updated Sept. 7 1998
派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)
派遣労働者も一般の労働者と同様に、年次有給休暇の権利をもっています。
年次有給休暇の権利は、労働基準法第39条に基づいて6ヵ月継続勤務で全労働日の8割出勤があれば、フルタイマーであれば、最低年間10日の年次有給休暇があります。
もし、就業規則などで、この労働基準法を上回る年次有給休暇を認めているときには、それぞれの規定に基づいて年次有給休暇の権利が生じることになります。
この年次有給休暇は、派遣労働者の場合には、派遣元(派遣会社)に請求することになります。派遣先に年次有給休暇を請求するのではありません。
派遣会社の就業規則の年次有給休暇の規定例としては、次のようなものがあります。登録型の派遣労働者のための就業規則です。
第○○条(年次有給休暇)
1 派遣スタッフが6ヵ月を超えて引き続き雇用される場合は、所定の年次有給休暇を与える。年次有給休暇の日数は別表の通りとする。
2 年次有給休暇は、派遣スタッフが指定した時期に与える。ただし、事業の都合によりやむを得ない場合には他の時期に変更することがある。
3 当該年度に行使しなかった年次有給休暇は、次年度に限り繰り越すことができる。
4 年次有給休暇により休んだ期間については、通常の賃金を支払う。
別表 1 派遣スタッフの年次有給休暇日数
派遣スタッフの年次有給休暇の日数は、付与年度における年間の所定労働日数に応じ、次に定める日数とする。
この派遣会社は、ごく普通の考え方で年次有給休暇を処理しています。
しかし、この派遣110番の相談でも、年次有給休暇を実際に行使することに対して、悪質な派遣会社のなかには色々と圧力をかける例もあるようです。
年次有給休暇は、労働者がしっかりと請求することが重要です。労働者が請求しなければ、2年間の時効で消滅します。また、派遣会社が変われば、前の会社で発生した年次有給休暇の権利は消滅します。年次有給休暇は、同じ派遣会社からの派遣就労が行われているときにのみ、権利行使できるからです。
これまでの相談例では、5年も同じ派遣会社から派遣されて継続勤務していたのに、年次有給休暇の権利があることを知らされないまま、退職した派遣労働者からの相談がありました。派遣会社を退職した後には、よほど、派遣会社が詐欺的に年次有給休暇の権利を行使できないなどの誤った情報を労働者に伝える等の事情がなければ、年次有給休暇権を労働者が放棄したことになってしまいます。
年次有給休暇を取得する人員態勢をとることを日本では使用者は前提にしていませんので権利行使が困難なことが少なくありません。しかし、労働者がしっかりとした知識がなければ折角の権利を行使できないことが多いかもしれません。