梶尾真治作品のページ No.2



12.タイムトラベル・ロマンス

13.インナーネットの香保里

14.未来のおもいで

15.新編クロノス・ジョウンターの伝説

16.波に座る男たち

17.精霊探偵

18.この胸いっぱいの愛を

19.時の"風"に吹かれて

20.きみがいた時間 ぼくのいく時間


【作家歴】、地球はプレイン・ヨーグルト、ヤマナベ・ポリスのミイラ男、サラマンダー殲滅、ドグマ・マ=グロ、スカーレット・スターの耀奈、OKAGE、黄泉がえり、黄泉びと知らず、美亜へ贈る真珠、もう一人のチャーリー・ゴードン、フランケンシュタインの方程式

梶尾真治作品のページ No.1


つばき時跳び、悲しき人形つかい、ムーンライト・ラブコール、あねのねちゃん、アイスマンゆれる、穂足のチカラ、メモリー・ラボへようこそ、ボクハ・ココニ・イマス、壱里島奇譚、クロノスの少女たち

 → 梶尾真治作品のページ No.3


おもいでエマノン、さすらいエマノン、まろうどエマノン、ゆきずりエマノン、ダブルトーン、アラミタマ綺譚、うたかたエマノン、怨讐星域1〜3

 → 梶尾真治作品のページ No.4


猫の惑星、杏奈は春待岬に、たゆたいエマノン、デイ・トリッパー、黄泉がえり again

 → 梶尾真治作品のページ No.5

  


  

12.

●「タイムトラベル・ロマンス−時空をかける恋・物語への招待−」● 


タイムトラベル・ロマンス画像

2003年07月
平凡社刊

(1300円+税)


2003/07/29

数々のタイム・トラベル作品は勿論のこと、SF小説から幻想小説まで、梶尾さんが融通無碍に語るエッセイ本。

欧米の小説から梶尾さん自身の小説まで、数多くの作品が話題に上ります。あまりSFを読んでいない私のこと故、知っている作品は少ないですが、懐かしくなる作品も幾つかあります。
その中において、ハインライン「夏への扉」が傑作中の名作であることは、改めて言うまでもないことでしょう。題名からしても、夏休みにふと読み返したくなる本です。
ジョセフ・コットンとジェニファー・ジョーンズ主演で映画にもなった小説が「ジェニーの肖像」。たまたま昨夜、ここの掲示板で話題に上った映画です。こんな偶然は楽しい。おかげで、どんなストーリィか知ることができました。
最後は黄泉がえりの後日談。ちょうど8月8日からビデオレンタル開始とか。あまりにもタイミング良過ぎ!です。

タイムトラベル・ロマンス(時間を超える・タイムマシン・想像の友人・異人との愛)/プチ入門「センス・オブ・ワンダー」/「黄泉がえり」について

     

13.

●「インナーネットの香保里」● 


インナーネットの香保里画像

2004年07月
青い鳥文庫

(580円+税)

 

2004/10/18

九州の熊本にある白鳥山。その白鳥山を舞台に描く、SF+逃避行というストーリィ。
児童向けに書かれただけに、単純明快、かつかなりあっさりとした作品です。それでもファンタジー性に加え、ちょっとロマンティックな要素があるのは、やはりカジシン。

主人公は中学2年の香保里。母親と喧嘩して家を出てきた時に偶然知り合ったのが、松永暎一朗という青年。
彼は超能力者で“インナーネット”(暗黙知を利用した情報網)の研究に協力していたが、脳に腫瘍があり命が危ぶまれる状況にあった。命あるうち故郷の白鳥山にもう一度登りたいというのが彼の願い。
香保里は“暎兄ちゃん”と共に九州へ向かいます。ところが、悪質企業もまた2人の後を追跡してくる。そんな2人の逃避行=香保里の冒険ストーリィ。
ストーリィ自体はSFですが、見逃せないのは暎一朗が子供の頃に遊んだ白鳥山の思い出、白鳥山の自然と親しんだ喜びが語られている点。
本書にこめられたメッセージは、その点にあるようです。

※少女と逃亡者の逃避行、どこかで読んだ気がすると思ったら、豊島ミホ「日傘のお兄さんに似ている。ただし、中身はかなり異なります。

 

14.

