1997年10月
・斜め屋敷の犯罪(島田荘司) | ・御手洗潔の挨拶(島田荘司) |
・異邦の騎士(島田荘司) | ・暗闇坂の人喰いの木(島田荘司) |
・水晶のピラミッド(島田荘司) | ・眩暈(島田荘司) |
・アトポス(島田荘司) | ・龍臥亭事件(島田荘司) |
・寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁(島田荘司) | ・出雲伝説7/8の殺人(島田荘司) |
・北の夕鶴2/3の殺人(島田荘司) | ・確率2/2の死(島田荘司) |
・Yの構図(島田荘司) | ・灰の迷宮(島田荘司) |
・夜は千の鈴を鳴らす(島田荘司) | ・奇想、天を動かす(島田荘司) |
・羽衣伝説の記憶(島田荘司) | ・飛鳥のガラスの靴(島田荘司) |
・切り裂きジャック・百年の孤独(島田荘司) | ・氷舞-新宿鮫Y-(大沢在昌) |
・従者の栄光(デイヴィッド・コンプトン) | ・未明の悪夢(谺健二) |
・姑獲鳥の夏(京極夏彦) | ・狂骨の夢(京極夏彦) |
・殺人台本(レイ・コナリー) | ・神々の山嶺(いただき)(夢枕獏) |
・幻惑の死と使途(森博嗣) | ・新宿鮫(大沢在昌) |
・毒猿-新宿鮫U-(大沢在昌) | ・屍蘭-新宿鮫V-(大沢在昌) |
・B・D・T-掟の街-(大沢在昌) | ・涙はふくな、凍るまで(大沢在昌) |
・名も無き墓標(ジョン・ダニング) | ・夜が牙をむく(スタン・ウォッシュバーン) |
・エレクトリック・ミスト(ジェームズ・リー・バーク) | ・猿の証言(北川歩実) |
・金曜日ラビは寝坊した(ハリイ・ケメルマン) | ・七日間の身代金(岡嶋二人) |
・殺人者志願(岡嶋二人) | ・七年目の脅迫状(岡嶋二人) |
・どんなに上手に隠れても(岡嶋二人) | ・タイトルマッチ(岡嶋二人) |
・チョコレートゲーム(岡嶋二人) | ・そして扉が閉ざされた(岡嶋二人) |
・焦茶色のパステル(岡嶋二人) | ・クラインの壷(岡嶋二人) |
・炎の裁き(フィリップ・マーゴリン) | |
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斜め屋敷の犯罪
著者 | 島田荘司 |
出版(判型) | 光文社文庫 |
出版年月 | 1989.1 |
ISBN(価格) | 4-334-70870-6(\560)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
島田荘司氏の本は、なんといってもトリックのスケールがすごいところが特徴ですよね。この本は、その最たるものと言ってよいのではないでしょうか。
場所は、日本の最北端、宗谷岬。高台の上に斜めに傾けて建てられた西洋館が舞台です。その館の主、浜本は、クリスマスの夜に客を招待してパーティを開いていた。そして起こる密室殺人。密室ですよ、密室。さて、密室はどうやって破られるのか。警察(この中に、この後もたびたび出てくる牛越刑事がいるのですが)もお手上げ状態のところへ、御手洗登場。その驚くべきトリックを暴いてくれるのです。
島田さんは、最近こういう本を書いてくれないんですが、再びカムバックを期待したいですね。
■入手情報:講談社文庫(1992.7)
御手洗潔の挨拶
著者 | 島田荘司 |
出版(判型) | 講談社文庫 |
出版年月 | 1991.7 |
ISBN(価格) | 4-06-184943-3(\480)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
御手洗潔の短編が4つ入った作品。私はこの中では、最初の「数字錠」が一番好きです。御手洗の以外な一面が見られる作品。私は、この作品を読んでいらい、この角砂糖に火をつけるコーヒー(普通角砂糖に火をつけるのは、紅茶だと思うのですが)を飲んでみたくて仕方がないのです。でも一度もお目にかかったことがありません。どこかこのコーヒー(紅茶でもいいです)を見かけた方、あるいはそういうものを出している店を知っている方、是非ご一報ください。
異邦の騎士
著者 | 島田荘司 |
出版(判型) | 講談社文庫 |
出版年月 | 1991.12 |
ISBN(価格) | 4-06-185044-X(\560)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
この作品は、御手洗ファンには見逃せませんね。っていうのも、この話、御手洗潔初登場というべき作品なのです。出版上はもちろん、占星術殺人事件が最初ですが、お話の時間的経過からすると、この作品が、御手洗の最初の事件(?)ですね。
主人公は、記憶を無くした<ある男>。自分は誰なのか探る内に、自分が妻子を殺したのではないかという事実と直面し、悩む男。本当に彼は、妻子を殺したのか。そして、彼は誰なのか。シリーズで読んでいる方は、最後にこの男が誰なのかということは、大変重要になってきます。御手洗ファンは是非読んでください。
■入手情報:原書房[改訂愛蔵版](1997.10)
暗闇坂の人喰いの木
著者 | 島田荘司 |
出版(判型) | 講談社 |
出版年月 | 1990.10 |
ISBN(価格) | 4-06-193995-5(\1700)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
この本も、御手洗ファンには見逃せない作品。ここからしばらくレギュラーになる、松崎レオナと御手洗の出会う作品。といっても、とりあえず怖いです。このハードカバーの絵も怖い。装丁が怖い本は、置いておくと怖さを増します。
古いお屋敷、音の狂った鐘、大楠の木の上の死者。まるで横溝正史の世界ですよね。そこで嵌まって、恐怖の結末まで一気に読んでしまいました。この人の文体は、本当に目を離せなくなりますね。
■入手情報:講談社文庫(1994.6)
水晶のピラミッド
著者 | 島田荘司 |
出版(判型) | 講談社 |
出版年月 | 1991.9 |
