1996年11月

ピアスをはずす女(野間美由紀) 炎蛹 −新宿鮫X−(大沢在昌)
十角館の殺人(綾辻行人) あした天気にしておくれ(岡嶋二人)
蒲生邸事件(宮部みゆき) 薔薇の名前(ウンベルト・エーコ)
鉄鼠の檻(京極夏彦) 絡新婦の理(京極夏彦)
ホワイトアウト(真保裕一) 仮面舞踏会 (栗本薫)
人格転移の殺人(西澤保彦) 天使の牙(大沢在昌)
魔術はささやく(宮部みゆき) 99%の誘拐(岡嶋二人)
眠たい奴ら(大沢在昌) 魍魎の匣(京極夏彦)
テロリストのパラソル(藤原伊織) 新宿鮫W−無間人形−(大沢在昌)
七回死んだ男(西澤保彦) 百舌の叫ぶ夜(逢坂剛)
ダレカガナカニイル・・・(井上夢人) 幻の翼(逢坂剛)
砕かれた鍵(逢坂剛) 茜さす(永井路子)
評決のとき(A Time To Kill)(J.グリシャム) 月光ゲーム(有栖川有栖)
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ピアスをはずす女

著者野間美由紀
出版(判型)白泉社
出版年月1992.6
ISBN(価格)4-592-15334-0(\476)【amazon】【bk1
評価★★★★★

小学生のころからのファンである野間美由紀さんが、白泉社のレディースコミックに描いていらっしゃいます。本書はジュエリーコネクションシリーズの第2巻。私の好きな「プリンセス・パール」が載っているので、最初に載せてしまいました。短編で3編。本当は1巻から読む方が人物関係が分かっていいんですが、別に何巻から読んでも楽しめると思います。プリンセス・パールはやっぱり何回読んでも泣けます。すごいかわいいお話です。

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炎蛹 −新宿鮫X−

著者大沢在昌
出版(判型)カッパノベルス
出版年月1995.10
ISBN(価格)4-334-07158-9(\840)【amazon】【bk1
評価★★★★

あの新宿鮫の第5話。なんかそんなに話題にならなかった気がするんですが、私は結構この話が好きなのです。鮫島が一人ではなく、お友達(?)と一緒に捜査しているのがなんともいえない。そして、農水省の甲屋さんがいい。最後のシーンの甲屋さんがいいですね。かわいそうだけど、笑ってしまいました。あと、消防庁の吾妻さん。この話は結構キャラクターの魅力がでているから好きなんですね。きっと。


■入手情報: 光文社文庫(2001.6)

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十角館の殺人

著者綾辻行人
出版(判型)講談社文庫
出版年月1991.9
ISBN(価格)4-06-184979-4(\540)【amazon】【bk1
評価★★★★★

文庫でしか持っていない私が、十角館の感想を書くなんて10年早いとお思いの方も多いでしょうが、勘弁して下さい。綾辻行人さんに、はまった最初の作品です。私は結構最初はさらりと読んで、面白かったら何度も読み返すという読み方をするのですが、これはもう何回も読んでいます。何度読んでも新たな仕掛けが見えるところが、本当にすごい。6日目の最後のページを読んだときの感動は、今でも忘れられません。やられたって感じです。「何か面白い本ない?」と言われて、いつも真っ先に推薦するのが、この本です。


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あした天気にしておくれ

著者岡嶋二人
出版(判型)講談社文庫
出版年月1986.8
ISBN(価格)4-06-183809-1(\540)【amazon】【bk1
評価★★★★★

これまた文庫でしか持っていないんですが・・・
事情があって乱歩賞を逃してしまったこの本ですが、私は「焦茶色のパステル」よりこっちのほうが好きです。この本も何度も読んでいる1冊です。やっぱり何度読んでも新しい仕掛けが見えるので、何度読んでも面白いです。これ読むと競馬がやりたくなるんですよねえ。私は学生だから馬券買えないけど。うち、中山競馬場の近くなんです。だから行きたくなる。ときどき中継とか見てるとやっぱりこのお話を思い出します。最初読んだときは本当にどきどきしました。この身代金はどうなってしまうのだろう。と気になって、最後まで一気に読んでしまいました。
全然関係ないですけど、私は競馬中継の最後の直線とかで、客席から馬券が紙吹雪のように飛んでいるのを見るのが好きなのですけど、皆さんどうですか?