●「未来(あした)のおもいで」● ★★☆


未来のおもいで画像

2004年10月
光文社文庫刊
(476円+税)

2004/10/23

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インナーネットの香保里に続き、熊本県の白鳥山を舞台にしたファンタジー・ストーリィ。

白鳥山で急な雨に出会った滝水浩一は、美しい女性・沙穂流と一緒に洞で雨宿りします。
束の間の出会い。でも、それ以来浩一は彼女の面影を忘れることが出来なくなります。それは沙穂流の方も同じ。
2人はお互いが残したリュック・カバー、黒い手帖から相手を探しますが、その結果判ったのは2人が別の時間に生きているということ。
時空を超えて結びつく2人の恋心を描くファンタジー。SF要素は少ないため、純真なラブ・ストーリィとして読めます。
話の運び方を含め、私好み。ちょっと北村薫「ターンを思い出させるところもあります。

梶尾さん自身が脇役として登場するのはご愛嬌。また、梶尾さんの白鳥山への愛着を感じさせてくれる作品でもあります。

 

15.

●「新編クロノス・ジョウンターの伝説」● ★★


新編クロノス・ジョウンターの伝説画像

2003年06月
ソノラマ文庫

2005年07月
朝日ソノラマ
(1000円+税)

2015年02月
徳間文庫化

 

2005/08/04

 

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「クロノス・ジョウンター」とは“物質時間射出機”。つまり、物質(人間を含む)を過去の一時期に向かって放り込む機械であり、一種のタイムマシン。
しかし、その性能には制約があって、送り込まれた先の過去にはほんの数分しか滞在できないこと、過去に行った反動として(ボールが跳ね返るように)遡った年数以上の未来に向かって弾き返されてしまう、という問題点があります。
本書収録の3篇は、いずれもクロノス・ジョウンターを使って過去へ行った主人公たちを描くストーリィ。
・・・というと、SFタイムトラベルものと受け留められるでしょうけれど、本質的にはロマンティックな純愛ストーリィなのです。
恋愛は時間を超えて成立するというのがミソで、そこに介在するクロノス・ジョウンターは単なる道具に過ぎません。

「吹原和彦の軌跡」は、自分が時間移動の犠牲になることも厭わず愛しい人の為に全力を尽くすという、切なくも美しいストーリィ。忘れ難い余韻があります。
「布川輝良の軌跡」は、時間を遡った先で運命的な恋愛に出会うというストーリィ。ハインラインの名作「夏への扉」を連想させる本篇は、3篇の中で最も落ち着きが良い。
「鈴谷樹里の軌跡」は少女時代に愛したヒー兄ちゃんを不治の病から救うため、特効薬をもって未来から過去に遡るというストーリィ。「布川輝良」の後に読んだ所為か、ちとこじつけがましい印象を受けます。
セックスが必須アイテムとなっている現代的なラブ・ストーリィに比較すると、いずれも古典的と言っていいロマンティックなラブ・ストーリィですが、私はこういうの好きですねェ。
また、クロノス・ジョウンターが単なる機械以上の重みをもたないところも好い。
未来のおもいでと似た雰囲気の漂う、気持ちの良いラブ・ストーリィ。SFという要素は夏の読書にぴったりです。

吹原和彦の軌跡/布川輝良の軌跡/鈴谷樹里の軌跡/時の力と愛の力−あとがきに代えて−

  

16.

●「波に座る男たち」● ★☆

  
波に座る男たち画像
  
2005年07月
講談社刊

(1700円+税)

2009年09月
講談社文庫化

   

2005/09/11

 

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やーさんを主人公にした、梶尾さんとしては珍しいエンターテイメント作品。
麻薬も売春もダメ、任侠一筋という頑固一徹さから稼ぎネタに行き詰まった暴力団・大場会
偶然に食して鯨肉の美味さを思い出し、貸金担保にちょうど元捕鯨船を取り上げたところだったことから、鯨の密漁に乗り出すことを決断。
単に金稼ぎ目的ではありません、鯨を食すという日本の伝統文化を守るためというのが、親分=大場会長の掲げた大義。欧米の鯨保護団体は絶滅危機を唱えるが、本当に絶滅の恐れがあるのか、鯨を殺さないことによってかえって海洋生物のバランスを崩しているのではないか。そんな問いかけには同感するところがあるのです。
ただ、やーさんを持ち出したからには、ストーリィは必然的に破天荒なものとなります。巻き込まれた板前や若い美女のほかに、伝説の狙撃者(殺し屋)が登場したり、環境団体配下の元米軍崩れ=密猟者を殲滅する攻撃部隊、鯨を密猟する台湾マフィアまで登場します。
彼らの宴会で鯨肉の鍋ものやベーコンの美味さがことのほか主張されている部分、何故か新鮮に聞えます。

やーさんを素材にしたエンターテイメント小説というと、小林信彦「唐獅子株式会社荻原浩「なかよし小鳩組がありますが、本書ストーリィはユーモアを超えて相当に現実離れしています。そんなところは、梶尾さん得意のSFに共通するところかもしれません。
やーさんが鯨捕りに乗り出すというのですから、付き従った子分たちもどこか抜けているところが多い。
それなりに楽しめた作品ですけれど、本書の狙いは、鯨を食する日本伝統文化の再主張にあるのでしょうか。
欧米で読まれたら、かなり目の敵にされそうな気がします。

※本書題名は「波座師(近海の鯨捕り)」から来ているらしい

  

17.

