BEHRINGER
Ultra high precision DEQ2496

べリンガー
デジタルグラフィックイコライザー


2019/6/8
DEQ2496の故障率についてのコメントを追記
2017年5月14日
ノイズシェーパーの影響とファームウエアバージョンによる違いを追記
2017年3月5日
DEQ2496用リモコンの自作を追記
 

上:BERINGER DEQ2496、下:エソテリック D-02x

 

DEQ2496の故障率について(2019/6/8追記) 

 本ページは、いつのまにやら「DEQ2496」や「デジタルイコライザ」で検索すると上位に来るようになってしまっていますので、その責任上、DEQ2496は故障する、でも私はそれでいいと思って使っている、という点を申し上げておきます。

 わたしのDEQ2496は、おおむね
3年〜5年で例外なく故障して、新品に入れ替えています。2台使っているので、もう何台も買っています。

 故障の症状は大抵同じで、
トップのロゴ表示に行かず、画面がチラチラしたままになる、というものです。
 電源投入後に起きることが多く、これがはじめて発生した場合には、たいてい、そのまま数分間放置しておくと、やがて安定してロゴ画面になり、そうなったら、機能も、音も異常ないのが普通です。
 ただし、この症状が一回出たら、数か月以内には、ずっとちらつきっぱなしになり、新品を買うことになりますので、私は症状が出るや否や、新品を発注します。で、いよいよ故障したら、即、交換、というプロセスで、難なく乗り切っております。なんといっても、買ったって、3万円位なんですから、消耗品感覚です。
まあ、できれば、多少高くなっても、もうちょっと故障しにくい電源にしてほしい、とは思うんですが。

 で、
新品を買った時の注意は、しばらく使わない場合でも、まずは電源を入れて、ロゴ画面に正常に行くか、だけは見ておきます。初期不良はここでわかります。
これを書いている時点で、個人では6台、研究用には7台購入した経験があり、そのうち初期不良は2台でした。
ただし、ディーラーも、不良だと言えば、気持ちよく、さっさと交換してくれます。私はこの点も、不満はありません。
 このようなことを知った上でもなお、1/60oct.ごとにPEQの周波数が調整できる機材は、私はDEQ2496以外に知らないので、使い続けています。
 このように、寿命があるものなので、お買いになるならば、新品を買うほうがよいと、私は思います。
 
 

I. 導入の経緯

 調整を進めるほどに、部屋の特性が主因と思われる細かなピークや左右の微妙なアンバランスが気になっていました。マッキントッシュC46のイコライザーは音バランスの概要を整えるには大変に重宝ですが、所詮は8バンドであることに加え、左右別々に調整できないため、この種の左右バランスやピーク調整には無力です。左右別31バンドなどのイコライザーが欲しい。しかし、昔の経験で、グライコは音が悪くなりそうだなあ。

 そんな私の目にとまったイコライザーがべリンガーの「Ultra High Precision Digital Equalizer DEQ2496です。 

 ステレオサウンド誌2008秋号にも紹介があったので改めて調べたのですが、5万円程度の激安価格ながら、完全なデジタル処理(40ビット浮動小数点)で、31バンドグラフィックイコライザー(GEQ)+周波数可変(1/60 oct刻み)の10バンド・パラメトリックイコライザー(PEQ)を備えます。

その他の機能はピュアオーディオには関係なさそうですが、非常に多機能な製品です。

 しかし、なにより注目したのは「デジタル入出力がある点」です。名前の通り96kHz、24ビットまで同期します。

左二つがTOSLINK(光端子)、右がXLR端子。S/PDIF, AES/EBUとそれぞれに書いてありますが、実際にはどちらの端子でも、S/PDIF,形式 AES/EBU形式をメニューで選択可能です。

 もちろん、アナログ入出力のためのA/D、D/Aコンバータも内蔵はしていますが、価格が価格だけにアナログ系の音質に過大な期待するのは無理がありましょう。

しかし、デジタル入出力があるなら、
「このDEQ2496のデジタル系だけをCDとDACの間に入れるのはどうだ?」
というのを思いついてしまったのです。

 安いとはいっても、現代のDSP技術をもってすれば、CDドライブから来る16ビット、44.1kHzのPCMデータなぞ、まったく劣化なしで処理できても不思議はありません。

 と、理屈では思えたので、全損も覚悟で買ってみました。繋いだ瞬間に「だめ」とわかるかも知れないと心配しながら・・・。実はそういう悲しい経験も過去にはあるのです。しかし、今回は違いました。結論を言えば、200%の成功です。

