第6章 音楽を語る
(神の計画の中で音楽は一種名状しがたい役割を演じているようである。ある日の交霊会でシルバーバーチは英国の音楽界で指導的地位にある音楽家に次のように語りかけた)

あなたが音楽を通じて世の中の為に貢献していらっしゃるその実態は、あなたご自身にはまず理解できないことです。音楽、なかんずくインスピレーション的な曲はあなた自身はごく自然な形で作曲しているつもりでも、魂を癒し慰め刺激し鼓舞する特質を具えているものです。

それはそれなりに魂に琴線に触れて、五感を通じて得られるより遥かに偉大な生命の荘厳さがあることを認識させます。

これから先どこで演奏なさる時も、あなたは偉大な目的の道具であること、あなたに感謝の気持ちを伝えられない大勢の人々に心の調和と同情と激励と幸福と健康をもたらす一助となっていることを思い出して下さい。

こちらの世界へおいでになれば、大変な楽しみがあなたを待っております。と申しますのは、霊界には今のあなたには理解できない性質と卓越性を持った音楽が存在するからです。地上でまだ一度もお聞きになったことのないオクターブがあります。シンフォニ―もあります。コンチェルトもあります。最高の作曲家や演奏家が無数にいます。地上にはほんのわずかしかおりません。

地上で大作曲家と言われている人の全てがこちらへ来ているわけですが、その巨匠がその後更に向上進化しているのです。観賞力を持った人なら立派な音楽をいくらでも聞くことが出来ます。

ミュージックホールは霊界が誇る財産と言っても良いほどです。地上のいかなる楽器でも表現できないオクターブの音楽をあなたも聞くことになるのです。

それからもちろん地上を豊かにする音楽はみな霊界を始原としております。人間がこしらえているのではありません。演奏家も作曲家もみな一種の霊媒なのです。

・・・本日こうして出席させていただきましたこと大変光栄に存じます。あなたの教えが私の人生において素晴らしい啓示となっていることを是非とも申し上げたいと思っておりました。

そのことを私と一緒に神へ感謝しようではありませんか。・・・私は神の使いとなったことの光栄とその好機を与えて頂いたことを、そしてあなたと奥さんはその真理を授かることが出来たことを、です。

何十年か前、私は同志もなく、たった一人でこの地上へやって参りました。是が非でも地上人類に霊的実在の存在を教え、霊力の働く場を設立する必要があるとの理由から、私が霊界においてそれまで獲得したものをお預けして、(次元が異なるが故の)困難な条件のもとで、この地上へ戻ってくれないかとの要請を受けたのです。それを私は挑戦のつもりでお引き受けしました。

今夜あなたから、私が光栄にも伝達させていただいた教訓・・・私が考え出したものではないのです。・・・が、あなたの人生で大きな啓示となっていることをお聞かせくださいました。そのことに私は感謝したいと思います。

と申しますのは、そのことは私に愛念を覚えさせて下さる方がまた一人増えたことを意味するからです。それは私にとって大変うれしいことなのです。

これより先あなたには、ご自身がこれまでに恵みを受けられたように他の人々に恵みを施す機会が次々と与えられることでしょう。その機会を逃さないことです。と言って私は、あなたを始め私の同志のどなたにも、熱狂的な伝道者になってほしいと思っているわけではありません。

しゃにむに他人を信じさせようとなさることは期待しておりません。後で平静を取り戻した時にはもう忘れているような、一時的な興奮状態の群集心理につけこむ非理性的手段で真理を説いて下さることは望みません。

私が申し上げているのは、あなたにはあなたのご縁を通じて援助の手を差し伸べるべき機会が与えられることになると言うことです。その時にあなたなりの最善を尽くせばよいのです。地上世界には為さねばならないことが山ほどあります。

物的財産は一時的な所有物にすぎません。所有物と言っても真に自分のものではなくただの一時的保管物にすぎません。一方霊的財産はさびることも色あせることもありません。永続性があります。

人の為に自分を役たてることほど立派な宗教的行為はありません。それが霊の通貨(コイン)なのです。自分より恵まれない人の為に手を差し伸べれば、そのうち自分の生きるべき道がきっと啓示されます。あなたが窮地にあって啓示を受けられた様に、窮地に置かれた人があなたの手の届くところまで導かれてくるようになるでしょう。

(別の招待客が耳障りな現代音楽の話を持ち出して、インスピレーションが形態を変えた結果なのかと尋ねた。すると―)

インスピレーションが変わることはありません。インスピレーションは片時も休むことなく送られております。ただそれを受け取る用意の出来た者だけが受け取っているにすぎません。波長がそれに合わなければ受け取れないと言うことです。インスピレーションは休みなく送られております。霊力と同じく、地上へ顕現する通路を求めております。

要するに波長の一致の問題です。地上には音楽、絵画、その他あらゆる芸術分野に先駆者がいます。その人達は時代に先んじ過ぎている為に、在世中は一般から理解してもらえないことがありますが、時代がすすむにつれて理解力の水準が上がり、その先駆者たちに正しい評価が為されるようになります。

しかしそのことは地上で良く生じる音楽の俗悪化には当てはまりません。それはむしろ今日の地上を蝕んでいる凶暴化の傾向と結びついた問題です。

・・・現代と言う世代が音楽に影響しているのではないかと思っておりました。

物質を霊から切り離すことは出来ません。物質的なものが霊的なものへ、霊的なものが物質的なものへと、たがいに反応し合い影響し合っているからです。あなたの身体は霊に影響を及ぼしております。両者は隔絶したものではありません。

・・・(スイスの精神医学者の)ユングは内部にあるものは必ず外部に出るものであると述べています。現代の気違いじみた音楽にはその例証と言える要素があるのでしょうか。内部にあるより外部へ発散してしまった方が良いのでしょうか。それが凶暴性を発散させることになるのでしょうか。

いえ、残念ながらそれは、ごく当たり前の反応にすぎません。物的なもの、一種の利己性、つまり他人の幸せに対する完全な無関心の現れです。貪欲が幅を利かしているのです。自分たちの地上生活を自ら蝕んでいる凶暴性の原因はそこにあるのです。それが素行の面のみならず音楽や芸術、その他ありとあらゆる生活面に表れているのです。