1997年09月

名誉の代償(P.T.デューターマン) キルトに綴る愛(ホイットニー・オットー)
第三双生児(ケン・フォレット) 歓びの娘(藤本ひとみ)
幻の特装本(ジョン・ダニング) 風の日にララバイ(樋口有介)
鳩笛草(宮部みゆき) 東京殺人暮色(宮部みゆき)
スナーク狩り(宮部みゆき) パーフェクト・ブルー(宮部みゆき)
レベル7(宮部みゆき) 火車(宮部みゆき)
返事はいらない(宮部みゆき) 長い長い殺人(宮部みゆき)
今夜は眠れない(宮部みゆき) 龍は眠る(宮部みゆき)
夢にも思わない(宮部みゆき) 風が吹いたら桶屋がもうかる(井上夢人)
ターン(北村薫) 甘い女(ロシェル・メジャー・クリッヒ)
アフリカの蹄(帚木蓬生) エア・フォース・ワン(マックス・アラン・コリンズ)
水車館の殺人(綾辻行人) 迷路館の殺人(綾辻行人)
人形館の殺人(綾辻行人) 時計館の殺人(綾辻行人)
黒猫館の殺人(綾辻行人) 緋色の囁き(綾辻行人)
暗闇の囁き(綾辻行人) 黄昏の囁き(綾辻行人)
殺人方程式-切断された死体の問題-(綾辻行人) 鳴風荘事件-殺人方程式 II-(綾辻行人)
霧越邸殺人事件(綾辻行人) 殺人鬼(綾辻行人)
鎮魂歌-不夜城2-(馳星周) 冷たい密室と博士たち(森博嗣)
笑わない数学者(森博嗣) まどろみ消去(森博嗣)
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名誉の代償

著者P.T.デューターマン
出版(判型)原書房
出版年月1997.9
ISBN(価格)4-562-02962-5(\2400)【amazon】【bk1
評価★★★★

この著者のは初めて読んだのですが、ハードカバーで買った甲斐がありました。とっても面白い。まさに「面白い」っていうのがぴったりの話ですね。ちょっと、犯人のつめが甘くて、怖さがそれほど感じられないのが難点ですが。
海軍の退役艦のボイラーから、ミイラ化した死体が見つかるところから話ははじまり、ワシントンのお偉方を巻き込んで話は発展していきます。別に戦争の話ではないので、軍の話とかはちょっとという方でも、全然平気です。


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キルトに綴る愛

著者ホイットニー・オットー
出版(判型)講談社
出版年月1996.1
ISBN(価格)4-06-207714-0(\1600)【amazon】【bk1
評価★★★

私は、このお話は、映画を先に見て超感動したので、本も買ってしまった口です。原作と映画とは少し視点も違っていて、両方見ると面白いかも。でも、今回は映画に軍配をあげましょう。映画のほうが面白いです(先に映画を見たからかも)。
田舎町で、キルト作りのグループを作っているおばあちゃんたち8人。その昔の恋の話を、まるでキルトのように綴っていきます。この本を読んで、キルトが作りたくなってしまいました。でもそんな暇はないかな。

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第三双生児

著者ケン・フォレット
出版(判型)新潮文庫
出版年月1997.9
ISBN(価格)(上)4-10-235812-9(\590)【amazon】【bk1
(下)4-10-235813-7(\629)【amazon】【bk1
評価★★★★

もしあなたに、全然知らない双子がいたら。しかも、その双子は、生年月日も親も違っていたら。まあそんなことはありえないと思いますが、この話はそれが前提になっています。どうしてそんなことがありえるか。それは読んでのお楽しみです。主人公は、「人間の犯罪性は、生まれつきのものか、育った環境によるものか」という研究をしています。その話も面白いですが、それによって、別の家庭で育ち、片方が犯罪者、片方が一般的市民という双子を探しています。その過程で、そんなケースにぶつかるのです。
でも、実際はこの本にあるようなことが行われていたら、どうしましょう。理論的には不可能ではない(最近の技術なら)だけに、怖いですね。

