DENON DL-103とその調整
DL-103 MCカートリッジ
アジマス精度を0.25度以内に追い込めば、定格以上の音に到達可能かも




DENON DL-103 MCカートリッジ
4万円で丸針とは信じ難い素直な音に驚く

1.導入の経緯
 私がいつも参考にしているドイツLowBeatsのカートリッジのテストサイト (MC型、 MM型)には、テストしたカートリッジの周波数特性やクロストークの計測結果が示されているのに加え、それらを同じソース
(フリッツ・ライナー指揮、シェエラザード、1960年録音)で試聴ができます。
LowBeatsのカートリッジの試聴サイト

 ハイレゾではなく、44kHzなので、高域の繊細感などは十分聞き取れませんが、それでも、音の違いは、よくわかります。
 権利の関係でダウンロードはできません。私は、ハイレゾ用のPCでサイトにアクセスしてストリーミングで聴いています。

 ここには SUMIKO Starling のテスト結果もあって、特性も試聴結果も突出しているように
私には思えます。
 Starlingを基準に、色々なカートリッジを試聴比較できて、いろいろと学べました。
MMとMCには明らかに音の違いがあるのもわかりました。周波数特性は伸びていても、MCの方が「天井感」がないのです。MMは、同様な周波数特性であっても、コイルのLと、負荷容量CのLC共鳴で高域特性を補償しているので、特性はフラットには見えても、過渡特性が違うからなのでしょう。

 比較基準は、私にとっては聴きなれたStarlingでしたが、LowBeatsのサイトが、
基準としてトップに置いている試聴用データは、DENON DL-103です。

 その定評は知りながらも、「そうはいっても丸針だし・・・」とか思って、再生してみたことがなかったのです。

 でも、ある日、ちょっと聞いてみて、驚きました。
「Starlingには繊細感で勝てないにしても、確かに、一つの基準としてすごくよいね」 
 これは確かに定評通り。

 時にシバタ針の神経質な特性が気になることもあるMC-Q30Sよりよくはないかとさえ思えたのでした。

 これは是非一つ持っていたい。とうとう、新品のDL-103を買ってしまいました。
LowBeatsの試聴サイトがなければ、絶対に買うことがなかったでしょう。試聴してみるのは大事ですねえ。日本にはなんでこういうサイトとか雑誌がないんだろう。簡単なことなのに。



Thorens TD126IIIのほうに取り付けました。色もよく似合う。
4mmのスペーサーは自作。
なお、Starlingは、Pro-Ject Xtension9TAについています。


針圧は2.5g。丸針なので、ラインコンタクトのマイクロリッジ針よりはインサイドフォースキャンセラーの設定値を大きめにする必要があります(理由はこちら)。
ただし、私のレコードは界面活性化処理されていて、摩擦極少のため、基準の1/3くらいにしてあります。


アームのTP16は針圧はダイナミックバランス型、インサイドフォースキャンセラーもマグネット式です。


線の太さや材質にはこだわらないですが、きれいな配線にはこだわります。

右に見えているネジで、アジマス調整のためにネックを緩められます。これはebayで入手した、アフターマーケット品のTP16用交換アームです。

2.DL-103の音(アジマス調整後)
 アジマスの調整は後半に移動しました。

 フォノイコライザーは、OCTAVE EQ.2を組み合わせます。

価格でDL-103の5倍もする機器ですが、コストからは想像しにくいDL-103の高い能力から、過剰な機材ではないと思っています

音を聴きながら、負荷抵抗を変えていった結果、DL-103には、設定可能値の最大値 
1kΩ が最良でした。
200ΩとしたOrtofon MC-Q30Sの時とは違い、DL-103は、負荷抵抗をあげるほど、鮮明感が増えていく印象。高域が素直だからでしょう。
その音は、「DL-103を聴かずにカートリッジを語るな」とおっしゃっている人の気持ちがよくわかりました。これは確かにスタンダード。しかも、丸針だからって、高域が出ないわけじゃないのでした。

 高域の解像度、繊細感では、Starlingのマイクロリッジ針には勝てませんが、しかしながら、DL-103で聴いたほうが心地よいレコードは、いくつか見つかりました。
 Starlingでは録音の古さを強調してしまう1950年台のレコードや、デジタル時代の初期で、今となっては高域が苦しいレコード。それらを心地よく聴かせます

 男性ボーカルでも、音が良く前に出てきて、StarlingよりDL-103で聴こうという気にさせるレコードも結構あります。

 また、単純に、音の違いを楽しめる、という範囲なら、Starlingが最強の威力を発揮する超美音のレコード以外では、DL-103ともStarlingとも同時に相性のよいレコードは無数にあります。

 弱点をあげれば、おそらく丸針のため、若干、針音やパチパチ音が、マイクロリッジ針よりは多く感じます。これはLowBeatsのサイトでも学んだことでした。ラインコンタクトは比較的静かです。

 価格も含めて考えると、これは非常にお買い得のカートリッジ。レコード好きなら、ひとつの基準として、持っている価値があると思いました。 アジマス調整(以下参照)が正しければ、高額なカートリッジともチャンネルセパレーションに差はありません。 丸針ですが、高域も気持ちよく出てきます。高額カートリッジのような高域の音数や繊細感の強調がないですが、それがプラスに働くことも多いと思いました。

Octave EQ.2の出力をDEQ2496に入力するためのADコンバータは、DP-720でSACD演奏時と兼用でBenchmark ADC-1を使います。


右からトーレンスTD-126III(プレーヤ)、EQ.2(一番上)その下にDEQ2496が2台とEsoteric D-02x、アキュフェーズDP-720、Bechmark ADC-1とオーディオデザイン製ライン入力切替機


3.アジマスの調整


 いつものように、Starlingの調整で自作したアジマス微調用スケール(下図)を使い、アジマスを追い込みました。





 300Hz〜1.2kHzくらいのレンジでは、700Hz付近を除き、カタログ値-25dBを上まわる-30dBを達成しています。LowBeatsのサイトのいろいろな計測結果を見ても、このクロストーク特性の左右バランスは、多数の計測結果の中でも最高レベルで、めったにないです。それらも、たまたまテスト機が、ちょうど垂直の設置でアジマスOKの個体にあたっているだけかもしれません。「アジマスを個別に微調整すればクロストークの左右差は改善される可能性があるが、個別に調整はしていない」とサイトには書かれています。

 この周波数特性の左右差は、DEQ2496(0.5dBステップ)でも改善が無理なほど微少で、デジタル補償はしないことにします。さすがはプロ用機材のDL-103。この点は、Starling以上。
 独奏楽器もボーカルも完全に中央に定位します。ただし、同様に調整したStarlingよりは、音像が大きいです。高域のトレース精度のせいかな。



6カートリッジの比較ページもぜひご覧ください。

(2020年3月14日記)
(2020年4月11日追記)

 

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