●「精霊探偵」● ★★

 
精霊探偵画像
  
2005年09月
新潮社刊

(1600円+税)

2008年02月
新潮文庫化

   

2005/10/10

 

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交通事故で妻を失った主人公は何の気力も起きず、ただ漫然と日々を過しているだけ。ただ、事故後から人の背後霊が見えるようになり、背後霊から教えてもらって他人の探しもの等に役立つこととなった。
そんな折、失踪した妻の行方を捜して欲しいとの依頼が主人公に舞い込む。彼の身を案じて話を持ち込んだ喫茶店のマスター夫妻の気持ちを裏切れないと、主人公は探偵仕事に乗り出しますが、その仕事を通じて徐々に気力を回復していくというストーリィ。
題名からSF的ミステリを予想し、前半は確かにそんな展開だったのですが、次第にストーリィはSF的ホラーへ展開。

心底からの恐怖を感じさせられる一方で、全体に温かさとユーモア感の漂っているところがカジシンさんらしいところ。
小野不由美「屍鬼」、恩田陸「月の裏側と似たようでありながら、カジシンさん独自の世界がそこにあります。
背後霊の様々な表情、憑いた人間との関わり合いも楽しいのですが、格別なのは小学生の女の子・小夢(さゆめ)ちゃんと黒猫の霊のコンビ。
マスター夫婦の存在も温かみがあって良いのですが、探偵助手を自称する小夢ちゃんの活躍ぶりが圧巻! 主人公を凌駕する探偵ぶりを発揮してきます。
この小夢ちゃんの存在あってこそ、読み出したら止まらず、楽しさもあるホラー・サスペンスに成り得ているのです。
是非、小夢ちゃんと黒猫の背後霊の活躍ぶりをご覧あれ。

なお、最後に思わぬ真相が待ち受けていますが、これはもうカジシン流ユーモアとしか言いようがない。
エピローグは、東野圭吾「秘密と見事に逆転の発想。こんな結末も愉快で、心楽しくなります。

 

18.

●「この胸いっぱいの愛を」● ★☆

 
この胸いっぱいの愛を画像
  
2005年10月
小学館文庫刊

(571円+税)

 

2005/12/24

 

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クロノス・ジョウンターの伝説を原作とする映画「この胸いっぱいの愛を」の、原作者自身によるノベライズ作品とのこと。
ただし、「クロノス」と共通するのはタイムスリップ・ストーリィであることと登場人物の名前ぐらいで、ストーリィは全くの別物。
これって、納得いかないなぁ。ストーリィ自体は私好みではありますけれど。
原作とされる「クロノス」は3つの物語が別々に時間を移動するため、ひとつの物語にまとめるのは到底無理。映画向きにひとつにまとめようとするならばこうならざるを得ないという、如何にも映画化に合ったストーリィです。その分、原作に比べると平板な印象です。

門司行きの飛行機に乗った鈴谷比呂志布川輝良吹原和彦と一ノ瀬栄子の元夫婦、盲目の老婦人・角田朋恵は、気付くといつの間にか門司に着いていた。しかも20年前、1986年の門司に。
原因は臼井光彦という科学者が持参していたクロノス・ジョウンターという機械が作動したため。そして、6人各々が20年前の門司に忘れられない想いを抱えているためらしい。
主軸となるストーリィの主人公となるのは鈴谷。彼が抱える悔いとは、子供の頃に慕っていた和美姉ちゃんを救えなかったこと。鈴谷は、陰気な子供だった自分=ヒロと和美姉ちゃんのために悔いのないよう尽くそうとする。
時間を超えるラブ・ストーリィは、梶尾さんお得意のもの。本ストーリィも易しく気持ちの良い仕上がりになっています。最後の幕切れには爽やかな感動あり。

本作品のミソは、過去の自分と並存できること、そして既に起きてしまった事実を変えることが許される(可変性)こと。
なお、表題はクロノス・ジョウンターが作動するときに流れる曲名(レッドツェッペリン)から。

※映画化 → 「この胸いっぱいの愛を

    

19.