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歓びの娘

著者藤本ひとみ
出版(判型)集英社
出版年月1997.9
ISBN(価格)4-08-748680-X(\440)【amazon】【bk1
評価★★★

藤本ひとみさんの本との付き合いは、中学のころからですから、すごい長いんです。彼女は当時コバルト文庫の超売れっ子作家で、ファンクラブなんかもあって、この本の主人公である、シャルルは、そのコバルト文庫の中の「マリナシリーズ」のメインキャラクタだったんですね。当時シャルルは、18歳の天才青年だったわけですが(つまり私よりずっと年上だった)、それがいつのまにか、自分より年下になってしまったのがかなり寂しい。今の中高生は、コバルト文庫なんて読むんでしょうかね。「マリナシリーズ」を知っている中高生、是非メールをください(笑)
シャルルのキャラクタというのは、周りのドタバタキャラクタがいてこそだというのが、この本を読んでいてもわかります。ちょっと設定に無理があるような。しかも、彼の天才ぶりがちょっと鼻につく感じです。話そのものは、まあまあではないかと思うのですが、明らかに人物設定が、昔のシャルルを知っている人むけに作られている感じがします。だから、もし読む方は、シャルル初登場作「愛の迷宮で抱きしめて!」を読んでから(これ、結構面白いですよ)、読んだ方がいいかもしれません。

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幻の特装本

著者ジョン・ダニング
出版(判型)ハヤカワ文庫
出版年月1997.9
ISBN(価格)4-15-170402-7(\880)【amazon】【bk1
評価★★★★

(原書:Bookman's Wake(John Dunning) Poket Star Books
ISBN0-67-156782-9)

死の蔵書に続く、元刑事で古書店主のクリフ・ジューンウェイシリーズ第2作。今回は、エドガー・アラン・ポーの「大鴉」の幻の特別版を追って、シアトルに行くところから話は始まります。その「幻の特別版」、グレイソン出版の第2版は本当に存在するのか。そして、その版元である、グレイソンにもいろいろと謎があることがわかります。今回も、本好きにはたまらない一作。つぎつぎと襲ってくる 困難と、複雑にからみあう過去の事件。是非読んで見てください。(97/9/24)と思っていたら、もう邦訳が出版されてしまいました。邦題は、「幻の特装本」です。(97/9/26)

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風の日にララバイ

著者樋口有介
出版(判型)ハルキ文庫
出版年月1997.9
ISBN(価格)4-89-456340-0(\660)【amazon】【bk1
評価★★★

この本は実際は、かなり古いものが文庫化されたものです。この著者の本は、何が面白いって、登場人物の会話です。5年前に妻と別れ、娘とともに暮らしている自称発明家のひねくれた言いようがなんともいえません。お松さんというお手伝いのおばあさんも、いい味だしています。
話は、主人公の別れた妻が殺され、主人公のところに、旧友が刑事として来るところから始まります。主人公は、娘のためにも、犯人を見つけようとやっきになりますが・・・。話自体は、かなりありがちで、だいそれたトリックとか、あっと驚く犯人なんていう仕掛けはないのですが、とにかく登場人物がおもしろい。私は、この会話が読みたいだけにこの本を買ったといっても、過言ではありません。

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鳩笛草

著者宮部みゆき
出版(判型)カッパ・ノベルス
出版年月1995.9
ISBN(価格)4-334-07153-8(\820)【amazon】【bk1
評価★★★★

3編の超能力を持つ女の子の話です。未来の読める女の子、火を付けられる女の子、そして、相手に触っただけで、相手の感情を読める女刑事。私は、表題にもなっている、「鳩笛草」が一番よかったです。相手の感情など読みたくないのに、その能力に頼ってしまうことに、罪悪感を抱いている主人公。どの短編も、その能力を持つことで、悩んでいる主人公が、なんとも言えません。ちょっと寂しい感じのお話です。

■入手情報:光文社文庫(2000.4)