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蒲生邸事件

著者宮部みゆき
出版(判型)毎日新聞社
出版年月1995.4
ISBN(価格)4-620-10551-1(\1700)【amazon】【bk1
評価★★★★★

「2・26事件」の時代へタイムスリップするお話。私は結構近現代史が好きなので、楽しめました。なぜ主人公がタイムスリップしてしまうのか、主人公が無事戻ってこれるのかは読んでのお楽しみ。最後は泣いてしまいました。「2・26」というとあの雪の写真を思いうかべますが、その雰囲気がよくでているように思います。もちろん日本史なんて・・という人にも楽しめます。宮部みゆきさんの作品はとても好きなのですが、今回も裏切られませんでした。「らしい」作品だと思います。

■その他入手情報:光文社カッパノベルス(1999.1) / 文春文庫(2000.10)


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薔薇の名前

著者ウンベルト・エーコ
出版(判型)東京創元社
出版年月1990.1
ISBN(価格)(上)4-488-01351-1(\2000)【amazon】【bk1
(下)4-488-01352-X(\2000)【amazon】【bk1
評価★★★★★

私はほとんど国内物しか読まないのですが、この作品は海外物でも一気に読んでしまったおすすめ品です。私が図書館・情報学科であることもあるのですが、中世修道院図書館を舞台とするこのミステリ(?)は、歴史書としても大変おもしろいお話です。修道士たちが神聖な修道院でつぎつぎ殺されて、無残な形で発見される。なぜ彼らは殺されたのか。図書館の中には、何が隠されているのか。ショーンコネリー主演の映画もあるのですが、やっぱり本の方がいいですね。
全然関係ないですが、箱根の駒ヶ岳ロープウェーの山頂のほうの建物を見て、「異形の建物」を思い出したのは、私だけでしょうか。


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鉄鼠の檻

著者京極夏彦
出版(判型)講談社ノベルス
出版年月1996.11
ISBN(価格)4-06-181883-X(\1500)【amazon】【bk1
評価★★★★★

もうこの本は「見てください」としか言いようがありません。ノベルスにしてこの厚さ。そしてこの値段(1500円)。
時計館の殺人が出たときも驚きましたが、並べてみると薄く感じます。私は結構京極作品の中でもこの「鉄鼠」の雰囲気が大好きです。白と黒しか無いような世界がたまらなくいいですね。私は中学の時に福井県の永平寺に泊まったことがあるのですが、そのときのことを思い出します。雲水さんって袈裟着てると格好いいんです。その時も冬だったので、ちょうど永平寺の中庭が雪が積もってまさに白と黒の世界。禅宗には白と黒が似合います。
この本、落とすと本の背を下にして立ってしまうんですよね。それでもって、この本が本屋の本棚に収まっていたのを見たことがない。みんな平積み。私の本棚でも京極コーナーがかなりの幅を取り、もうそろそろ次の本棚を買わなくてはと思っています。

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絡新婦の理

著者京極夏彦
出版(判型)講談社ノベルス
出版年月1996.11
ISBN(価格)4-06-181932-1(\1500)【amazon】【bk1
評価★★★★

とうとう、読み終わりました。
もったいないので、ちまちま読んでいたのですが、やっぱり最後は一気に読んでしまいました。最後、すごい仕掛けがしてあります。絡新婦の横糸をぐるぐる回るような錯覚をおこしました。こんなにたくさんの人物がでてきて、よく混乱しませんよね。それだけでもすごいと思います。今回も榎木津が事件をかき回してくれます。結構ひいきの鳥口くんの出番がなかったことが、少し残念かも。
またこれから2回目を読もうと思っています。


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ホワイトアウト

著者真保裕一
出版(判型)新潮社
出版年月1995.9
ISBN(価格)4-10-602741-0(\1800)【amazon】【bk1
評価★★★★★

私のもっとも好きな本のひとつです。
日本版(ダム版)ダイハードとか言われていますけど、本であれだけの緊張感を出せるのはすごい。ちょっと主人公が格好よすぎの感じもしますが、わたしはそこが結構好きです。これを読んだ後、黒部ダム(富山県)を見たくなってもう一度行ってきました。ダムの構造は異なりますが、この本には黒部ダムの迫力が似合います。
ところで、このダムってモデルがあるんでしょうか。知ってる方、教えて下さい。
*何人かの方から、このダムは新潟県奥遠和ダムであることを教えていただきました。ありがとうございます。

■その他入手情報:新潮文庫(1998.9)

