1997年11月
・ガラスの麒麟(加納朋子) | ・ななつのこ(加納朋子) |
・災厄の天使(ロシェル・メジャー・クリッヒ) | ・警視の休暇(デボラ・クロンビー) |
・警視の隣人(デボラ・クロンビー) | ・警視の秘密(デボラ・クロンビー) |
・警視の愛人(デボラ・クロンビー) | ・闇をつかむ男(T・H・クック) |
・封印された悪夢(フィリップ・マーゴリン) | ・暗闇の囚人(フィリップ・マーゴリン) |
・人質(チャック・ホーガン) | ・絃の聖域(栗本薫) |
・優しい密室(栗本薫) | ・鬼面の研究(栗本薫) |
・猫目石(栗本薫) | ・魔女のソナタ(栗本薫) |
・怒りをこめてふりかえれ(栗本薫) | ・ヴァンパイア-恐怖の章-(栗本薫) |
・ヴァンパイア-異形の章-(栗本薫) | ・雪の狼(グレン・ミード) |
・嘘、そして沈黙(ディヴィッド・マーティン) | ・警視の死角(デボラ・クロンビー) |
・過去、そして惨劇の始まり(ディヴィッド・マーティン) | ・連鎖(真保裕一) |
・取引(真保裕一) | ・震源(真保裕一) |
・朽ちた木々の枝の下で(真保裕一) | ・朱色の研究(有栖川有栖) |
・逃亡(帚木蓬生) | ・閉鎖病棟(帚木蓬生) |
・いちばん初めにあった海(加納朋子) | |
<<前の月へ | 次の月へ>> |
ガラスの麒麟
著者 | 加納朋子 |
出版(判型) | 講談社 |
出版年月 | 1997.8 |
ISBN(価格) | 4-06-208757-X(\1600)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
養護教諭の神野さんが解く、日常(?)のミステリー連作集。これもやっぱり女の子に読んでもらいたいですね。この話は連作に意味があって、一見ただの短編が並んでいるようで、それが最後の話で一気にまとまっていくのが、見物です。
主人公は主に高校生なのですが、いろんな女の子が出てきて面白い。私は保健室が嫌いな高校生だったのですが、こんな良い先生がいたら、保健室に行きたくなったかもなあ、と思います。
■入手情報:講談社文庫(2000.6)
ななつのこ
著者 | 加納朋子 |
出版(判型) | 東京創元社 |
出版年月 | 1992.9 |
ISBN(価格) | 4-488-02334-7(\1400)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
ある女子大生が、「ななつのこ」の作者佐伯綾乃との文通によって、いろいろな日常の不思議を解いていく連作集。どれもかわいらしいお話なのですが、私は「1万2千年後のヴェガ」という話が好きですね。途中で話の展開が見えてしまうものも、いくつかあるのがちょっと難点なのですが。それはデビュー作ということで、目をつぶりましょう。
■入手情報:創元推理文庫(1999.8)
災厄の天使
著者 | ロシェル・メジャー・クリッヒ |
出版(判型) | 創元推理文庫 |
出版年月 | 1998.11 |
ISBN(価格) | 4-488-29403-0(\900)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
凍える遊びに続く、ジェシー・ドレイク巡査シリーズ第2弾。今回は、ロサンゼルス在住のユダヤ人と、ネオ・ナチグループとの対立に、ジェシーが巻き込まれます。
ネオ・ナチグループが、ヒトラーの誕生日に合わせてパレードを行おうとし、ユダヤ人たちのグループから訴えられます。しかし、そのネオ・ナチの弁護をすることになったルイスもユダヤ人。仲間のユダヤ人から、弁護を降りろという脅迫に悩まされるルイス一家。ところが、公判が終わった後、ルイスの車に爆弾が仕掛けられ、ルイスが殺されてしまいます。殺したのは、ユダヤ人なのか、それともネオ・ナチなのか。
ジェシーは、民族対立に巻き込まれるだけでなく、彼女自身の知らなかった過去も明らかになり、人間関係に悩まされます。前作を上回る面白さ。是非読んでください。
警視の休暇
著者 | デボラ・クロンビー |
出版(判型) | 講談社文庫 |
出版年月 | 1994.3 |
ISBN(価格) | 4-06-185615-4(\680)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
スコットランドヤードの警視、キンケイドは、休暇を利用してヨークシャーの会員制ホテルへと出かけていた。ところが、そこで副支配人が感電死する。すると、次々と殺人が。犯人の動機は何なのか。古きよき時代の推理小説を思わせる話。この後、キンケイド警視の話はシリーズ化し、人間関係もどんどん複雑になるので、是非ここから読んでください。
警視の隣人
著者 | デボラ・クロンビー |
出版(判型) | 講談社文庫 |
出版年月 | 1995.2 |
ISBN(価格) | 4-06-185961-7(\720)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
