第6章 わが子に先立たれた二組の夫婦と語る
英国空軍に所属していた息子の戦死に心を痛めている夫婦が招待された、ご主人はある新聞社の編集を担当しておられる。夫婦はそれまで幾人かの霊媒を通じて息子との交信を求めてきたが、功を奏していない。そこでご主人がシルバーバーチにこう尋ねた。
──他界した者との交信を求めてあの霊媒、この霊媒と回り歩くのは良いことでしょうか。もし誰かほかの人がうまく交信に成功したときに、交信のできない霊へのメッセージを託すことは可能でしょうか。
「私の目には人間の心と魂が映ります。外部の身体は映りません。苦悩の淵に沈まれたあなたの心は私にはよくわかります。ですから、あなたの心の奥底で蠢いているものを私が知らずにいると思ってはいけません。あなたはまさに悲しみのドン底を体験されました。そしてその悲しみを少しでも和らげてくれるものを求めておられます。しかしこんなことを申し上げては非情に思われるかもしれませんが、あなたが求めておられるものを叶えられなくしているのは知らず知らずとはいえ、実はあなたご自身であることを知ってください。
宇宙には科学の実験室におけるいかなる分析結果にもひっかからず、化学薬品によってもメスによっても分析できず、しかも、これまで大きさを測定し重量を量り切開できた他のいかなるエネルギーをも超越する力が存在します。
私が言っているのは愛の力のことです。その愛は全生命の根源であり、宇宙を創造した大霊すなわち神の属性であるが故に死滅することはありません。それはまさに生命の息吹でありエッセンスなのです。この愛さえあれば、縁で結ばれた者同士はあらゆるハンディキャップ、あらゆる障害、あらゆる妨害を乗り越えて、いつかは必ずお互いを見出し合います。
息子さんのことはよく存じております。聡明な、まばゆいばかりの青年でした。あなたは今その息子さんのことで心を痛めておられます。が、その息子さんは実は今もあなた方のお側にいるのです。死んでしまったのではありません。生命に満ち溢れた姿で生きておられます。
いつかはその存在を証明することに成功するでしょう。そして傷ついた心を自ら癒すことになるでしょう。どうか私の言うことを素直に信じてください。息子さんは(戦死によって)何の障害も受けておられません。精神能力も霊的能力も全く健全です。そのうちきっと、いまだにあなたを取り巻いている濃い靄を取り除けるようになるでしょう。それを是非とも突き破らねばなりません。
しかしそれには大変努力のいることです。実に困難なことです。いかに困難なものか、例をあげてみましょうか。私はこうして地上との交信を可能にしてくれる通信網を操るための訓練に二十年以上も費やしてまいりましたが、今日の地上を取り巻く状況が(戦争のため)あまりの混沌とし、騒乱と険悪さに満ちているために、やむを得ずその繊細な通信網を最小限に絞って、ようやくこの霊媒との連絡を確保しているのが実情なのです。
お子さんがあなた方を喜ばせてあげられないのはお子さんが悪いのではありません。地上に近い霊界の下層界における混乱状態のせいであり、それにもう一つ大切な原因として、無理もないこととはいえ、絶対的確証を得ないと気がすまない、あなたのその冷ややかな分析的精神構造があります。しかし、私もお手伝いをします。そのうちその悲しみの鈍痛を忘れかけている時があることに気づかれるようになることを、ここで断言しておきましょう。
胸も張り裂けんばかりの苦痛を味わうのも、愛することを知った者であればこそです。あなたもですよ。と言って奥さんのほうを向きさらに続ける、「だからこそこうして私たちが戻ってくるのです。私がお届けする知識によって、大勢の人々の人生を台無しにしている無知を一掃しようとしているわけです。
地上の人々が霊的な摂理を理解し、内部に具わっている霊的資質が自然に発揮されるような自然な生活を送れば、二つの世界の間にかかっているベールが突き破られ、すべての障害が撤去されることでしょう。その障害はことごとく人間の無知と迷信と偏見とによって拵えられたものばかりなのです。言うなれば闇の勢力です。是非とも打ち破って、愛と力と導きと光明がふんだんに地上に届けられるようにしなければなりません。
私はいつも知識の普及を口にするのはそのためです。霊的知識こそが、自らを閉じ込めている牢獄から魂を解放する大きな力となるのです。自由と言う名の陽光の中で生きるべきでありながら暗い魂の牢獄の中で暮らしている人が多すぎます。