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仮面舞踏会

著者栗本薫
出版(判型)講談社
出版年月1995.4
ISBN(価格)4-06-207496-6(\1600)【amazon】【bk1
評価★★★

この本、後味悪いんですよ。
パソコン通信を土台にしたお話で、一気に読めてしまうのですが、最後があまり好きでないんです。題材としては、タイムリーで面白いと思うんですが、私は後味が良い本が好きなので、この本はあまり好きではないのです。
でも、この本を推薦するのは、ネットワークの匿名性の問題を題材にしているからです。匿名だからこそできることって、あんまりいい事ではないような気がします。私がASAHI-NETを選んだのも、「本名を名乗らなければならない」というのが気に入ったからです。本名が流れることの弊害もあるんですけどね。


■入手情報:講談社文庫(1998.4)/ 講談社ノベルス(1997.3)

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人格転移の殺人

著者西澤保彦
出版(判型)講談社ノベルス
出版年月1996.7
ISBN(価格)4-06-181916-X(\840)【amazon】【bk1
評価★★★★★

西澤保彦氏のは、設定がものすごいんですよね。「七回死んだ男」同様、この本は設定がSFチックで、超笑えます。でも、ちゃんと最後にその合理的説明までついているところが、さすが西澤さん、という感じですね。うおーーーと思いました。西澤作品としては結構長めですけど、一気に読めてしまいました。おすすめです。「殺意の集う夜」を読んで西澤作品がちょっと苦手という方(わたしは「殺意」があまり好きではないのですが)、この本は大変後味がよく面白いです。是非読んでみてください。


■入手情報:講談社文庫(2000.2)

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天使の牙

著者大沢在昌
出版(判型)小学館
出版年月1995.7
ISBN(価格)4-09-379561-4(\1700)【amazon】【bk1
評価★★★★

この本は、結構設定が西澤氏っぽいんですよ。内容は全然違うけど。そういう意味では大沢さんの本としては異色かもしれません。でも、アクションの緊張感とかスピード感はさすが、大沢さんです。ストーリーも泣かせてくれる私好みの1冊なのです。最後の照れちゃう「仁王」が結構好きです。どこかの書評に「これは恋愛小説だ」なんて書いてあったような気がするのですが、そんな風に読んでも面白いのではないでしょうか。


■入手情報:角川文庫(1998.11)/ 光文社カッパノベルス(1997.6)

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魔術はささやく

著者宮部みゆき
出版(判型)新潮文庫
出版年月1993.1
ISBN(価格)4-10-136911-9(\520)【amazon】【bk1
評価★★★★★

私が持っているのは文庫版なのですが。宮部さんらしい、子どもを主人公にしたファンタジーですね。サブリミナルとかの話もでてくるので、そういうのが好きな人にはおすすめです。ストーリー的にはちょっと固めでしょうか。「鍵師」を彷彿させるようなシーンもあって、私は大変満足しました。サブリミナル効果って、実際は存在しない(大学の心理学の教授もそう言っていました)のに結構まことしやかに流れているUFOみたいなものなので、うまく使わないと某小説のようになってしまうのですが、このお話にはぴったりだと思います。

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99%の誘拐

著者岡嶋二人
出版(判型)徳間文庫
出版年月1990.8
ISBN(価格)4-19-569136-2(\540)【amazon】【bk1
評価★★★★★

この本はすごいですね。最初図書館で借りて読んだのですが、この本ですっかり岡嶋二人にはまってしまいました。今までにない斬新な誘拐方法。この本初出が1988年なのに、今でもこの方法使えますよ。どうやって誘拐するかは、読んでからのお楽しみ。ちょっと最後が物足りない気もするのですが、それもそれまでの話があまりに面白いので、終わってしまうのがもったいないと思ったからかもしれません。結局文庫版を自分で買ってしまいました。

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眠たい奴ら

著者大沢在昌
出版(判型)毎日新聞社
出版年月1996.11
ISBN(価格)4-620-10553-8(\1700)【amazon】【bk1
評価★★★

大沢氏らしくすごく取材されているな、と感じる一冊。やくざの高見と一匹狼の警官月岡が立場を超えて、ヒロイン森谷亜由子を守ろうとするハードボイルド。2枚目の高見と、こわもて、大阪弁月岡のコンビぶりが面白いし、新興宗教あり、警察汚職あり、恋愛ざたありと、一気に楽しめる作品です。主人公の高見はもちろん格好いいですが、ここぞというときに現れる月岡もにくいキャラクターです。最近のハードボイルドでは一押し。


■入手情報:角川文庫(2000.10)
/ JOY NOVELS(1998.11)

