1997年02月

ろくでなし(樋口有介) メドゥサ、鏡をごらん(井上夢人)
クーデター(楡周平) 臓器農場(帚木蓬生)
死の蔵書(ジョン・ダニング) 検屍官(パトリシア・コーンウェル)
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ろくでなし

著者樋口有介
出版(判型)立風書房
出版年月1997.2
ISBN(価格)4-651-66073-8(\880)【amazon】【bk1
評価★★★

「政治的新聞」を書く田沢が、すごい美人から受けた依頼のせいで事件に巻き込まれるお話。話の内容はまあまあなのですが、人物が結構好きです。特に主人公がいつもパジャマで、なまけもので、本当に「ろくでなし」なのがとても気に入りました。私が好きな終わり方で、ちょっと読むにはなかなかよい本ではないでしょうか。また、主人公の亡くなったお母さんの格言も笑わせます。

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メドゥサ、鏡をごらん

著者井上夢人
出版(判型)双葉社
出版年月1997.2
ISBN(価格)4-575-23290-4(\1800)【amazon】【bk1
評価★★

井上夢人さんらしい、怖いお話です。内容的には岡嶋二人時代の最終作、「クラインの壷」に近く、最後まで読んだらわけがわからなくなりました。怖いよお。題名の「メドゥサ、鏡をごらん」というのからして、怖い話ではと思っていたのですが、やはりそうでした。こういう精神的に怖いお話って苦手なんですよね。「ダレカガナカニイル・・・」もそうでしたが、しかし、「ダレカガ・・」の場合は、きちんと説明される怖さだったのに対し、こちらは本当にわけがわからない。私の頭が悪いのでしょうか。誰か読んで教えて下さい、どうしてこうなってしまうのでしょう。どこかに仕掛けがあるのでしょうか。

■入手情報:講談社ノベルス(2000.8)

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クーデター

著者楡周平
出版(判型)宝島社
出版年月1997.3
ISBN(価格)4-7966-1188-6(\1960)【amazon】【bk1
評価★★★

1作目「Cの福音」は、尻切れとんぼな終わりで、絶賛の帯が納得できなかったのですが、今度のはおもしろいです。この人はこのぐらいの長さを書かないと納得できる作品が書けないのですね。できれば、「Cの福音」も”結末”を書いて欲しいと思う私。ちょっと同じ表現が何度もでてくるのが気になりましたが、この厚さでも一気に読めました。昔、渋谷の高校生がクーデターを起こす話を読んだことがあるのですが、都市ゲリラ戦になったとき、日本の自衛隊は本当に対処できるのでしょうか。怖いですね。私もきっと遠くでゲリラが起きても、この小説の中の無力な小市民のように、通常どおり出勤するしかできないような気がするのです。戦争を知らない子供たちなので。阪神大震災の時は、結構みんな地震への備えを考えたのに、2年もたったらやっぱり薄れてきてしまうんですよね、そういう危機感って。日本はとても平和でいいと思うのですが、その平和も、もう長くはないのでしょうか。

■入手情報:宝島社文庫(1998.12)

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臓器農場

著者帚木蓬生
出版(判型)新潮文庫
出版年月1996.8
ISBN(価格)4-10-128806-2(\720)【amazon】【bk1
評価★★★★

新任の看護婦が自分の勤める病院に、ある不信感を抱き、友人とともにその疑問を追いかけるサスペンス物。「臓器移植」という未だに解決のめどのたっていない問題に、いち早くとりくんだ作品。臓器の欲しい人に、いかに早く使える臓器を提供するかが臓器移植の問題点のひとつだと思いますが、その問題をクローズアップしたお話です。本当にこういうことをする人(病院)が出てきそうで、私はとても怖いのですが、臓器の欲しい人にしてみれば本当に切実な問題でしょうし、どうしても臓器を手に入れたいという気持ちがわからなくもないために、簡単にどっちが悪いと言い切れない、難しい問題だと思います。みなさんは、ここに出てくる医者をどう思われますか。

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死の蔵書

著者ジョン・ダニング
出版(判型)ハヤカワ文庫
出版年月1996.2
ISBN(価格)4-15-170401-9(\720)【amazon】【bk1
評価★★★★★

私はあんまり翻訳物を読まないのです。カタカナの名前が覚えられないのと、地名が出てきてもどういうところだか、いまいちわからなくて、感情移入ができないからなのです。でも、最近結構翻訳物を読んでいます。そのきっかけがこの本です。97年のこのミステリーがすごい、と文春のミステリーベスト10どちらもだんとつ1位という、すごい本です。
古本の山から掘り出し物を見つけることを生業としているボビーが殺されます。それを、本マニアの刑事が捜査するという、本好きには堪らない本です。いたるところに、読んだことのある本の題名が出てきて、すっかりはまってしまいました。趣味が読書と公言するあなたに是非お勧めの1冊です。

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検屍官

著者パトリシア・コーンウェル
出版(判型)講談社文庫
出版年月1992.1
ISBN(価格)4-06-185069-5(\680)【amazon】【bk1
評価★★★★

ずっと積読状態だったこの本を最近読みました。これが結構いけます。リッチモンドの女性検屍局長が主人公。ちょっとヒステリーぎみの検屍局長と、それをうまくあやつる(?)老刑事のコンビが笑わせてくれます。
コーンウェル自身、警察担当記者や、検屍局のコンピュータプログラマーなどの経験があるだけに、描写が細かくとても説得力のある作品になっています。

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