読書録
シリアル番号 |
1304 |
書名
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第四次産業革命
ダボス会議が予測する未来
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著者
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クラウス・シュワブ
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出版社
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日本経済新聞
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ジャンル
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社会学
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発行日
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2016
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購入日
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2017/07/10
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評価
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優
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原題:World Economic Forum by Klaus Schwab
S.K.に借りる。
著者は1938年ドイツ生まれの経済学者・技術者で世界経済フォーラム(職員600名)の設立者。
ドイツ政府がはじめたインダストリー4.0ともいわれる製造業の高度化を目指す戦略的プロジェクトのこと。英国で始まった第一次産業革命では水や蒸気を動
力源とした機械を使った生産、これを引き継ぎ米国では第二次産業革命では電気を使い機械を動かして分業の仕組みを取り入れたことにより大量生産(マス・プ
ロダクション)が可能となり、そして第三次産業革命では日本でコンピュータ制御(プログラマブルロジックコントローラ)により生産工程の自動化(コン
ピュータ統合生産)が実現された。インダストリー4.0はそれに続く「第四次産業革命」という意味合いでドイツで名づけられたものである。
現在は同じモデルを大量生産することで生産コストを削減する。しかし、消費者の好みが多様 化し、車も多品種少量生産の時代に変わりつつある。量産から個産へと変わっ てゆくという「客業個産モデル」
が理論的源流。インターネットとAIを中心とし、製品や部品と製造装置(AIマシン)とが互いに会話して仕事を成し遂げる「考える工場」の到来だ。
全ての機器がインターネットによってつながり、またビッグデータを駆使しながら、機械同士が連携して動く事はもとより、機械と人とが連携して動くことによ
り、製造現場が最適化されると想定している。すなわちスマートファクトリー構想。しかし歴史的にドイツはコンピュータやインターネットに強くないのでドイツがIndustry 4.0を成功させることができるかどうか。
この本には触れられていないが、人と人をインターネットで結ぶだけではなく、物も結ぶということをはじめたのはロールスロイスで稼働中のジェット・エンジ
ンの稼働状況を記録するためにインターネットを使った。これは行くへ不明のマレーシア航空機の位置を推定するためにも使われた。小松製作所は顧客の管理下
にある製品のブルドーザーの状
況をインターネット経由収集して集中管理した。しかしトヨタ自動車はロボットメーカーがその稼働状態を集めることを拒否した
という例もある。このようなタテ嗜好は第4次産業革命を否定するものだろう。トヨタの将来に暗雲がかかる。
このシステムが作動するためには人が優秀でなくてはならないが、人材養成、人の動員、評価法など具体的方策や人間の組織原理はどうすればよいかということ
にたい
する答えはない。人材養成はたぶんもっとも重要な点であろうが日本では劣化してしまった。英国旅行して英国の高校生の向学心は日本のそれの比ではないと気
が付
いた。これは移民の波がそうさせているところがある。国民の向学心がなくては「第四次産業革命」は不可能。大英図書館のなかにコンピュータサイエンスの中
心であるThe Alan Turing
Instituteがあり、裏にはバイオ研究所のFrancis Crick
Instituteの巨大な施設が集積している。行政機関の意気込みが見える。教育機関はつねに人が集まる交通の要衝になければならない。日本などは国家
の研究機関を栃木県という田舎に捨ててしまった。
また第四次産業革命を成功させるための政府機関から市民への権限移譲、規制緩和、分裂と二極化への対処への困難さが指摘されている。欧米では電力の自由化
が行われ、垂直統合は解体されつつあるが日本では盤石の統制が行われているため、新技術はでてこない。機動的ガバナンスがなされないと第四次産業革命に乗り
遅れる。すでに日本では電力、そしてスマホの世界でいまだ規制が強すぎる。
政府機関にとって統治がますます困難になる。公権力を守ってきた多くの障壁は弱体化し、被治者が知識を深めて、期待を膨らまし、要求をますます増やす。
情報社会では技術を繰る知識を持っている者はもれなくそれに関する権限も持っているため、情報の非対称性は重大な権力の非対称性につながる。ISISやウィキリークスなんてその例。
新たな監視技術が絶大な公権力を生み出しているがその逆もまた真なのだ。米国がその影響をうけているが、何とか適応するだろう。日本政府はまったく適応不能になる可能性あり。どうなることか。
製造業で繁栄した国や地方が、第4次産業革命で壊滅的になる可能性がある。特に対応ができていない日本がその候補。日本中が忖度の塊となり、日本発のイノベーションはゼロとなると思ってございます。
ドイツ政府はIndustry
4.0を言い出したが、インターネットにはあまり貢献していないドイツがどのくらいできるか??日本と同じように権威主義的な政府のトップダウンでとりあ
えず法律をかえてアウディが完全AI自動運転車を社会に投入することを世界に先駆けてはじめた。さて米国はどうするのといま固唾をのみ込んでみまもっている。ただドイツが世界
一で市場投入しても中身は米国の技術だから敵に塩を送っただけに終わるかどうか?興味深い。
直ぐ真似する日本政府もハタだけは振っているが中身はない。ドイツの後塵を拝しているだけ。
この本はどの政府もついてゆけないということを指摘している。日本とは名指しはしていないが、特にズッコケそうだとの予感がする。
「第四次産業革命」のプラスだけでなくマイナスの面が指摘されている。すなわち発生する不平等の問題。オランダ生れの歴史家のルトガー・ブレグマンは第一
次産業革命ではじめた社会保障制度は機能しなくなる。AIに人間全員が敗ける第4次産業革命時代には集団的で抜本的な政策、すなわちベーシックインカムに
切り替えるしかないと指摘している。
July 14, 2017