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魍魎の匣

著者京極夏彦
出版(判型)講談社
出版年月1995.1
ISBN(価格)4-06-181812-0(\1200)【amazon】【bk1
評価★★★★★

京極作品の中でも衝撃的結末という面で一押しなのが、この作品。警官の木場修太郎が巻き込まれた事件にいつものメンバーも加わり、最後の悲しい結末へ。京極堂の過去の一面も垣間見れるし、「絡新婦の理」とも少しだけ関係ある京極ファンには見逃せない作品でもあります。そして、絶対思い付けないような結末もおすすめ。最後にうおっときます。

■入手情報:講談社文庫(1999.9)

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テロリストのパラソル

著者藤原伊織
出版(判型)講談社
出版年月1995.9
ISBN(価格)4-06-207797-3(\1400)【amazon】【bk1
評価★★★★

第41回江戸川乱歩賞受賞作。元安保闘争員の今が描かれている作品。私にとってみれば「安保闘争」と言われても歴史の教科書の中の出来事ですが、その禍根がまだこうして残っているのかと思うと、闘争のすごさを思います。なぜ主人公とずっと会っていない昔の仲間が新宿の爆発現場に居合わせたのか。ぐっとくる結末は読んでのお楽しみ。最後思わず涙がでました。


■入手情報:講談社文庫(1998.7)

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新宿鮫W−無間人形−

著者大沢在昌
出版(判型)読売新聞社
出版年月1993.10
ISBN(価格)4-643-93069-1(\1500)【amazon】【bk1
評価★★★★★

私はこの作品の鮫島が一番好きです。愛する人を守ろうとする鮫島が本当に格好いいです。話は、「アイスキャンディー」と呼ばれ、若者の間で流行っている覚醒剤が、一体どこからでてきているのか、鮫島が追うお話。組織まであと一歩のところで、恋人晶を人質にとられた鮫島は、どうするのか。ラストまで目が離せないおすすめ作品です。

■入手情報:カッパノベルス(1994.7)

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七回死んだ男

著者西澤保彦
出版(判型)講談社
出版年月1995.10
ISBN(価格)4-06-181879-1(\780)【amazon】【bk1
評価★★★★★

「七回死んだ男」って比喩だと思ってたんですよ。違うんですね、これが。本当に同じ人間が7回死ぬんです。どうしてそうなってしまうのかはもちろん秘密ですが、それをどうにかしようと主人公がじたばたするのが、抱腹絶倒(というのはちょっとおおげさですが)の面白さです。こんなミステリは初めてですね。彼の本はどれも設定が変ですが、それがとってもうまくいっている作品です。もちろんとてもSFチックなのですが、やたらと現実的で納得してしまうのは、人格転移の殺人と通じるものがあります。

■入手情報:講談社文庫(1998.10)

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百舌の叫ぶ夜

著者逢坂剛
出版(判型)集英社文庫
出版年月1990.7
ISBN(価格)4-08-749601-5(\590)【amazon】【bk1
評価★★★★

新宿で爆発事件がおこり、公安警察倉木の妻がその事件で犠牲になります。なぜこの事件は起きたのか。そして誰が起こしたのか。倉木がつかんだ事実は、大変衝撃的なものでした。どう衝撃的かっていうのは読んでからのお楽しみです。公安警察内部の問題がいろいろでてくるお話。本当に公安ってこういう感じなのでしょうか。わたしは特高の時代は全く知らない人ですが、特高と変わり無いですよね、これでは。怖いなあ。内容はハードボイルドの醍醐味が十分に味わえる作品です。ハードボイルドの主人公って皆かっこいいんですよね。まあ普通どの主人公も格好いいですが。そのせいで結構ハードボイルドが好きな私。

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ダレカガナカニイル・・・

著者井上夢人
出版(判型)新潮社
出版年月1992.1
ISBN(価格)4-10-602727-5(\1600)【amazon】【bk1
評価★★★★

新興宗教の警備員として小淵沢に行った西岡が、なぜか頭の中から正体不明の声が聞こえるようになってしまう。まさに「誰かが中にいる」という状態になってしまうのです。「誰か」とは誰なのか。どうして彼の頭に入ってしまったのか。衝撃のラストとともに、その「誰か」はどこへ行くのか。最後は井上さんらしく、めちゃめちゃ怖いです。それはさておき、この本が書かれたのは1992年なんですよ。井上さんは某新興宗教に取材にいったのではないか、と勘ぐるのは私だけでしょうか。(読んだ人はこの意味がわかりますよね)

■入手情報:新潮文庫(1995.2)

