1997年03月

占星術殺人事件(島田荘司) 冬のオペラ(北村薫)
標的走路(大沢在昌) 空飛ぶ馬(北村薫)
夜の蝉(北村薫) 秋の花(北村薫)
孤島パズル(有栖川有栖) 双頭の悪魔(有栖川有栖)
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占星術殺人事件

著者島田荘司
出版(判型)講談社文庫
出版年月1987.7
ISBN(価格)4-06-183371-5(\560)【amazon】【bk1
評価★★★★★

こうしてみてみると、島田荘司の本の紹介は初めてですね。私は、この本が彼の最高傑作だと思っています。これほどどんでん返しがすごい(本当にすごい)作品も珍しいのではないでしょうか。なぜ死体がバラバラにされたのか。結構バラバラ殺人の話は多い割に、なぜ死体をわざわざ切ったのか納得できるものが案外少ない気がしていたのですが、これにはとても納得できる理由があります。これで私は島田荘司の本を全部買ってしまいました。本当は、「占星術」の初版がとても欲しいのですが、もう手にはいらないでしょうね。
実は、ある本で同じトリックが使われて論議を招いたことがあるのですが(どの本かはすぐ分かると思います)、その本を読んだというか、テレビのドラマで見たとき、”これは「占星術」のパクリじゃないか”、と最初のところで妹に真相を話して嫌われました。このある本では、他のところにも島田荘司のパクリがあります。探すのも面白いかもしれません。どの本か知りたい人は、

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冬のオペラ

著者北村薫
出版(判型)中央公論社
出版年月1993.9
ISBN(価格)4-12-002238-2(\1300)【amazon】【bk1
評価★★★★

「名探偵」巫(かんなぎ)弓彦と、その記録者、姫宮あゆみが活躍する連作短編集。とても男性が書いたとは思えない文章やほのぼのとした作風がとてもかわいらしい連作です。「三角の水」と「蘭と葦駄天」は、日常に起こった不思議な話を名探偵が解き明かすもの。表題にもなっている「冬のオペラ」は、あゆみが京都旅行に行っているときに起こった殺人事件の真相を解き明かすものです。いままで紹介したちょっと怖めの本格物とは一味ちがった推理をお楽しみください。

■入手情報:中公文庫(2000.2)/ C NOVELS(1996.10)

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標的走路

著者大沢在昌
出版(判型)双葉文庫
出版年月1986.8
ISBN(価格)4-575-50095-X(\470)【amazon】【bk1
評価★★★

かなり古い作品なのですが、前に紹介した雪蛍の探偵、佐久間公の若い頃の作品です。法律事務所に所属して失踪人を探すことを仕事とする佐久間公が、産油国ラクールからきた留学生を探して事件に巻き込まれるお話。嵐の山荘あり、スパイありの古さが面白いハードボイルド。雪蛍を読んだ人も読んでいない人も、一度読んでみると面白いでしょう。

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空飛ぶ馬

著者北村薫
出版(判型)創元推理文庫
出版年月1994.4
ISBN(価格)4-488-41301-3(\580)【amazon】【bk1
評価★★★★

文学部の「私」が噺家春桜亭円紫(しゅんおうていえんし)師匠と出会い、日常にあった不思議な事柄のなぞ解きをするシリーズ第1弾。連作で、表題の「空飛ぶ馬」を含む5作品が収録されています。このホームページを見てくださった方からの推薦で北村さんの作品を読みはじめ、すっかりはまってしまいました。(伊藤雅康さん、どうもありがとう)
私もこの本の中の「私」と同じ文学部なのですが、異端の図書館・情報学科なので、いわゆる「文学」を履修したのは1年の一般教養だけなんですよね。私は飛鳥・白鳳の歌が好きだったので、その履修した「文学」も和歌が中心の文学で、彼女のようにものすごい量の日本文学を読んでいるわけではなく、ただただ感心するばかりです。
表題にも使われている「空飛ぶ馬」が、この中では一番好きです。どれもいい作品なのですが、このお話が人間味があって一番いいと思います。特に最後の円紫さんの「どうです、人間というのも捨てたものじゃないでしょう」という一言がこの連作を締めくくるに相応しい言葉に思えます。

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夜の蝉

著者北村薫
出版(判型)創元推理文庫
出版年月1997.2
ISBN(価格)4-488-41302-1(\480)【amazon】【bk1
評価★★★★

空飛ぶ馬に続くシリーズ第2弾。「朧夜の底」、「六月の花嫁」、「夜の蝉」3作品の連作です。この中では、「六月の花嫁」がかわいらしくて好きなのですが、特に推薦するなら、やはり「夜の蝉」です。これは「私」の姉があった不思議な事を円紫さんが解くという話ですが、最後の姉と「私」の会話が、とてもじーんときます。うちも二人姉妹なので(ちなみに私が姉です)、なんとなくこういう会話が納得できるのです。二人姉妹の方に特にお勧めです。

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秋の花

著者北村薫
出版(判型)創元推理文庫
出版年月1997.2
ISBN(価格)4-488-41303-X(\480)【amazon】【bk1
評価★★★★

空飛ぶ馬夜の蝉に続くシリーズ第3弾。シリーズ初の長編です。前作の「夜の蝉」が微妙に複線になっているので、先に「夜の蝉」を読むことをお勧めします。(もちろん前作を読んでいなくても何も支障はありません。)
「私」の後輩が墜落死し、いつも一緒にいた親友がその後どんどん元気がなくなっていきます。心配した「私」が、事件の真相を探ろうと円紫さんに相談します。なぜ後輩は墜落したのか。事故なのか、自殺なのか。悲しくて感動的な結末に涙してください。

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孤島パズル

著者有栖川有栖
出版(判型)東京創元社
出版年月1989.7
ISBN(価格)4-488-01232-9(\1650)【amazon】【bk1
評価★★★★

月光ゲームに続く江神部長シリーズ第2弾。月光ゲームと同様、「嵐の山荘」系のミステリです。宝探しあり、アリバイトリックあり、さすが有栖川さん、楽しませてくれます。私は、この嵐の山荘系のお話しって大好きなのですが、宝島も好きなんです。やっぱりミステリにはまったきっかけがルブランの「奇岩城」だったからでしょうか。
この本から推理小説研究会に待望の女の子、まりあが入ってきます。シリーズものの醍醐味、人間関係の移り変わりも、ちょっと気になるところです。

■入手情報:創元推理文庫(1996.8)

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双頭の悪魔

著者有栖川有栖
出版(判型)東京創元社
出版年月1992.2
ISBN(価格)4-488-01246-9(\1980)【amazon】【bk1
評価★★★★

孤島パズル続く、江神部長シリーズ第3弾。できれば孤島パズルを読んだ後に読んだ方が、流れが判って面白いと思います。もちろん内容的には1冊完結なので、いきなり読んでも問題ないのですが。
さて、孤島パズルの最後で失踪してしまった、まりあを探して四国の「芸術家の村」へ推理小説研究会の面々が向かいます。しかし、その村へ入れない。まりあはどうしているのか、怪しげな「芸術家の村」へは入れるのか。この本は、村の中の「マリア」と、村の外の「アリス」の二人の視点から書かれています。謎の多い江神部長の内面も見れるおいしい一冊です。

■入手情報:創元推理文庫(1999.4)

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