座頭市物語   新・座頭市   黒田義之の演出
 
             池田博明
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「日曜日にはТVを消せ」No.9 PART7
 2007年11月20日
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  勝新演出に負けず劣らず、凝った照明と巧みなカメラワークを見せる黒田義之演出はピカ一。



       座頭市物語   フジテレビ開局20周年記念番組


 毎週木曜午後8時から8時55分。フジテレビ。
 スポンサーは大正製薬・ニッカウィスキー・黄桜酒造・カシオ計算機・花王石鹸
 企画・久保寺生朗・角谷優    プロデューサー・西岡弘喜 真田正典
 美術・太田誠一 技術・大角正夫 照明・風間博 音楽・富田勲 
 現像・東洋現像所  原作・子母沢寛

2007年1月、とうとうTV版『座頭市物語』がDVD-BOXセットで発売された。
 今後、TV版の全作品100話がDVD-BOXで発売されるという。なんと素晴らしい企画。 さっそく入手しました。これで見逃した作品も見られますが、なんと言っても勝新太郎監督作品が存分に見られるのが最大の喜びです。 特典は『座頭市物語』と『新・座頭市』の予告編でした。
 以下、太い枠の写真はそのDVD付録のパンフレットからの引用で、再見したときの付記は茶色の文字で表します。


★第2話 「子守唄に散った女郎花(おみなえし)」(脚本・直居欽也、監督・黒田義之) 1974年10月10日

第2話  ●上州草津の宿で市は、弥平(南部彰三)という老人の死に際に接し、太郎吉少年(坂上忍)を高崎まで送り届けてくれと頼まれた。実は太郎吉は高崎一の絹問屋「万屋」の落としダネ。だが、宿場で知った女郎おしの(中村玉緒)と、やくざの伊之助(江原慎二郎)の二人づれは、太郎吉が金づるになると知り、市を出し抜こうとする。一方、宿場の鬼辰(小松方正)一家も太郎吉の身の上を知り、行方を追う。
  政吉(今井健二)ほか、小鹿番、中村是好。

 ■川本三郎「JAZZ」1974年12月号より
 「おーい、島が見えたゾー」と、マストによじのぼって叫んだ帆船の乗組員も、 シャーウッドの森のロビンフッドも、後楽園球場の照明灯によじのぼる野球ファンも、 ターザンも、みんな”木のぼり男爵”の仲間なのかもしれないのだ。 目あきばかりではない、目くらの勝新・座頭市も、このあいだテレビを見ていたら、 子供に柿を取ってやるために村はずれの大きな柿の木によじのぼっていて 私はすっかりうれしくなってしまった。柿の木というのは枝が折れやすく、 木のぼりとしてはもっとも難しい部類に入るのに。

 ■川本三郎「週間TVガイド」1974年11月1日号 不正よりこわい正義
 正義をひろまわすヤツほど鼻持ちならないヤツはいない。 大きな悪の前では沈黙し,小さな悪にだけやたらと非寛容になる。 『鞍馬天狗』の天狗(竹脇無我)はそんな正義のタイプになっていて共感を持てない。 十五日の夜のは、天狗が爆弾魔を退治する話だったが、 声高に「罪もない女・子供を巻きそえにする憎っくき爆弾魔め!」と自分のことは 棚上げし他人ばかりを桂小金治ばりに批難し、最後はとるにたらない犯罪者を問答無用、 正義の刃でたたき斬ってしまった。 天狗は時の強いヤツに刃向かうからいいのだ、 弱いヤツを天下公認の正義の刃で成敗してしまうのは正義の名の下に行われる暴力である。 こんな正義は時には不正よりもおそろしい。
 これに対し十日夜の「座頭市物語・子守唄に咲いた女郎花」は一味ちがっていた。 勝新座頭市は、自分も結構悪いことをやって生きている。 正義なんていえる身ではない。 だから彼はチンピラ江原慎二郎と情婦・中村玉緒の悪だくみを気づきながらも、 天狗のように「憎っくき悪党め!」と二人を成敗することなどしない。 逆に「お前さんがたはまだやり直しがきくんだ、しあわせになんな」と二人を逃がしてやるのだ。
 座頭市の行為は正義には反するかもしれないが正義に反しない鞍馬天狗より人間としてはるかに魅力がある。 「人間は強く正しくなければならない、ゆえに弱いダメなヤツは成敗しなければならない」という天狗の考え方より、 「人間はもともと弱くダメなものだ、それでも懸命に生きていくことに価値があるのだ」という座頭市の考えのほうが私は好きだ。

