第3シリーズが放送された。 ジョナス・メカスの言葉 「われわれにそなわっている多くの感覚の一つ一つは,世界とわれわれ自身に向かって開いている窓である」 勝新演出作品にふさわしい言葉である。 (1976年10月) ★以下,「日曜日にはTVを消せ」第9号PART2から転載。 あらすじはほとんどが「週間TVガイド」と新聞から構成したもの。 公開当時の記録としておく。●印は当時私が見た作品。■は引用文。 茶色文字は2007年のDVDを見た後の追加。
新・座頭市 第1シリーズ 毎週月曜午後9時から9時55分。フジテレビ。 企画・久保寺生朗・角谷優・荒井忠 プロデューサー・西岡弘喜・真田正典・市古聖智 美術・太田誠一 技術・大角正夫 照明・風間博 音楽・村井邦彦 殺陣・楠本栄一 現像・東洋現像所 原作・子母沢寛
★第2話 「父恋い子守唄」(脚本・佐藤繁子,監督・太田昭和) 1976年10月11日 ●冒頭、急流の上にかかった細い橋を腹ばいで慎重に渡る市、暑い夏の日である。その傍らを男の子が倒れた母親のもとへ走る、市は女の臨終の言葉「この子を追分の油屋へ」を聞く。旅の途中、孤児となった市左ヱ門(羽田勉,子役)は、追分の油屋の主人の落しダネだった。茶屋で二人は百姓風情の老人(辰巳柳太郎)と知り合う。子供を誘拐しようとする男(岸田森)が登場。ある宿場へ入ると神社のお祭りだった。頭上の果物の払いのけ芸(益富信孝)に市が挑戦する、市の腕前を見た紬一家の女親分おりん(宇都宮雅代)は座頭市を泊めようとするが、子供連れを理由に市は断る。 雨が降って来た。雨宿りの小屋に腕を斬られた老人がやって来る。老人は首の弥三郎と言われた侠客だった。すっかり意気投合した市と弥三郎。弥三郎が紹介したのは紬一家だった。弥三郎をつけねらう浪人はおりんの兄(新田昌弦)だった。市はおりんから、おりんの父は金で雇われて弥三郎をねらったが、胸の病気で倒れ、弥三郎に葬ってもらったこと、自分たちは叔父の弥三郎に育てられたこと、兄は父の仇と弥三郎をねらうようになったこと等を聞く。 一方、追分の油屋の番頭は未亡人と共謀して、主人が女に産ませて後継ぎに指定した市左ヱ門を殺そうと、手先を派遣していた。手先が岸田森。 市は子供を油屋へ連れていくのではなく、老人に預けようと考える。老人は市に一緒に百姓をしようともちかける。そんなある日、子供が誘拐された。近くの神社の境内に市が向う・・・ 撮影は渡辺貢。
★第3話 「潮来の別れ花」(脚本・下飯坂菊馬,監督・井上昭) 1976年10月18日 ■座頭市は我孫子の宿の渡し場で、舟から降りるとき手を差し伸べてくれた幸福そうな若妻おえん(十朱幸代)の、温かいてのひらの感触がいつまも忘れられなかった。潮来の遊郭で市は、懐かしいおえんに再会。夫・喜三郎(津川雅彦)の危難を救うために苦界に身を沈めたのだ。だが、喜三郎は、ちょっといい男とさわやかな弁舌を武器に、女をだましては女郎に売り飛ばすとんだ小悪党。市には人間のくずのような男にとことんつくすおえんのいじらしさが哀れだった。おえんの身請けの金の算段に市はやくざ文五郎(江幡高志)の賭場に上がった。(読売新聞記事) ●不安定な船の上で駒回しを披露している男がいた。喜三郎である。見事な芸に一同感心していたが、船が揺れた拍子に飛んだ駒を市の杖先が受けた。市はさらに巧みに駒を操り、喜三郎に返す。お株を取られた形の喜三郎は面白くない。渡し場でおえんが市に手を貸す。市を追い越していく編笠の侍がいた。侍は喜三郎に声をかけ、連れの女の素性を聞く。「・・・妹です」という喜三郎、「女房です」というおえん。侍は喜三郎に斬りかかる。助けを求める声に市が反応した。仕込みにやられた侍は「たえ・・・お前を助けることができなかった」と謎の言葉を残す。この侍はたえの兄だった。 潮来の宿場。悪魔払いの太鼓が叩かれている。旅籠を探していた市は遊郭に連れ込まれた。酌婦が来るが、病気もちである。名前はたえだという。たえの身を案じ、代わりに来たおえんは市を見て驚く。一方、たえは働きが悪いと殴られて死んでしまう。元は侍の娘だったが、喜三郎にだまされて遊郭に売られたのだった。 市は賭場に上がり、もうける。女壷振り蝶々のお金のイカサマ(清めの塩の中へサイコロを仕込み取り替える)を見破り、30両を持ち帰る。帰途、因縁をつける子分たちの前で一文銭を居合い斬りすると、子分たちは震え上がる。 市を客人として迎えようという文五郎の招きで、市は賭場でもうけた30両でおえんを身請けしたいと申し出る。