第7章 真理は法律では縛れない
二百年以上も前の1735年に施行された〝魔法行為取締法〟がほこりをかぶった公文書保管所から持ち出されて、物理霊媒のヘレン・ダンカンが投獄された。(巻末〝解説〟参照)
これを契機に次々と霊媒が迫害を受け、交霊会が警察の手で妨害された。スピリチュアリズムがかつてない大きな脅威に曝された時期だったがそうした事態の中でシルバーバーチはこう語った。
「真理の行進を阻止できる力は地上には存在しません。無数の霊媒を通じて地上へ流入しつつある霊力を挫けさせることの出来るものはいません。いかなる官憲の力、いかなる政治力、いかなる国家権力を持ってしても地上から霊力を駆逐することはできません。
時すでに遅しです、すでに無数の道具すなわち霊媒や霊感者を通じて地上へ霊力が流入しており、慰安と援助と指導と治癒、そして霊的実在についての確信をもたらしております。霊的真理の勢いを阻止しようとしてももはや時すでに遅しです。いかなる手段を企てても結局は挫折します。巨大な霊の潮流が地上へ地上へと押し寄せているからです。
これまでもありとあらゆる弾圧の手段が企てられてきました。磔刑がありました。宗教裁判がありました。火あぶりの刑がありました。肉体的拷問、精神的拷問、その他こうして痛めつけられる事によって魂が救われるのだという狂気の信仰を抱く偏狭な宗教家によって、身の毛もよだつ手段が次々と案出されました。
しかし、そのいずれも結局は効を奏しませんでした。〝光〟を見た霊格者が次々と輩出し、導いてくれる霊力を信じ、永遠の真理を喘ぎ求めている人類への使命感に燃えて、その光の指し示すところに忠実に従ったのでした。
今の時代にはもはや磔刑や火あぶりの刑はなくなりました。が、今あなた方は投獄と言う刑に直面しております。しかし、これまでにすでに獄舎も霊的真理に対しては無力であることが証明されております。一世紀近くも続いているスピリチュリズムの運動がそれくらいの事で阻止できると思われますか。絶対に出来ません!
官憲力にせよ、政治力にせよ、霊力を阻止せんとする企てをものともしない忠誠心に燃えた同士がいてくれる限り、私たちの仕事に挫折はありません。私たちがこうして地上へ戻ってきたのは、唯物思想が生み出してきた利己主義による不公正と、無知と迷信を助長させてきた、誤った宗教的教義に終止符を打つためです。その両者が結びつくと、人類全体を包み込んでしまうほどの暗黒を生みだすことになってしまいます。が、今や新しい霊的真理の光が地上に根づき、もはやそれが根絶やしになることはあり得ません。
闘いの手を緩めてはなりません。真理は必ず勝つのです。どうしても切り抜けなければならない困難はある事でしょう。が、それがなんであろうと、きっと克服できます。真理の証を手にしたものが、薄暗い片隅をコソコソ歩いたり、首をうなだれヨタヨタした足取りで歩く必要はもうなくなりました。背筋を伸ばし、霊の使者として人類の霊的再生のために、すべての者が等しく自由と寛容を享受できる〝新しい世界〟を招来するために、神のお召しにあずかったのだという誇りを持ってください。人間の霊性・・・これは神の霊性そのものなのです。・・・抑圧を弾圧し、その発現を阻止せんとするものすべてが姿を消してしまうことでしょう」
さらに霊媒への迫害について・・・
「これからも霊の道具に対する攻撃は続くでしょう。心の奥でそういうものの存在を毛嫌いする人がまだまだ多いからです。しかし、そのくらいのことで霊の絶え間ない奔流が阻止できると考えても、もう時すでに遅しです。満ち潮の勢いで押し寄せ、地上の何者によっても阻止できなくなっております。小さな流れだった時から阻止できなかったものが、大潮流となってから阻止できるはずがありません。
私が会得した叡智の一つは、全体像を把握するということです。私は〝俗世にあって俗人となるなかれ〟と言う訓えの通りの立場にあります。あなた方のように目先の出来事に動かされることはありません。あなた方は物質界に身を置いている以上、その日その日の出来事に右往左往させられても無理のないことです。
が、私の住処は霊界にあり、あなた方の御存じない別の次元の摂理の働きを体験しております。その私の目に巨大な霊力が地球へ押し寄せているのが見えます。それで勝利は間違いないと確信しているのです。