  ◆黒田義之監督の演出は冒頭の柿の木の場面を除くと、前半3分の2が夜。 宿場の七色の灯りが遠くにきらめくなど照明に凝っている。撮影は森田富士郎。

★第11話 「木曾路のつむじ風」 (脚本・浅井昭三郎、監督・黒田義之、撮影・牧浦地志) 1974年12月12日

第11話 本郷功次郎  ○市を追い回している甚五郎(浜田晄)一味。 土地の親分・左平次(石橋蓮司)一家の力を借りて市を討とうとしたが、返り討ちに。 居合わせた短銃使いの弥七(本郷功次郎)が十両で市襲撃を約束。 肩を撃たれた市の治療にあたった玄庵(木村功)は、左平次と麻薬の関係に気付く。
 美根(杉田景子)、岩松(井上博一)、ほか香月京子、矢野宣。

 ◆上記の粗筋(解説書)はやや異なっている。
 佐平次は最初は登場しない。2007年のDVDで初見。
 冒頭、緑の草原に笠をかぶった追手の姿が動く。 甚五郎は市に足を斬られる。身にまとい、自分の姿を隠した草を馬が食べに寄ってきて、 市は農民たちに馬泥棒と間違えられる。追っ手から逃れるにはかえって牢屋は好都合だ。 照明を巧みに生かした移動撮影は名手・牧浦地志。第2話を手がけた黒田義之監督の演出が冴える傑作。
 一方、村人の診療にやってきた玄庵と美根。甚五郎は佐平次に依頼して市を牢屋から出させる。 めし屋で市を襲撃したやくざ達は居合いで斬られ、まるで歯が立たない。 弥七が十両の金で市を撃つ。
 確かに命中した。しかし、急所を外れていた。市は村人の家に逃げ込み、自分で弾を摘出する。 瀕死の市を農民は玄庵のもとへ連れて行く。玄庵のもとへ佐平次の手下が押しかけるが、寝たままの市に斬られる。 佐平次は弥七にさらに三十両を渡して市にとどめをさすように依頼する。 しかし、弥七は美根と知り合いだった。医者だった弥七は身分を捨てて美根と別れた過去があったのだ。 金を返して酌婦相手に飲んだくれる弥七。
 村人が弥平次につまされている植物の危険性に気付いた玄庵は、佐平次のところに乗り込んで、 その植物の恐ろしさを訴える。しかし、欲にかたまった佐平次が承知するはずもない。 玄庵は斬られて重傷を負う。
 戸板に乗せて運ばれて来た玄庵を見て、弥七は苦悩する。 玄庵を助けることが出きる技術を持っているのは自分だけだ。
 一方、市はひとりで佐平次の館に斬り込む。

★第18話 「すっとび道中」 (脚本・池田一朗、監督・黒田義之、撮影・牧浦地志) 1975年2月13日
第18話
 ○島帰りの清太郎(中村賀津雄)は行方定めぬ旅がらす。 あばずれだが、心のやさしい女・お初(横山リエ)と意気投合し、旅連れとしゃれこんだ。 沼田の安五郎(土方弘)の賭場に上った清太郎は負けがこみ、女を借金の方に預けて、松川の大吉(南祐輔)殺しを引き受ける。
追っ手に斬られて足に深手を追い、なおも松川一家に追われる清太郎を市が助けた。
 代貸しの松三(樋浦勉)、平造(田村正男)、ほか三木昭八郎、角間進、