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東京殺人暮色

著者宮部みゆき
出版(判型)カッパ・ノベルス
出版年月1990.4
ISBN(価格)4-334-02867-5(\710)【amazon】【bk1
評価★★★★

両親が離婚して、東京の下町に刑事の父と一緒に住む男の子が主人公です。彼女の書く少年の主人公は、どの子もいい子で、好感が持てます。この話は、東京の下町と、少年の主人公という、宮部さんらしいお話です。
でも、内容は、バラバラ死体が発見されるところから始まるという、いかにもミステリ的なお話。その話を聞いた主人公、順は、友達と共に犯人を探そうとするのですが・・・。と、内容的には、あんまり殺人って感じのものを書かない宮部さんとしては、ちょっと異色の作品でしょうか。

■入手情報:光文社文庫(1994.10)

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スナーク狩り

著者宮部みゆき
出版(判型)光文社
出版年月1992.6
ISBN(価格)4-334-02984-1(\1100)【amazon】【bk1
評価★★★

主人公は、元恋人の結婚式の披露宴へ、ライフルを持ってやってきます。彼女は、何をしようというのか、それが、この話の大きなポイントになってきます。この後、このライフルが盗まれてしまうのです。最後まで気のぬけないハードボイルド的な作品。この人は、本当にどんな物でも書けるんですね。

■入手情報:光文社文庫(1997.6)

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パーフェクト・ブルー

著者宮部みゆき
出版(判型)創元推理文庫
出版年月1992.12
ISBN(価格)4-488-41101-0(\550)【amazon】【bk1
評価★★★

この物語は、主人公(と言っていいのか)が犬なのです。犬の視点ですべての物語が書かれています。犬と言ってもただの犬じゃない。元警察犬で、今は探偵事務所に飼われているという、捜査のスペシャリスト(?)なのです。
高校野球界のエースが、焼き殺されるというショッキングな事件から、物語は始まります。主人公の犬、マサと、探偵事務所の調査員、加代子が、家出少年を連れ帰ろうとしたときに、その事件を目撃してしまうのです。しかも、そのエースは少年の兄。彼らは、犯人を見つけるべく、捜査にのりだします。
この犬が、しゃべらないだけに、とっても面白い。心の中で毒つく犬というのも、なかなかいいんじゃないでしょうか。彼女の長編デビュー作でもあり、宮部さんが好きな人は、是非読んでください。

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レベル7

著者宮部みゆき
出版(判型)新潮社
出版年月1990.9
ISBN(価格)4-10-602722-4(\1700)【amazon】【bk1
評価★★★★★

起きてみたら、自分が誰かわからず、しかも知らない女性とベットにいて、彼女も記憶喪失。そんなことがあったら、怖いですよね。しかも、その部屋には、血のついたナイフや、拳銃、大金が・・・。
一方、電話で悩み相談を受ける仕事をしている真行寺悦子は、その仕事で知り合った、少女が「レベル7までいったら戻れない?」という書き置きを残して失踪していることを知ります。
なぜ、二人は記憶を無くしたのか、少女はどこへ消えてしまったのか。最後までどきどきしてしまうお話です。宮部さんの話の中でも、ピカイチ。絶対読んでください。

■入手情報:新潮文庫(1993.9)

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火車

著者宮部みゆき
出版(判型)双葉社
出版年月1992.7
ISBN(価格)4-575-23117-7(\1600)【amazon】【bk1
評価★★★★★

婚約者が、消えてしまった。しかも、その彼女は、自己破産をしていた・・・。「自己破産予備軍」ってすごい多いらしいですね。確かに、あの無担保ローンっていうんですか、カードが一人で作れてどうのこうの、っていうやつなんかを見ていると、一回やっちゃうとやめられないんじゃないでしょうか。カード一枚で無尽蔵にお金が出てくるような気になってしまったら、おしまいなんでしょうね。この話は、自己破産をした女性のお話です。その女性を追って、過去を探るうちに、悲しい出来事が次々浮かびあがってくる。私はこの本を読んでから、なんとなくカードが嫌いになって、今でもあんまり使えません。ましてカードでお金を借りることは絶対しません。カードを何枚も持っているあなた、危ないですよー。この本を読んで、怖がってください。

■入手情報:新潮文庫(1998.1)

