ショスタコーヴィチ

交響曲第7番『レニングラード』に関する7章

 
            Shostakovich-Stamp

 高校時代、クラスにトスカニーニの熱烈な愛好家とカラヤン・ファンがいて、当時筆者はフルトヴェングラー信奉者だったので、休み時間となるとよく議論をしていました。お互いレコードの貸し借りをしたものでしたが、その中にトスカニーニが指揮するショスタコーヴィチの交響曲第7番のレコードがあったと記憶しています。残念ながらその時はレコード・プレーヤーに針を乗せたものの、何が何だかわからず、当時まだ存命中だった「現代」作曲家に対していい印象を持つ機会を失うことになってしまいました。フルトヴェングラーが指揮するベートーヴェンやブラームスに夢中になっていた者としては無理もないことだったと思います。

 そんな大昔の思い出に浸りつつ、機会があってこの曲を演奏することになったため、曲のこと、作曲家のことなど調べてみようと思い立ったのでした。

 また、リハーサルが始まって、いつも違和感を覚えるのがいわゆる「侵略のテーマ」でした。最弱音に始まって大音響へと拡大していくさまが、何故「侵略」なのか?マクダフがマクベスの城を攻めるのと時代が違いすぎやしないか?第二次大戦当時は「電撃」、「奇襲」攻撃ではないのか?しかも、フレーズがおちゃらけた感じで百歩譲っても軍隊の侵攻には聴こえないし、フレーズの病的なまでの執拗な繰り返しは戦争というより機械文明とか非人間的なものを表わしているような気がしてならなかったのでした。

 調べてみると、思いがけない事実に多数直面することになり、その演奏会の日までに完成させることは到底無理ではありますが、思う存分深堀してみようと思います。

*上に掲載しているショスタコーヴィチの切手は没年の翌年に発行されたもので、背景の譜面は交響曲第7番です。時のソヴィエト政府にとって、ショスタコーヴィチの作品の中でこの曲が最も国にとってに忠実な作品であると見做していたことがわかります。


No. タイトル 作成日
序章 はじめに 2021.7.1
第1章 曲の成立と初演 2021.9.4
付録 年表 2021.7.1
第2章 ラジオ放送とバルトーク 2021.6.27
第3章 米国初演をめぐるバトル・ロイヤル 2021.7.1
第4章 ロシアより愛をこめて〜マイクロフィルム搬出作戦 2021.7.18
第5章 「侵略のテーマ」の謎 2021.7.11
第6章 交響曲第7番とユダヤ音楽 2021.10.17
第7章 交響曲第7番 楽曲解説  
    第1楽章 2021.11.12
    第2楽章 2021.11.27
    第3楽章 2021.12.20
    第4楽章 2022.1.17
  あとがき 2022.1.27


参考文献
『ショスタコーヴィチの証言』 ソロモン・ヴォルコフ著 水野忠夫訳 中央公論社
『ショスタコーヴィチとスターリン』 ソロモン・ヴォルコフ著 亀山郁夫訳 慶応義塾出版会
『20世紀ロシア文化全史: 政治と芸術の十字路で』 ソロモン・ヴォルコフ著 今村朗訳 河出書房新社
『Shostakovich Reconsidered』 Allan B. Ho and Dmitry Feofanov Toccata Press, 1998
『The Shostakovich Wars』 Allan B. Ho and Dmitry Feofanov
『Shostakovich : A Life Remembered』 Elizabeth Wilson Princeton University Press 2006(第2版)
『Irony, satire, parody and the grotesque in the music of Shostakovich a theory of musical incongruities』 Esti Sheinberg, Routledge 2000
『ショスタコーヴィチ ある生涯』 ローレル・E.・ファーイ著 藤岡啓介/佐々木千恵訳 アルファベータ刊 2002年
『Shostakovich and His World』 Laurel E. Fay Princeton University Press, 2004
『戦火のシンフォニー レニングラード封鎖345日目の真実』 ひのまどか著 新潮社 2014年
『驚くべきショスタコーヴィチ』 ソフィヤ・ヘーントワ著 亀山 郁夫訳 筑摩書房 1997年
『ショスタコーヴィチ』(作曲家◎人と作品)千葉潤著 音楽之友社 2005年
『ショスタコーヴィチ大研究』 春秋社 1994年
『ショスタコーヴィチ自伝〜時代と自身を語る』 レフ・グリゴーリエフ、ヤーコフ・プラテーク編 ラドガ(虹)出版所訳 ラドガ(虹)出版所 1983年
『ムラヴィンスキーと私』 河島みどり著 草思社 2005年
『ムラヴィンスキー - 高貴なる指揮者』 グレゴール・タシー著 天羽健三訳 アルファベータ 2009年
『Dmitri Shostakovich: A Life in Film』 John Riley, I. B. Tauris, 2005
『Leningrad: Siege and Symphony』by Brian Moynahan Grove Press 2015
『トスカニーニ - 大指揮者の生涯とその時代』 山田治生著 アルファベータブックス 2009年
『トスカニーニ - 指揮者の最高峰』 河出書房出版社 2017年
『父・バルトーク〜息子による大作曲家の思い出』 ペーテル・バルトーク著 村上康裕訳 スタイルノート社 2013年
Arturo Toscanini at NBC “A radio-video star” (1937-1954) by Sandrine Khoudja-Coyez 2015
1942 Time Magazine article on Shostakovich in Leningrad, and the upcoming American premier of his 7th symphony 2021
『タイム』誌 TIME 1942.7.20
“An Abnormal Symphony Tailored to Inhuman Times” The New York Times By Kenneth Furie 1994.1.30
“ 'LENINGRAD' SYMPHONY; Behind The First Recording” The New York Times by Kenneth Furie 1994.2.27
The Flight of the Seventh: The Voyage of Dmitri Shostakovich’s “Leningrad” Symphony to the West by M. T. Anderson
Information Bulletin ; Embassy of The Union of Soviet Socialist Republics #86 July 18, 1942
『米国の放送産業の成立とローカリズム』 小林レミ著 立教経済学研究 2012年
『「聴く」プロパガンダ : 第二次世界大戦時における英国のプロパガンダ政策(上)』 津田 正太郎著 法政大学社会学部学会 2018年
『太平洋戦時下における日本人のアメリカラジオ聴取状況』 山本武利 『関西学院大学社会学部紀要』 2000年
RE-EXAMINING THE WARHORSE: SHOSTAKOVICH’S LENINGRAD SYMPHONY by KERI BLICKENSTAFF
Shostakovich’s Symphony No. 7, ‘music written with the heart’s blood’ CSO SOUNDS & STORIES Phillip Huscher 2014
Politics and the Imagination: Béla Bartók’s Concerto for Orchestra by Howard Meltzer
Béla Bartók: A Celebration by Benjamin Suchoff, Lanham, MD : Scarecrow Press 2003


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