あなたもその仕事に参加できます。知識を伝達する機関(新聞社)にお勤めだからです。地上生活の総決算をする時が来た時、つまり地上に別れを告げて霊の世界へと移られると、誰がするというでもなく、自家作用によって、自分で自分を裁くようになります。その時の判断の基準は地上で何を考えたかではなく、何を信じたからでもありません。世の中のためにどれだけ自分を役立てたかということです。
私が説いているのは〝人のために〟と言う福音です。人の為におしみなく自分を役立てなさいと言っているのです。そうするとあなたがこの世に存在したことによって世の中が豊かになるわけです。簡単なことなのです。ですが、やはり真実です。
地上世界は単純さと言う本通りから外れて、ややこしい複雑なわき道に迷い込んでおります。あまりにも複雑なものに惑わされて単純な真理が受け入れられなくなっている精神構造の人が大勢います。ですが、単純な真理は単純であるがゆえにこそ強いのです。
続いて霊界の息子さんのことについて奥さんにこう語った。
「そのうちお子さんは新しい世界で発見したことが伝えられるようになって、奥さんはその驚異に満ちた話に圧倒されることでしょう。
ですが、その前にどうか次のことをよく理解してください。冷たいことを言うと思わないでください。本当のことを謙虚にそして真剣に申し上げます。死は、死ぬ人自身にとって少しも悲劇ではありません。あとに残された人にとってのみ悲劇なのです。暗黒の世界から光明の世界へ旅立つことは悲しむべきでことではありません。
あなたが嘆き悲しむ時、それは実はわが子を失った自分の身の上を悲しんでいらっしゃるのであり、自由の身となった息子さんのことを悲しんでおられるのではありません。息子さんは地上にいたときよりずっと幸せなのです。もう肉体の病に苦しむことがないのです。刻々と蝕まれていくということもありません。内部の霊的資質を開発し、それを何の障害に邪魔されることもなく自由に発揮し、それを必要とする人のために存分に役立てることが出来るのです。
あなたは見慣れたあの姿が見なれなくなったことを淋しがっておられるのです。物的身体が二度と見られなくなったことを嘆いておられるのです。しかし本当の息子さんは立派に元気で生きておられるのです。ただその手で触ってみることが出来ないだけです。どうかその物的感覚の世界、五感と言うお粗末な魂の窓の向こうに目をやり、霊的実在を知ることによって得られる叡智を身につけるように努力なさってください。
死は生命に対して全く無力なのです。生命は常に意気揚々としています。愛する息子さんは決してあなたのもとを去ってはいません。むしろ死によって霊的にはさらに身近な存在となっているともいえるのです。むろんそのことが今のあなたには理解できないことは私も承知しております。
なぜならあなたは物質の世界に生き、物質の目で見つめておられ、霊の世界の素晴らしい壮観がご覧になれないからです。しかし、いつの日かその物質のベールが取り除かれて霊的な目が開かれれば、あなたも新しい世界の眼を眩まんばかりの光輝をご覧になり、人生には完ぺきな償いの法則があり、すべてが神の摂理によって治められていることを理解されることでしょう。
私も何とか力になってあげたいと思っているのですが、そのためには、あなたと私とは同じ人生を二つの異なった角度から眺めている事を忘れてはなりません。
ご主人から地上の人間としての心がけについて問われて・・・
「私に言わせればそれは至って簡単なことであり、なぜ地上の人間がそれを難しく考えるのか理解に苦しみます。あなたも他の全ての人間と同様に、為すべき何らかの仕事があってこの物質界に誕生してこられたのです。時には内省の時を持って、果たしてこれが自分にとってほんとうの仕事なのだろうか。世の中を啓発するうえで少しでも役に立っているだろうか。知識の蓄積を怠ってないだろうか。獲得した霊的真理を人に分け与える努力をしているだろうか。・・・これで最善を尽くしていると言えるだろうか。正直に自分にそう問いかけてみることです。そうすればおのずと答えが出てまいります。
それだけでいいのです。自分に正直になり、最善を尽くす・・・それだけでいいのです。宗教的信条や教義などは必要ないのです。自分は今何をなすべきかを素直に認識するだけでいいのです。その心がけを日常生活で徹底させれば、決して道を誤ることはありません。この物質界に誕生してきた目的を成就させていることになるのです。