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返事はいらない

著者宮部みゆき
出版(判型)新潮社
出版年月1991.10
ISBN(価格)4-10-136913-5(\1400)【amazon】【bk1
評価★★★

書名にもなっている「返事はいらない」を含む短編集。どの本も書名になる短編は、中でも代表作だと思うのですが、この本も、「返事はいらない」が一番好きです。失恋して、自殺しようとした女性が、奇妙な夫婦に出会って・・・というお話です。あとは、最後の「私はついてない」でしょうか。でも、どの短編も好きですね。私はあまり短編集って読まないんですが、彼女の本の場合、この長さがとってもいいんですよね。どの話も読後感がよくて、短編で読むのにちょうどいい話だと思います。

■入手情報:新潮文庫(1994.12)

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長い長い殺人

著者宮部みゆき
出版(判型)光文社
出版年月1992.9
ISBN(価格)4-334-07236-4(\1400)【amazon】【bk1
評価★★★

パーフェクト・ブルーでは、犬が主人公でしたが、この本では、「財布」が語り手の連作集です。宮部さんのこういう奇抜な設定がすごい面白いと思うのですが、皆さんはどうでしょう。良く考えると、財布って、一番一緒にいるもちものかもしれませんね。一番よく見るものでもあるし。私の財布は、どんなことを思っているのでしょうか。最近は就職してすこし懐が暖かいので、満足しているかも。あるいは、逆に散財が多くなったので、いらいらしているかもしれません。この本を読んで、自分の財布についても考えてはどうでしょう。

■入手情報:カッパノベルス(1997.5)/ 光文社文庫(1999.6)

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今夜は眠れない

著者宮部みゆき
出版(判型)中央公論社
出版年月1992.2
ISBN(価格)4-12-002091-6(\1214)【amazon】【bk1
評価★★★★

有名な相場師が、自分の母親に5億円もの遺産を残した。そんな事件から、この物語ははじまります。なぜ彼は、母親にそんな大金を残したのか。父親は家出をしてしまうし、知らない人から嫌がらせをうけるし、さんざんな目にあった少年は、その疑問を解決すべく、友人と捜査に乗り出すのですが。
昔一回会ったことがあるだけで、5億円もの遺産を残されたら、どう思うでしょうか。宝くじが当たったようなものでしょうか。度の過ぎたお金って、きっと人の心を変えてしまうのでしょうね。

■入手情報:中公文庫(1998.11)

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龍は眠る

著者宮部みゆき
出版(判型)出版芸術社
出版年月1991.2
ISBN(価格)4882930307(\1500)【amazon】【bk1
評価★★★★

超能力を持つ少年のお話。宮部さんのお話には、結構超能力とか、不思議な力の話とか多いと思うのですが、これはまさにそういうお話です。主人公は、記者なのですが、彼はその力を疑問に思っています。宮部ファンなら是非読んでもらいたい作品。

■入手情報:新潮文庫(1995.2)

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夢にも思わない

著者宮部みゆき
出版(判型)中央公論社
出版年月1996.10
ISBN(価格)4-12-500437-4(\1500)【amazon】【bk1
評価★★★

今夜は眠れないに続くシリーズ第2弾。虫聞きの会に行った主人公が、知り合いの少女の殺人に会い、その事件を解決しようとするお話。先に前作を読むと、より一層人物関係が分かって面白いかも。

■入手情報:中公文庫(1999.5)

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風が吹いたら桶屋がもうかる

著者井上夢人
出版(判型)集英社
出版年月1997.8
ISBN(価格)4-08-774283-0(\1500)【amazon】【bk1
評価★★★★

この本は井上さんの最近の路線とはちょっとちがって、爆笑連作物といったらよいのでしょうか、とりあえず笑わせてくれます。語り手は牛丼屋でバイトをする青年。その青年は、「本物の」超能力者と、理屈っぽいミステリファンと一緒に住んでいます。その超能力者を頼ってさまざまな依頼がくるところから物語は始まるのですが。さて、それぞれの悩みは解決するのでしょうか。
わざとパターンにはめて連作にしたのが、とっても面白い。苦労して超能力を使う哀れな区役所職員と、周りを馬鹿にしたようなプータローがとっても気にいりました。重い本を読んだ後に読むといっそう効果的かも。

■入手情報:集英社文庫(2000.7)