 

II. 接続方法

 BEHRINGERは出来が雑、という評価をよく聞くのですが、私の手にしたDEQ2496を見る限り、価格不相応なほど意外と立派な仕上げです。ま、同社としては「Ultra」級なんですしねえ。

 現在のシステム線図を以下に示します。

 DEQ2496は2台あり、一台がアナログとハイレゾ、もう一台がCDとSACDを制御しています。

 アナログディスクの場合もDEQ2496でイコライジングしています。アナログディスクの場合の報告はこちら
 アナログでしか出力できないSACDも、ADコンバータを導入することで、DEQ2496による調整ができています。SACDのADコンバータはこちら。


 

III. 音質変化のチェック

本III節の記載は、DACがマークレビンソンNO.36SLとCHORD DAC64Mk2であったの頃のものですが、その結論は、今も変わらないと思うので、そのまま残します。

 仮設置後、恐る恐るCDの音を聞いてみました。

Step 1)
 DEQ2496はイコライザー(EQ)モジュールを通らないBypass(入出力直結)に設定し、No.36SLのダイレクト側(ST)とDEQ通過側(TOS)の音を比較。No.36SLの切替えでは数秒間音が途切れますが、切り替わっても音の変化はわかりませんでした。DAC64でもやってみましたが、やはり変化なし。

 ●DEQ2496のI/O系を通過するだけでの音の変化はなし●

と断定しました。

 

Step 2)
 次は、EQモジュールの特性を「フラット」とし、DEQ2496のスイッチでBypassとEQ通過を切替えて試聴。今度は、音を出したまま一瞬で切替えができるので、非常にシビアに比較可能です。しかし、まったく変化がない! 切替え時に、わずかなポップノイズさえも入らないので、切り替わった瞬間に、なんの変化も聴きとれません(操作ミスか配線ミスで、切り替わってないのかと思いました)。

 ●EQモジュールをフラット特性で通過しても音が劣化しない●

というのを確認したわけです。

 これでデジタル系での調整なら音質劣化を最小にできる、という考えが正しかったのを99%確信しました。

 44.1kHz/16ビットの電気信号 → 40ビット不動小数点信号処理 → 44.1kHz/16ビットの光デジタル信号
 という変換は経ているはずですけれどね。

 

Step3)
 EQ特性をいろいろ調整してみました。こんどはもちろん音が変わりますが、あくまで調整した音だけが変わり、S/N変化や音の汚れなど、まったく感じることができませんでした。   

 ●EQモジュールを通しても音質劣化はまったく聞き取れない●

ということです。

 アナログを一切通過しないデジタル処理ですから、技術屋の理性でみれば当然ですが、その事実にはやはり感激しつつも、高いお金を掛けないと「音が悪い」はず、お金をかけて何か変化すると「やはり良くなった」はず、と思いたくなってしまう重病オーディオマニア的には、DEQ2496が安すぎるのが若干遺憾だったりして、複雑な心境ではあります。

 

IV. DEQ2496による調整(以下2016年12月10日改定)

 というわけで、音には何の不安もなく、自信をもって調整に入れました。

 音の目標は、周波数特性をフラットにするのでなく、現状でかなり気に入っている私のシステムの周波数特性(いくらか右下がり)を基本的に変えず、ピークやディップを修正してなめらかに、また左右の差を修正することを目指します。
ただし、まずフラットにして左右差をみるのが基本です。

 実は、DEQ2496は目標特性を設定して、それを目指してオートイコライジングをさせることもできるのですが(別売マイクは必要)、機械まかせにいまいち納得できない私は、オーディオアナライザー PAA3 を併用して、調整しています。

 下の画像は現状でのPEQ、GEQの調整状態と、得られている周波数特性(PAA3による測定結果)。

PEQの設定
まずは、発信機を使って、部屋の共鳴点を探し出します。
その中でも、もっとも影響があるピークだけをPEQを使って
狙い撃ちします。

このPEQ特性はマッキントッシュでの補正を移してきたものと、
部屋の共鳴ピークのカットの合成です。

DEQ2496のPEQは、周波数が1/60oct毎(ほとんど連続)で選べます。
さらにその半値幅も1/10octまで色々な幅を選べます。
これは1/6octの精度しかないA社の高いイコライザではできない芸当です。
共鳴のカットには、1/6octの性能は全く不十分で、DEQ2496のこの性能は貴重です。
私がDEQ2496を選ぶ理由は、安いからでなく、この性能は他にないからなのです。
寿命や信頼度を上げてくれるなら価格は10倍でもいいとは思ってます。
3〜5年に一回、壊れて買いなおしています。いま動作中のは3台目と4台目。
すでに、壊れたときのために5台目も購入済です