キンケイドシリーズ第2弾。今回は前作ではあまり活躍の見られなかったキンケイドの部下、ジェマも警視を助けて大活躍です。
キンケイドの階下に住んで、闘病生活を送るジャスミン・デントが、モルヒネの大量摂取で死んでいるのが見つかった。自殺なのか、それとも誰かが意図的に彼女にモルヒネを打ったのか。死体で見つかる前の晩に、自殺を思いとどまることを約束していただけに、自殺という意見に納得できないキンケイドは、彼女の死の真相を明らかにしようと、調査を始めます。
後にキンケイドの飼い猫になる「シド」と、もう一人の隣人でレギュラー的存在となるH・キース少佐もここで登場。ジェマとの仲もちょっと進展(?)かな。
警視の秘密
著者 | デボラ・クロンビー |
出版(判型) | 講談社文庫 |
出版年月 | 1996.2 |
ISBN(価格) | 4-06-263208-X(\700)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
芸術一家のアシャントン家の一人が、水の事故で死んだ。単純な事故と思われたその事件が、実は過去の事件とつながりを持っていく。スコットランドヤードの警視、キンケイドが、警視監に頼まれてその事件を担当するが・・・。
シリーズ第3弾。なんとなくレギュラー陣が固まってきて、その人物模様もちょっと面白い、といったところです。この本を読まないと、次の本は読めません。
警視の愛人
著者 | デボラ・クロンビー |
出版(判型) | 講談社文庫 |
出版年月 | 1997.7 |
ISBN(価格) | 4-06-263452-X(\752)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
シリーズ第4弾。この本は、人物関係を押さえるためにも、前作を先に読むことをお勧めします。
今回は、なんと、キンケイドの恩師で、今は上司の警視長が殺害されることから事件は始まります。警視長の地元を訪れ、いろいろな人に話を聞くうちに、被害者の警視長は結構問題のある人物だったことが明らかになります。
今までの話が、古臭い感じの推理小説だったのに対し、ちょっと社会派的な要素も見える一作。
闇をつかむ男
著者 | T・H・クック |
出版(判型) | 文春文庫 |
出版年月 | 1997.11 |
ISBN(価格) | 4-16-752750-2(\676)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
旧友が死体で発見された。しかも、二度と行かないはずだった谷の底で。彼はそこで何をしていたのか。彼の娘から依頼され、ノンフィクション作家のキンリーは、彼が何故谷へ行ったのかを探り、過去の事件にぶちあたる。その調査を始めたキンリーがたどり着いた真相とは。
ひとつひとつ地を固めていくような推理小説。そういうのが好きな人にお勧めです。私は結構お気に入り。積読状態だったクックの古い本を取り出して読もうかと思っています。
封印された悪夢
著者 | フィリップ・マーゴリン |
出版(判型) | 早川書房 |
出版年月 | 1996.10 |
ISBN(価格) | 4-15-040817-3(\820)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
高校生のカップルが襲われ、少年はナイフで刺され、少女は失踪後、絞殺死体で発見される。刑事は、同級生が犯人と確信し、執拗に彼らを追うが、証拠がない。ところが数年後、新たな証人が現れ、再び裁判に・・・。最後まで気の抜けない話なのですが、ちょっと後味は悪いかも。マーゴリンの本は大好きでついつい読んでしまうのですが、この話はちょっと感じが違う気もします。といっても、これが彼のデビュー作ですから、「彼の感じ」はこの作品が代表的といってもいいのかもしれませんが。
暗闇の囚人
著者 | フィリップ・マーゴリン |
出版(判型) | 早川書房 |
出版年月 | 1996.2 |
ISBN(価格) | 4-15-207993-2(\2136)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
女性検事アビゲイル・グリフンは、夫の最高裁判事を殺した容疑で逮捕、起訴される。アビーの弁護士は、辣腕のレイノルズ。証人も存在し、アビーの形勢は不利。レイノルズは裁判を勝つことができるのか。また真犯人は?これまた最後まで気を抜いてはいけない作品。マーゴリンの話は、どんでん返しの裏にさらにどんでん返しがあるのが、いちばんの特徴ですね。是非読んで見てください。
人質
著者 | チャック・ホーガン |
出版(判型) | 講談社文庫 |
出版年月 | 1997.11 |
ISBN(価格) | 4-06-263647-6(\838)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