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ターン

著者北村薫
出版(判型)新潮社
出版年月1997.8
ISBN(価格)4-10-406602-8(\1700)【amazon】【bk1
評価★★★

スキップに続く「時と人」3部作の第2作目。今回は、何度も同じ日を繰り返してしまう女性の物語です。そういうと、七回死んだ男を思い出してしまいそうですが、ああいう話ではありません。ある時交通事故に遭い、そこからくるんと1日分戻ってしまう女性の話。何度も何度も繰り返される7月の一日から戻りたいと思いつつも、戻れない。しかも、他の人は、普通の時間を進んでいってしまっているので、自分の時間には誰もいない。
あまり書くと読んだときの面白味が欠けてしまうので、この辺でやめておきますが、私としては、スキップの方が好きでした。でも北村さんらしい話で、ほのぼのとしたよさが出ていると思います。

■入手情報:新潮文庫(2000.7)

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甘い女

著者ロシェル・メジャー・クリッヒ
出版(判型)創元推理文庫
出版年月1997.2
ISBN(価格)4-488-29402-2(\820)【amazon】【bk1
評価★★★★

自分の一番信頼している人が、自分を狙っていたら。それは一番怖いことですね。逆に狙う方としては、一番簡単に狙える相手でもある。この主人公はまさにその恐怖の罠にはまってしまっています。真実を見抜いた親友の言葉にも耳を貸さない。彼女は助かるのでしょうか。
最初の場面が、途中でどんどん意味を持ってきて、それが、最後のどんでん返しにつながる。最後まで息のぬけないお勧めの作品です。

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アフリカの蹄

著者帚木蓬生
出版(判型)講談社文庫
出版年月1997.7
ISBN(価格)4-06-263587-9(\619)【amazon】【bk1
評価★★★

中にははっきりとは書いていませんでしたが、南アフリカ共和国の話です。主人公は一人の日本人医師。黒人を絶滅したはずの天然痘で滅亡しようとする陰謀から、彼らを救うために戦う話です。帚木さんらしい人間味のある話で、いろいろと考えさせられる会話が多かったです。

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エア・フォース・ワン

著者マックス・アラン・コリンズ
出版(判型)二見書房
出版年月1997.11
ISBN(価格)4576971433(\657)【amazon】【bk1
評価★★★

正月映画で日本でも公開される予定のエア・フォース・ワンの原作。大統領専用機「エア・フォース・ワン」がテロリストにハイジャックされるという話ですが、ダイハードの大統領版という感じがしました。映画では、大統領James Marshallを、ハリソン・フォードが演じるらしいですが、これは超ぴったりっという感じです。ただなんとなく、ファースト・ファミリーの命は、他の人の100人分にも値するという感じの書き方が気に入らなかったりもするのですが、それでもエンターテイメントとしては、一級品なんではないでしょうか。映画もヒットしているようですし。少なくとも、私はハリソン・フォードのファンなので見に行ってしまうでしょう。今年の冬は映画が楽しみですね。

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水車館の殺人

著者綾辻行人
出版(判型)講談社ノベルス
出版年月1988.2
ISBN(価格)4-06-1813455(\720)【amazon】【bk1
評価★★★

十角館の殺人に続く、館シリーズ第2弾。綾辻氏は、話の書き方がすごく凝っているんですよね。この話では、過去と現在を行きつ戻りつしながら、事件の全容が見えてくる話になっています。テレビで飽きてきたころに、別の場面に変るように、気をもたせつつ過去と現在を行き来するので、全然飽きません。そして、また舞台が憎い。いかにも仕掛けのありそうな古い洋館。あの中村青司の作った建物。怪しげな住人。この人の話は、もう最初から雰囲気を作ってしまって読者をその中に引き込んでしまうような魅力があります。

■入手情報:講談社文庫(1992.3)

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迷路館の殺人

著者綾辻行人
出版(判型)講談社
出版年月1988.9
ISBN(価格)4-06-181381-1(\718)【amazon】【bk1
評価★★★★

館シリーズ第3弾。話の書き方にものすごく凝る綾辻氏の今回のしかけは、作中作。しかも表紙から奥付までついている凝りようです。こういうの、すごい好きなんですよねえ。あとがきまで書いちゃって。奥付の発行者に綾辻氏の本名が出てるし。コピーライトまで鹿谷門美になっているんですよ。ちょっとあれをした動機がいまいちのような気がする(読めばわかります)のですが、最後まで仕掛けを忘れないところには脱帽です。