証文が市に渡される。市は蝶々のお金の盃には酒をうまくつぎ、文五郎には頭から酒をかけて、さっさと去る。馬鹿にされて怒る文五郎。 喜三郎はおえんに市の仕込を奪う算段を話す。しかし、証文を返されたおえんは市に感謝し、仕込みを奪うなんて裏切り行為は出来なかった。 市の仕込みを奪えなかった喜三郎はたえの墓参りに行った市の後を追う。 津川雅彦は口八丁で、市の仕込み杖を奪おうとする。市に刺されて「・・・?・・・刺さってんのか? いてえ・・・死にたくねえよ・・・抜いてくれ」、実は臆病な女たらし、上にはへつらい、下にはあたるという男を演じた。文五郎の一の子分に石橋蓮司、情婦の壷振りに絵沢萌子。撮影・森田富士郎。 『座頭市物語』の「忘れじの花」に続いて十朱幸代が男につくす女を演ずる。おえんが自由の身になったのを喜ばない喜三郎に茫然、野原にやってきたおえんは市に斬られたやくざ達を見て安堵するのだった。 津川の役どころは女衒で、『座頭市物語』の「愛始まる日」の林与一、「子守唄に散った女郎花」の江原慎二郎、「忘れじの花」の山城新吾などの系譜である。『新・座頭市』の「雪の分かれ路」の林与一も女衒である。 ★第4話 「月の出の用心棒」(脚本・池田一朗・岩元南,監督・太田昭和) 1976年10月25日 ●撮影・森田富士郎 ■ 10月27日読売新聞 「豆鉄砲」より 情感ふくらむ『新・座頭市』 この秋も、たくさんの、さまざまな新番組が登場した。その中で『新・座頭市』(フジテレビ、月曜、午後9:00)は、特に質のいい娯楽作品といっていいだろう。座頭市のケタはずれな強さや、いのちを張って生きてきた揚げ句、身にそなわったユーモアが、毎回、意表をついた工夫で生き生きと描かれていて、楽しい。前シリーズに比べ、情感ある映像がずっと増えたのもいい。 25日の「月の出の用心棒」は、ゲストに石原裕次郎を迎えていた。 石原扮する武士は、主命で、妹と駆け落ちした同輩を討つべく旅に出た男である。途中、市と親しくなるが、やがて再会した妹は女郎に身を落していた。その身請けの金を作るために、男はヤクザの用心棒になり、市と対決する仕儀となる・・・。 まず、その男が失明しかけているという設定がミソである。“座頭市”の最大の特色である“盲目”ということを、男と市のふれあいのモメントにし、クライマックスに目の見えぬ二人の男の勝負にもっていったところに、工夫がうかがわれた。 石原は剣の達人でありながら失明しつつある男の悲哀と、不幸な妹への切ない情愛を好演。勝も、堂に入った座頭市ぶりで対抗。見ごたえのあるドラマになっていた。(お) ★第5話 「牢破りいそぎ旅」(脚本・中村努・岩元南,監督・太田昭和) 1976年11月1日 ●太田昭和連投。撮影・牧浦地志。 市の目のアップ、唇のアップ。第1回の関八州の役人を斬ったショットがモンタージュされる。 “御用提灯に追われる座頭市は運悪く捕えられてしまう。そのとき親切にしてくれた若者・仙太郎(織田あきら)の情けに打たれた市は牢を破る。そして、若者の添いとげられぬ恋のため、仕込みをふるう。仙太郎の恋人・大店の娘おみつ(田坂都)。目明かし(深江章喜)、指物師の職人(下元勉)、佐山俊二。 ★第6話 「師の影に泣いた」(脚本・犬塚稔・岩元南,監督・南野梅雄) 1976年11月8日 ●母の墓参久しぶりで帰郷した座頭市は、かつての剣の師匠の浪人伴野弥十郎(丹波哲郎)に再会。世間なみの幸福をあきらめている足の悪い弥十郎の妹弥生(柴田美保子)は、少女の頃から好きだった市に、結婚して欲しいと哀願。情にほだされ、市も堅気になる決心をしたが。だが、弥生の幸福のみを願う弥十郎は猛反対。誤解が誤解を生み、やがて市と弥十郎の宿命の対決が待っていた。 今回は、誤解から市は、大恩人のかつての剣の師と宿命の対決。いい腕を持ちながら、時流に乗る才覚に欠け、一道場主として野にくすぶる剣客商売の浪人に扮して丹波哲郎がゲスト出演。 助監督だった南野梅雄が初の監督を担当し、好調。撮影・森田富士郎。 【2004年の追記:この枠組みは映画第3作『新・座頭市物語』(1963年、田中徳三監督)と同じである。原脚本が犬塚稔の作品。映画版の弥十郎は河津清三郎で、弥生は坪内ミキ子だった】