FBIの交渉担当官バニッシュは、一度の挫折でアルコール中毒となり、「収容所」と呼ばれる更生施設で療養をしていた。そこを出てしばらく、モンタナで定年を待つような毎日を送っていたバニッシュに、新たな依頼が。家族を人質に立てこもっている逃亡犯との交渉役をやれと言うのだ。さて家族を無事に保護し、犯人を捕まえることができるのか。
途中までの動きが少し退屈なような気がするのですが、最後の見せ場は本当に面白い。感動のラストもあって、楽しめました。チャック・ホーガンのデビュー作ということですが、次作が楽しみな作家かもしれません。
絃の聖域
著者 | 栗本薫 |
出版(判型) | 講談社文庫 |
出版年月 | 1982.12 |
ISBN(価格) | (上)4-06-136252-6(\440)【amazon】【bk1】 (下)4-06-136253-4(\440)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
長唄の家元を舞台とした、連続殺人事件。伊集院大介の初登場作。日本の伝統芸能の家元って、どうしてこういう風に悪く書かれちゃうんでしょうね。他に日本の伝統芸能の家元殺人事件というと、映画にもなった内田康夫作「天河伝説殺人事件」を思い出すのですが、こういうのを読むと、それらを実際見たいと思っちゃうのが、私の悪い(?)癖なのですね。実際はお能も長唄も見たり聞いたりしたことがありません。でも一度聞いてみたいです。
優しい密室
著者 | 栗本薫 |
出版(判型) | 講談社文庫 |
出版年月 | 1983.8 |
ISBN(価格) | 4-06-183080-5(\340)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
今度は、名門女子高を舞台とする殺人事件。しかも密室です。高校と言っても、この文庫が発売されたのが昭和58年ですから、今の女子高とは全然雰囲気も違って、逆に面白いかもしれません。私は中高とも私立のくせに共学だったので、女子高って想像がつかない人なんですけどね。
鬼面の研究
著者 | 栗本薫 |
出版(判型) | 講談社文庫 |
出版年月 | 1984.8 |
ISBN(価格) | 4-06-183301-4(\380)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
実は、私が最初に伊集院大介シリーズに嵌まったのはこの本なんです。と言っても、この本が伊集院大介シリーズの1巻だと知ったのはずいぶん後だったのですが。
テレビのロケで、ロケ隊と共に秘境・鬼家荘を訪れた伊集院大介と森カオル。ところが、そこがいかにもといった感じの村なんですね。古い因習や、伝統に縛られた住民、外とつなぐ一本の吊り橋、そして一人一人とロケ隊の人間が・・・
さすが栗本薫というべきか、横溝正史ばりの怖さで、ついつい最後まで読んでしまう秀作だと思います。
猫目石
著者 | 栗本薫 |
出版(判型) | 講談社文庫 |
出版年月 | 1987.7 |
ISBN(価格) | (上)4-06-184017-7(\440)【amazon】【bk1】 (下)4-06-184018-5(\440)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
「ぼくらの時代」などで活躍の栗本薫クン(作者のことではありません)と、伊集院大介が競演する作品。
私はどちらかというと、人生を達観してしまったような伊集院大介よりも、繊細で無鉄砲な栗本薫君のほうが好きなのですが、みなさんどうでしょう。この作品では、特に栗本薫クンの活躍が多く見られます。しかも、この話は後の薫クンシリーズの話にも微妙にからんでくる話なので、是非読んでもらいたい作品です。
魔女のソナタ
著者 | 栗本薫 |
出版(判型) | 講談社 |
出版年月 | 1995.10 |
ISBN(価格) | 4-06-207800-7(\1600)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
女性歌手村木由良が自殺した。しかし、その死に納得できない元恋人の女性が、伊集院大介に死の真相を明かして欲しいと話に来る。いかにも女らしい怖いはなし。
■入手情報:講談社文庫(1998.11)
怒りをこめてふりかえれ
著者 | 栗本薫 |
出版(判型) | 講談社 |
出版年月 | 1996.5 |
ISBN(価格) | 4-06-208081-8(\1600)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
猫目石に続き、栗本薫君と、伊集院大介探偵の競演作。「猫目石」の時に、精神的にものすごい打撃を負った薫君は、やっとその打撃から立ち直って仕事をするようになっています。そして、なんと電撃結婚してしまうのです。
最近の伊集院シリーズの中でも一押しの作品。結構感動ものです。繊細な薫君が選んだ女性はどんな人なのか、是非読んでみてください。