いま動作中のは4台目と5台目(2018年1月現在)。
いま動作中のは5台目と6台目(2019年6月現在)。
寿命があることだけは、つねに覚悟しています。
でも中途半端な故障はなく、故障するとまったく動かない点は潔いです。


GEQの設定
左右差調整の基準に100Hz以上が計測上でフラットに見えるようにした場合。
が右ch、が左chのEQ特性。


PAA3による周波数特性

125Hz以上は、31バンドで見ている限り0.5dB以内に収まります。
参考までに調整前のJBL4344素特性が以下。
なお、私の4344は高域のアッテネータが少し絞ってあります。

どれほどの威力かわかりますね。

次が、私の好みに沿ったGEQの調整
フラット特性で左右を合わせた後、DEQの左右差はそのままで、
私の愛用特性に修正します。




 これで左右別々に音を聞いても同じ音が出てきいます。左右で違う音(特に低域)に妥協していた以前とは天と地の差です。
 現状での詳細な設定は、JBL4344の調整のページにや
PIEGA COAX 711のページに掲載中です。

ちなみに、この特性を良く見ると、ステレオサウンド誌2008年秋号に「よい音のする特性」として紹介された特性とかなりよく一致してます。私のセンスも意外と悪くないですね。

 

V. 調整後の音

 音楽をいろいろ聞いてみました。音の全体バランスは昔のままですから、EQをONにしても、一瞬は、「あれ、なにも変わっていないか?」という程度の、意外なほどわずかな変化に感じます。・・・が、すぐに「焦点がぴたりと合った」のに気が付きます。

 ●左右の特性が揃ったので定位が非常にクリアで、かつふらつきません。

 ●耳障りなピークがなくなったのも実感できます。

 ●低域の大きな共鳴を排除後に低域全体を補正したため自然な低域です。
   今までの低域には大きく欠けているものがあったのに初めて気が付きました。

 ●中高域も明らかに耳に優しく、耳触りでない分、全体に音量があげられるので、
  音域全体の骨格がしっかりしました。

 ●また、当然ではありますが、DACの音の差は、DEQ2496を通した後も
  非常にクリアにわかります。
  (2016年6月現在、DACはエソテリックD-02xの一台だけに集約されました。)

 

 JBL4344がこんなスムースな音で鳴る日がくるとは! 現代の最新スピーカーに買い替えたみたいです。

 DEQ2496は私のオーディオ経験で、最大コストパーフォーマンスの機材でしょう。あまりに安すぎてなんとなく心情的な不足を感じたのですが、安いイコライザーと思わず、むしろ「5万円する高級で変幻自在なデジタル・ケーブルの一種」と思って納得することにしました。

 DEQ2496は、マイクロフォンECM8000を追加すれば、61バンドのスペアナとして動作します。31バンドのPAA3より細かく見えそうなので、マイクも買ってみて測定し、さらに追い込みました。その結果と測定中の様子が以下です(上が元特性、下が調整後、いずれも左右混合)。凸凹が減っているのがわかります。しかし、試聴上では、こういう凸凹の大小より、左右をそろえる調整のほうがよほど重要なようでした。
 
61バンドスペアナのメリットはあまり見いだせなかったので、いまは、測定はすべて31バンドのPAA3で行っています。

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周波数特性は、さらに細かいASA10 MkII(こちらはかなりお高いプロ用)でも測定してみました。こんな感じ:



細かく見えたらいいってもんでもない気がします。これじゃなにをどうすればよいのかわかりませんよね。アマチュアには31バンドでも十分なのではないかな。

VI. 使って気づいた注意点

●デジタル出力の調整機能を使うことが重要
 DEQ2496はデジタル処理ですから、
オーバーライド(音量オーバー)は許されません。CDからのデータは絶対にオーバーライドしませんが、EQ通過後のデジタルデータは、ブースト帯域があるのでオーバーライドする可能性があります。DEQでピークをモニターしていると、CD元データで0dBに迫るような場合には、デジタル出力に「CLIP」のサインがでることがあります(+0dBを超えた)。まあ、簡単に言えば音量オーバー。ただし、アナログのように歪むのでなく、0dBでリミターがかかった状態になります。よく気をつけると、多少、詰まった音になるように思います。

 その対策として、EQのデジタル出力レベルを下げています(UtilityメニューのGainを下げます。)
 下げる量は、所有するCDのどれでも0dBを越えないことように設定しています。
現状ではデジタルソース系は「-3.0dB」に設定しています。