私たち霊界の者の目には、本当は存在してはならない暗闇の中で生きている何億、何十億とも知れぬ神の子の姿が見えます。荒れ果てたみじめな家屋で空腹と渇きに苦しみながら、生得の権利であり神からの遺産であるところの〝魂の自由〟を奪われた生活を送っております。
その一方には、己の飽くなき貪欲を満たさんがためにそうした無数の同胞を虐げ続けることに知恵を絞っている者もいます。そこで私は霊性に目覚めた方々に申し上げるのです──勇気を持って闘いなさい。あらゆる不正、あらゆる闇、あらゆる横暴、あらゆる不公平と闘いなさい。その人の背後には人間的煩悩から解放された霊の大群が控え、鼓舞し援助し、決して見捨てるようなことはいたしません、と。
これが知識を伝達する手段をお持ちの方に私からお願いしていることです。私の言わんとしていることがお分かりですね。為さねばならないことがたくさんあります。あなたも含めて、死後存続の確証を得たいと望んでおられる方に申し上げたいのは(確証はおろか)霊的知識にめぐり合う機会すら得られない人が無数にいるということです。
あなたも私たちと同じ視野に立って地上世界をご覧になることです。そうした無数の人たちがいずこへ向かうべきかも分らぬまま、観念と不安を抱きつつ狼狽し、途方に暮れた生活を送っております。道を見失っております。と言って、永年にわたって権威があるかに思ってきた宗教はもはや信じられなくなっております。
暗中模索と挫折の繰り返しです。そこで私たちは考えたのです──良い道具(霊媒・霊能者)さえ用意できれば安心と確信と自信を生み出す知識の光をふんだんに地上へもたらすことが出来るであろう。そして神が意図された通りの生き方、つまり平和と協調と愛に溢れた生活が出来、神の一部として霊性が要求するところのものを追及することにいそしむ事になることであろう、と」
もうひと組の夫婦は娘を失っていたが、今はもう連絡が取れて得心している。その日の要望は、自分たちだけで霊的交信が持てるようになりたいので、そのためのアドバイスを聞く事であった。
趣旨を聞いてシルバーバーチはこう答えた。
「お二人がお考えになっている事を実現するのは容易なことではありません。戦争という特殊な情勢が地上と霊界との関係に大きく影響しており、連絡が大変混乱していることをまず認識しなければなりません。ご自宅で交霊会を催そうとしてもなかなかうまくいかないのはそのためです。
永年の経験を持つ霊媒と強力な背後霊団を控えているサークルにおいてさえ、今は交信が非常に厳しくなっております。まして初心者であるあなた方が巧くいかなくても不思議ではありません。
まず第一に、まだ霊能力そのものが十分な時間をかけて鍛錬をされておりません。指導と強化がなされておりません。まだこれからという段階です。今の状態で行うと近づいた霊の誰にでも好きに操られてしまいます。それに、霊力を補充してくれるメンバーが足りません」
「忍耐がいると思っております」と奥さんが言うと、
「それもそうですが、メンバーが少なくとも三人以上は必要です。お二人だけでは霊力の相乗効果が十分に出ません。その結果をそちら側からドアを開けることが出来ても、そのドアから入ってくるお客さんを整理する力が足らないことになります。すると当然、開けっ放しのドアからゾロゾロと際限もなくお客さんが入ってきて混乱してしまいます。そうした点を改めない限り成功は望めないと思います」
(その成功の意味が大切であろう。そうしたお客さんが〝しゃべる〟霊言現象にしても〝書く〟自動書記現象にしても、現象そのものなら簡単に成功するであろうけど、果たしてその〝通信霊〟が期待した通りの人物なのか、それとも、イタヅラ霊がそう名乗っているにすぎないのかが問題である。これには霊媒の霊格と入信の程度、審神者(サニワ)の霊格と体験と直感力が絡んでくるのでそう簡単には片付けられないが、一番危険なのは唯々諾々(イイダクダク)として何でも有り難く拝聴してしまう安易な好奇心と慢心である)
メンバーの一人が「招かざる客が入らないようにするのが支配霊の役目ではないのでしょうか」と聞くと、
「そうなのですが、そのためにはそれなりのエネルギーを供給してもらわねばなりません」
「その門番の事ですが、どんな責任を負っているのでしょうか」とご主人が尋ねる。
「門番の仕事は門の番をすることです。ですが、そのためには入ってほしくない霊を締め出すために必要な〝棚〟をこしらえられるだけのエネルギーを供給してもらわねばなりません。そのエネルギーはあなた方人間からいただくのであり、それが総合されて初めて威力を発揮するものであることをご存知でしょうか。出席者の一人一人から少しずついただいて、それを責任者である支配霊がまとめるのです。そこで霊界側で用意したエネルギーをミックスして交霊会の運営のために使用するのです。