★第8話 「雨の女郎花」(脚本・猪又憲吾,監督・森一生) 1976年11月22日 市は中山道の宿場で飯盛り女お紋(浅茅陽子)に出会う。彼女は妻として迎えに来ると約束した旅の武士・仲沢(峰竜太)を待ち続けていた。その仲沢が新妻・友江(香野百合子)を連れて宿場に現われた。可愛さあまって憎さ百倍、お紋は仲沢の持つ密書を盗み取った。ほか、長谷川明男、横森久、沼田曜一。未見。 ●DVDで初めて見ました。船着場で降りた市にぶつかってきた女がいた。身投げクセのあるおせいを必死でとめるお紋だった。旅籠・旭屋に投宿した市はお紋と再会することになる。お紋は旅の男との約束なんか信じられないものだと断言する。 雨がひどく、川止めになる。お紋に惚れている文次(長谷川明男)が来るが乱暴者の文次をお紋は嫌っている。 上田藩の侍・仲沢と妻が別の宿に投宿していた。仲沢は昔、お紋と言い交わした仲だった。お紋自身が待っていて裏切られた女だったのだ。雨があがると、上田藩の侍たちが仲沢を追って来ていた。追われた仲沢はお紋に密書を預ける(「お紋が盗む」というあら筋は誤りでした)。密書は主君への反逆を記した連判状だった。事情を聞いた市はお紋を守る。捕われた仲沢は拷問に合うが密書のありかを言わない。文次と親分(沼田曜一)は密書はお紋のところと見当を付けて奪いに行くが市に邪魔されて取れない。仲沢と女房を子安地蔵で処刑するという伝達をしてお紋を導き出した。市も助っ人に駆けつける。撮影は渡辺貢。 ■夕刊フジ 1976年11月5日 「浅茅陽子の“貫禄”に天下の勝新“ヘバった” 態度も演技も大女優 ロケでは森監督に“注文” 勝、森監督ベタほめ 」 「さすがヘバちゃん、いやー大女優だねえ」 二十二日放送の『新・座頭市』(フジ・関西系)“待っていた人”編にゲスト主役として浅茅陽子を迎えた勝プロの面々、その“スケールの大きさ”にいささか魂消たといった面持ちだ。 『雲のじゅうたん』で人気者になった浅茅。知名度は一躍大スター並みになったが、たかだかデビューして二年か三年の新人女優。「まあ、おらが親分の胸さ借りてせいぜい修業するがいい」ぐらいに思っていたところが、天下の勝新太郎に臆するどころか、初日から思ったことをズバズバ。態度もデカけりゃ、演技ぶりも堂々として大女優の貫禄なのだ。 三日、京都・亀岡の千代川河原で行われたロケーション。 森一生監督が、市と悪玉のチャンバラが始まろうとするところへ駆けつけた“宿場女郎”の浅茅のアップを撮っていた。 一回のリハーサルのあとすぐの本番。裏切られた腹いせに密書を奪い、困らせてやろうとしたものの、そのために命の危ないかつての恋人の身を案じる女の必死の思い。情感をただよわせてなかなかいい表情で、森監督は即座にOKを出した。 ところが、ヘバちゃん、「あ、肩で息しなかったわ。走ってきたんだからやっぱり不自然よね。すみません、もういっぺんやらせて」。 こんなぐあいに浅茅の意見で、とり直しや、設定すら変わることもしばしば。 俳優もまじえて数回のディスカッション、最初の台本は、たたき台同然で、納得のいくまで話し合うのが勝プロ方式。だから、新人の浅茅が大ベテランの森監督に注文をつけても別にかまわないのだが、それでも、ベテランを相手に口をはさむには相当の自信と度胸が必要だ。 時代劇出演は、昨年、『遠山の金さん』にゲストで出たことが一度あるだけだが、「別にどうってことないわ」 かつて真木洋子が、『藍より青く』のあと初めて時代劇に出たときなど、分らないことが多いせいか、どこかオドオドした感じがあったものだが、撮影所での浅茅は、ぐっと胸を張って、あたりを払う、のおもむきすらある。 こんな調子だから、ふつうなら浅茅クンか陽子ちゃん、のところが、森監督まで「浅茅サン」。 さすがの勝新も「二年ぐらいで、これだけ、あつかましく個性が出せる人も珍しいねえ」と苦笑いだが、「役者としてもなかなかいいものをもってるから、多少のわがままはしょうがねえってとこかな」と女優としての力も評価する。 この辺は森監督も同じで、「若いのに自分のパターンをちゃんと持ってるし、それも体験に裏打ちされたって感じの説得力があるんで、正直、驚いてるんです。性根もすわっているし、最近では貴重な女優さん。ヘンなかたちで使わないで大事にしていきたいですね」とベタぼめだ。 ■森一生監督いわく、“いい知恵は大事にするんですよ。 テレビで『座頭市』シリーズをやったときでしたか、浅茅陽子君がセリフつくったときもそうですね。芝居をいっぺんやってみたら、自分でセリフつくって、酔っ払いの芝居をするんですよね。これは面白かったです。こういうときにはどうなるかと自分で考えてきて、「こういう酔っ払いの女になると思う」ちゅうから、「とてもいいよ」言うて褒めた。芝居もうまかったですけどね。