ニホンリスは、マツボックリやオニグルミを齧って、実を食べます。かたい実をどうやってに齧れるのか、その頭の骨と歯の構造を見てみましょう。
図10 ニホンリスの頭蓋骨(瀬戸口標本より撮影)
リスの切歯は、大工道具のノミのようにとがっています。オニグルミの殻を齧る様子を観察すると、上顎の切歯で固定して、下顎の切歯を下から上に激しく動かして削り、穴をあけているのがわかります。この下の二本の切歯の歯先は開いたり閉じたりすることができる構造になっています。そのためクルミを齧るとき、歯先を開きながら顎を上げると削れ、歯先を閉じながら顎を下げることを繰り返します。この時、特徴的な「ゲシゲシ」とか「シャカシャカ」とかいうような、かき氷を作るときの音やかつおぶし削りの音に似た音が聞こえます。
子リスは、クルミの表面をところかまわず齧ろうとして、幾つもの溝を掘ったりします(図5 右)。親リスや学習が進んだリスは、クルミの殻の接合面に沿って、両方に5〜10mm程の溝を掘り、切歯をテコのように使って、クルミを真っ二つに割ってしまうものが見られます(図5 左)。