■入手情報:講談社文庫(1999.4)
ヴァンパイア-恐怖の章-
著者 | 栗本薫 |
出版(判型) | 講談社 |
出版年月 | 1997.2 |
ISBN(価格) | 4-06-208510-0(\1500)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
蝶の墓に続くシリーズ続編。新たに「ヴァンパイア」というシリーズで登場です。このシリーズでは「蝶の墓」で出てきた竜崎晶が中心となり、話が展開していきます。
もう大きくなった晶は、東京に出てきて舞台を夢見るダンサーの卵です。次々とオーディションを受けては落ちる毎日。そんなとき、あるプロデューサーの推薦で、ある舞台にアンサンブルだけども乗れることになったが・・・という話。
■入手情報:講談社文庫(2000.2)
ヴァンパイア-異形の章-
著者 | 栗本薫 |
出版(判型) | 講談社 |
出版年月 | 1997.4 |
ISBN(価格) | 4-06-208651-4(\1500)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
恐怖の章で、刀根らしき人物と再会した晶。本当にあの、刀根なのか。しかも、その刀根は晶に同調し、晶の思うままに動いてくれる?その刀根を操っているのは、死んだはずのシリウス?いろいろと謎を残したまま、次章に続くらしいです。
■入手情報:講談社文庫(2000.2)
雪の狼
著者 | グレン・ミード |
出版(判型) | 二見文庫 |
出版年月 | 1997.10 |
ISBN(価格) | (上)4-576-97127-1(\790)【amazon】【bk1】 (下)4-576-97128-X(\790)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
戦後の著名政治家の名前が、実名でたくさん出てきます。私はどうもそういう話は苦手だったのですが、この本は全然それが気にならない。スターリンは本当に病死だったのかという疑問が、この話のベースとなっています。最後の著者ノートで知ったのですが、スターリンは本当にどうして死んだのかに疑問をもたれている一人らしいですね。モーツアルトも墓さえわからない著名人の一人ですが、そういう人って意外に多いですね。日本にもいますよね。源義経とかその典型でしょうか。ハードボイルドのスパイ小説とも、歴史ミステリーとも言えるこの本、どちらの観点で読んでも楽しめると思いますよ。
嘘、そして沈黙
著者 | ディヴィッド・マーティン |
出版(判型) | 扶桑文庫 |
出版年月 | 1992.8 |
ISBN(価格) | 4-594-00994-8(\641)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
サイコスリラーって最近多いですよね。「羊たちの沈黙」とかが映画で大ヒットしたせいでしょうか。最近よく邦訳される洋書や、日本の物にもサイコ・スリラー系って多いような気がします。
なんだかんだ言いながら、そういうサイコ・スリラー系が好きな私も、このサイコ・スリラーには降参です。ただ単に怖いだけのサイコ・スリラーっていくらでもあると思うのですが、人間が「面白い」サイコスリラーってなかなかないんじゃないでしょうか。ちょっと読んだだけで、私は主人公の、「人間嘘発見器」テディ・キャメルが大好きになりました。ちょっと昔のハードボイルドを思わせるような刑事。元相棒や、上司とのやりとりが笑えます。この本原題が"Lie to Me"なんですけど、このタイトルは奥が深いですね。最初は何故"Lie to Me"なの?と思いましたが、最後まで読んで「おーなるほど」、と感心しました。「このミス」でもランクインしているこの本、お勧めです。
警視の死角
著者 | デボラ・クロンビー |
出版(判型) | 講談社文庫 |
出版年月 | 1998.1 |
ISBN(価格) | 4-06-263964-5(\838)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
(原著:Dreadming of Bones (Deborah Crombie) Scribner ISBN0684801418)
ダンカン・キンケイド警視と、ジェマ・ジェームズ巡査のシリーズ第5弾。
今回は、今まで名前しか出てこなかったキンケイドの元妻、ヴィクトリアが登場。彼女は大学で教鞭をとるかたわら、詩人の伝記を書いています。その詩人、リディアの死に疑問を持った彼女は、元夫でスコットランドヤードのキンケイドに、何年ぶりかの電話をかけるのです。前々作で、恋人どうしにしておいて、今回元妻を出してきてかき回すところなど、憎い設定ですね。このシリーズは、最近多いホラーだかミステリーだかわからないような話とは違って、のほほんとしているところが結構好きだったりするのですが、皆さんはどうですか?