ISBN(価格) | 4-06-205539-2(\2000)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
この本は、結構あちこちで酷評されてましたねえ。私は、結構好きなのですが。確かに、推理小説として読むと「何だこりゃあ」ってことになるのかも知れないのですが、お話として読むなら絶対面白い。これだけ長い本で、一気に読めてしまうのが、さすが島田荘司といったところでしょうか。
暗闇坂の人喰いの木に続き、松崎レオナ登場作品。彼女と御手洗の行く末も、結構楽しみ(?)なのですが、どうなんでしょうねえ。
全然内容について書いていませんが、私のつたない文章では、この本を要約できません(というか、読んだらわかります)。誰か感想を書いてください。
■入手情報:講談社文庫(1994.12)
眩暈
著者 | 島田荘司 |
出版(判型) | 講談社 |
出版年月 | 1992.9 |
ISBN(価格) | 4-06-206063-9(\2000)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
眩暈がするようなのは、装丁だけではありません。中身も本当に眩暈がするような作品です。しかも訳が分からなくて、気持ち悪い。私が一番衝撃を受けたのが、エレベーターのシーンでした。私は生まれたときから高層マンションに住んでいるので、エレベーターというのが日常にある生活をしています。その私が昔よくみた悪夢の1つに、エレベーターに乗って、自分の住む階を押しているのに、そこにつけないという夢があったんです。それが、どうしてもその階につけないというやつと、この本のようにあるはずの無い階についてしまうというパターンがあって、怖かったですねえ。だからこの本を読んだときの怖さもひとしおでした。
■入手情報:講談社文庫(1995.10)
アトポス
著者 | 島田荘司 |
出版(判型) | 講談社 |
出版年月 | 1993.10 |
ISBN(価格) | 4-06-206736-6(\3500)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
一作飛ばして、再び松崎レオナ登場作品。この本を見たときの衝撃はわすれられません。あくまで「見たとき」。箱入り、しかも当時(1993年)でこの値段(3500円)。今だって高い。3500円ですよ。あの時は、まだ大学に入ったばかりで、この値段は痛かった(泣)
アトポスって、言われるまで何のことかわからなかったのですが、分かってしまえば、なーんだって感じでした。でもそのなーんだというテーマをここまでのお話にしてしまう島田荘司に感服。御手洗の登場がまた面白くて笑えました。
■入手情報:講談社文庫(1996.10)
龍臥亭事件
著者 | 島田荘司 |
出版(判型) | 講談社ノベルス |
出版年月 | 1996.1 |
ISBN(価格) | (上)4-334-07174-0(\940)【amazon】【bk1】 (下)4-334-07175-9(\940)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
なんか、島田氏がノンフィクションに走ってしまって、全然読まなくなっていたのですが、しばらくぶりにフィクションに帰ってきたということで、早速読みました。
しかし・・・・この話は、他の人の感想が一番聞きたい作品でもあります。うーん。あの途中の「あれ」は何なのでしょうか。まあ面白かったからいいのですが。何しろ、最後は以外な結末が残されていて、飛鳥のガラスの靴との微妙な連携も見えるという、ファンにとっては見逃せない作品でもあるのですが。読んで見た方、感想をお知らせください。
■入手情報:光文社文庫(1999.10)
寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁
著者 | 島田荘司 |
出版(判型) | 光文社文庫 |
出版年月 | 1988.1 |
ISBN(価格) | 4-334-70672-X(\520)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
覗きをしていた男が、顔のない死体を発見した。しかし、彼女と思われる人物は、死亡推定時刻に寝台特急で目撃されている。彼女はだれなのか。
題名からして、もうアリバイトリック系って感じですよね。誰とは言いませんが、そういう話ばっかり書いていらっしゃる方がいますね。「はやぶさ」には乗ったことがないのですが、一度乗ってみたいものです。
出雲伝説7/8の殺人
著者 | 島田荘司 |
出版(判型) | カッパ・ノベルス |
出版年月 | 1984.6 |
ISBN(価格) | 4-334-02559-5(\680)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
山陰地方を走る6つのローカル線の駅と、大阪駅に、女性のバラバラにされた死体が着いた。なぜ犯人はバラバラにした死体を、こんな風にバラバラに列車に乗せたのか。また、そんなことは可能なのか。
これもまた、時刻表トリックものですね。吉敷が自分の仮説を証明するために、列車から列車へ走るところなど、ちょっと懐かしい感じのする推理小説です。
■入手情報:光文社文庫(1988.4)
北の夕鶴2/3の殺人
著者 | 島田荘司 |
出版(判型) | 光文社文庫 |
出版年月 | 1988.7 |
ISBN(価格) | 4-334-70768-8(\560)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
吉敷竹史の元妻、加納通子が出てくる最初の作品。彼女は、吉敷シリーズでもかなりレギュラーの部類に入る人間ですから、是非ここから読んでもらいたいですね。吉敷の過去も分かる、ファンには見逃せない作品です。
