読書録

シリアル番号 1294

書名

遺伝子の社会

著者

イタイ・ヤナイ、マルティン・レルヒャー

出版社

NTT出版

ジャンル

サイエンス

発行日

2016/10/19第1刷

購入日

2016/10/14

評価



原題:The Society of Genes by Itai Yanai and Martin Lecher

久しぶりに東京に出たときに丸善で購入

リチャード・ドーキンスの「利己的な遺伝子」を読んだのは20年以上前だが、筆者夫妻も同じこの本を読んで物理学から生物学に転向したという。この本は、その後の生物学の発見をまとめたものだ。

その後の発見にはいくつかあるが、私は3つ挙げたい。

@遺伝子には酵素となるたんぱく質の設計図と特定のたんぱく質をつくる遺伝子のスイッチを入れる遺伝子の2種がある
A細菌も免疫システムをもち、それは攻撃側の遺伝子配列を認識してそれに取りついて破壊してしまう遺伝子というもの
B生物は古細菌、真正細菌と両者が融合した真核生物の3種のみ。

詳しく説明すると

@我々を人間としているDNAは核酸のリニアな配列にすぎないが、その配列には2種類あって、特定の酵素になるたんぱく質のアミノ酸配列を規定するもの と、特定の酵素をつくれという指令をするスイッチの役目をするDNA配列の2種がある。この遺伝子構造は人間がつくる社会構造と非常に似ている。酵素とな るたんぱく質は立体構造と、電荷分布で複雑な操作をするがマネジメントの役目はオンオフ機能にす ぎないため、特定のところにはまるか否かのオンオフ情報操作をするに過ぎない。とはいえ、特定の酵素をつくり遺伝子にスイッチを入れるか、入れないかとい う機能を担っているわけだからシステムとしては上位にあるわけで、組織では上位に該当する。更に複雑なのはこのスイッチを入れる順番というさらに上位のロ ジックがあって協調と妨害が複雑に絡み合って我々が機能している。

具体的には人間がサルより優れているのは大きな脳を持っているためだが、これは脳の成長が適量と判断してそれ以上成長しないように止めるHOX遺伝子を 失ったために、どこまでも脳組織が成長しため。どうも生物の重要な進化は新しいDNAを獲得ことではなく、除去することで成立しているらしい。

人間の言語もFOXP2という転写因子グループに属するゼネラル・マネジャーとしての遺伝子に関係するのだがこの遺伝子の周辺は多様性が無い。この多様性 の無さが言語を司る器官を作り上げるために必要なのだ。つまり選択浄化がされているわけ。複雑は単にカオスを生むだけ。

A細菌の免疫システムはかって侵略されたウィルスゲノムの配列と鏡像の配列をCRISPRに記録して置く。CRISPRはこの手配写真からRNAの1本鎖 をつくる。この一本鎖が細胞内をパトロールして手配写真とおりのウィルスがやってくるとそのウィルスにくっつく。こうしてできた二本鎖はくっついたペアを 粉々にするのだ。こうして細菌とウィルス間の軍拡競争は継続する。

B20億年前、地球上でもっとも過酷な環境で生きられる古細菌がよりおおくのエネルギー消費を可能とするために真正細菌を飲み込んで共生を始めて真核生物になった。

Rev. July 18, 2017


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