過去、そして惨劇の始まり
著者 | ディヴィッド・マーティン |
出版(判型) | 扶桑社文庫 |
出版年月 | 1997.10 |
ISBN(価格) | 4-594-00994-8(\629)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
嘘そして沈黙に続く、「人間嘘発見器」テディ・キャメル登場第2弾。今度は、テディのかつての恋人が登場して、テディの過去が分かるという仕掛けです。
7年前に起きたカル・デ・サック殺人事件。犯人として捕まり、服役していたグロウラーは、実は無実だった?偽証した知人たちを尋ね、真犯人に復讐しようとする 。一方、現在のカル・デ・サックの持ち主の妻、アニーは、久しぶりに夫を尋ねてきて、夫がおかしくなっていることに気づく。悩んだアニーは、元恋人で元刑事のキャメルに相談するが。
内容的には、私は「嘘そして沈黙」の方が好きですが、こちらもテディのファンとしは楽しめました。できれば、先に前作を読むことをおすすめします。
連鎖
著者 | 真保裕一 |
出版(判型) | 講談社文庫 |
出版年月 | 1994.7 |
ISBN(価格) | 4-06-185719-3(\620)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
江戸川乱歩賞受賞作。チェルノブイリ原発事故による汚染食品が、なぜか日本に輸入されていた。厚生省の元食品衛生監視員、羽川が、その真相解明に乗り出したところ・・・
真保氏の作品は、どれもこれも新しい社会問題を取り上げたハードボイルドという意外な作品なのですが、これは、問題が問題なだけに、ちょっと気持ち悪くなりました。本当にこんなことが行われていたら、すごい怖いですよね。安い輸入肉が買えなくなっちゃう。さて、事件を追った羽川は、どのような決着をつけるのでしょうか。
取引
著者 | 真保裕一 |
出版(判型) | 講談社文庫 |
出版年月 | 1995.11 |
ISBN(価格) | 4-06-263098-2(\880)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
公正取引委員会の伊田は、ある罠にはめられて日本からフィリピンへ行くことになった。ODAプロジェクトの談合事件を捜査する伊田が巻き込まれた事件とは。
今回は、ODA(政府開発援助)の話です。でもしっかりハードボイルドです。伊田君のような役人が皆だったら、きっと悪いことなど起こりっこないように思えるんですけどね。
震源
著者 | 真保裕一 |
出版(判型) | 講談社文庫 |
出版年月 | 1993.10 |
ISBN(価格) | 4-06-206669-6(\1900)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
九州各地を襲った津波。ところが、地震津波火山監視センターでは、人為的ミスによってその警報が前もってだせなかった。同僚のミスに責任があると思っている江坂が、気象研究所に移った後、再び観測のために九州を訪れる。しかし、突然観測が延期されたり、同僚が失踪したりと、なんだか怪しい雰囲気。真相を解明するために乗り出すが・・・
災害系の話って、意外と多いんですよね。映画でも結構多い。最近見たボルケーノもそうでしたし、ダンテスピーク(どちらも火山の話ですが)もそうですね。どちらも地質学者が活躍する話。案外人気がある職業なのかも。日本は地震だとか津波とかが日常茶飯事なので、本当にこういう人たちって頼りにされてますね。その分大変なでしょうけど。
朽ちた木々の枝の下で
著者 | 真保裕一 |
出版(判型) | 角川書店 |
出版年月 | 1996.3 |
ISBN(価格) | 4-04-872933-0(\1600)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★ |
妻を亡くして、札幌から富良野へ越し、林業を営む尾高が、在る日森の中で女性を拾った。その後、彼の周りに起こる次々と嫌がらせのような事件が起きて・・・
林業っていう仕事も大変なんだなあ、と思いました。ハードボイルドとしては、ちょっと迫力が欠けるように思えましたが、それは、きっとホワイトアウトを読んだ後で、期待しすぎたのでしょう。
