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2.屍鬼 4.ゴーストハント1 5.ゴーストハント2 6.残穢 |
●「東亰異聞」● ★ |
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1999年05月 1998/11/08 |
明治末期の帝都・東京。そこは、夜となれば未だ魑魅魍魎が跋扈する闇の世界だった。 やがてその闇に現れたものは、闇御前、火炎魔人等。それらが徘徊するたび、犠牲者は増えていく。 物の怪の仕業なのか、はたまた誰か人間の仕業なのか。事件の謎を追うのは、新聞記者の平河新太郎と便利屋の万造の二人。 正直言って、ああ私はこんなストーリィが好きではなかったんだなあ、とつくづく感じた作品でした。早くこの世界から逃れたく、急いで読み飛ばしてしまったというのが、本音のところ。 |
●「屍 鬼」● ★★☆ |
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2002年2-3月
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上下巻合わせて1200頁余。読み出すだけでもかなり勇気を要する作品です。持ち歩くにも重すぎますし。 下巻にはいると、物語は一気にホラー・ストーリィに転じます。 この物語の主軸はどこに在ったのか。 長大な作品だけに、読者の興味の置き所によってこの作品の感想は変わるように思います。だからといって、この作品が小野さんの力作であることに変わりはありません。 |
●「くらのかみ」● ★★☆ |
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2024年07月
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“かつて子どもだったあなたと少年少女のための−ミステリーランド”シリーズ(講談社)の第1回配本作品。 上記の謳い文句は、本当に伊達ではありません。子供の頃楽しんだ「十五少年漂流記」等の数々の物語。それらを思い出させてくれる、物語の面白さがあります。 耕介や梨花ら子供たちが集まったのは、各々の親たちに連れてこられた、山奥にある“本家”でのこと。 大人たちが集まった理由は、本家の相続問題にあるらしい。そして、ドクゼリ中毒事件を皮切りに、次々と不可思議な事件が起こります。さしづめ、6人の子供たちは、すっかり少年少女探偵団になったという風。 |
「ゴーストハント1−旧校舎怪談− The Ghost Hunt」 ★★ | |
2020年06月
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本シリーズを読むにあたり、第1巻と第2巻の順序が逆になってしまいましたが、やはり格別な面白さあり、と改めて得心しました。 主人公である谷山麻衣の通う高校では、旧校舎での怪談騒ぎが絶えない。 そこに現れたのはイケメンの転校生?と思いきや、校長から調査依頼を受けてやってきた心霊現象調査事務所<渋谷サイキックリサーチ>所長の渋谷一也だという。 そして麻衣、ちょっとしたミスから迷惑を掛けられたと渋谷に脅され、バイト代無料で調査の作業手伝いをすることになります。 一方、麻衣の同級生である黒田直子(女史)、自分には霊感がある、この旧校舎には多くの霊が巣くっていると、やたら口を出してきます。 さらに、やはり校長から依頼を受けたと、皮肉屋である元高野山坊主のぼーさんこと滝川法生、口先は達者な巫女の松崎綾子、変な日本語を使う悪魔祓師のジョン・ブラウン、評判の霊媒である原真砂子と、本シリーズの主要登場人物が、ここで勢ぞろい。 さて、旧校舎で起きる不可解な事象は、霊の仕業なのか? 本シリーズの良さ、魅力は、主人公を谷山麻衣という高校生に設定したところにあると言って過言ではないと思います。 渋谷に対し、ナルシストの「ナル」という綽名をつけたことがまず絶妙。 そして麻衣、偏見がない、黒田女史も含み、誰の言い分にも素直に耳を傾けますし、相手への優しさも忘れない。 そのうえ麻衣自身にも・・・という期待感があります。 ストーリィも、単なるホラーに留まらず、怪現象の謎を解き明かすミステリという趣向が、たまらなく良い! なお、本ストーリィ、「ゴーストハント2−人形の檻−」程の恐ろしさは感じませんでしたが、皆が一堂に会す、シリーズ始まりの巻としては充分、不足ありません。 そして、事件解決の、最後の一捻りも良い。 第3巻以降を読むのが楽しみです。 |
「ゴーストハント2−人形の檻− The Ghost Hunt」 ★★ | |
2020年06月
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“ゴーストハント”は、1989〜92年講談社X文庫ティーンズハートから刊行された“悪霊”シリーズを、2010〜11年にリメイクして再刊された<ホラー&ミステリ>シリーズだそうです。 旅行中に持ち歩くには文庫本がちょうどよいと、図書館から借りて読んだ次第。第2巻からの読書となってしまったのは、ちょうど第1巻が貸出中だったため。 主人公で高校生の谷山麻衣は、心霊現象調査を請け負う<渋谷サイキックリサーチ>(略称:SPR)でバイト中。 自宅が揺れ動いたり物が消えたりする怪異事象が起きているので調べてほしいという依頼を受け、麻衣は所長であるナルこと渋谷一也、助手役のリンと共に、その森下家へと乗り込みます。 本作、ストーリィ内容が濃く、実に面白かったです。 ホラー物語なのですが、それはどんな怪奇現象なのか、それが発生した原因は何にあるのか、それらを突き止めたうえで怪異現象の出没を解決するという展開は、まさにミステリ。 そのうえ、計測装置を使って怪異現象を把握しようとするナルたちの一方で、元坊主(滝川法生)、巫女(松崎綾子)、悪魔祓い師(ジョン・ブラウン)、霊媒(原真砂子)という多彩な顔触れが登場、そして皆がチームを組んで怪異現象に向かい合う、というキャラクターならびにストーリィ構成が楽しい限り。 シリーズ第1作もなるべく早く読もう、と思います。 プロローグ/第1章〜第8章/エピローグ |