■入手情報:講談社文庫(1992.9)

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人形館の殺人

著者綾辻行人
出版(判型)講談社
出版年月1989.4
ISBN(価格)4-06-181420-6(\700)【amazon】【bk1
評価★★

おー、やってしまったー。というのが私の感想です。と書いてみて全然ニュアンスが伝わらないことがわかりました。でもこれしか書きようがないのです。ごめんなさい。作者自身も「シリーズ中、最も異色作」と言っていますが、私はだめです。これは受け入れられません。なんてこんなところで書いていいのか分からないのですが。読んだ皆さんの感想が最も知りたい作品ですね。

■入手情報:講談社文庫(1993.5)

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時計館の殺人

著者綾辻行人
出版(判型)講談社
出版年月1991.9
ISBN(価格)4-06-181550-4(\980)【amazon】【bk1
評価★★★★★

人形館の殺人で、どうしたんだー、と思ったら、この作品でドカーンときました。(またわけがわからない)私はこの作品が十角館の殺人の次に好きです。もしかしたら同等くらいに好きかもしれません。今度の文章の仕掛けは、<内>と<外>です。この話はすごい。最後のところで、ドカーンときました。おーなるほど、って感じです。トリックが意外で、おーなるほどと思えるほど幸せなものってないですね。

■入手情報:講談社文庫(1995.6)

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黒猫館の殺人

著者綾辻行人
出版(判型)講談社
出版年月1992.4
ISBN(価格)4-06-181615-2(\760)【amazon】【bk1
評価★★

この話は、ちょっと問題があるのです。実は私は別のある作品(分かる人にはわかりますよね)を先に読んでしまっていたので、この話には正当な評価が下せないでいます。だからこの話については、これくらいにしておきましょう。「そのこと」についての真相を知っている方がいたら、教えてください。
その別のある作品を知りたい方は、

注:JavaScriptの使えないブラウザでは見ることができません。

■入手情報:講談社文庫(1996.6)

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緋色の囁き

著者綾辻行人
出版(判型)NONNOVEL
出版年月1988.10
ISBN(価格)4-396-20276-8(\740)【amazon】【bk1
評価★★★★

このお話は、結構サイコミステリーというか、ホラーというか、怖めの話です。なんか倒錯の世界へ嵌まってしまいそうな、そんな怖さがあります。私はあまり怖い話は好きではないのですが、でもこの作品は、一気に読んでしまいました。どうしてでしょう。やはりストーリーテラー綾辻氏の術中に嵌まってしまったからでしょうか。怖いのが嫌いな人も、読んで損はないと思います。

■入手情報:講談社文庫(1997.11)

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暗闇の囁き

著者綾辻行人
出版(判型)NONNOVEL
出版年月1988.9
ISBN(価格)4-396-203004(\740)【amazon】【bk1
評価★★★★

囁きシリーズ第2弾。この話は、ちょっと殺人鬼にも通じるところがあるのですが、それは2冊とも読めばわかるでしょう。もちろん読まなくても問題ありません。また、このシリーズは、シリーズキャラクターがいるわけでもないので、どの作品から読んでも差し支えありません。
この作品は、名前だけ存在する少年が誰なのかという話です。そんなに単純ではないのですが、それがメインの謎になってきます。やはり怖い話なのですが、このシリーズの怖さは許せる怖さですね。

■入手情報:講談社文庫(1998.6)