お話は、通子が捜査一課の吉敷のところへ、電話をかけてくるところからはじまります。通子の様子が変だと思った吉敷は、上野まで追いかけますが、結局会えない。でも、「夕鶴」の9号車に通子らしき人が見えた。ところが次の日、その「夕鶴」で通子らしき死体が発見される。びっくりした吉敷は、北海道へ向かうが・・・というもの。
残念ながら、この列車「夕鶴」はかなり前に廃止になってしまいました。それ以前に一回乗ってみたかったのですが。トリックのスケールでは、ピカいちの島田さん。彼ならではの話をお楽しみください。吉敷と、通子の動向にも注目。
確率2/2の死
著者 | 島田荘司 |
出版(判型) | 光文社文庫 |
出版年月 | 1985.9 |
ISBN(価格) | 4-334-70214-7(\420)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
吉敷が、身代金を持って走る話。これじゃあ訳がわかりませんね。でもそういう話です。犯人がなぜ吉敷を引き回すのか、また犯人の目的は何なのか、がこの話のポイントです。
ひたすら走る吉敷が面白い、異色作。
Yの構図
著者 | 島田荘司 |
出版(判型) | 光文社文庫 |
出版年月 | 1990.7 |
ISBN(価格) | 4-334-71169-3(\600)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
上野駅に相前後して到着する上越・東北新幹線から、それぞれ男女の服毒死体が見つかった。その関連性から、疑問をもった吉敷は、謎を追って福岡へ。
今は、東北新幹線も、上越新幹線も上野が終着ではないんですよね。時代は変わったものです。東北新幹線は、「つばさ」だの、「こまち」だのをくっつけて走っているし。変わったところもあれば、全然変わらない「いじめ問題」。それがこの本のテーマでもあります。さて、吉敷は今度はどんな謎を掘り出してくれるのでしょうか。
灰の迷宮
著者 | 島田荘司 |
出版(判型) | 光文社文庫 |
出版年月 | 1991.8 |
ISBN(価格) | 4-334-71377-7(\500)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
新宿で、バスが放火された。放火されたバスから逃げ、タクシーにはねられ死亡した男のことを疑問に思った吉敷は、一路鹿児島へ。なんて書くと、またトラベルミステリか、と思われそうですが、これもまたトリックがすごい。あまりにすごくて笑えるのですが。
こうして見ると、吉敷刑事は、日本全国を渡り歩いているように思えますね。うらやましい限りです。警視庁の刑事さんは、皆こんななのでしょうか。
夜は千の鈴を鳴らす
著者 | 島田荘司 |
出版(判型) | 光文社文庫 |
出版年月 | 1992.1 |
ISBN(価格) | 4-334-71453-6(\500)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
夜行列車で亡くなった女性は、死ぬ前に「怖い、怖いナチが来る」と口走っていた。「ナチ」とは何か。また、彼女はどうして死んだのか。
この話を読んだとき、高木彬光の「人形はなぜ殺される」を思い出しました(こう言ってしまうと、勘のいい人は、トリックがわかってしまうかもしれないのですが)。何を書いてもヒントになってしまいそうで、あんまり書けないのですが、島田さんの本は、この心理描写というか、鬼気迫るといった文章が本当にすごいですね。これにはまって全部読んでしまいます。
奇想、天を動かす
著者 | 島田荘司 |
出版(判型) | カッパノベルス |
出版年月 | 1989.9 |
ISBN(価格) | 4-334-02834-9(\710)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★★ |
この話はすごい。本当にすごい。吉敷シリーズで、何を勧めると言われたら、まずこの話をあげます。ただ、「金田一少年の事件簿」を全巻読んでいる人は読むのをやめたほうがいいかも(その意味は、どちらも読めばわかります)。
事件の発端は、消費税が導入された4月、浮浪者のような老人が、消費税を払わず店をでて、追いかけてきたおばさんを刺してしまうという、単純なものでした。警察も、くだらない殺人事件としてあまり真面目に取り組んでいません。しかし、吉敷だけは違っていました。なぜ老人は、おばさんを刺したのか。本当に消費税が払いたくないだけだったのか。疑問に思った吉敷は、上司との対立をものともせず、一人で、事件を調べます。そして浮かび上がる真実。
この消費税が導入されたときって、結構大騒ぎでしたよねえ。社会党が大躍進した年でもありました。その消費税を前面にもってきて、社会派ミステリーのような感じを出しながら、この大胆なトリック。久々に、トリックに驚いた感じでした。超おすすめ作です。
羽衣伝説の記憶
著者 | 島田荘司 |
出版(判型) | 光文社文庫 |
出版年月 | 1990.2 |
ISBN(価格) | 4-334-71087-5(\440)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
この話は吉敷シリーズの番外編と行ってもよいでしょう。でも、この後のシリーズ展開を追うには、絶対逃せない1作。吉敷は、捜査の途中で、再び失踪してしまった元妻、通子の作った彫金作品を見つけます。事件の間ずっと通子の事を考えている吉敷。それが、ふとした事で、通子を発見することになるのですが。一種の恋愛小説と言ってもいいかもしれません。
飛鳥のガラスの靴
著者 | 島田荘司 |
出版(判型) | カッパノベルス |
出版年月 | 1991.12 |
ISBN(価格) | 4-334-02960-4(\740)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
俳優大和田の家に、その俳優の手首の入った小包が届く。その事件を知って興味を持った吉敷は、管轄外にも関わらず、その謎を解こうとする。一方、羽衣伝説の記憶で再会を果たした元妻、通子が再び失踪してしまう。さて、吉敷はどうする?
