除草剤

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グリーンウッド氏の自宅の南斜面の石垣の隙間にラレセイタ草(羅背板草)という海岸の岩場に生える多年草が しつこく生えてくる。石垣の隙間に根を張り、石垣も傷む。刈り取りにはハシゴが必要だし、刈り取ってもすぐ「ヒコバエ」が生えてくる。滑落防止のために更新したフェンス廻りの笹も刈りにくい。石垣の上部に生えたハゼノキの「ヒコバエ」も切っても切っても生えてきて、その処理は細心の注意を払わないとアレルギー反応を起こして危険だ。こうして25年が経過した。

思いついて除草剤を買ってきて噴霧してみたところ、1週間後にほぼ全て枯死した。根まで枯れるので数年は大丈夫だ。

噴霧前

噴霧後

購入した除草剤は2年継続使用し、3回の噴霧で使い切った。いままでの苦労を考えれば夢のようだ。

きれいになった石垣 2007年6月

しかしいいことだけではない。毒性の問題が残った。直接の因果関係は不明だが、前の家の犬が肝硬変になったというのである。飼い主の言によると散歩の時、草の臭いを嗅いで吸入したためではないかという。

除草剤の成分を見るとイソプロピルアンモニウム=N-(ホスホノメチル)グリシナート(isopropylammonium N-(phosphonomethyl)glycinate)である。調べるとモンサント社が開発した除草剤とわかった。しかしメーカー名はモンサントで はなく、アジアの知らない会社であった。特許が切れてだれでも作れるようになったためという。アミノ酸系除草剤とも呼ばれ、今や除草剤のス タンダードとされている。グリシンの窒素原子上にホスホノメチル基が置換した構造を持っている。葉から吸収され 、植物体内でのアミノ酸(トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン)の合成酵素、EPSPを阻害するのであらゆる植物を根まで枯らす。グリシーナート は土壌中で2週間くらいで微生物によって、アミノ酸や水に分解されるので土中に蓄積されることはないという。ただ有機リンがアミノ基の水素に置換されてい るので短期毒性がないわけではないだろう。

モンサント社は除草剤耐性遺伝子組換え作物(GMO)であるダイズ、トウモロコシ、ナタネ、ワタの種子を販売している。本剤で阻害されない細菌のEPSP 遺伝子を組み込んだものである。モンサント社の特許が切れていてマレーシア産のジェネリック品が市場に出ていたのを買っ た。農水省にも登録されている商品である。ヨーロッパやアメリカで推奨されている水準よりも低いごく僅かな濃度で、グリフォセートが、腎臓の病気や、肝臓 の病気や、致命的な可能性がある他の病気を引き起こすことが分かっているので前の家の犬に影響がでたのかもしれない。散布した当人には何の影響もなかった が 、念のため、除草剤はできるだけ使わず、肉体的には大変だが、機械的に刈るだけにしている。米国ではグリフォセートは、尿検査、都市の飲料水、庭、地下水 などで見つかっているという。そして、それは子供を産む女性の身体、例えば胎芽に入る。

2017 年現在、96%、あるいはほぼ全てのアメリカ・トウモロコシや、現在アメリカ合州国で栽培されている大豆の94%がgenetically modified organism(GMOだ。これらのGMO作物は、事実上、店で購入するあらゆる食品現在に使われている。そうしたものの大半が強制的な契約条件によ り、モンサントのグリフォセートを基にしたラウンドアップ除草剤を使用しているモンサントGMO作物だ。これは現在のモンサントGMO種子が、グリフォ セートを基本とするモンサントのラウンドアップ除草剤のみに耐性をもつように遺伝子組み換えされているためだ。またアメリカ合州国で収穫される綿花の約 90%がGMOで、有毒なグリフォセートを噴霧されている。