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黄昏の囁き

著者綾辻行人
出版(判型)NONNOVEL
出版年月1993.1
ISBN(価格)4-396-20415-9(\750)【amazon】【bk1
評価★★★

囁きシリーズ第3弾。この3部作は「主人公が過去に経験した出来事の記憶」が主題になっているそうですが(と著者があとがきで書いている)、この話は特にそれが中心にでてきます。断片的に浮かんで来るのに、それが何の思い出か思い出そうとしても思い出せない過去ってありますか?私は、4歳のとき交通事故にあったのですが、その時の記憶がトラックが目の前に迫ってくるところで終わっているんですよね。もちろんそれが交通事故の時の記憶だというのは分かっているから、この作品のようなものではないのですが、その後自分がどうしたのか全然思い出せなくて(幸い、私はすりきずくらいで済んだのですが、その時乗っていた自転車は事故車として処理されました)、結構もどかしかったりします。一種の記憶喪失なのでしょうか。


■入手情報: 講談社文庫(2001.5)

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殺人方程式-切断された死体の問題-

著者綾辻行人
出版(判型)光文社ノベルズ
出版年月1989.5
ISBN(価格)4-334-02813-6(\710)【amazon】【bk1
評価★★★★

副題についているとおり、この作品では、なぜ死体を切断したのかが問題になります。死体を切断する理由って、いろいろだと思うのですが、結構小説の中だと、それに必然性が感じられないものがあるんですよね。切断された死体で結構納得したのは、島田荘司の「奇想、天を動かす」とかがぱっと浮かんできます。この作品もその理由をとっても考えた作品になっています。
私がこの作品を気に入っているのは、登場人物が好きだからです。婚約者が刑事と結婚すると決めていたがために刑事になった明日香井叶と、今でも大学生をしてふらふらしている響という一卵性双生児。そして、叶の妻、深雪。この3人が結構楽しいのです。
特に、いかにもの「推理小説」が好きな方にお勧めです。

■入手情報:光文社文庫(1994.2)

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鳴風荘事件-殺人方程式 II-

著者綾辻行人
出版(判型)光文社ノベルズ
出版年月1995.5
ISBN(価格)4-334-07135-X(\820)【amazon】【bk1
評価★★★

殺人方程式に続く、第2弾。今回は、叶と深雪のなれ初めの話から始まります。その6年半後、深雪は旧友と埋めたタイムカプセルを掘り出しに、信州を訪れることに。
タイムカプセルって埋めたことありますか?私は、小学校のときそういうのが流行っていて、クラスのタイムカプセルとかやりました。EXPO '85でもやったかなあ。もういくつ埋めたというか出したか分からないですね。将来の夢とか、将来の自分に手紙を出すとか、いろいろな趣向のがありましたが、確かどれも「21世紀になったら」というようなやつだった気がします。もう21世紀まであと少し。当時は遠い未来と思っていたのが、もう数年で来ます。でもあのときのタイムカプセルは私の元には届かないでしょう。引越しをしているし、連絡を取っている友人もいないし。内容も忘れてしまいました。何を書いたんだろう。でも最近そういうのやってないですね。多分21世紀がもう数年で来るからでしょうね。
この話は、その時タイムカプセルを埋めた人たちが再び逢う、という話です。そして殺人が起こる。こういうのって悲しいですね。埋めたときは、きっと「ばら色の未来」とか思っていただろうに、こんなことになるなら・・・と思うじゃないですか。
今思うと、なんでタイムカプセルなんてものが流行ったんだろうと思います。小学校の時から十年一日のように過ごしていない限り、10年以上前に自分に出した手紙が届くはずないんですよね。みなさん、どう思いますか?

■入手情報:光文社文庫(1999.3)

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霧越邸殺人事件

著者綾辻行人
出版(判型)新潮社
出版年月1990.9
ISBN(価格)4-10-602721-6(\1700)【amazon】【bk1
評価★★★★

この話も、館の話なのですが、厳密には館シリーズではないようです。雪の中で迷った劇団員たちが、建物を見つけて転がりこむところから事件は始まります。怪しげな住人たち、雪に閉ざされた邸宅、タイトルページの裏に折り込まれた屋敷の平面図。もういかにもって感じですね。
一度テレビの2時間ドラマかなんかでこれをやったような気がするのですが、なんだか設定とかが、かなり変っていて、不満に思った覚えがあります。絶対原作の方が面白い。テレビを見た方も見てない方も、是非読んで見てください。

■入手情報:新潮文庫(1995.2)