 ◆2007年のDVDで初見。 “河川敷の草原をいく市が器用に水たまりを避ける。 それを見ていた子供達が「右にいくと穴がある」と声をそろえる。 市は「悪童たちだな、右に穴なんて」と右へ歩くと穴に落下してしまう。 「子供は正直だ」と見解を変える。穴に落ちた市の上を一人の男が駆け抜けていく。 その男・清太郎が松川親分のところで仁義を切っている。親分に挨拶も束の間、短刀で親分の胸を刺し、 逃げる清太郎。暮れ六つまでに安五郎のもとに戻って、借金の方に預けた女を連れ戻すのだ。
 一方、お初は床へ忍んできた安五郎を待たせている間に脱出、途中で捕まって屋根裏部屋にとじこめられる。
 「走れメロス」のように戻ってきた清太郎に安五郎は「女は半時ばかり前に身を投げて死んだ」と伝える。 新品の下駄が崖の上にそろえてあった。おかしいとつめよる清太郎を縛り上げて屋根裏部屋へ。屋根裏で再会する二人。
 そこへ市が「松川が殺された。下手人の清太郎を引き渡してくれ」と尋ねて来る。 喜んで引き渡された清太郎を市は河原で斬り捨てる(ふりをする)。
 礼金を投げ渡す安五郎に市は居合斬りを見せて脅し、謝礼に女を望む。 物置小屋で女を受け取った市、そこへ清太郎もやって来た。裏切られた清太郎が暴れ、市が加勢する。”
 黒田義之監督、牧浦地志撮影のコンビは暗い場面に主役の表情を強調する照明と、ミドルショット。 狭い場所での斬り合いといった場面を多用して、緊迫感のある映像を作り出している。 このコンビでは既に第11話「木曽路のつむじ風」があった。 また森田富士郎撮影で第2話「子守唄に咲いた女郎花」もあった。これらも秀作。 

 第22話 「父と子の詩」 (脚本・高橋ニ三・宮嶋八成、監督・黒田義之、撮影・森田富士郎) 1975年3月13日

 ○ゲストは田村高広、田中邦衛、高沢順子。 (徳木吉春さんのメモより)
第22話
 ◆2007年のDVD-BOX付録のパンフレットより、 2007年のDVDで初見。
 “市は旅先でたった一人で遊んでいる千之助(山下雄大)という子に 宿・下野屋を紹介してもらう。千之助の父親は、もと八州見回り役で今は源三一家の用心棒をしている 黒川鉄次郎(田村高廣)であった。 ある日、悪巧みにたけている源三(田中邦衛)は下野屋の証文と娘お春(高沢順子)をだましとってしまう。 市はお春を連れ、源三と証文を賭けて刺しの勝負をする”

 ◆DVDで初見、 “暮れ六つまでに借金を返さない場合には下野屋の家と土地、そしてお春を方に渡すという証文だが、 下野屋は金を準備したにもかかわらず、源三はわざと留守にし、遅刻したところで下野屋に会って因縁をつける。 裏切られた下野屋は首を吊ってしまう。
 鉄次郎は市を百両で斬る約束をするが、金を渡したくない源三は千之助を人質に取る。 鉄次郎の妾・志乃(原田あけみ)は悪巧みを立ち聞きしてしまう。 源三一家に斬られながらも、鉄次郎に謀略を告げる。怒った鉄次郎は息子を救いに一人で殴り込む。
 今回は市は殺陣に参加しない。 鉄次郎ひとりで源三一家を成敗してしまう。息子は父親の姿をしっかりと見ていた。”

★第25話 「渡世人」 (脚本・内海一晃、監督・黒田義之、撮影・森田富士郎)  1975年4月3日

 ○悪貸元の徳兵衛を市に斬られた子分の新三(近藤正臣)と銀平(新克利)。 生前の徳兵衛のやり方には批判的だった二人だが、親分といえば親も同然と、複雑な気持ちのまま、市を求めて敵討ちの旅に出た。 そのころ市は銀平の妹であり新三の許婚のおそで(真木洋子)と道連れになった。
第25話 重吉(渡辺文雄)、勘兵衛(今井建二)、仙造(成瀬正孝)、用心棒(平沢彰)