「飛鳥のガラス靴」というのは、作品の中に出てくる本の名前で、これがまた重要なアイテムなんですね。通子との話は、この後の話にも関係してくるので、是非読んでください。
■入手情報:光文社文庫(1995.2)
切り裂きジャック・百年の孤独
著者 | 島田荘司 |
出版(判型) | 集英社文庫 |
出版年月 | 1991.8 |
ISBN(価格) | 4-08-749737-2(\440)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
ベルリンで、つぎつぎと娼婦が惨殺される。しかも、その殺され方は、19世紀末イギリスを震撼させた「切り裂きジャック」を思わせるもの。なぜ彼は、女を切り裂くのか。
これはすごいです。切り裂きジャックって、つかまってないんですよね。あれだけ有名な殺人者というのも、なかなかいないのではないでしょうか。彼(?)は、この本の犯人のように、切り裂くことに何か意味を見出していたのでしょうか。犯罪史の本には必ずと言ってよいほどでてくる「切り裂きジャック」。そういえば、来年で210年目ですね。(だから何?)
氷舞-新宿鮫Y-
著者 | 大沢在昌 |
出版(判型) | カッパノベルス |
出版年月 | 1997.10 |
ISBN(価格) | 4-334-07259-3(\848)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
今回の新宿鮫は並ではありません。まず厚さ。姑獲鳥の夏と同じような厚さです。しかも、人間模様に大異変が。
前作炎蛹で結局捕まえられなかったロベルト・村上(仙田)。鮫島は仙田を捕まえようとやっきになっていますが、その捜査で浮かび上がってきたのがクレジット・カードの偽造グループです。内偵をしているうちに渋谷の平出組が浮かび上がって来ます。
一方、新宿のホテルでアメリカ人が殺されます。そこにはコカインらしき物もあり鮫島が呼ばれますが、そこへあの外事一課の香田くんがでてくるんですねえ。何故殺人現場に外事が? 今回は、鮫島VS警視庁公安というすごい闘い。屍蘭のとき以上の危機が、鮫島を襲います。そういえばあのとき助けてくれた藤丸刑事部長も、ちょびっと活躍。
人間模様に大異変がと書きましたが、これは阪神大震災級ですね。これは書き下ろしではなく、連載されていたものなので、知っている人は知っていると思いますが。是非読んでください。ただ、読むときは、全巻読んだ方がいいですよ。ついでに、警察庁と、警視庁銃器対策課にリンクを張ってみました。
従者の栄光
著者 | デイヴィッド・コンプトン |
出版(判型) | ハヤカワ文庫 |
出版年月 | 1997.9 |
ISBN(価格) | (上)4-15-040850-5(\680)【amazon】【bk1】 (下)4-15-040851-3(\680)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★ |
主人公は、超愛国者の青年・グリア。CIA工作員として、安全保障問題担当補佐官ジェンキンスをスパイすることになった彼。しかし、ジェンキンスに同行したドイツで、ジェンキンスは死体になってしまう。逆にCIAに追われる身になったグリアは、周りの人間に次々と裏切られながらも、自分のつかんだ真相を公表しようと躍起になる。
この手の話って、どうも苦手なんですよね。面白いんですが、どうもいまいち現実味がない。まあ、小説だから現実味がなくていいとは思うのですが、話が壮大すぎてしまって、ちょっと退屈でした。しかも日本が悪者だし。いまさらドイツと日本が組むことがあると本当に考えてるんでしょうかね、この作者は。「ライジング・サン」を見たときも思ったのですが、こちらが近いと思っているアメリカは、全然日本のことが分かってないですね。こういうのを、カルチャーショックと言うのでしょうか。
未明の悪夢
著者 | 谺健二 |
出版(判型) | 東京創元社 |
出版年月 | 1997.10 |
ISBN(価格) | 4-488-02353-3(\2000)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
第8回鮎川哲也賞受賞作。1995年1月17日に起きた阪神大震災の直中で、人が惨殺される。なぜこんな時に、人を殺さなければならないのか。また、犯人の目的は何なのか。
すごい話です。なんか感想を書くのさえ気がひけてしまうような。もちろん殺人事件が中心(?)と言えるのでしょうが、全体的には、神戸を襲った「あの事件」の生生しさが、いたるところに出ているドキュメンタリーのような気もします。どっちに主眼を置いて読んでも、引き込まれてしまいます。前書きを読んであれからもう2年半も経つのかと思いましたが、1月17日の朝、テレビで見た神戸から立ち上る火柱の映像は、私も昨日の事のように、思い出せます。
姑獲鳥の夏
著者 | 京極夏彦 |
出版(判型) | 講談社 |
出版年月 | 1994.9 |
ISBN(価格) | 4-06-181798-1(\960)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
京極夏彦さんのデビュー作。この後の作品にも微妙にからんでくるので、京極堂シリーズを読むなら、是非、この1作目から読んでください。
私は、この人の本は、ホラーだと思っていたんですよね。だって、表紙が怖いでしょう。それが、本当に読むものが無くなったとき、ちょっと読んで見たら、ぜんぜんホラーじゃない。すごい面白いではないですか。やたらとお化けにくわしい古本屋で拝み屋の京極堂、優柔不断な作家の関口、エキセントリックな探偵・榎木津。まず登場人物が面白い。
内容もすごいです。最後まで読んで、「なんだこりゃあ」という人がもしかしたらいるかもしれません。はっきりいってホラーっちいところもあります。所謂今までにあったミステリとは毛色が違う。でも、この本なら許せます。全体的にそれを許してしまうような雰囲気が漂っているんですよね。私はこの人の本の雰囲気が大好きです。
■入手情報:講談社文庫(1998.9)
狂骨の夢
著者 | 京極夏彦 |
出版(判型) | 講談社 |
出版年月 | 1995.5 |
ISBN(価格) | 4-06-181844-9(\1100)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