もし誰かれの区別なく通りかかりの霊にどうぞお入りくださいと言わんばかりにドアを開けっ放しにしておくと、みんな喜んで入ってきます。なぜかというと、それはいわば薄暗い場所に明かりを灯すのと同じで、その明りを見て低級な霊が続々と集まってきます。すると門番も制しきれなくなります。それだけのエネルギーを十分に具えていないからです。
このサークルではそういう事態は起こりません。何十年もかけてメンバーを厳選したうえでサークルを構成しているからです。それでも極めて稀にではありますが、急に邪魔が入って、少しの間中断せざるを得なかったことはあります。ですが、悪だくみを持った者ばかりとは限りません。いろんなタイプの霊がいるものです。ただ単に地上の人間と話をしてみたいと思う者、好奇心から割りこんでくる者、軽薄な見栄からおせっかいを焼く者など、いろいろです」
このあとシルバーバーチは、そうした交霊会を開くことを考えるよりも、二人は霊的知識という宝を手にしているのだから、それを知らないまま悲しんでいる同じ境遇の人たちに教えてあげる仕事に精を出すべきである事を説いた。すると哲学に興味を持っているご主人が哲学的な問題を提出した。
「宇宙創造の目的についてどういうお考えをお持ちですか。その目的に付随して、なぜこんなに多くの苦難と邪悪と苦闘とが無ければならないのか、それがわかりません。人類の立場からはそうした目的が理解できないのです」
「目的はあります。永遠の時の中で成就すべき仕事があります。生命は無窮の過去から存在し未来永却にわたって存在しつづけます、しかしその生命のたどる道は、一つの頂上を極めると次の頂上が見えてくるという、果てしない進化の道則です。一つの頂上を極めるごとにあなたの霊的資質が向上していくのです。
鍛錬によって人間は内部の神性が目覚め、より広く、より豊かなものを表現してまいります。地上的なアカが落とされ、霊の純金が姿を表します。これは当然のことながら苦痛を伴わない過程ではあり得ません。が、それも宇宙的機構に仕組まれた一部・・・比較対象の中で真理に目覚めるように意図された機構の一部なのです。
苦痛を知らずして健康のありがたさを知ることはできません。日陰を知らずして日向のありがたさは分かりません。そうしたことの全てが、リズムと調和の中で展開する創造活動の一大パノラマを演じているのです。
人間は永遠の海を当てもなく波に翻弄されているコルクではありません。永遠の創造活動の中の不可欠の存在なのです。自分の努力、自分の行為、自分の生活がそうした永遠の創造過程の何がしかの貢献をしているのです。神の息吹の一部であり、無限なる霊の一部であり、永遠の宇宙の一部であり、それが自分を通して働き、雄大なる宇宙機構の光に光輝を加えることになるのです」
「取りあえず私たちにもそれが分るとしましょう。苦と楽の効用は理解できます。しかし為になっているとは思えない存在がたくさんあるように思うのです」
「人間生活のことでしょうか」
「人間生活もそうですが、とくに小鳥や昆虫のような動物の世界においてです。比較対象と言う機構を理解するよう要求されても、自分の置かれた苦しい立場からしか見つめることが出来ません」
「こう申しては失礼ですが、あなたは物事をガラス越しに薄ぼんやりと見つめておられます。真剣ではいらっしゃるかもしれませんが、極めて小さいレンズで覗いて全体を判断しようとなさっています。あなたにはまだ永遠の尺度で物事を考え判断することがお出来になりません。この途方もなく巨大な宇宙の中にあって、ほんの小さなシミほどの知識しかお持ちでないからです。しかし今、それよりは少しばかり多くの知識を私たちがお授けしているわけです。
少しだけです。全知識をお授けしましょうとは申し上げません。それは私たちにも持ち合わせていないのです。私たちはあなた方人間より少しばかり多くの知識を手にしているだけです。あなた方より少し永い生活体験があるからにすぎません。あなた方がこれから行かれる世界、私たちが本来の住処としている世界において、自然法則の仕組みと働きのいくつかを見てきているからです。