 ◆2007年のDVDで初見。
  “市は小さな犬に吠えられて困っている姿で登場。あまり強そうに見えないので、お袖は本物の座頭市かどうかいぶかる。
 貸し元の重吉は、黒馬の勘兵衛と計らって、徳兵衛の縄張りを整理しようと、 新三と銀平を市に始末させようと画策する。 渡世のすじ目を通そうとする二人を表向きはほめておだてあげるが・・・。 明け六つ、庚申塚の果たし合いの場所にやって来た黒馬一家は銀平たちに襲いかかった。 銀平は市に「新三を斬らないでくれ。堅気になってお袖と一緒になってほしいと伝えてくれ」と遺言する”。




     新・座頭市
  第1シリーズ


 毎週月曜午後9時から9時55分。フジテレビ。
 企画・久保寺生朗・角谷優・荒井忠   
 プロデューサー・西岡弘喜・真田正典・市古聖智
 美術・太田誠一 技術・大角正夫 照明・風間博 音楽・村井邦彦  殺陣・楠本栄一 
 現像・東洋現像所  原作・子母沢寛 


★第16話 「駆け込み道中ふたり旅」(脚本・沖守彦・岩元南,監督・黒田義之) 1977年1月24日

新座頭市 16話 ●足抜け女郎お香が、加賀まり子。お香は市の寝ている荒れ寺に身を隠す。追っ手が来る。傑作なセリフ、「いたな、このアマ!・・・なんだアンマじゃねえか」(仙次を演ずる蟹江敬三)。アップを多用し、バラエティに富んだカメラ・アングルを見せる。撮影・牧浦地志。
 美濃吉(菅貫太郎)、源八(小野川公三郎)、他に浜村純。
 TV《座頭市物語》で見事な演出を見せた黒田義之監督が2週連続で登板。
 女郎が足抜け。博打場の親分・美濃(菅貫太郎)のもとへ連絡が行き、仙次(蟹江)が探す。お香(加賀まり子)は古寺に身を隠し、市はかくまう。命がけで逃げてきた女は派手な着物じゃすぐ見つかってしまうと言う。着物を取り替えて逃げるが、途中で追手に見つかる。市は追手の髷を切り落とす。仙次はお香が18歳のころ、博打で景気のいいときに結婚した亭主だった。博打で負けがこんで女房を女郎に売り飛ばす。5両の年期があけても親分美濃のもとで働かされる。
 親分はもと役者、市の懐を狙って顔を切られた過去を持っていた。
 足抜けを手伝った源八はお香を「俺をだましたな」と批難する。市が救う。親分は源八を斬る。
 お香は縁切り寺へ駆け込むと言う。廃屋で火をたく二人。朝、市が川へ水を汲みに行った隙に、お香を人質に脅す美濃。しかし、仕込を捨てさせられた市は相手の刀を奪って斬る。渡し場で待ち伏せする美濃。
 市は金で船頭(浜村純)を雇い、お香を川向こうへ送る。やくざが迫ってきていた。


★第17話 「母子道に灯がともる」(脚本・下飯坂菊馬,監督・黒田義之) 1977年1月31日

中村玉緒●都合で中座したため途中までしか見ていない。おたきの付き人卯平(花沢徳衛)、長五郎(山本麟一)他、根岸一正。撮影・渡辺貢

■週間TVガイド 1977年2月4日号より 
 大田原へ来た市は居合斬りを目撃した鮒吉少年(新井つねひろ)の家に泊まった。母のおたき(中村玉緒)は元親分の女房だった。が、親分の死後は荒牛一家に痛めつけられていた。おたきの宿も客を寄り付かせないようにされていたのだ。我慢をするおたきに鮒吉は「なぜ仇討ちをしちゃいけないんだ?」と反抗する。長五郎は計略で鮒吉に子分を刺させ、おたきにカタをつけろと迫る。宿を出て去っていく市を追いかけ、卯吉は助けを求める。長五郎の許へ連れていかれたおたきはスキを見て隠し持ったドスで長五郎を刺した。市も駆けつけて加勢に入る。しかし、おたきは長五郎の子分に斬られていた。
 勝新太郎夫人の中村玉緒がゲスト出演。テレビでの共演は三年ぶり、三回目。スタッフはオーナー夫人というより“親分のかみさん”という意識で、スタジオには笑い声が絶えず、なごやかなムード。もちろん二人のからみは息もぴったりで、雑炊を食べているシーンでは勝が台本にないセリフをポンポン。が、玉緒は少しもあわてず受け答え、監督も「さすが夫婦の芝居です」。