京極堂シリーズ第3弾。今回は、カルトの話です。京極堂も十分カルトのような気がするのですが。フロイトに取り付かれた降旗や、伊佐間屋が出てくる作品。この本は、今までのとはちょっと違ってちょっと俗的で、ありがちな作品になっているような気がします。私はあまりこの話は好きではありません。というか、この前の魍魎の匣であまりに衝撃を受けたので、ちょっと期待しすぎたということもありえますが。
■入手情報:講談社文庫(2000.9)
殺人台本
著者 | レイ・コナリー |
出版(判型) | 講談社文庫 |
出版年月 | 1997.9 |
ISBN(価格) | (上)4-06-263554-2(\781)【amazon】【bk1】 (下)4-06-263631-X(\781)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
この本の題名は、絶対「壁に映る影」がいいと思います。きっと読めばわかるでしょう。別に殺人事件がメインじゃないんです。売れない脚本家が、自分の彼女のための舞台脚本を書き、それが大当たり。それが映画プロデューサーの目にとまったはいいけれども、脚本家が思っていなかった方向へと物語がどんどん変わっていき・・・・という話です。映画が好きな人はわりと楽しめると思います。
でもやっぱり気になるのは、邦題。絶対直訳の「壁に映る影」のほうがいいと思うんですが、皆さんどうですか。
神々の山嶺(いただき)
著者 | 夢枕獏 |
出版(判型) | 集英社 |
出版年月 | 1997.8 |
ISBN(価格) | (上)4-08-774295-4(\1800)【amazon】【bk1】 (下)4-08-774296-2(\1800)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
ネパールの雑貨屋で、本当なら8000Mの山の中にあるはずのカメラが売られていた。それを見つけた登山家であり、写真家の深町は、その発見の経緯を探るうちに、伝説の登山家・羽生がいまだにエベレストをねらっていることを知り、今度は羽生にのめり込んでいく。そんなお話です。
テンポはよく、あっという間に読めてしまいました。でも、良く考えると、この本見た目は厚いのですが、一段なので、それほど長くないんですよね。でも、エベレストの中で、主人公が寒さに凍えるシーンなどは、本当に寒くなってしまいました。登山のことを知っていた方がおもしろいのでしょうが、私のように全然知らない人でも十分楽しめます。でも、帯のあのすごい言いようはどうかと思いますけど。
■入手情報:集英社文庫(2000.8)
幻惑の死と使途
著者 | 森博嗣 |
出版(判型) | 講談社ノベルズ |
出版年月 | 1997.10 |
ISBN(価格) | 4-06-181987-9(\930)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
萌絵ちゃんと、犀川先生のシリーズ第6弾。今回は、奇術師がメイン。箱から脱出する、という奇術を十八番とする奇術師が、舞台の上で死ぬのです。さて、犯人はどうやって彼を殺したのでしょうか。
この本のポイントは、「幻惑されること」だと思うのですが、皆さんどうでしょう。奇術、テレビ、そしてトリックのわからない殺人。どれも、表面だけみると幻惑されるものですよね。
萌絵ちゃんと犀川先生は、一応「婚約」していることになっているのですが、どちらも相変わらず。でも、萌絵ちゃんの雰囲気が、ちょっと変ったような気がするのは、私だけでしょうか。
この本、奇数章しか無いのですが、次作夏のレプリカで偶数章がでてきます。
新宿鮫
著者 | 大沢在昌 |
出版(判型) | カッパ・ノベルス |
出版年月 | 1990.9 |
ISBN(価格) | 4-334-02887-X(\730)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★★ |
新宿鮫こと鮫島警部が活躍するシリーズの第1巻。鮫島の過去が分かったり、レギュラーでもある晶とのなれ初めもでてくるので、シリーズで読みたいときは、是非この作品から読んでください。
この作品で、すっかりハードボイルドが気に入りました。本当に面白い。スピード感もさることながら、人間が良いのです。いかにもハードボイルドな主人公鮫島はもちろん、名前のせいで医者になるのを止めた鑑識官の「薮」、そして鮫島の上司で、やる気の見られないことから「マンジュウ」と渾名される桃井。みんな鮫島に関心が無いように見えながら、心憎い活躍をしてくれます。ストーリーについて書くのはやめましょう。読んでください。
毒猿-新宿鮫U-
著者 | 大沢在昌 |
出版(判型) | カッパ・ノベルス |
出版年月 | 1991.8 |
ISBN(価格) | 4-334-02942-6(\740)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
新宿鮫シリーズ第2弾。この本の後、不夜城を読むと、新宿の外国人の動きの変遷が分かって面白いかもしれません。
前作で大活躍だった晶は、今回はちょっと脇役に回ってしまって、鮫島と、殺人犯を追う台湾人、郭が中心に描かれています。私は、前作の方が好きなのですが、乱闘系が好きな方はこちらのほうがいいかもしれません。
■入手情報:光文社文庫(1998.8)
屍蘭-新宿鮫V-
著者 | 大沢在昌 |
出版(判型) | カッパ・ノベルス |
出版年月 | 1993.3 |
ISBN(価格) | 4-334-07031-0(\790)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
新宿鮫シリーズ第3弾。標題は、「しかばねらん」と読みます。NHKのテレビシリーズでもやったりして、案外有名な作品だと思います。
今回は、臓器売買が絡んでくる問題作。産婦人科と、エステという女性を中心として商売をする場所を舞台としているため、晶も今回は活躍します。しかも、今回は、鮫島も「汚職」の罪で懲戒免職の危機に。彼はどうやって危機を脱するのか、また中心人物をあげることができるのか。
今回は結構テーマが重いというか、はっきりしているため、前作のようなアクションより、推理系に近い感じになっています。
■入手情報:光文社文庫(1999.8)