あんときは、セリフも三分の一ぐらい減らして、ほとんど浅茅君の書いてきたとおりにやったはずですわ。・・・ 浅茅陽子さんちゅうのが面白い人でしたね。ざっくばらんで、全部相談にやってきた。・・・テレビの『座頭市』で飲んだくれの女をやったとき、「このセリフは女の自分から見て、すっきりこない」言うて、いろいろ話し合って、セリフを全部書き直して、やらしてみて、また話をして、ぼくが「しかし、ここはちょっと違うぞ。こんな硬いセリフはここで言えないはずだ」ちゅうと、納得する。あのときは気持よかったですね。女優さんと初めてああいうディスカッションをやりましたよ”(『森一生 映画旅』よりp.252及びp.361) ★第9話 「見ない涙に虹を見た」(脚本・中村努,監督・田中徳三) 1976年11月29日 ●紅葉の街道を急ぐ夫婦二人。その後を侍が追いかけて来る。逃げる二人を侍たちは追い越していく。ほっとする二人。ススキの陰の向こうに夕日が沈む。市は道中、幼馴染の為吉(伊丹十三)、おその(音無美紀子)夫婦と再会する。 三人は旧交を温めるが、為吉の様子がおかしい。聞くと、博打に手を出し多額の借金を抱えたまま夜逃げしてきたという。市はひと肌ぬごうと決心する。おそのは身重。 為吉はすっかりひねくれていて、市になれなれしく呼ばれるのも気に入らない。「親になるのは犬猫でもできる。だが、親となるのは違う。子供は親を見て育つんだから」と市に説教されるのも気に入らない。しかし、最後には市の心情に打たれ、ほんとうのことを言える人間になる。『座頭市物語』第2話「子守唄に散った女郎花」の江原慎二郎のように。撮影・森田富士郎。 借金の取り立てで為吉を追うやくざは土地の親分に加勢を頼む。座頭市がそばにいると聞いて、おそのを人質にして市を斬ろうとする・・・。助監督・南野梅雄。 ★第10話 「娘が泣く木枯らし街道」(脚本・新藤兼人,監督・太田昭和) 1976年12月6日 ●凶作で困って八造(金内喜久夫)が娘のお光(今出川西紀)を売りにきた。角蔵(織本順吉)は八造を賭場へ誘い、渡した金を巻き上げる。八造は自殺。お光に話を聞いた市は角蔵の賭場へ乗り込んだ。十手持ちの角蔵は手下を使って逆に市を捕えようとする。女中ハナ(沢田雅美)、おしず(川口敦子)。撮影・牧浦地志。 ★第11話 「風に別れた二つ道」(脚本・東条正年,監督・工藤栄一) 1976年12月13日 ●工藤栄一登場! しかし、ちょっと不発でギクシャクした出来。桐生へ向う市は渡世人志望の仁吉(湯原昌幸)と道連れになる。百姓がいやになって飛び出してきたのだ。この湯原が最後までもうひとつ生きない。 市が訪ねた老元締めの吉蔵(西村晃)は六蔵(辻萬長)一家に狙われていた。市と別れた仁吉は六蔵の身内となる。 おせい(宗方奈美)、政吉(岡部健)、おはな(新地和子)。 ★第12話 「金が身を食う地獄坂」(脚本・佐藤繁子・八亀文平,監督・田中徳三) 1976年12月20日 ●緒形拳が異形のめくら役。ごうつくばりの金貸しを好演。木枯らしの吹くなか、貸した金のとりたてにきびしい。女房をいびり、子供は猫なで声で甘やかす。市に「ゴンちゃん」と呼ばれるのに内心腹を立てている。重蔵(高木均)をアゴで使えると思い込み、市を襲わせたりする。検校になるために金をせっせと貯めているのだ。自分の子供をおとりにして、市を始末しようとするが、先に裏切った重蔵に斬られてしまう。 権之助の妻おのぶ(町田祥子)、武次(中井啓輔)。 ■週間TVガイド 1976年12月24日号 勝新太郎が緒形拳に盲目の心得を!? 緒形拳が盲目の金貸し役でゲスト出演。悪玉との設定なので目のまわりを黒くし、頭は五分刈り。それらしく見せようと工夫を凝らすが、盲目の役は初めてとあってぎこちない。見かねた勝新が緒形を呼び二言、三言アドバイス。その上、模範演技まで披露した。これにはさすがの緒形も「盲目の役なら、勝さんの右に出る人はいません」と、すっかり感激。 市はある宿場で、バクチ仲間だった権之助(緒形)と再会した。権之助はあくどい金貸し業で羽振りがいい。ある日、市は見知らぬ剣客に襲われた。権之助と間違われたのだ。 ▼上記の記述は誤り。市を襲わせたのは権之助である。権之助は子供の頃は片目が見えたという設定になっている。しかし、最初の方で道でつまづいて転んだりするので、今は両眼とも見えなくなっていることが示唆される。それなのに、自宅に投げ込まれた手紙を読むものだから、市に謀略がバレてしまうのだ。撮影・森田富士郎。