ところがモンサント-バイエル、ダウ-デュポン、中国化工集団-シンジェンタに、ツケが結局回って来たように見える。連 中の特許GMO種子は、遥かに少ない化学除草剤ですむと連中が広く宣伝している主張と程遠く、アメリカ農民は、長年の間に、ラウンドアップや他のグリフォ セートを基にした除草剤をたっぷり噴霧した彼らの耕地が、有毒なスーパー雑草の成長を促進することに気がついている。これらスーパー雑草は“グリフォセー ト耐性”つまりモンサントや他社のグリフォセート除草剤は効果がないのだ。農民は、彼らの作物を救済するために、他の有毒な除草剤を浴びせるのを強いられ ている。

現在日本で市販されている除草剤とベトナム戦で米軍が散布したエージェント・オレンジという枯葉剤との関係が気になって 調べた。ベトナムで使われた エージェント・オレンジは2・4−D(ジクロロフェニキシ酸)と2・4・5−T(トリクロロフェノキシ酢酸)の混合物であった。この中にダイオキシン類 (Dioxins)といわれる 不純物が含まれていたのだ。ダイオキシン類はポリ塩化ジベンゾパラジオキシン (PCDD)、ポリ塩化ジベンゾフラン (PCDF)、ダイオキシン様ポリ塩化ビフェニル (DL-PCB) の総称である。モンサントとダウケミカル製であった。現在市販されているアミノ酸系除草剤とは全く別物である。ダイオキシン類は塩素で置換された2つのベ ンゼン環という共通の構造を持ち、類似した毒性を示す。これらの定義に当てはまる化学物質の異性体は計419あるが、そのうち31に顕著な毒性がある。米 軍が散布した枯葉剤に含まれていた2,3,7,8-TCDDはダイオキシン類の中では最も毒性が高く、人間にも遺伝毒性を持っていてベトちゃんドクちゃん ら多数の奇形児を生んだ。 被害者はベトナムの農民だけでなくこれを散布した兵士やジャーナリストまで及び、これらの人々の子どもに多くの先天性奇形が生まれた。日本における塩素系 農薬、ペンタクロロフェノールおよびポリクロロフェニルニトロフェニルエーテル製造の副反応 もダイオキシン類の主要な発生源であり、過去のこれらの農薬に不純物として含まれていたダイオキシン類が海に運ばれ、魚を通じヒトに影響しているとする学 者もいる。 ダイオキシン恐怖はごみの焼却などにもおよび、税金をつかって日本中の焼却炉の建替えが行われたこともある。これはオーバーリアクションと思われるが塩素 化合物を含まない伝統的な原野の野焼きや焚き火まで法律で禁止されてしまった。さすがこれは復活した。

除草剤の中には芝は痛めないで雑草を退治してくれるというものがあって大昔使ったことがあるが、やはり芝が弱るので使用をやめた。知人がこれを使おうとして誤って別の除草剤を使い、芝の庭全面をだめにしてしまうという失敗も聞いた。

ところでモンサントは除草剤と遺伝子組み換え農作物をセットにする商売に熱心だが同じようにBacillus thuringiensisという土壌微生物由来の殺虫タンパク質(Btタンパク質)を作る遺伝子を組み込んだ害虫抵抗性トウモロコシでも利益をあげている。最近この作物の花粉を食料としているミツバチが大量死して農業に打撃を与えている。天にツバする行為なのかもしれない。

後日談

それから11年経過した2018年、息子が除草剤を買ってきて除草しようとしたら庭木まで枯れてしまったという。どの除草剤を使ったかは不明だが庭木まで無差別に枯らすのはこれか?

米国で発癌性に関わる訴訟が相次いでいるのは知っていたが、非ホジキン・リンパ腫を患っている元学校校庭整備員のドウェ イン・ジョンソンに、2億8900万ドルの損害賠償を支払うようモンサントに命じた。裁定の影響は、上告の結果にかかわらず、世GMO・農薬ビジネス・モ デルにとり、世界中に及ぶ影響を解き放つことになった。モンサントによる否定的な発ガン性実験結果の隠蔽や、モンサントのラウンドアップ除草剤には発ガン 性がないとされるモンサントの主張への“専門家”科学証言のウソや巨額謝礼の衝撃的な実態を明らかにしたという。

September 21, 2007

Rev. August 19,  2018


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