B・D・T-掟の街-
著者 | 大沢在昌 |
出版(判型) | カッパ・ノベルス |
出版年月 | 1993.7 |
ISBN(価格) | 4-575-23159-2(\1700)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
このお話は、未来のお話です。といってもSFではなく、あくまでハードボイルドなのが、大沢さん。未来といっても2010年かそこらなので、もうすぐの話なのですが、この本が書かれたのは、1995年なので、当時だともう少し現実味があったかな、という感じです。
舞台は新宿。日本も外国人の制限をあきらめ、他民族社会になっています。新宿は無法地帯となり、街にあふれている外国人の子どもたちは、「ホープレス・チャイルド」と呼ばれています。その「ホープレス・チャイルド」出身の歌手を探せという依頼を受けた私立探偵が主人公。
未来を舞台にした、というのは意外でした。別にそれほど「未来」を意識しなくても読める作品。もう新書などでも発行されていますので、読んで見てください。
■入手情報:双葉文庫(1996.11)
涙はふくな、凍るまで
著者 | 大沢在昌 |
出版(判型) | 朝日新聞社 |
出版年月 | 1997.4 |
ISBN(価格) | 4-02-257150-0(\1500)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
大沢さんの作品にしては珍しく、なんとサラリーマンが主人公。でもこのサラリーマンただ者じゃない。前作はまだ読んでいないのですが、この2作目では主人公の坂田は、北海道に出張に行って事件に巻き込まれます。
サラリーマンのハードボイルドっていうのが、また笑えます。でも、話は本当にハードボイルド。殺されそうになったり、追いかけられたり大変なのです。この話を読んで前作も読みたくなったのですが、まだ手を出していません。少し本の発行が少なくなると、古い本にも手が出るんですけどね。
■入手情報:講談社ノベルス(1999.6)
名も無き墓標
著者 | ジョン・ダニング |
出版(判型) | 早川書房 |
出版年月 | 1999.12 |
ISBN(価格) | 4-15-170404-3(\680)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
このはなしは、結構前に書かれたもので、新聞記者が主人公になっています。この後ダニングはしばらく本を書かなかったようですね。それが死の蔵書で再び作家業に戻ってきたようです。
話の方は、サーカスのテントが焼失し、そこから身元不明の少女の死体が見つかったことから始まります。新聞記者のウォルターは、母親を探しているうちに事件に巻き込まれるというお話。どこか刑事ジョン・ブック目撃者に似ているのですが、きっとアーミッシュがでてくるからなのでしょう。でも全体的に雰囲気は似ています。
夜が牙をむく
著者 | スタン・ウォッシュバーン |
出版(判型) | 早川書房 |
出版年月 | 1997.9 |
ISBN(価格) | 4-15-001654-2(\1600)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
連続レイプ事件が起こっているのに、犯人が全然捕まらない。その間にも、犯人は次々と犯行を繰り返している。自分の家の近くが被害にあっている刑事が主人公。犯人は同じような手口で犯行を行うのに、どのように家に侵入しているかもわからない。そんな怖いお話です。
こんな事件があったら、いやですね。帯にも「2ページ読んだらあなたは戸締まりを確かめたくなる」と書いてありましたが、まさにそういう感じなのです。ただ文章からそれほど緊迫感が感じられないのが残念。この本はシリーズになっているそうなので、次作に期待しましょう。
エレクトリック・ミスト
著者 | ジェームズ・リー・バーク |
出版(判型) | 角川文庫 |
出版年月 | 1997.9 |
ISBN(価格) | 4-04-246605-2(\920)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★ |
このお話は、シリーズものの1巻なのですが、私は前のものを全然読んでいないので、シリーズとしては何も言えません。いきなりこの本から読むと、人物関係が不透明で、やっぱり最初から読めばよかったかな、とも思っています。
この本は、そのシリーズ主人公でもある警察官が、強姦殺害事件を調べるところから始まって、殺人の容疑をかけられたり、旧友で、今はならず者のボスを捕まえたいのに、捕まえられなかったり、その上主人公が幽霊を見るという盛りだくさんの話なのですが、やっぱりシリーズもののせいか、どうも感情移入ができなくて困りました。シリーズものは何でもそうですけど、最初から読んだほうがいいですね。
猿の証言
著者 | 北川歩実 |
出版(判型) | 新潮社 |
出版年月 | 1997.8 |
ISBN(価格) | 4-10-6027518(\1800)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
この本、題名がすごいですよね。でも、この題名は比喩でもなんでもなくて、本当に「猿の証言」なんです。猿が証言できるのか、って思うのが当たり前だとおもうのですが、それがこの本の主題にもなっています。
私は、なんでもかんでも動物虐待という「動物愛護団体」には賛成しかねる人間なのですが、この本を読んで、もし人間以外の動物にもいろいろ考えたり、記憶したりする能力があるとすれば、やはり人権のようなものを与えるべきなのか、という問題を考えさせられてしまいました。
地球外知的生命体が最近はやりですが、地球にいる人間以外の動物は、「知的生命体」ではないのか、ではいったい「知的」とは何なのかということは、永遠のテーマかもしれまんせんね。
■入手情報:新潮文庫(2000.5)
金曜日ラビは寝坊した
著者 | ハリイ・ケメルマン |
出版(判型) | 早川文庫 |
出版年月 | 1976.4 |
ISBN(価格) | 4-15-071101-1(\520)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