★第13話 「母の涙に市が走った」(脚本・柴英三郎,監督・太田昭和) 1976年12月27日 スキー教室へ参加のため未見。 市は武家風の老女志乃(北林谷栄)と道づれになった。志乃は賞金稼ぎに身を落した息子の元八郎(松平健)を捜していた。ある宿場で志乃は息子にめぐり合う。が、賞金稼ぎに夢中の元八郎は駆け去っていく。市は志乃に頼まれ、後を追う。又七(中条きよし)、お京(森川千恵子)、孫一(柳原久仁夫)。 ●DVDで初めて見ました。 宿場に賞金稼ぎが集まってきた。お尋ね者が逃げ込んだらしい。人相書きが貼られる。その人相書きを破り取る元八郎。剥ぎ取りに因縁をつけた賞金稼ぎを斬って賞金を独り占めするのが元八郎のやりかただった。 宿場の飯盛り女・お京(森川千恵子)は元八郎の許を訪れ、身を投げ出してある依頼をする。実はお京の兄・又七が指名手配されている。その又七を賞金稼ぎから守って欲しいというのだった。 荒くれ男たちが又七狩りに出かけると途中に元八郎がいた。お京は又七に逃げるように諭す。又七は自分は無実で、強盗現場に盗まれた手ぬぐいを残されたのだという。そのとき煙草入れも盗まれた。その煙草入れは賞金稼ぎのある男達が持っていた。真犯人は彼らだった。 しかし、元八郎は又七の賞金首を取りに来た。彼の前に市がたちはだかる。母親も来た。さて、市はどうするのか? 撮影は牧浦地志。
★第16話 「駆け込み道中ふたり旅」(脚本・沖守彦・岩元南,監督・黒田義之) 1977年1月24日 ●足抜け女郎お香が、加賀まり子。お香は市の寝ている荒れ寺に身を隠す。追っ手が来る。傑作なセリフ、「いたな、このアマ!・・・なんだアンマじゃねえか」(仙次を演ずる蟹江敬三)。アップを多用し、バラエティに富んだカメラ・アングルを見せる。撮影・牧浦地志。 美濃吉(菅貫太郎)、源八(小野川公三郎)、他に浜村純。 TV《座頭市物語》で見事な演出を見せた黒田義之監督が2週連続で登板。 女郎が足抜け。博打場の親分・美濃(菅貫太郎)のもとへ連絡が行き、仙次(蟹江)が探す。お香(加賀まり子)は古寺に身を隠し、市はかくまう。命がけで逃げてきた女は派手な着物じゃすぐ見つかってしまうと言う。着物を取り替えて逃げるが、途中で追手に見つかる。市は追手の髷を切り落とす。仙次はお香が18歳のころ、博打で景気のいいときに結婚した亭主だった。博打で負けがこんで女房を女郎に売り飛ばす。5両の年期があけても親分美濃のもとで働かされる。 親分はもと役者、市の懐を狙って顔を切られた過去を持っていた。 足抜けを手伝った源八はお香を「俺をだましたな」と批難する。市が救う。親分は源八を斬る。 お香は縁切り寺へ駆け込むと言う。廃屋で火をたく二人。朝、市が川へ水を汲みに行った隙に、お香を人質に脅す美濃。しかし、仕込を捨てさせられた市は相手の刀を奪って斬る。渡し場で待ち伏せする美濃。 市は金で船頭(浜村純)を雇い、お香を川向こうへ送る。やくざが迫ってきていた。 ★第17話 「母子道に灯がともる」(脚本・下飯坂菊馬,監督・黒田義之) 1977年1月31日 ●都合で中座したため途中までしか見ていない。おたきの付き人卯平(花沢徳衛)、長五郎(山本麟一)他、根岸一正。撮影・渡辺貢。 ■週間TVガイド 1977年2月4日号より 大田原へ来た市は居合斬りを目撃した鮒吉少年(新井つねひろ)の家に泊まった。母のおたき(中村玉緒)は元親分の女房だった。が、親分の死後は荒牛一家に痛めつけられていた。おたきの宿も客を寄り付かせないようにされていたのだ。我慢をするおたきに鮒吉は「なぜ仇討ちをしちゃいけないんだ?」と反抗する。長五郎は計略で鮒吉に子分を刺させ、おたきにカタをつけろと迫る。宿を出て去っていく市を追いかけ、卯吉は助けを求める。長五郎の許へ連れていかれたおたきはスキを見て隠し持ったドスで長五郎を刺した。市も駆けつけて加勢に入る。しかし、おたきは長五郎の子分に斬られていた。 勝新太郎夫人の中村玉緒がゲスト出演。テレビでの共演は三年ぶり、三回目。スタッフはオーナー夫人というより“親分のかみさん”という意識で、スタジオには笑い声が絶えず、なごやかなムード。もちろん二人のからみは息もぴったりで、雑炊を食べているシーンでは勝が台本にないセリフをポンポン。が、玉緒は少しもあわてず受け答え、監督も「さすが夫婦の芝居です」。 ■読売新聞 おしどり夫婦 久しぶり出演 「坊や、一度人を斬ると、まともにお天道様の下を歩けないのだよ。肩で風きってかっこよく見えるかもしれないが、やくざなんて世間のきらわれ者、小汚い虫ケラ同然だ・・・」 任侠道の裏面のみにくさと、渡世人の女房の苦労をいやというほど知りつくすやくざの未亡人おたきは、幼い息子の鮒吉をやくざにだけはしたくなかった。