●「残 穢(ざんえ)」● ★★ 山本周五郎賞 |
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2015年08月
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小野さん9年ぶりの長篇ホラー作品とのこと。 主人公の「私」は小野さんらしき作家。 怖いかというと、「屍鬼」あるいは一般的なホラーのような怖さはないのです。それより不気味というか、こういう恐さがあるのか、という思い。そういう意味では、新鮮な怖さ(?)。 端緒/今世紀/前世紀/高度成長期/戦後期1/戦後期2/戦前/明治大正期/残渣 |
「営繕かるかや怪異譚」 ★★ |
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2018年06月
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主人公たちが移り住んだ古い家、そこに現れる怪異な出来事を連作風に描く6篇。 そう怖い話ではない筈と思っていても、その瞬間、思わずゾクゾクッとしてしまうところはさすが小野不由美さんならでは。 |
「営繕かるかや怪異譚 その弐」 ★★ | |
2022年06月
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主人公たちが移り住んだ古い家、そこに現れる怪異な出来事を連作風に描く“営繕屋かるかや怪異譚”シリーズ第2弾。 今回も6篇を収録。 怪異譚・・・確かに薄気味悪かったり、怖く感じたりすることがない訳ではありません。でも、決して悪いことばかりではない。 それら怪異な出来事には哀切感や優しさが籠っています。 各篇の主人公たちに、それを穏やかに教え示してくれるのが、そうした出来事に多く関わっているという若者=<営繕かるかや>の尾端(おばな)。 本作にもさりげなく登場してきて、懐かしさと親しみを感じさせてくれます。それは素直に嬉しいこと。 尾端は解決者ではありません。怪異な出来事の理由を探り、それを伝えてくれる仲介者といった風です。 それ故、本作に怖さを覚えず、楽しく読めるのでしょう。 次巻も今から楽しみです。 ・「芙蓉忌」:古い実家に戻ってきた貴樹、部屋の隙間から見えたのは着物姿の女・・・。 ・「関守」:佐代は<通りゃんせ>の唄が怖い。子供の頃、鬼に肩を掴まれた記憶があり・・・。 ・「まつとし聞かば」:飼い猫の小春の死を俊弘は息子の航に隠してしまった。すると夜中、航の寝床に何か異臭のするものが潜り込むようになり・・・。 ・「魂やどりて」:古い長屋を好きにリフォームしながら暮らしている育。夜、誰かを責める声が聞こえるようになり・・・。 ・「水の声」:遥奈の恋人である弘也、子供の頃溺れた友達を見殺しにした所為で自分は呪われていると語り・・・。 ・「まさくに」:祖母の住む家には、屋根裏に秘密の部屋があった。部屋を見つけた樹は喜びますが、ある日、片眼・片脚、お腹も血だらけの人影が姿を現し・・・。 芙蓉忌/関守/まつとし聞かば/魂やどりて/水の声/まさくに |
「営繕かるかや怪異譚 その参」 ★★ | |
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主人公たちが暮らす古い家に現れる怪異な出来事を連作風に描く“営繕屋かるかや怪異譚”シリーズ第3弾。 本書を手に取ると、再びこのシリーズを読めるぞ、というワクワクする嬉しさを感じます。 確かに怪異というと、禍々しいイメージがあります。 しかし、本シリーズには、禍々しいからといって<悪>と決めつけず、それらと折り合って暮らしていこうという労わりを感じます。 いつも最後に登場して主人公らに解決方法を示す営繕屋の尾端、決して自己主張せず、静かに寄り添おうとしている彼の雰囲気が本シリーズに好ましさを与えています。 気が早いのですが、今から次の巻が楽しみです。 ・「待ち伏せの岩」:塔のある個室をもつレストラン。従弟がその部屋にいた女に招きだされ死ぬに至ったと抗議してきた青野に店主の卓夫は困惑。しかし、娘の多実も幽霊を見ていて・・・。 ・「火焔」:順子を苛め抜いた姑がやっと昨秋に死去。しかし、今も順子を呼ぼうとする、姑が杖で壁を叩く音が聞こえ・・・。 ・「歪む家」:弥生が趣味とするドールハウス。息子一家を突然亡くした檀家夫婦のためにひとつ作ってくれないかと寺の住職に頼まれて作り出したのですが、そのドールハウスで恐ろしいことが次々と起こり・・・。 ・「誰が袖」:母親と同居するため夫婦で実家に引っ越した典利と和花。その和花は現在妊娠中。ふと、祖父・父親とも最初の妻を、初めての男子出産時に母子共に失っており、不吉な口伝があることを思い出し・・・。 ・「骸の浜」:海での死者が自分の遺体を見つけてほしいと頼むように、前の浜に霞と共に姿を現す家。ただ一人今もその家に住む真琴は、朽ちていく家の様子に惑うばかり。 ・「茨姫」:母の姉に対する偏愛ぶりに、母・姉とも断絶して家を離れていた響子は、故郷の町にある歯科医院を引き継ぐため久しぶりに家に戻ってきます。姉は15年前に自殺、母は2年前に死去。無人となった家にはツルバラに覆われた小屋が・・・。 今回6篇の内では、新たな一歩を見せる「骸の浜」、亡き姉の想いが想像されて胸が痛む「茨姫」の2篇が印象的。 待ち伏せの岩/火焔/歪む家/誰が袖/骸の浜/茨姫 |