本書は原題をLight from Silver Birchといい、そのまま訳せば、シルバーバーチからの光、ないしは光明ということになる。これまでの霊言集の表題は〝シルバーバーチの教え〟〝シルバーバーチの導き〟〝シルバーバーチの叡智〟〝シルバーバーチの哲学〟といったパターンになっているが、意味するところは皆同じである。
編者パム・リーバ女史とは二度会っている。最初はバーバネルの秘書をしていたときで、社長室のある三階から降りてきて私を迎え、折り返し三階まで案内してくれた。その時の東洋人的な、いかにも貞淑な物腰が印象に残っただけで、顔は後で思い出せるほどはっきり覚えていなかった。
二度目に会ったときはバーバネル亡き後で、サイキックニューズ社のスタッフの一人として働いていた。私のことを覚えてくれていて、私が来ていることを知ってわざわざ二階の編集室から降りてきてくれた。その時初めてとても美しい方であることを知った。派手な美しさではなく、奥に何かを秘めて清楚な美しさで、才色兼備とはこういう人に使う言葉であろうと思ったりした。
私が「今シルバーバーチを訳しているけど、そのうちあなたの編集したものも訳しますよ」と言ったらOh, lovely(まあ、素敵)といってまるで童女のようなあどけないしぐさで、嬉しそうにしたのが印象的だった。
本文の136ページでシルバーバーチが「この霊媒と奥さんと私とは一個のインディビジュアリティに属しております」と述べている。つまり霊的な親族(アフィニティ)、いわゆる類魂同士であるという意味であるが、私は永年バーバネルの秘書を務めたこのリーバ女史もアフィニティの一人として計画の推進のために生まれてきていると思う。スワッハーもしかり、速記録のムーア女史も然りである。
話を戻して、続いて私が「その後バーバネルから何か通信がありますか」と尋ねたところ、自動書記とか霊聴という形ではないけれど、霊感的に近くにバーバネルの存在を感じることはよくあるといった主旨のことを語ってくれた。バーバネルは今でもサイキックニューズ社をはじめとしてスピリチュアリズム関係の仕事を霊界から援助してくれていることは、当然想像できるところである。
さて本書にはバーバネルが他界する直前の霊言もおさめられており、1938年に始まった原典シリーズも本書が最後となる。日本語シリーズとしてはオーツセンのMore Philosophyの残り半分を主体として構成したものを次の第十一巻とし、最終巻は全霊言集のほかにサイキックニューズ紙やツーワールズ誌に引用されている珠玉の言葉や祈りをもれなく集めて〝総集編〟としたいと考えている。
もちろんそれでシルバーバーチの霊言がすべて出尽くすわけではない。分量としてはむしろ残されているものの方が多いのではないかと推測している。現に最近の情報では、すでに次のシリーズを企画中のようである。シルバーバチフアンにとってはうれしい限りであるが、それはそれとして、本シリーズは全十二巻をもって完結としたい。
実は二年ほど前に別々の機会に二度〝この後シルバーバーチを新たに出す予定はあるのか〟と尋ねたことがあるが、二度ともその予定はないと言っていた。それが今になって新しい企画がされたということは、シルバーバーチの霊言がその後も世界的にますます注目されていることのあらわれであり、それは言い替えれば、現代人がこうした霊的な叡智を要求し始めているということであろう。
「古代霊は語る」がきっかけとなってついに十二巻もの霊言集が出せることになった。振り返ってみると、これまでの展開ぶりは私自身にとっても〝まさか〟の一語に尽きるもので、これも潮文社の理解なくしては不可能なことだったことは言うまでもないが、その背後に大規模な霊界からの働き掛けがあることを痛切に感じている。私も一個の道具としてその計画の中に組み込まれているのであろう。
今後の計画がどう進展するかは知る由もないが、〝すべては良きに計られる〟とのシルバーバーチの言葉を信じて地道に歩んでいきたいと思っている。