市は、少年のやくざ熱をじゅんじゅんと諭す。 おたきには中村玉緒。『座頭市物語』の第二回で、市をだますあばずれの宿場女郎に扮して以来、久々のおしどり出演だ。 ★第18話 「酔いどれ川」(脚本・岩元南・中村努,監督・太田昭和) 1977年2月7日 ●野川由美子出演。野川は宿場の居酒屋の女将。島送りになった恋人・弥之助(村井国夫)を待っている。顔役の伝兵衛(平田昭彦)がやってきては、酔いどれた女将お竜を抱いてゆく。それを遺憾に思いながらも、どうしようもない居酒屋の使用人では無かった、名前ばかりの夫・茂助(左右田一平)。彼はお竜と添いたいのだが、あまりに気が弱いのだ。弥之助が戻ってきて・・・・。恐妻家の伝兵衛の女房おせん(絵沢萌子)ほか、綾川香。撮影者は牧浦地志。 川を手製の竹馬で渡った市は河辺でお竜に出会う。お竜は酒浸りだ。人生をすっかり投げているのだ。市は居酒屋でからんできたやくざの子分三人を玄関先で斬った。伝兵衛は子分が斬られているので驚く。「いったい、誰が?」と茂助に尋ねるが、市になにかのときには助てもらおうと算段している茂助は「何も見ていない」と証言する。しかし、・・・・ 伝兵衛は茂助に「市が斬った」と証言すれば、お竜との間に子供を作らせてやると約束し、市を捕縛する。牢屋に入った市は座頭市であることが知られて、牢屋仲間の手引きで牢を抜け出る。その頃、島抜けの弥之助も帰って来た。 ★第19話 「越後から来た娘」(脚本・下飯坂菊馬・久貴千賀子,監督・黒田義之) 1977年2月14日 ●純情な若い恋人どうし、おさよ(ジュディ・オング)と吾一(火野正平)の二人を、悪代官・柳田(岸田森)は、やくざ伝馬の権六(中村祥治)と結託して食いものにしようとする。二足わらじの悪貸し元である。お上の印入りの小判を盗んでその罪を二人になすりつけようとする。『河内山宗俊』コンビの出演だが、パっとせず。撮影・森田富士郎。 一旗上げてくるから三年待ってろと村を出た一を尋ねて越後から来たおさよ。 春木屋を殺して千両を盗んだ盗賊は代官に五百両を進呈するものの、沼田藩の刻印入りの小判は使えない。関八州は事情を知るものは始末しろと支持する。盗賊仲間を殺した後は誰かに小判を使わせて下手人を仕立てようとする。賭場で十両をもうけた市は心中の相談をしていた貧しい恋人二人に小判を渡す。ところが、簪を買い、酒屋へかたに入れた馬を請け出そうとすると、盗賊として捕縛され、拷問される。事情を知った市は牢屋から吾一を救い、権六一家を斬り、関八州のもとへ連れていかれたおさよを助ける。関八州からもらった十両を置いて市は去る。 ★第20話 「いのち駒」(脚本・村尾昭,監督・南野梅雄、助監督・小林正雄) 1977年2月21日 ●かつて結婚を誓ったおゆき(松原智恵子)を、同門の悪辣な賭け将棋士・源三郎(石橋蓮司)に奪われた棋士・宗達(内藤国雄)が六年後に宿命の対決。 上州名人・籐兵衛(須賀不二男)は賭け将棋で源三郎に負けて首を吊った。次の一手を書いておく「封じ手」を“将棋を知らない”おゆきに預けたのだが、実はおゆきは父を棋士に持ち、源三郎を夫とする女。手が源三郎に筒抜けになるのだった。次の勝負で、天野の竜と言われていた宗達が三百両の勝負に来る。 源三郎はおゆきに惚れているが、罪悪感もあってか、宗達に嫉妬し、おゆきにもつらく当る。三番勝負。宗達は、まず一局勝つ。源三郎はおゆきに宗達に負けてくれと頼んでみてくれと強制する。おゆきの頼みを宗達は承諾する。宗達を雇った尾張屋に高野真二。 初めは形勢不利だった宗達は途中から盛り返す。日が暮れて勝負は翌日となる。源三郎はおゆきを信用できないと殴る。おゆきに預けられた封じ手を源三郎は見る。源三郎に多額の金を賭けて儲けてきた五郎蔵(小松方正)は刺客を放つ。重傷の宗達の手となって市が駒をうつ。勝ってしまった重傷の宗達は運び出される。悪辣な代貸に松山照夫。 おゆきを寄こすか、賭けで損した三百両を返すかと五郎蔵は源三郎に迫る。市の怒りが炸裂する。 内藤国雄がひょうひょうとしていた。撮影・牧浦地志。