 一時期、50Hzのブースト値(全帯域で最大)に合わせて、-8.5dBまで下げていた時期もありましたが、実際のCD等の演奏時には、-3.0dBでピークメーターが0dBを超えることはほぼなかったのと、聞いたイメージでも飽和感も感じないので、このようにしました。

 なお、DEQ2496の内部演算は、いわゆる浮動小数点演算なので、飽和しないように出力を絞ることでダイナミックレンジが狭まることはありません。最大の時にもで0dBに近いが超えないようにしておけば、ビット落ちはない、ということです。むしろ、デジタル出力が飽和すれば、確実にダンナミックレンジが制約されます。

 浮動小数点は数値計算の専門語ですが、意味がわからなければ、「内部演算はブーストしても飽和せず、ビット落ちも起こらず、DACに送るためのPCM信号に戻すときに飽和とビット落ちが発生しうるので、その前で(不動小数点のまま)適切にレベルを絞れば大丈夫」と理解していただければよいかと思います。まあ、極端に簡単に言えば、ですが。

Behringerサイトの、浮動小数点演算であることの記述
1ページ目、写真の下あたり
・Ultra-high resolution 24-bit/96 kHz mastering processor featuring 32/40-bit floating-point DSP technology

 

●英語マニュアルがお薦めです
 私は2007年当時から英語マニュアルを愛用してきましたが、最近は、なんと、日本語マニュアルだけしか付属してこなくなりました。しかし、結構大事なところが誤訳・直訳で理解不能なところもあるみたいです。単語はとにかくも、構文は簡単なので、ぜひ、英語マニュアルをベリンガーのサイトからダウンロードして、必要なら辞書を片手に読んでご覧になることをお勧めしたいです。
https://media.music-group.com/media/PLM/data/docs/P0146/DEQ2496_P0146_M_EN.pdf


2008年10月23日記
2012年9月28日追記
2016年6月19日改定
2016年12月10日改定

 

 


2017年5月14日 追記


以下のノイズシェーパーの影響に関する報告は、当時使用していた ファームウエアがVer1.*時代の報告でした(1.2だと記憶)。最近、自作リモコンを使って、ノイズシェーパーON/OFFでの音質変化を確認したところ、まったく変化しませんでした。私のDEQ2496は故障のたびに買い替えていて(私の場合は3〜5年毎)、現在のファームウエアはVer2.5になっています。Ver1.2から2.5のどこかの時点で、問題が解決されたのではないでしょうか。よって、最新機材の方は、あえてONにする必要はないでしょうが、絶対にONにしてはいけない、ということはなさそうなので、追記します。なお、ファームウエアのバージョンは、Utilityメニューのトップに記載されています。

 なお、ファームウエアのアップデートは可能らしいですが
http://www.icycolors.com/nu9n/deq2496.html
Ver1.*からVer2.*へのアップデートはできないようです。ハードの改良があったのでしょう。



(2008/12/27)

Noise Shaperは絶対にONにしてはいけない!!

 DEQ2496では、IOメニューの初期設定で「Noise ShaperがON」になっています。私は、この種のデジタル付加処理は、すべてを高級DACに任せるつもりで、最初からOFFにしていました。しかし、あるとき知らぬうちにボタンに手が触れてNoise ShaperがONになったらしい。 それからしばらく、突然の音の劣化に戸惑いました。なにか壊れたのかと思いました。明らかに音が汚れます。

 Noise ShaperがONになっているのに気がつくまで、一日かかりました。

 少なくともデジタル接続でCDドライブとDACの間にDEQ2496を入れるときは、Noise ShaperとDitherは絶対にOFFにしておくべきです。困ったことに、DEQ2496の初期設定はONなので、知らずにONのまま使い、DEQ2496は音が悪くなると思っている人が多数存在する可能性があるように思います。

 下の画面は、左下のNOISE SHAPERがOFF、右上のDITHERもOFFの状態。高級DACへのデジタル接続では、この状態で使うことを推奨します。

 DITHERをOFFする理由は、音が悪くなるからではなく、他のDACでDA変換するためにデジタル出力するときにはいらないから、念のためにOFF。逆に、外部DACを使わず、DEQ2496のDACを利用する時には、ONがよいと思います。
 

 

最初に迷わずNoise Shaper と Ditherを「OFF」にして使い始めたのは運が良かったと思います。もし、この「ON」の状態の音を最初に聞いていたら、翌日にはDEQ2496は手放していたかも知れません。

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