その体験と、私たちよりさらに多くを知っておられる上層界の方々から教わったことを土台として私たちは宇宙人生の計画と目的について一段と明確な認識を得ております。そこに完璧な摂理の働きを見ております。自然の摂理です。手落ちということを知らない法則、絶対に誤ることのない法則、極大から極小に至るまでの宇宙間の全存在の全側面を認知し、何一つ無視することのない法則、すべてを包括し、すべての活動に責任を持つ法則です。
私たちはその法則の完璧さに驚嘆しております。絶対に誤ることが無いのです。そして私達は、これまでに明かして頂いたその完璧さゆえに、愛と叡智と慈悲によって育まれた完全な計画を知り、現時点で理解しえないこと、まだ明かして頂いていない側面もまた、同じく完璧な法則によって支配されているものと確信しております。そう確信するだけの資格があると信じるのです。
その法則が構想においても働きに置いても完璧であるからには、当然その中に人間的な過ちに対する配慮も用意されているに決まっております。埋め合わせと懲罰が用意されております。邪悪の矯正があり、過ちと故意の悪行に対する罰があり、何の変哲もなく送った生活にもきちんとした裁きがなされております。私から申し上げるのはそれだけです。
私がこれまで送ってきた(三千年に亘る)生活において〝自分は神の法則によって不公平に扱われている・・・不公平だ〟と真剣に言える者を一人も知りません。私の知るすべての者が神の永遠の公正はその規範において無限であり、その適用性において完全であることを認めております」
「霊界にも時間があるのでしょうか。ある事が行われなくなって霊が困るというようなことがありますでしょうか」
「地球と接している幽質の界層を超えてしまうと、あなた方が理解しておられるような時間は存在しなくなります。こちらの世界は地球の自転とは何の関係もありません。昼もなく夜もなく、季節の変化もありません。地上世界で使用されている意味での時間はありません。太陽は見たところ昇ったり沈んだりしていますがこちらにはそういうものはないのです。以上が最初のご質問に対する答えです。二番目のご質問はよく分かりませんでした。もう少し分かりやすく述べてください」
ここで代わって奥さんが「定期的に開かれているサークルを中止したら娘が残念がるということです」と言うと・・・
「それに対しては〝イエス〟という答えしかないでしょう。ですが、次のことを知っていただかねばなりません。私もあなた方の世界のことは少しばかり体験しており、いろいろと難しい面を理解しておりますが、そうした中で、忙しい時間の幾ばくかを割いて、背後霊との霊的な交流を持つことを心がけてくださると、背後霊はとても助かるということです。そして、これは何度も申し上げていることですが、背後霊とのつながりを求め、たとえ表面には何の反応もなくても、霊的には必ず何かが起きているものです。
ですからたとえばテーブルも何も用いずに何分間か、ただお二人で座って黙アyすると言うだけでもいいのです。言葉に出すのもいいかもしれませんが、それも必ずしも必要ではありません。心を空にして穏やかな気持ちの中で精神を統一するだけで十分です。
その統一状態の中で霊の力が働くのです。そうした静かな精神状態と言うのが、物的生活に振り回されている騒々しさに一時的にストップをかけることになります。
地上の人間は静かな精神状態を持つことの効用を十分に認識しておりません。私がよく申し上げているように、あなた方にとって無活動の時が私たちにとって活動の時なのです。あなた方が静かに受け身の心でじっとしている時が私たちにとって一番近づきやすいからです。
今お二人が御嬢さんをご覧になられたらびっくりなさいますよ。どんどん大きくなっておられます。今ではもうお二人が知っている曽てのあの少女ではありません」
「成長したのだなあと思うことがあります」と母親が言う。すでに何人もの霊媒を通じていろいろと証言を得ているからである。
「もちろんご両親への愛は変わっていませんよ。それが一番大切なのです」
最後に二人がシルバーバーチに礼を言いかけると、いつものようにこう述べた。
「私が言ったからと言って何もかも信じることはありません。私だって間違ったことを言っているかもしれません。あなた方にとってなる程と得心の言ったことだけを受け入れてくださればいいのです。これは私がいつもお願いしていることです。
あなた方は私たちに手を貸し、私たちはあなた方を援助するという形で、お互い協力し合いながら宇宙の真理を極めて行くのです。お互いがお互いから学ぶことがたくさんあります。誰一人として間違いを犯さない人はいませんし、全能者ではないからです。私たちだって皆人間的存在です。永遠の道を旅する巡礼者なのです」