★第22話 「浪人子守唄」(脚本・東条正年,監督・太田昭和) 1977年3月7日 ●財津一郎のよさをよくとらえたとは言い難い。 へんな武士・難波儀衛門(財津)は幼な子を連れて旅をしていた。婿養子の彼は家付きの娘しず(美川玲子)の横暴に耐えかねて家出したのだ。妻や姑は自分をひととも思わず、種馬のように扱ったのである。子を取り戻す交渉に来た使用人(潮健児)の置いていった着物を右に置き、左に自分が座り、真中に子供を置いて、どちらを取るか選ばせるシーンがある。子供は着物の方へ行きかけ、結局父の方へはいずってくる。幼馴染みの貧乏人・定松(江木俊夫)とおちょう(栗田ひろみ)が、この子宝騒動に際して財津の味方をする結果となる。旅を続けようと宿を出た儀衛門は刺客に殺される。撮影・牧浦地志。 ★第23話 「幽霊が市を招いた」(脚本・中村努,監督・黒木和雄) 1977年3月14日 ●TVガイドにはタイトル「さらば幽霊」とあるが、たしかこんなタイトルだったと思う。シリーズ中の傑作。黒木和雄が情感こまやかで鮮烈な演出を見せる。怪奇篇。撮影は渡辺貢。助監督・南野梅雄。原作は子母沢寛『頼まれ多久蔵』。 ある舟で、幽霊の噂を市は聞く。宿へ通された市は部屋に誰かいるのを感ずる。だが、誰もいないのだ。市は数日前のことを回想し始めていた。伊三蔵(いさぞう。原田芳雄)というめっぽう喧嘩早い男のことを。 伊三蔵は女道中師・千両のお富(江波杏子)を見て驚いた。その訳が次第にわかってくる。伊三蔵の背中の彫りものは恋人おしげの像であるが、それとお富はそっくりなのだ。おしげはやくざの八丁徳に強姦されて自殺、怒った伊三蔵は八丁徳をたたっ斬って、行方定めぬ旅に出たのだった。 市は伊三蔵とおしげのことを、おしげの父で彫り師の忠七(信欣三)から聞く。市は伊三蔵からは背中の彫り物を見せてもらっただけだったが、市にはそれが伊三蔵にとってどれだけ大切なものかが分ったし、伊三蔵も市にだけ心を開いて見せてくれたのだった。市には実際には見えないのだが。伊三蔵はこの故郷の宿場へ戻ってくるはずだったのだが。 伊三蔵は無念にも八丁徳の身内に斬られたのに違いない。彼は背中を斬られた。背中のおしげの像が幽霊となって市を呼んでいるのだ。市は霊感をたどって、とある河原へやって来る。おしげの像が現われて消えた。消えたところに伊三蔵の死体があった。背中を斬られていた。市は仕込みをふるう為に宿場へ足を向ける。
★第24話 「大利根の春はゆく」(脚本・新藤兼人,監督・森一生) 1977年3月21日 ●博打うち・かわうその源太(なべおさみ)は市にすってんてんに負け、最後は女房ふじ(丘みつ子)を賭け、また負けた。 源太に愛想をつかすふじは、勝手に市のあとについてきた。市は母の墓参に久しぶりで故郷へ帰る途中であった。 寺は無住職で荒れ寺になっていた。本堂には旧知の浪人・平川伝八郎(夏八木勲)がいた。 撮影・牧浦地志。 ★第25話 「帰って来た渡世人」(脚本・東条正年,監督・南野梅雄、助監督・中務忠) 1977年3月28日 ●市は昔、世話になった松五郎(宮口精二)のところにわらじをぬぐ。今はすっかりさびれてしまっている。実の息子・浅次郎(石田信之)が、凶状もち佐太郎(中山仁)をかくまっていないかと詮議に来る。実の親に対するとは「思えない厳しさだ。また、彼が捕らえようとしている佐太郎は実兄である。何故この厳しさか。浅次郎は自分が養子に出されたのを怨んでいるのであった。親から見捨てられたと思ったのである。親にしてみれば学問好きな子供だったので、それを伸ばすには最良と考えてとった手段だったのだが。 佐太郎が帰ってきた。藤吉(草野大悟)の店の屋根裏に隠れる。兄は凶状もち、弟は役人という宿命のいたずら。松五郎は自分の心を記した後で自害する。父の気持を知った浅次郎はようやく理解する。 撮影・渡辺貢。おふみ(井原千寿子)、辰造(玉川伊佐緒)。 ★第26話 「鴉カァーと泣いて市が来た」(脚本・星川清司・岩元南,監督・太田昭和) 1977年4月4日 ●傑作であった。これは喜劇。 冒頭は強風のなか、マント姿の市が後姿で登場。市がやくざにからまれると思いきや、ちっぽけな村で、ふた組のやくざがいがみ合っているのだ。これは黒澤明の『用心棒』のパロディであろう。 どちらも本当の喧嘩をする元気はない。が、飯屋のおかみ・おぬい(浜木綿子)を争っていた。おかみはやくざと関わりがあるというので、村人からは冷たい目で見られているが、彼女自身はこのふたつのやくざ、てっとり早く喧嘩して共倒れになってくれればいいと思っている。したがって、口八丁手八丁、ライバル意識をあおりたて喧嘩のお膳立て。赤牛(高木均)は助っ人に座頭市を頼み、源氏屋(深江章喜)は助っ人に若林豪を頼む。あわやというときに関八州の役人(藤村有弘)が登場。二組のやくざの喧嘩を調停してしまい、喧嘩はフイになる。 