苦しい思いをさせられる人もいることでしょう。しかしそれは先駆者として払わねばならない当然の犠牲なのです。どんなことがあっても自分の持ち場を死守し、そこから逃げ出すことがあってはなりません。自分に預けられた真理の宝石を死守するのです。真理を知った者の勇気ある生き方の手本を示すのです。かりそめにも〝ごらんなさい、霊的真理を吹聴していた人間がこのざまですよ〟などと言われることが無いように心掛けてください。
いかなる事態が生じようと、誰がいかなる攻撃に遭おうと、私たちの仕事は止まることなく続けられます。病に苦しむ人の体を癒し、悲しみに打ちひしがれた人の心を癒し、インスピレーションと真理を次々と送り届けて。少しでも多くの人々を目覚めさせて参ります。
それを阻止できる程の力は地上には存在しません。それが宗教と言う名の外衣をまとったものであろうとなかろうと、もう時すでに遅しです」
確かにシルバーバーチはスピリチュアリストの集会への妨害行為が続く中にあって俗事を達観する態度を少しも崩さず、こう述べた。
「良くなる前には悪くなることがあるものです。私は少しも心配しておりません。今は時代が違います。盤石の基盤が出来ております。そのことは何度も申し上げております。もっともっと不自由な思いをさせられる方が身のためです。それがより大きな自由を得させてくれるからです。
しかも、その迫害の首謀者がスピリチュアリズムを目の敵にしている連中であることは実はありがたいことなのです。一致団結して共同の敵を迎え撃つ体制を整えさせてくれることになるからです。所詮、神の道具の全てを投獄するわけには行かないのです。霊的真理普及の為に奉げられている集会の門の全てを閉鎖させることは出来ないのです。
教会にはもはや霊的真理を追い払う力はなくなりました。(第三巻95P参照)。皆さんは、一握りの者が権力を振り回したあの暗黒時代(ヨーロッパの中世)に引き戻されるのではありません。それとは事情が異なります。今は一段と啓発された時代です。男女の区別なく自由を、霊の生命とも言うべき自由を味わっております。その自由はさらに大きくなることはあっても、抑圧されることはあり得ません。
その自由の炎を燃やし続けさせることが私たちの仕事の一環でもあるのです。魂に訴えて生きる情熱を燃え立たせ、自由を守る意欲に点火し、霊力によって生活態度が一新され活気づけられる、そうした方向へ手引してあげることです。
いったん束縛から解放された魂は隷属の状態を嫌うようになるものです。(当たり前のことを言っているようであるが、人間は抑圧され続けると何かの隷属している方が気楽に思える病的奴隷根性が芽生えてくる事実を踏まえて述べている=訳者)
これまで私たちは多くの人間を聖職者の策謀の檻から救い出し、神学の手枷を外してあげ、教義の足枷から解放してあげてきました。もう何ものにも束縛されなくなった自由を味わっている人が無数にいます。今や自由の身となったからです。自由の空気を満喫しています。自由解放の陽光の中で生きております。
ありません!心配のタネは何一つありません。神の道具として目覚めていく霊媒が増えれば増えるほどスピリチュアリズムは勢力を増して参ります。一人でも多くの人を我々の霊力の行使範囲に手引してあげることが目的です。これは二つの側面を持った仕事です。一つは各自が潜在的に所有する霊的原動力を発動させることであり、もう一つは、その人たちを背後霊の影響下においてあげることです。
私は、同じ愛でも、家族的な絆に根ざした愛よりも、奉仕的精神に根ざした愛の方がはるかに尊いと信じている者の一人です。奉仕的精神から発動した愛の方がはるかに偉大です。自分と言う〝一個〟の存在の心と知性と魂を〝多数〟の人間の運命の改善に役立てようとするとき、そこにはその見返りとして己の栄光をひとかけらも望まない〝光り輝く存在〟を引き寄せます。生きる喜びをひとかけらも味わうことを許されない無数の魂の存在を地上に見ているからです。
もしも皆さんが霊の目を持ってみることが出来れば、宇宙の全次元の存在の場をつないでいる絆をご覧になることが出来るのですが、それがご覧いただけないのが残念です。それをご覧になれば地上の誰一人として見棄てられたり、取り残されたり、無視されたり、見落とされたりすることが無いこと、霊的なつながりが人間に知りうる限りの最高界まで連綿として続いていることを理解されることでしょう。
