記念切手
Database HOME
交響曲第10番ホ短調 op.93
last updated: 2001.5.3

第一楽章 第ニ楽章 第三楽章 第四楽章

作曲の背景

スターリンの死の直後、1953年夏から秋にかけて(46-7歳)極めて短期間に作曲。しかしT.ニコラーエワによれば、「プレリュードとフーガ op.87」作曲中の1951年には既に交響曲第十番が存在したというから、それを書き直した可能性もある。さらにM.ヤクーボフによれば、1946年の「ヴァイオリン・ソナタ(未完)」と第1主題が似ており、第2主題は同じであるという。

スターリンの死後公開された曲には、「ヴァイオリン協奏曲第1番 op.77」「ユダヤの民族詩より Op.79」「弦楽四重奏曲第4番 op.83」等がある(年表)。直前の「弦楽四重奏曲第5番 op.92」とは特に関係が深い。

音名象徴

音名象徴を明確に表に出した最初の曲(だと思う)。直前にかかれた歌曲「プーシキンの詩による4つのモノローグ op.91」の第2曲 が「わたしの名がきみにとって何になるだろう?」であることは興味深い。(第1曲「断章」では、夜半のドアを叩く音に身震いするユダヤ人家族を歌う。第3曲は 「シベリヤの鉱山の奥底で」、第4曲は「別れ」。)

証言」(p.141)によれば、第2楽章が“スターリンの肖像”である。確かにSBC音特徴のある長短のリズムが現れる。

第三楽章では、DSCH音型が堂々と姿を現すばかりでなく、EAEDA音型も現れる。 DSCH音型と異なりEAEDA音型の意味は手紙が公開されなければ一般の聴衆にはわからなかったはずである。不吉の象徴としての中国の猿の鳴き声(マーラー「大地の歌」第1楽章「大地の哀愁をうたう酒の歌」冒頭)が EAEDA音型であったのは偶然なのか?はたして夢に聴いたのはこの音型なのか?

僕はこの曲に、弦楽四重奏曲第八番に通じる作曲者の強い個人的思い入れ、(その標題性と相俟って)ベルリオーズの幻想交響曲に通じるものを感じる。

第1楽章(ホ短調)、第2楽章(変ロ短調)と関係の深い音階

mid
第3楽章(ハ短調)、第4楽章(ロ短調)と関係の深い音階

mid

参考書

全曲の構成

演奏時間は、作曲者とM.ワインベルクのピアノによる演奏(1954 LDC 2781000)のもの。(四手ピアノ用スコアとオーケストラ用スコアでは速度指示が若干異なる。)各楽章の詳細は、別ページに分割。

第1楽章 Moderato 四分音符=96 ホ短調 3/4 弓形のソナタ形式 8月5日 21:00
  交響曲第5番や第8番の第1楽章と同型のアーチ型だが、一段と充実。マーラー「原光」の十字架音型を引用。
第2楽章 Allegro 二分音符=176 変ロ短調 2/4 無窮動スケルツォ=スターリンの肖像 8月27日 3:40
  演奏不可能な速さが指定された、嵐のような楽章。スターリンのファンファーレは木管楽器群をパニックに陥れる。
第3楽章 Allegretto 四分音符=136 ハ短調 3/4 ロンド・ソナタ形式 10月8日 11:54
  DSCH音型とEAEDA音型が登場。希望、恐れ、暗い予感、幸せの予感、遠雷、孤独、静寂を描く幻想交響曲第3楽章「野辺の風景」を連想。
第4楽章 Andante ♪=126 ロ短調 9/8 序奏 10月25日 10:39
Allegro 四分音符=176 ホ長調 2/4 主部:ソナタ形式
比較的長いゆるやかな序奏は、主部では大胆に変身する。明るくはじまる主部は、展開部で狂乱の渦となるが、圧倒的な力で姿を現すDSCH音型によって静けさを取り戻す。コーダではDSCH音型が繰り返され、最後は嵐とティンパニによるDSCH連打で曲を閉じる。

Copyright (C) 2000,2001 kinton, All Rights Reserved.