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殺人鬼

著者綾辻行人
出版(判型)双葉社
出版年月1990.1
ISBN(価格)4-575-23054-5(\1300)【amazon】【bk1
評価★★

この話はホラーです。別に解決がついているわけではありません。本当のホラーです。だから、私のように綾辻行人氏が好きで、彼の本なら何でも読む、という方でもホラーが大嫌いな方は止めたほうが賢明です。思わず買ってしまって後悔した方もいるのではないでしょうか。この話は掛け値なしに怖いです。しかも気持ち悪いです。私はホラーは大嫌いなので、絶対「殺人鬼II」は読まないでしょう。だから、感想も書けません。この話も、私のようなホラー嫌いは感想を書けないので、この辺でやめましょう。

■入手情報:新潮文庫(1996.2)/ Futaba NOVELS(1994.10)

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鎮魂歌-不夜城2-

著者馳星周
出版(判型)角川書店
出版年月1997.8
ISBN(価格)4-04-873070-3(\1500)【amazon】【bk1
評価★★★

不夜城の続編。不夜城の2年後のお話です。人物関係や、2年前の事情をわかるために、不夜城を先に読むことをお勧めします。
この本は精神状態が正常の時に読んだ方がいいです。かなり鬱な話です。相変わらず誰も信じられない世界。何を考えているのかわからない同胞。復讐しか頭に無い主人公。よくもこれほど他人を裏切ることができるなー、と思うような人しかでてきません。準主役の悪徳警官がかわいく見えてしまいます。ここに「新宿鮫」(大沢在昌参照)を出したいと思うのは私だけ? よく行く新宿が、急に悪魔の巣窟のように見えてくるのが、この作者のすごいところでしょうか。
これを読んだ日の朝、私は借りてきていた映画の「セブン」を見た後だったので、かなり鬱になりました。今回のも超大型ベストセラーになるのでしょうか。

■入手情報:角川文庫(2000.10)

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冷たい密室と博士たち

著者森博嗣
出版(判型)講談社
出版年月1996.7
ISBN(価格)4-06-181917-8(\820)【amazon】【bk1
評価★★★

これは、すべてがFになるに続く、犀川助教授と萌絵のシリーズ第2弾ですが、本当はこちらが最初に書かれたもののようです。喜多先生も良いし、この中の萌絵ちゃんと、犀川助教授も結構好きです。萌絵ちゃんは今ほどわがままでエキセントリックなお嬢さまではないし、この頃の犀川助教授のほうが、学者らしくで、世間ずれしていないような気がするのは、私だけでしょうか。最後の萌絵ちゃんと犀川助教授のやり取りとかが結構面白いのです。
おや、全然内容の話になっていませんね。でもそれは実際読んでのお楽しみ。是非読んでください。

■入手情報:講談社文庫(1999.3)

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笑わない数学者

著者森博嗣
出版(判型)講談社
出版年月1996.9
ISBN(価格)4-06-181927-5(\880)【amazon】【bk1
評価★★★★

この話はとても哲学的です。もちろん謎解き自体もおもしろいのですが、私は「内と外」の話のほうが面白かった。大学時代、心理学の教授に、「色の心理学」の話をされたときに、「私の見ている緑と、他人の見ている緑は違うかもしれない」と感想を書いて、それは哲学の問題だと言われました。そういう話は結構好きなのですが、同時にそういう話をしていると、自分の足元が崩れるようで怖いです。この話も最後はとっても怖いのです。私も犀川教授のように、混乱で鬱状態になってしまいました。この問題に解はあるのでしょうか。

■入手情報:講談社文庫(1999.7)

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まどろみ消去

著者森博嗣
出版(判型)講談社
出版年月1997.7
ISBN(価格)4-06-181970-4(\760)【amazon】【bk1
評価★★★

著者初の短編集。ミステリーというか幻想小説というか、いろんなのが入り交じっています。萌絵ちゃんがでてくる話も2話。私は、「真夜中の悲鳴」と、「やさしい恋人へ僕から」が好きですね。特に、前者のような落ちは、私の最も好きな落ちの一つです。後者は、著者のホームページを見てから読んだほうがよいかもしれません。より騙されるから。

■入手情報:講談社文庫(2000.7)

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