その全次元を通じて〝光り輝く存在〟が隈なく待機し、連絡網を通じで霊力を一界また一界と段階的に送り届け、最後は物的チャンネル(霊媒・霊能者)を通して地上へ届けられます。それはそれは強大なエネルギーです。その真の威力は地上の言語による説明の域を遥かに超えております。
皆さんの協力を得て私たちはずいぶん多くの成果を上げてまいりました。しかし、まだまだ目標には到達しておりません。多くの仕事がなされましたが、これからも多くの仕事がなされることでしょう。そうとは知らずに影響を受けている人が大勢います。自分では無意識のまま霊力の通路となって役立っている人が大勢います。
ご本人は何かしら感じるものがありながらも、それを説明できず、ましてや霊の世界、死後の世界からの働きかけとは思いもよりませんが、しかし、普段の生活の中で常識では考えられないことが起きていることに気づいています。そういう人はみなさんから近づきやすい条件を備えていることになります。
地上生活が五感のみによって営まれているとする古い概念が打ち破られたことは大きな収穫です。今や新しい概念が地上生活に行きわたりつつあります」
ここでメンバーの一人が「キリスト教が少しでもその説を改めた形跡は見あたりませんが・・・」と言うと、
「少しずつ身を削ぎ落とし古い概念を新しい概念と調和させようとする試みがなされつつある証拠がたくさん見られます。過去一世紀にわたるキリスト教正教の歴史は、固定化した古い教義を新しい知識でもって解釈し直し、それがそれまで説かれてきたものとは違って抽象的でしかなかった、と言う受け取り方に向かう努力の長い記録であったといえます。良くご覧になれば、それが延々と続けられてきている事がお分かりになると思います。
先見の明のある牧師たちは〝いや、これはもう通用しない。科学と知識と発明・発見によってこの宇宙は我々の先輩が考えたものよりはるかに大きいことが分ったのだ〟と言います。むろん一方には新しいワインを古いポットに注ぎ込もうと一生懸命になる日和見(ヒヨリミ)主義者もいます。が、全体として物の考え方に柔軟性が出てきております。教義の説き方も過去のお座なりの用語は用いられなくなっております。
硬直した古い概念から抜けきれない者は次第に勢力を失っていきつつあります。近代的概念を摂り入れようとする者が次第に勢力を伸ばしつつあることを忘れてはなりません。それが進化と言うものの必然的な結果なのです。今なおその異常な精神構造のゆえに全く進歩と言うものが止まっている人間がいることは事実です。頑迷な形式主義に凝り固まった人間がいることはいます。しかし、それはもはや大多数を占めていません。五十年前とはだいぶ違います。」
キリスト教会にも健全な合理的精神が働き始めております。知識の進歩とともに、嘗ての人間味たっぷりの神の概念が姿を引っ込めざるを得なくなりました。宇宙の広大さと複雑な組織、そこに満ち溢れる生命活動、人間の視界を超えた波動と放射線等について明かされた知識が、宗教についての概念を完全に塗り替えました。科学が四次元世界の存在を指摘している時代に、嘗ての天国と地獄の話が信じられるわけがありません。
我々の仕事は必ず勝利を収めます。真理は必ず勝つものだからです。ただ警戒を怠らないでいただきたいのは、真理を求めてあなた方に近づいてくる人達の中には、自分達の宗教の一部を補修するのに都合の良いものだけを盗み取ろうとする者がいることです。それを許してはなりません。
私たちが真理普及のための道具、霊的才能を発揮できる者を一人でも多く求めているのは、その霊的真理によって霊的生命がますます勢いを増してくれることを目的としているのです。そこに成長が得られるのです。霊的真理によって真の自我に目覚めた魂は、その真理の意味するところを決して忘れません。
霊界には、いついかなる時も、インスピレーションによる指導と鼓舞(コブ)の手段を用意した霊の大群が控えております。真剣に求めてしかも、何一つ手にすることが出来ないということは絶対にありません。求める者には必ず救助と援助と指導とが与えられます。嘗て地上の為にこれほど大規模な活動が行われたことはありません。
真摯に求める者の為に生きた真理の水を用意し、叡智に満ちた驚異的現象を用意し、霊の貯蔵庫が無尽蔵であること、いかなる要求にもこたえられること、誰であろうと、どこにいようとその恩恵にあずかることが出来ることを知っていただく体制が出来ております。