●「時の"風"に吹かれて」● ★☆

 
時の“風”に吹かれて画像
  
2006年06月
光文社刊

(1600円+税)

2008年12月
光文社文庫化

   

2006/08/14

 

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表題からまたしてもタイムトラベルもの短篇集かと思ったのですが、それは最初の2篇だけ。その他9篇は、いやはや、抱腹絶倒SFから困惑しきりのアクションもの、ファンタジー的ホラーから何とアトムまで、その多彩さには唖然とするばかりです。
さしづめ、いろいろなおもちゃを一つ箱にぶち込んだ宝箱みたいな短篇集。

タイムトラベル・ストーリィを総じて“時の風”と表現したのかと思ったのですが、まさか本当に「時の風」がストーリィの中に出てこようとは。
「時の"風"に吹かれて」「時縛の人」は同じタイムトラベルものと言っても、時の流れに関する考え方が違う。こんなに多くの“時”に関する考え方があるなら、タイムトラベルもそのうち実現してしまうのではないかとふと思えてしまうところが、油断ならない。
前者は、一定時間が過ぎると押し寄せてくる“時の風”に呑み込まれる危険を承知で、叔父の愛した女性を救うため主人公が過去に飛ぶ話。勝手にイメージを膨らませただけのことかもしれませんが、“時の風”という発想自体なんとロマンチックなことでしょうか。

「時縛の人」はまるで芥川龍之介「蜘蛛の糸」のタイムトラベル版パロディではないかと仰天。
「柴山博士臨界超過!」は見ものです。優秀で愛情が濃すぎる女性の怖さが笑えます。この発想は凄いと思う。
「月下の決闘」は裏バレエ団と闇エアロビ団の凄絶なる暗闘の一幕。発想も笑えますが、最後のオチこそ傑作!
「鉄腕アトム」・・・勿体無くて書けません(苦笑)。
「ミカ」は飼っている子猫が人間の女の子に見えてしまう話。
「わが愛しの口裂け女」
は現代的ホラーですが、最後のオチは勇気あるなァ。でもそこまでの愛という点では梶尾さんらしい。
梶尾ファンなら、楽しめること間違いなしの短篇集。

時の"風"に吹かれて/時縛の人/柴山博士臨界超過!/月下の決闘/弁天銀座の悲劇/鉄腕アトム−メルモ因子の巻/その路地へ曲がって/ミカ/わが愛しの口裂け女/再会/声に出して読みたい事件

  

20.

●「きみがいた時間 ぼくのいく時間−タイムトラベル・ロマンスの奇跡−」● ★☆

 
きみがいた時間ぼくのいく時間画像
  
2006年06月
朝日ソノラマ

(1200円+税)

 

2006/08/06

梶尾さんの描く、タイムトラベル+ロマンスの味わい良さをお手軽に楽しめるよう編集された一冊。
表題作「きみがいた時間ぼくのいく時間」のみが書下ろし。
「江里の“時”の時」「美亜へ贈る真珠」の2篇は短篇集美亜へ贈る真珠にて既読。「時の果の色彩」も再収録ですが、私は初読。

「きみがいた時間ぼくのいく時間」クロノス・ジョウンターの伝説に連なるストーリィ。今回は、時間軸圧縮理論に基づくクロノス・ジョウンターではなくて、時間螺旋理論に基づいて作られた新型タイムマシン=クロノス・スパイラルに乗って、交通事故で死んだ恋人を救うため過去に向かうストーリィ。
新味はないものの、梶尾さん、次から次へとよく考え付くものだとホトホト感心します。
「時の果の色彩」も過去の時間にいる女性とのタイムトラベルを基にしたラブ・ストーリィですが、小品という印象。でも、結末シーンの綺麗さは梶尾さんらしいものです。

「きみがいた時間ぼくのいく時間」と共に楽しいのは、「クロノス」を舞台化した成井豊さんとの対談部分。
「タイトルの下に梶尾真治ってあるのが許せない。なぜ成井豊じゃないんだ」とかの発言に思わず笑ってしまう楽しさあり。

〔タイムトラベル・ロマンスの奇跡〕きみがいた時間 ぼくのいく時間/江里の“時”の時/時の果の色彩/美亜へ贈る真珠
〔「クロノス・ジョウンター」の奇跡〕成井豊X梶尾真治情熱対談−なぜ、今「タイムトラベル・ロマンス」なのか?/成井豊の「梶尾真治ブックガイド」/私にとっての「クロノス・ジョウンターの伝説」

    

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