■読売新聞 おしどり夫婦 久しぶり出演
 「坊や、一度人を斬ると、まともにお天道様の下を歩けないのだよ。肩で風きってかっこよく見えるかもしれないが、やくざなんて世間のきらわれ者、小汚い虫ケラ同然だ・・・」
 任侠道の裏面のみにくさと、渡世人の女房の苦労をいやというほど知りつくすやくざの未亡人おたきは、幼い息子の鮒吉をやくざにだけはしたくなかった。市は、少年のやくざ熱をじゅんじゅんと諭す。
 おたきには中村玉緒。『座頭市物語』の第二回で、市をだますあばずれの宿場女郎に扮して以来、久々のおしどり出演だ。


★第19話「越後から来た娘」 (脚本・下飯坂菊馬・久貴千賀子,監督・黒田義之) 1977年2月14日新座頭市 19話
●純情な若い恋人どうし、おさよ(ジュディ・オング)と吾一(火野正平)の二人を、悪代官・柳田(岸田森)は、やくざ伝馬の権六(中村祥治)と結託して食いものにしようとする。二足わらじの悪貸し元である。お上の印入りの小判を盗んでその罪を二人になすりつけようとする。『河内山宗俊』コンビの出演だが、パっとせず。撮影・森田富士郎。

 一旗上げてくるから三年待ってろと村を出た吾一を尋ねて越後から来たおさよ。
 春木屋を殺して千両を盗んだ盗賊は代官に五百両を進呈するものの、沼田藩の刻印入りの小判は使えない。関八州は事情を知るものは始末しろと支持する。盗賊仲間を殺した後は誰かに小判を使わせて下手人を仕立てようとする。賭場で十両をもうけた市は心中の相談をしていた貧しい恋人二人に小判を渡す。ところが、簪を買い、酒屋へかたに入れた馬を請け出そうとすると、盗賊として捕縛され、拷問される。事情を知った市は牢屋から吾一を救い、権六一家を斬り、関八州のもとへ連れていかれたおさよを助ける。関八州からもらった十両を置いて市は去る。



     新・座頭市   第2シリーズ


 毎週  月曜午後9時から9時55分。フジテレビ。
 企画・久保寺生朗・角谷優(フジテレビ)・荒井忠(フジテレビ)
   または久保寺生朗・湯沢保雄(フジテレビ)・久坂順一朗(フジテレビ)
 プロデューサー・西岡弘喜・真田正典・市古聖智
(真田正典・市古聖智
の二人の場合もあり)
 美術・太田誠一 技術・大角正夫 照明・風間博 
 音楽・村井邦彦  殺陣・楠本栄一 
 編集・谷口斗史夫
 現像・東洋現像所  原作・子母沢寛 

 TVの『新・座頭市』(第2シリーズ)は1978年の1月9日から1978年の5月22日まで放映された。

主題歌「座頭市子守唄」(作詞:いわせひろし、作曲:曽根幸明、歌:勝新太郎)  



