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交響曲第10番ホ短調 op.93-第3楽章
last updated: 2001.3.3

交響曲第10番概説 ▼第4楽章

第3楽章概説

第三楽章で特筆すべきは音名象徴である。まずDSCH音型がどうどうとその姿を現し、続いてEAEDA 音型も登場する。

第2楽章を作曲中の8月10日、ショスタコーヴィチは E.Nazirova に宛てた手紙の中で、『夢の中で第3楽章を聞いた。記憶に残っている部分があり、それを使うつもりである。』と書いている。それがおそらく、常にホルンで合計12回も吹き鳴らされるEAEDA 音型だろう。ショスタコーヴィチの好きな曲であり第10番の作曲中にも自分で弾いた(と手紙にある)マーラー「大地の歌」第1楽章「大地の哀愁をうたう酒の歌」の旋律を夢に聞いたとしても不思議はない。

ショスタコーヴィチがEAEDA 音型に感じたのは不吉な予感だろうか?(7回めにはタムタムの弱奏を伴う。)それとも甘い逃避だろうか?作曲中のショスタコーヴィチはこの曲(と彼自身)の行く末を案じていたには違いあるまい。ベランダで作曲中、燕が(第十番の)楽譜の上に糞をしたという逸話が残っていて、それを親しい友人であるグリークマンの一家はそれを幸運の前兆だと言い、ショスタコーヴィチは手紙の中で、『燕に汚されるのは、燕より重大な人物たちに汚されるよりはまし』と書いている。僕はこの楽章を聴く時、希望・恐れ・暗い予感・幸せの予感・遠雷・孤独・静寂を描いた幻想交響曲第3楽章「野辺の風景」を思い出す。

第3楽章 Allegretto (ワルツ-ノクターンの性格をもつ)ロンド

100 A ヴァイオリン協奏曲第1番第2楽章の主題と同型の第1主題は順次進行とジグザグ下降を含み、伴奏に短三度と短ニ度音程の3打音が入る。
交響曲第10番第3楽章第1主題

mid
104 B DSCH 音型による第2主題が木管に4回はっきりと呈示される。弦で強く繰り返すが、しだいに静まり最後はフルートの慰めるような呟きとなる。
110 A

 

114 C 突然 EAEDA 音型があらわれ、こだまのようにそれを繰り返す。この音型は必ずホルンで演奏される。第1楽章コーダが引用され(115)、総休止を経てもう一度EAEDA 音型がこだまのように繰り返される(116)。EAEDA 音型(4回め)が強く奏されて(117)ラルゴに変わり、ピッコロとフルートによる瞑想に入る(117.7)。総休止を経てさらに3回 EAEDA 音型が奏されるが、5回めと6回めは1音増えてさらにマーラーの音型に近づき、7回めの後には(不吉な)タムタムの弱奏が添えられる。
121 A イングリッシュホルンで第1主題を再現。
127 B 打楽器の伴奏にのってDSCH 音型による第2主題が力強く再現する。
交響曲第10番第3楽章第2主題

mid
129 展開部 第1主題が煽るように加わり激しさを増す。アッチェレランドして(131)ピウ・モッソに達し(132)DSCH の絶叫となるが(134)、その頂点で EAEDA 音型が2回ホルンのトゥッティで登場し(135)、それをきっかけとしてだんだん静まっていく。
139 Coda 第1主題のヴァイオリン・ソロ伴奏を伴ったEAEDA 音型のホルン・ソロに続き DSCH 音型が低音のピチカートで呟くように演奏される。これを繰りかえしたあと、第1主題DSCH音型による部分に続き、最後にもう一度(12回め)EAEDA 音型が弱音器付きで演奏され(142.12)ピッコロとフルートのスタッカートによるDSCHが3回虚空に響いてフェルマータとモレンドでこの楽章を閉じる(143)。

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