この本のラビっていうのは、ユダヤ教のラビです。名前ではありません(私は名前だと思っていました)。この本は、このページを見てくださっている方からのお勧めで読んで見ました>皆川さん、ありがとうございます。
このラビ、服装にはこだわらない、髪はぼさぼさ、しかも本とくると、他の事が目に入らなくなるという、いかにも研究者という感じのラビなので、教会関係者の一部は、ラビにふさわしくないと思っています。そんな時に、教会の敷地で死体が発見され、ラビが容疑者に。さて、ラビは、窮地を脱し、教会に残ることができるのでしょうか。
ラビの性格もさることながら、まわりの人々も気のいい人々で、とっても雰囲気のいい作品。古きよきミステリーという感じがします。この本は、シリーズで出ているそうなのですが、残念ながら、邦訳で入手可能な作品は、この本だけ。復刻を期待したいですね。
七日間の身代金
著者 | 岡嶋二人 |
出版(判型) | 徳間文庫 |
出版年月 | 1990.1 |
ISBN(価格) | 4-19-568971-6(\480)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
岡嶋さんというと、誘拐とコンピュータという感じがするのですが、この話は、プロの歌手の卵千秋と、ピアニストの要之助のカップルが活躍する誘拐の話です。
千秋の友人が、義理の息子と弟が誘拐されたといって千秋に助けを求めてきます。身代金を渡す島は、橋一本以外出口の無い場所。しかし、身代金と犯人は忽然と姿を消してしまうのです。身代金と犯人はどこにいってしまったのか。
岡嶋さんの書く誘拐物は、本当にはらはらというものが多いですよね。あんまり誘拐物って多くないと思うのですが、こうして次から次へと新しいトリックを考え付くこのお二人はすごいと思います。
■入手情報:講談社文庫(1998.7)
殺人者志願
著者 | 岡嶋二人 |
出版(判型) | 光文社文庫 |
出版年月 | 1990.11 |
ISBN(価格) | 4-334-71238-X(\600)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
この本は、結構怖いです。主人公の二人は、借金を返せず、その代わりに殺人を請け負います。でも、殺人を犯して捕まってしまっては元も子もない。道具ひとつを買うにしても慎重に慎重に、という主人公の緊張が文章から伝わってきて、自分もびくびくしてしまいます。かなり怖いです。よく夢で、なんだかわからないけど、追いかけられる夢ってありますよね。自分は一生懸命走っているのに、全然うまく走れない。最後はたいてい飛び起きて、「あー夢だったのかー」と思うんですけど、汗びっしょりかいていたりして。そういう怖さです。彼らはその依頼をこなし、自由の身になれるのでしょうか。最後まで、びくびくして読んでください。
■入手情報:講談社文庫(2000.6)
七年目の脅迫状
著者 | 岡嶋二人 |
出版(判型) | 講談社文庫 |
出版年月 | 1986.6 |
ISBN(価格) | 4-06-183755-9(\540)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
中央競馬会に、脅迫状が届きます。「中山第10レースの1番の馬を勝たせろ」。その要求には、治療法のない馬伝染性貧血(伝貧)のウィルスが同封されていました。そして、北海道で伝貧の馬がでてしまいます。中央競馬会はどうするのか。また、犯人の目的は何なのか。
この話は、もちろん競馬の話なのですが、全然競馬の知識がなくても楽しめます。相変わらず最後までどきどきさせる話の運びはさすが。あした天気にしておくれ、焦茶色のパステルと共に読んで、馬を堪能してください。
どんなに上手に隠れても
著者 | 岡嶋二人 |
出版(判型) | 講談社文庫 |
出版年月 | 1993.7 |
ISBN(価格) | 4-06-185434-8(\560)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
テレビ局から売り出し中の歌手が誘拐される。もちろん、警察は、身代金受け渡しの時を狙って犯人を逮捕しようとするが・・・。
誘拐を書かせたら、右に出るもののいないお二人。犯人は、どうやって捜査網をくぐるのか。また犯人はだれなのか。最後まで一気に読ませます。
タイトルマッチ
著者 | 岡嶋二人 |
出版(判型) | 講談社文庫 |
出版年月 | 1993.12 |
ISBN(価格) | 4-06-185543-3(\560)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
このお話も誘拐の話。 解説が茶木さん(元「深夜プラス1」の店長さん)なのですが、そこで、岡嶋さんを評して、・・業界では「人攫いの岡嶋」と呼ばれている・・云々。本当にそのとおりですね。このお二人ほど鮮やかに誘拐をするお話を創る人がいるでしょうか。
今回は、ボクシング界のお話しです。元世界チャンピオンの息子が誘拐されます。犯人は、2日後のタイトル・マッチで、元世界チャンピオンの義弟が、ノックアウトで勝つようにと指示をしてきます。勝つ??負けるのではないの?と考える関係者。犯人の意図が全然読めないまま、タイトル・マッチの日が近づいて・・・。
岡嶋さんの誘拐話は絶対面白い。みんなまとめて読んでください。特にこの話は、ボクシングが好きな人にお勧め。
チョコレートゲーム
著者 | 岡嶋二人 |
出版(判型) | 講談社文庫 |
出版年月 | 1988.7 |
ISBN(価格) | 4-06-184241-2(\440)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
息子が、登校拒否をしている。しかも買い与えたはずのないコンピュータを家に置いていたりと、ずいぶん金回りがよい。その矢先に、息子の通う名門中学校の生徒が惨殺?息子も行方がわからない。父親は、息子の中学校へ話を聞きに行くが・・・
題名にもなっている「チョコレート・ゲーム」が、一種のヒントにもなっています。岡嶋さんのいつもの路線とはちょっと離れた、社会派ミステリー。私はちょっと受け付けなかったのですが・・・。少し暗い話です。この本は昭和60年に書かれているのです。私は昭和62年に中学に入っているのですが、こんなことなかったけどなあ、って思っちゃいます。私立中学だったからかなあ。それとも田舎の学校だったから?