★第1話 「恋鴉いのち百両」 (脚本・新藤兼人、黒田義之監督) 1978年1月9日

 市の鼻緒を直してくれた親切な女(小川知子)は、旅の薬売りだった。一緒に旅籠に泊まることになったが、女は市に毒を盛る。いかさまを見破られ斬られた利三郎の妻で、市を仇とねらっていたのだ。
撮影は牧浦地志。
 監督・黒田義之は明暗の豊かな手馴れた演出を見せる。市と女が案内された旅籠の部屋は暗い。灯りがともされると気持ちも明るくなるものの、部屋の狭い様子も分る。暗い夜の場面から一転して翌朝の川面が青く輝く場面が見事。
 女が正体を現すのは半分を過ぎてから。毒の粉を入れた徳利を市は女が見ていないすきに交換する。そして自分の酒を飲み、相手が酒を飲もうとするときは、手を伸ばしてそれを払い落とす。女は次第に市の立場を理解するようになっていく。一方、女の様子を遠くから見ながら、土地の親分衆に市の暗殺を頼む旅人・又八(長谷川明男)は、実は女の亭主の弟だった。
 朽縄の権太(高木均)は子分が市に斬られてすっかりおかんむり。子分が負けても子分の弔い料金は百両かかると、朽縄は又八に百両を要求する。又八に金があるはずがない。権太は又八を拷問する。

★第13話「忠治を売った女」(脚本・佐藤繁子、黒田義之監督) 1978年4月10日

 雪の深い山道で、市は奇妙な男女と出会う。女(二宮さよ子)は大親分・国定忠治の元めかけ。男(岸田森)は、その女をめかけに差し出した子分。その女が役人に忠治を売ったのだという。
撮影は藤井秀男。黒田義之監督の傑作。映画『顔役』の打楽器がリズムを刻むテーマ音楽が繰り返される。音楽は村井邦彦だし、これはもう『顔役』だ!
 雪の上を歩く女と男。女はおまき(二宮さよ子)、男は市だった。庄八(岸田森)が後をつける。庄八はおまきを病気の忠治を売ったひどい女だと言う。おまきは庄八の女房だったが、忠治の女になった。おまきは、そのことを怨んだ庄八が忠治を売ったのだ、この男の首を国定村に売れば儲かると言う。
あばら家から出て行く庄八を、おまきは「意気地が無い」と評する。
 おまきは土地の親分・勘蔵(名和宏)に捕まる。店の前で忠治を狂わせた女とさらされて、高値がつく。庄八は市にあの女に鼻であしらわれるのは腹が立つ、どうしても男として見られたいと打ち明ける。
 親分に手篭めに去れかかったおまきはカンザシで親分の目を突いていた。逃げるおまきに加勢する庄八。
 雪が吹きすさぶなか、松明を持った一家が女を探す。
 女は、憎いと思っていた忠治に実は惚れていたことが分ったと、市に話す。最後に庄八は親分たちと切り結び、自分の姿をちゃんと見てくれたかと言ってこときれる。
 岸田森が忠治に取られた女房に惚れていながらも、押しの弱い男を演じて秀逸、二宮さよ子は逆に気丈な、しかし複雑な立場の女をほとんどセリフなしで演ずる。明暗の対照が巧みな黒田演出で、やくざたちの松明の灯りが集まる吹雪を背景に最後の殺陣が始まる。


  TV版『座頭市物語』と『新・座頭市』は全作ビデオが発売されたことがある(全作ではないかも・・・)。しかし、現在は販売されていない。その後、数本が俳優中心でセット販売された。映画版の勝新監督作品『新座頭市物語・折れた杖』も1998年にようやくビデオで発売された。しかし、勝新監督の最初の傑作映画『顔役』はまだビデオ化されていない。TVシリーズ『警視−K』は1998年にVAPからビデオ化されて発売された。(池田追記、2000年)。『警視-K』ビデオはいまや品切れ絶版。2007年1月、とうとうTVシリーズの全作品100話の発売が始まった。まずは第1シリーズ26話『座頭市物語』が発売となった。



 新・座頭市第1シリーズ  日曜日にはTVを消せ No.9 PART2 

 新・座頭市第2シリーズ  日曜日にはTVを消せ No.9 PART3 

 新・座頭市第3シリ−ズ  日曜日にはTVを消せ No.9 PART4 

 『勝新演出の座頭市』   日曜日にはTVを消せ No.9 PART2-4

 勝新演出の警視K        日曜日にはTVを消せ No.9 PART5 

 痛快!河内山宗俊     日曜日にはTVを消せ No.9 PART6

 監督・勝新の『新座頭市物語 折れた杖』脚本と完成作品の異同


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  →  『座頭市覚書』ロケ地の記述など情報が豊かです(作者不詳)