ニホンリスは、シマリス、エゾリスと同じく、季節によって大量に実る食物を貯えておいて、食物が不足する冬などに利用する「貯食」という行動をします。東谷山でも、私達守山リス研究会が与えたオニグルミを、地下3cmくらいに掘った穴に1個ずつ埋めて、その上に落ち葉を乗せて隠してあるのが見つかります。給餌の量が減少したときには、その貯食したクルミを掘り起こしたあとの、穴ぼこがいくつも見つかっています。また、木の又や木の枝にも、無傷のクルミやかじりかけのクルミが挟まれているのが、東谷山や森林公園でも発見されています。
こうして貯食したクルミの場所を再度見つけだすときに、リスは、匂いだけではなく、なんらかの目印で記憶している、ということが、最近の研究で報告されました(芝崎、1994)。しかしその記憶から漏れたクルミは、リスの掘り出されることがなく、発芽してクルミの木となり、森の一部になります。忘れたクルミが芽を吹くとき、リスは、クルミの種まきをしたことになります。深さ3cmというのがクルミの発芽条件にぴったりの深さであることにも、何か神秘的なつながりを感じます。