そして扉が閉ざされた
著者 | 岡嶋二人 |
出版(判型) | 講談社文庫 |
出版年月 | 1990.12 |
ISBN(価格) | 4-06-184816-X(\500)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
起きてみたら、友人たちと共に見知らぬ地下室に閉じ込められていた。どうも犯人は、3ヶ月前に事故で死亡した仲間の母親らしい・・・。なぜ彼らは閉じ込められたのか、あの事故に何か裏があったのか。
必死に出口を探しながら、事件のことを考えるという、かなり異色の設定で楽しめました。彼らは出ることができるのでしょうか。また、事件の真相は?起こってしまった事件を、いろいろな角度から考える本格物と言ってもよいかもしれません。頭を使って読む推理物が好きな人にぴったりの一冊です。
焦茶色のパステル
著者 | 岡嶋二人 |
出版(判型) | 講談社文庫 |
出版年月 | 1984.8 |
ISBN(価格) | 4-06-183299-9(\560)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★★ |
岡嶋二人のデビュー作。実際は、あした天気にしておくれのほうが、早く書かれているのですが、こちらの方で乱歩賞を取ったので、デビュー作はこちらなんですね。
この話も、競走馬の話です。競走馬の謎を追っていた記者が失踪。なぜ彼はいなくなったのか。その謎を追ううちに、意外な事実が。という話自体はそれほど珍しいものではないかもしれません。しかし、話の運びのおもしろさはもちろん、この話はどんでん返しがものすごい。途中で、追っていた謎の正体が分かってしまう人もいるかもしれません。高校生程度の生物の知識があれば、なおさら「なーんだ」と思ってしまうかも。しかし、そうではないのです。本当の謎が分かったとき、あなたはやられたーと思うでしょうか。さあ、読んでみてください。
クラインの壷
著者 | 岡嶋二人 |
出版(判型) | 新潮文庫 |
出版年月 | 1993.1 |
ISBN(価格) | 4-10-108012-7(\520)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★★ |
七日間の身代金のところで、岡嶋二人と言えば、コンピュータか誘拐と書きましたが、この本は、コンピュータの方の筆頭と言ってよいでしょう。
主人公が懸賞に応募した長編小説が、コンピュータゲームの原作として取り上げられることになった。しかも、普通のゲームではない。特殊な装置を使って、自分が本当にそのゲームの中にいるような体験ができるゲーム。主人公は、そのテストのモニターになってくれと言われるが・・・
と、あらすじはこのような話です。いわゆるヴァーチャルリアリティーが、ゲームの世界で実用化されたら、という話なのですが、最後はとっても怖いです。仮想現実というと、新しい未来の技術という感じがしますが、こんなになってしまったら恐ろしいですね。
炎の裁き
著者 | フィリップ・マーゴリン |
出版(判型) | 早川書房 |
出版年月 | 1998.6 |
ISBN(価格) | 4-15-208169-4(\2300)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★★ |
おー久しぶりに、気持ちの良い本を書いてくれたあ!って感じです。黒い薔薇とか、結構暗い極致だったので、久々に楽しませていただきました。
主人公は、親のすねをかじって生活する事務弁護士。ポートランドの、自分の親の弁護士事務所に雇われている。でも本人は、自分はもっとやれる、父親の力を借りなくても、すごい弁論ができるなんて心の中で思っている。そんな時、彼は大きな失敗をしてしまい(長いのではしょるのですが)、父親に勘当を言い渡され、田舎の父親の友人が開く弁護士事務所へと追いやられてしまいます。その田舎でやることになったのは、今まで全くやったことのない、刑事裁判。手際の悪い彼は、依頼人にまで馬鹿にされる始末。そんな彼が、なんと死刑裁判を引き受けるはめに。また、「自分はもっとやれるんだ」という自負が出てしまって、結局引き受けてしまうのですが、さてどうなるでしょう。
この著者の話は、結構マンネリって感じもしなくもないのですが、でもストーリーが面白いので、読んでしまいます。この話も、本当に面白い。リーガル・サスペンスが嫌いなかたも、これならきっと大満足。
1998年6月に邦訳が出版されました。(98/6/14)
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