おぬいは八州を色仕掛けで誘い、もみ療治をするついでに市が急所をねじ上げる。痛みに耐えかねて八州は逃げ出す。 おぬいが八州の前で赤牛を「お前さん」と呼んだことに腹を立てて、源氏屋はおぬいの店を壊し、おぬいを殴る。市と若林はお互い自分が付いたのと反対側の親分へ自分を売り込みに行くが、高木均はうちには市がいる、手前なんか不用と若林を袖にする。それだけケチなのだ。夜の場面の撮影で画面がつぶれている箇所があるのが気になった。一方、深江は同様に市を袖にする。 朝になり、河原でめでたく喧嘩が行われる。そこへ若林がまずふらりと現われる。喧嘩といっても、最初から自分たちにやる気はなく、高木は市を、深江は若林を当てにしていたのだ。高木は現われた若林に是非と助っ人を頼むが、若林「お前、ほんとにバカだな」と斬り捨ててしまう。深江が大喜びするところに、市が現われ、深江は市も血祭りにと襲い掛かって斬られてしまう。さて、市と若林の決闘なるか、と思いきや、ふたりはニヤニヤ笑って別れる。本当に強いヤツは喧嘩しないのだ! おかみが村人達に祝い酒をふるまう。はじめは遠巻きにしていた村人たち、次第に店の中へ。 浜木綿子の口八丁の演技は『座頭市物語』の「二人座頭市」同様、見事である。撮影・藤井秀男。
★第28話 「上州わらべ歌」(脚本・東条正年,監督・太田昭和) 1977年4月18日 ●一種の託児所をやっている娘に高橋洋子。舟の渡しの些細なあがりで子供たちの食費をまかなっている。 土地のやくざがいやがらせをする。市がこの渡し場へ腰を落ち着けてからは、いやがらせはますますひどく、 村人を脅して娘に食物を分けるな、市をなぶれ等。子供たちが市をなぐる村人たちに泥のつぶてをぶつけるシーンがある。やくざのひとりに蟹江敬三。 撮影・藤井秀男。 ★第29話 「終りなき旅路」(脚本・新藤兼人・中村努,監督・森一生) 1977年4月25日 ●どしゃぶりである。市が泊まった一文宿に妙な男が居た。一人はもと医師という坊主(藤岡琢也)。 もう一人は妻子に乞食をさせて自分は思いつめた表情をしている侍(竹脇無我)。 土地の親分(小池朝雄)が急に苦しみ出したというので藤岡と市が駆けつける。市がツボを押さえて吐かせる。食あたりだった。 市は藤岡から侍の話を聞く。藤岡が医師をしていたころ、あの妻(原田英子)が来た、主人が病気だという。 行ってみるとあまりものを食わなかったので発熱した。食わせてやると治ったが治療代が無い。そこで、侍が、妻の操で払うと言った。藤岡は怒って追い出したが、どうしてもこの二人のことが気になって「仕方が無い。それで医業をたたんでとにかく金を払えとつけ回しているのだという。侍は時期がくれば払うと言うだけだ。 親分の名を聞いた侍は驚き、是非そこへ案内せよという。あだ討ちだったのだ。小池は離れ家でうまそうに芋ガユを食っていた。まあ、これを食ってからにしてくれと、はやる侍をなだめて、小池が話したところによると、侍の父親と将棋を指していたのだが、「待て」「待たぬ」で喧嘩になり、斬ってしまったのだという。 それで彼は逃げたわけなのだが、斬られた方は取りつぶし。ようやく仇を討ってくれば復職という主君の命を受けて、あだ討ちの旅に出たのが、侍とその妻子だった。 準備をするからと別室に下がった小池。時間がかかり過ぎると、唐紙を開けると、彼はいない。逃げられた・・・。 数年の苦労が・・・。しかし侍はあきらめない。藤岡は「なにかと思えば、たかが将棋のことから始まったこと。つまらないことに命を賭け、妻子を犠牲にして、あんたはクズだよ」と言い、故郷へ戻る。侍は「お前らには分らぬ」というだけ。 一方、侍が自分たちの親分を仇として狙っていることを知った組のものたち。返り討ちにと準備をしているところへ、侍がかくまっているだろうと飛び込んでくる。斬りあいの末に深手を負い、一文宿で絶命。 この話を聞いた小池は深く残念がり。一文宿へ来て、わざと妻に戦いを挑む。斬りかかる小池の気持を察した市が仕込みを抜き、妻がとどめを刺す。「これでいいんだ。市っつあん」と小池は倒れる。 妻は故郷へは戻らないという。 市には親分を失った組員の刃がふりかかる。払わねばならない。
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座頭市物語 日曜日にはTVを消せ No.9 PART1 |
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