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幻の翼

著者逢坂剛
出版(判型)集英社文庫
出版年月1990.8
ISBN(価格)4-08-749613-9(\540)【amazon】【bk1
評価★★★

百舌の叫ぶ夜の続編。”百舌”の兄、新谷和彦が北朝鮮の工作員として戻ってくる。倉木は、警察内部の陰謀を阻むため、大杉や美希と共に、捜査に乗り出すのですが・・・。結構ショッキングなシーンの多い作品。次から次へと倉木たちに困難が襲い掛かります。倉木たちは、陰謀を防ぐことができるのか。倉木と美希の関係はどうなるのか。読むときは「百舌の叫ぶ夜」から読まれることをお勧めします。

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砕かれた鍵

著者逢坂剛
出版(判型)集英社文庫
出版年月1995.3
ISBN(価格)4-08-748312-6(\700)【amazon】【bk1
評価★★★

警察官が関連する事件が続発し、その背後に「ペガサス」という男がいることを突き止める倉木。日本一不幸な警察官(と私が思っている)倉木が、またまた不幸に見舞われます。倉木と美希の子どもが、偶然にも爆破で死んでしまい、復讐をしようとする美希は、どこかへ消えてしまいます。美希は助かるのか。倉木はどうなるのか。(逢坂剛、許すまじ)

私はこの本を読んだ後、ショックから2日立ち直れませんでした。(T T)

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茜さす

著者永井路子
出版(判型)新潮文庫
出版年月1991.10
ISBN(価格)(上)4-10-129209-4(\520)【amazon】【bk1
(下)4-10-129210-8(\560)【amazon】【bk1
評価★★★★

大学卒業を目前に、自分がどういう仕事をしたいのか悩むなつみ。そこへ彼女が目を向けたのが、飛鳥時代に生きた女帝の生き方だったのです。私は万葉集がすごい好きなのですが、この本を読むと本当に飛鳥に行きたくなるんですよねえ。万葉集のなかでも、最も有名である額田王の「あかねさす 紫野ゆき 標野ゆき 野守は見ずや 君が袖振る」という歌をモチーフに、持統天皇を崇拝する彼女の生き方を語る恋愛小説です。今度こそ絶対吉野に行くぞ。といつも思っている私です。

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評決のとき(A Time To Kill)

著者J.グリシャム
出版(判型)新潮文庫
出版年月1993.7
ISBN(価格)(上)4-10-240901-7(\640)【amazon】【bk1
(下)4-10-240902-5(\680)【amazon】【bk1
評価★★★★

全然関係ないですけど、この本新潮社から出てるんですね。創元社かハヤカワだと思ってました。彼らは大きな翻訳権を逃しましたね。グリシャムは本当にすごい作家です。「緊急の場合は」でも思ったのですが、社会問題を取り上げる作家ってそれにのめり込むあまり、内容がつまらなくなりがちじゃないですか。グリシャムの場合、テーマはとてもヘビーなのに、それだけではなくストーリーテラーとしてもすごい作家であることは、映画を見ても明らかです。そうそう映画といえば、グリシャム原作の映画はおもしろいですねえ。本から映画にすると、本のほうが面白いというのは通説ですが、彼の場合は映画も十分楽しめます。
この話ももうすぐ上映されるということで取り上げてみました。10歳の娘を強姦された黒人の父親が、犯人である白人2人ぐみを法廷で射殺してしまいます。父親は、極刑を逃れることができるのか。弁護士の腕に期待されます。これが黒人と白人が入れ替われば、絶対情状酌量の余地ありで、無罪になるという場面であることもあって、人種問題が大きくクローズアップされる問題作。日本は陪審員制度をとらないため、こういう裁判の緊迫した攻防というのはないんですよね、ちょっと残念です。(私は陪審員制度は反対ですが)

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月光ゲーム

著者有栖川有栖
出版(判型)東京創元社
出版年月1989.1
ISBN(価格)4-488-02314-2(\1600)【amazon】【bk1
評価★★★★

有栖川さんの本は、すごく細かいんですよね。いろんな可能性を考えて、最後に結論にたどり着く。月光ゲームも正にそういう話です。江神部長の活躍する長編第1作目。キャンプに行った推理研究会の人々が、山で出会った人々と一緒に連続殺人事件に巻き込まれるお話。そこへ地震が起きて道が塞がれる。犯人は、ここにいる人の誰か。私好みの「嵐の山荘」状態になるのです。この前、栃木の平家平温泉というところへ行ったのですが、そこも道路一本塞がれたら帰るに帰れないところで、私は大変満足しました。(関係ないけど)

■入手情報:創元推理文庫(1994.7)

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