生まれや地位、身分、職業、民族、国家の別は関係ありません。また仕事で地下に潜っていても、海洋へ出ていても、空を飛んでいても、あるいは列車に乗っていても、船に乗っていても、工場で働いているときも、事務所で働いているときもお店でお客の相手をしている時も、あるいは家で家事に携わっているときも、常に霊の力の恩恵にあずかることが出来るのです。
霊的貯蔵庫との波長がうまく調和しさえすれば、その恩恵にあずかることが出来ます。各自が持つ受容能力に似合った分だけを授かります。なんと素晴らしい真理でしょう。それなのになお地上にはそれを否定する人がいます」
別の日の交霊会で、古来迫害行為は決まって逆の効果を生んできていることを指摘して、こう続けた。
「迫害の手段に出る者は決まって彼らが意図したものとは全く異なる結果を招来するものです。あなた方の時代、このスピリチュリズムの世紀においても同じことです。あなた方は図らずも多くの敵をこしらえてしまいました。そして私がしばしば述べておりますように、彼らはスピリチュアリズムを阻止せんとして、ありとあらゆる陰湿な手段を平気で講じます。
宗教家を持って任じる者、宗教と言うものがおのずから要求する神性なる責務を自覚しなければならないはずの聖職者自らが、あらゆる倫理、道徳の規範にもとる態度をとっています。その態度はまさしく宗教という言葉から連想されるものと正反対です。しかし彼らがいかに力を結集して挑んでも、霊力の地上への降下を阻止することはできません。
今やいかなる組織をもって霊力の流れを阻止しようとしても、時すでに遅しです。古びた法律や条件を引っ張り出すかもしれません。国家や警察の権力を操るかもしれません。しかし霊力の地上への顕現を阻止することはできません。
これまでに起きた事はもとより、これから生じるであろう出来事も、霊に目覚めた者が不安や恐怖を抱くほどのものは何一つありません。忠誠心と自信とを持ち、背後より支援してくれるその力の存在を忘れることなく、真理はいかなる反抗勢力に遭っても、真理であるがゆえに耐え抜くものであることを確信して邁進すべきです。
私はいつも、昨日や今日の出来事によってすぐに揺らぐことのない永遠不変の原理を説いております。永遠の実在・・・不変の摂理の働きに基礎を持つ実在の一部なのです。この知識を活用することによって、決断に際して不安も恐れもなく、自分が携えている真理は必ずや勝利を収めるのだという確信を持つことが出来ます。
この真理はすでに地上に根付いております。役割を忠実に果たしておられる皆さんの存在が白日のもとにさらされることになりますが、それをむしろ天命として喜んで受け止めるべきです。なぜならば、それは我々の説く真理によって困惑すべき者を困惑させて行きつつあることの証差だからです。本当はとうの昔に取り除かれるべきだったものを今、新しいほうきによって掃き取っているところなのです。その過程にも教訓的要素が意図されております。が掃き取られる側がそう大人しく引き下がるわけがないでしょう。当然の成り行きとして、そこに闘争が生じます。
それも栄誉ある闘争の一部です。その背後には霊の大群が控えております。光り輝く天使の群れの援助を得ている我々に絶対に挫折はありません」
さらに別の機会にもこのたびの投獄事件に関連してこう述べた。
「かなり前に私は皆さんにこう申し上げたことがあります。我々に敵対する勢力は古い言いがかりを体よく飾り、法律と国家権力を盾にして攻撃してくるでしょう、と。しかし時すでに遅しです。それくらいのことで霊力が挫けることはありません。私たちの勢力は、生命が永遠であること、人間は例外なく死後も生き続けること、愛に死はなく、死者への哀悼は無用であること、そして宇宙には誰にでも分け隔てなく与えられる無限の霊的叡智と愛とインスピレーションの泉があることを教えたくて戻ってくる男女によって編成されているのです。
特別に神から特権を授かる者は一人もいません。真摯なる者、謙虚なる者、ひたすらに真理を求める者、古い伝説や神話をかなぐり棄て、一旦受け入れた真理に素直に従う用意の出来た者のみが、新しい世界の価値ある住民としての特権を得るのです。
教会と言えども、法律と言えども、裁判官と言えども、インスピレーションの泉に蓋をすることはできません。その流れはとめどもなく続きます。皆さんは何者をも恐れることなく、人類を迷信の足枷から解き放し、無知の束縛から救い出す真理の擁護者としての決意を持って邁進しなくてはいけません」