ショスタコーヴィチの交響曲第4番を演奏することになり、作曲者自身が「自分の書いた最高傑作」と語ったとされるものの、何やらいわくつきの作品ということで少し調べてみることにしました。するとこの曲の完成直後に初演の準備をしていたのがシュティードリーという指揮者であることがわかり、たまたま聴いたメトロポリタン歌劇場の『ニーベルンクの指輪（1951年、ブリュンンヒルデ：キルステン・フラグスタート）』の指揮者と同一人物であることがわかったこともあって非常に興味を惹かれたのでした。また、英国で最初にこの第4番が演奏された時、その3日前に同じ会場で初演された交響曲第12番は酷評されたのにこの第4番は好評だったということにも気になりました。筆者は交響曲第4番のリハーサルが始まった2ケ月前に偶然にもその交響曲第12番を演奏したばかりだったのですが、その時になんとなく感じていたことを第4番の音符と比べながら確かめてみようと思い、このエッセイを書くことを決めました。

　この交響曲第4番が辿った数奇な運命を語るとき、その2年前に初演されたショスタコーヴィチの歌劇『ムツェンスク郡のマクベス夫人』とそれに対するいわゆる『プラウダ批判』（1936年）についてはどうしても避けるわけにはいかないので、あちこち寄り道をしながら進めていこうと思います。

No.	タイトル	作成日
第1章	第4交響曲の萌芽	2025.11.25
第2章	作曲開始	2025.11.28
第3章	『プラウダ批判』〜「音楽のかわりに荒唐無稽」	2025.12.1
第4章	作曲再開と完成	2025.12.8
第5章	リハーサルと初演の中止	2025.12.12
第6章	フリッツ・シュティードリーは凡庸な指揮者？	2025.11.4
第7章	自筆譜の紛失とその復元	2025.11.21
第8章	25年遅れの初演とその評価
	後註	2025.12.18
付録	ショスタコーヴィチ：交響曲第12番

参考文献
『ショスタコーヴィチ　ある生涯』 ローレル・E.・ファーイ著 藤岡啓介/佐々木千恵訳 アルファベータ刊 2002年
“Shostakovich: A Life” by Laurel Fay Oxford University 2000
『驚くべきショスタコーヴィチ』 ソフィヤ・ヘーントワ著 亀山郁夫訳 筑摩書房 1997年
“Shostakovich : A Life Remembered” by Elizabeth Wilson Princeton University Press 2006（第2版）
“Story of a Friendship: The Letters of Dmitry Shostakovich to Isaak Glikman, 1941-1975” with a Commentary by Isaak Glikman and translated by Anthony Phillips Cornell University Press, 2001
"Music and Musical Life in Soviet Russia: Enlarged Edition, 1917–1981" by Boris Schwarz Indiana University Press 1983
“Fear and the Muse Kept Watch” by Andy McSmith The New Press 2015
『芸術音楽から見たソ連〜雪どけ期のショスタコーヴィチを中心に〜』 梅津紀雄著 （『ロシア革命とソ連の世紀4 人間と文化の革新』 2017年 岩波書店）
『ショスタコーヴィチ〜引き裂かれた栄光』 亀山郁夫著 岩波書店 2018年
『ショスタコーヴィチ：交響曲第4番[作曲者自身の編曲による2台ピアノ版] ルステム・ハイルディノフ及びコリン・ストーン（ピアノ）』のブックレット 2005年 エリック・ローズベリー著、増田良介訳

"LADY MACBETH OF THE MTSENK DISTRICT"
Boston Symphony Orchestra Program Note of “Lady Macbeth of Mtsensk” by Harlow Robinson
"The World of a Symphony: Popov and Shostakovich" By Paolo Hooke 11 December 2023, Fine Music Magazine
Mark’s notes on Shostakovich Symphony No. 4 by Mark Wigglesworth
Music and Musical Life in Soviet Russia Enlarged Edition, 1917–1981 by Boris Schwarz 1983 Indiana University Press
ARNOLD SCHALKS INTERNET ARCHIEF　『プラウダ批判』の英訳文
“ Shostakovich's Long-Lost Twin Brother “ The New York Times April 6, 2003 by Laurel E. Fay
“ National Symphony, Vasily Petrenko tackle Shostakovich’s Fourth Symphony” The Washington Post November 15, 2012 by Robert Battey
Boosey & Hawkes ”Shostakovich, Dmitri - Symphony No.4 in C minor Op 43 - Full Score”
Boosey & Hawkes ”Symphony No.4 in C minor Op 43 - 2 Pianos 4 Hands Score”



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