■入手情報:講談社文庫(1999.2)
朱色の研究
著者 | 有栖川有栖 |
出版(判型) | 角川書店 |
出版年月 | 1997.11 |
ISBN(価格) | 4-04-873078-9(\1700)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★ |
やっと出たって感じですね。去年の11月ネット上で長編が出るって話があったので、楽しみにしてたら、1年経ってしまいました(有栖川氏自身、あとがきで書いていらっしゃいますが)。犯罪学者、火村助教授シリーズです。
でも・・・・エレベータのシーンを読んだとき、おいおい、そんなのあり?と思ったのですが、ちゃんと最後は解決を付けてくれてよかったよかった。でもちょっと犯人の動機に納得できないかなあ。読んだ方、どう思いました?有栖川氏は、最初のころの迫力がちょっと無いような気がしますね。
でも、あのエレベータはすごい。いくらなんでもあれはひどい。だって犯人は15階で待っていたり、わざわざパネルに細工したりしなくても、エレベータを止めることはもっと簡単にできますよ。そう思いませんでした?それに、本当にひっかかるのかなあ、あのトリック。私は火村氏が冗談で言っているんだと思ってました。(ちょっとネタバレ?)
■入手情報:角川文庫(2000.8)
逃亡
著者 | 帚木蓬生 |
出版(判型) | 新潮社 |
出版年月 | 1997.5 |
ISBN(価格) | 4-10-331408-7(\2300)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★★ |
この本は、帚木氏の本の中でも、特に好きな本の1つです。舞台は、太平洋戦争が終わったときの、超混乱時期。中国大陸で憲兵をしていた 守田は、戦犯として捕まるのを恐れ、密かに日本に帰ろうとします。警察に捕まったら、香港へ送り返される・・・。その様は、もう本当にドキドキものです。よく私の祖父も言っていましたが、すべての価値観がひっくり返った当時は、こんな風な事も日常だったのでしょうか。なんとなく守田氏に同情してしまったのですが、良く考えると、憲兵って教科書とかでは良く書かれてないですよね。
この本、かなり厚いのですが、全然そんな気がしません。守田氏と共に一緒に逃げている気分になってください。
閉鎖病棟
著者 | 帚木蓬生 |
出版(判型) | 新潮社 |
出版年月 | 1997.5 |
ISBN(価格) | 4-10-128807-0(\514)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
精神科の閉鎖病棟。家の人間からも疎まれたりする彼らの、平和な病棟に、殺人事件が起こる。一体誰がどうして? 著者自身が精神科医なだけに、舞台設定なんかはとってもリアル。しかも、世間からは嫌がれがちな彼らが、明るく生きている病棟は、本当に楽しそうで、ほっとさせられます。
いちばん初めにあった海
著者 | 加納朋子 |
出版(判型) | 角川書店 |
出版年月 | 1996.8 |
ISBN(価格) | 4-06-872995-0(\1460)【amazon】【bk1】 |
評価 | ★★★★ |
女の子に読んでもらいたい作品。この本は、このページを見ていただいた女性から薦められた本です。(というか、加納さんの本を薦められました)ありがとう。
装丁から、話からすっかり気に入ってしまいました。内容的には、北村薫氏と似ていると言われますが、読んで見て、文章はどちらかというと、宮部みゆきさんに似ている気がします。
堀井千波という女性が主人公。引越しをしようと荷物をまとめていると、見たこともない本が。しかもその本には「YUKI」という名の差出人からの手紙が挟まっていた。「YUKI」という名にも心当たりのない千波。いったい「YUKI」とは誰なのか。
「いちばん初めにあった海」と「化石の樹」の2編収録。微妙な連作(というのか?)。私は、「化石の樹」の方が好きですが、「いちばん初めにあった海」の方には泣いてしまいました。とにかく読んでください。
■入手情報:角川文庫(2000.5)
copyright(c) Hiroe KATAGIRI. All rights reserved.