●設計主旨●


「本当に必要な空間、本当に必要な広さ、本当に必要なものはなにか?」を常に考えながら設計しました。

「本当の快適さ」を求め、外部に閉じて人工的室内環境を作るのではなく、自然の恩恵を受け、四季が感じられ、少ないエネルギーで快適な室内環境となるように設計しました。

・自宅であることから「全電化」「太陽光発電システム」「アクアレイヤーヒーティングシステム」「電磁調理器」「電気温水器」など、実験的な試みもしました。

○条件○

敷地は高台にあり、周囲には雑木林や梨畑が残っている。高台にあるため、2階部分はほぼ一日中陽が当たり、風が通る。
現在は夫婦二人だが将来家族がふえる可能性がある。
気持ちよく生活できる家、愛着がもてる家にしたい。

○平面計画○

一番条件のよい2階はみんなが集まる家族室、1階は私室と水まわり、地階は予備空間という基本構成をもとに、それぞれが気持ちのよい空間になるよう計画した。
2階の家族室がおおらかな空間になるよう、私室や動線空間はなるべく小さくした。
1階の私室は間仕切壁や扉を作らず書棚等で各室を仕切ることで、狭さを軽減させた。 また、オープンであることは家族が増えた時もフレキシブルに対応ができる。
水まわりも間仕切りにガラスを用い、扉をなくすことで、広さ、明るさ、風通しを確保した。

○各室のポイント○

〔玄関〕
家族が長い時間いる家族室や私室空間を限られた空間の中でなるべく広くとるため、玄関は必要最小限とした。

〔仕事室、寝室〕
限られた空間なので間仕切壁や扉を作らず、書棚などで空間を仕切り、狭さや風通しを解消した。
奥行き一間のベランダは床との段差を少なくし、空間の広がりをつくった。

〔浴室、洗面・脱衣室〕
ゆったりと気持ちよく入浴ができるように浴室の南側に庭を眺める窓を設けた。
洗面・脱衣室との間仕切りに透明ガラスを用いることで洗面・脱衣室からも庭が眺められ、明るさも確保でき、狭さも解消された。

〔家族室〕
食堂と居間の両方の機能をもつ。
限られた空間の中でおおらかな空間を造りたかったので、食堂を区切って造るのではなく食堂+居間としてひとつの大きな空間にした。
天井が低くなっている部分は畳を敷いて、ベンチやゴロンと横になるスペースとして利用。
畳の下は引き出し式の収納。
東南に雑木林が見渡せ、冬でも一日中陽が当たる。

〔台所〕
物をカウンターの上などに出したくないので収納をたっぷり取った。
洗いたての食器は食器乾燥機、ナベ等は吊戸棚に作った水切り棚に収納。
細かい調味料ビンも引出しを作ってそこに収めた。
掃除のしやすさ、エネルギーを効率よく使用できることからIH調理器を採用。

〔土間〕
日常を離れ、炎を楽しむため土間には暖炉を設置。
床には昔の農家の床に使われていた荒木田土を敷いた。

○外観デザイン○

四角いプラン、切妻の大屋根の単純なかたちにこだわった。
シンプルであることはデザイン的に好ましいうえローコストにもつながる。
北側の道路斜線がきびしい中で2階の空間を大きくとるため、カネ勾配(45°)の屋根とした。

○仕上材○

自然素材を使うよう心がけた。
自然素材は見た目や肌触りが柔らかいうえに体に害を与えない。
また、使い込むほどに味が出て、愛着が湧いてくる。
限られた予算であるため必要最低限の仕上げにすることを心がけた。(厚化粧をしない)

・外壁:セメント押出中空成型板(無塗装)
・屋根:ガルバリウム鋼鈑
・1階床:杉板27t(無塗装)、壁・天井:仕上げなし(構造用合板現わし)
・2階床:桧板15t(無塗装)、壁:珪藻土、天井:シナベニヤ
・地階床:荒木田土、壁・天井:仕上げなし(RC打放し)
・造り付け家具/扉:シナベニヤ+オスモカラー塗り、天板(洗面台、流し台):タモ集成材+オスモカラー塗り

○室内環境とエネルギー○

地球温暖化、エネルギーの枯渇等の問題はこれからは住宅レベルでの対応が必要と思われるので少ないエネルギー(光熱費)で快適な室内環境が得られるよう設計した。
それは同時に自然の恩恵を受け、四季を感じられる家となる。

〔暖房〕(アクアレイヤーヒーティングシステム)
2階床下(一部冷蔵庫やキッチンカウンター部分を除き全面に)にアクアセル(水)をいれ、深夜電力と太陽熱のダイレクトゲイン(2階の床の陽だまり)で蓄熱し、1階の天井輻射暖房、2階の床暖房とした。
蓄えた熱をなるべく逃がさないように床、壁、天井を高断熱仕様とし開口部は断熱アルミサッシ+ペアガラスとした。
輻射暖房は天井の高い家族室、オープンな私室と動線空間には最適な暖房方法で、「室内環境のバリアフリー」(家全体が均質に寒くない)を実現することができた。

アクアレイヤーヒーティングシステム

根太の間にシートヒーター(手前の黒い物)を敷き、その上にアクアセル(奥の銀色の物)を載せ、その中に水を入れるだけ。
一般の温水式床暖房に必要な配管やポンプ付のボイラーなどは不要。

〔冷房〕
エアコンが苦手なこともあり、自然の風が通るよう窓を配置し、エアコンは一切取り付けなかった。
2階ベランダの梁や窓にはよしずやすだれを掛け、夏の日差しをさえぎる。
〔太陽光発電システム〕
地球温暖化防止に少しでも寄与できれば・・・。
一日中陽が当たる屋根・・・この太陽光を無駄にしてしまうのはもったいない!
2000年8月22日から生活しています。
夏の残暑も自然の通風だけで生活できました。寝室も思った以上に風が通り、寝苦しかった日はありませんでした。
冬は特に寒い日を除いては深夜電力とダイレクトゲインの蓄熱で快適です。特に寒い日は夕方(朝晩電力時間帯)から通電して暖房しています。


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