読書録

シリアル番号 835

書名

商社マンのうちあけ話ー船をかついで世界を駆ける

著者

細木正志

出版社

アクセス・ケイ

ジャンル

ビジネス

発行日

1998/9/1

購入日

2007/1/12

評価

S.K.がまだ読んでなければどうぞと回してきた。同期の細木氏の商社マン時代の思い出話集だ。

さすが猛烈商社マン、世界中を駆け回った、印象深い異文化交流経験を紹介してくれる。自慢話を抑制しているため、楽しく読めた。

本人は理由を書かないが横浜国大で造船を学んだにもかかわらず、造船会社に入らず、造船会社と船舶会社の間をとりもつブローカー業を営む伊藤忠に入ってこの人は成功したようだ。

教授は造船会社で修行してから商社に入ってもよいのではないかと、推薦状も書いてくれなかったという。彼は教授に背いて商社に入社しそして成功するのだ。彼はその人の思考パターンは社会にでて数年の修行できまってしまい、一生変らない。したがってある企業で成功するためにはそこで徒弟時代を過ごさねばならないと自分の経験から結論している。残念ながら私の経験もそう教えてくれる。私は入社後、プロセス設計技師として修行し、成功した。しかし歳をとってからエスカレーターに乗って広い分野を担当するに従い、困難を感じたものである。後輩で設計技師として成功した人をプロジェクトマネジャーに転進させてもうまくゆかなかった。失敗するのである。鉄は熱いうちに打たねばならないのだ。

この本に外国で子供を育てる難しさが書いてある。 2006年暮れ、ベルギーのブルージュゲントなど旧フランダースの観光をしたとき、元丸紅のブリュッセル駐在員の奥様とお嬢様と一緒になった。お嬢さんはブリュッセル生まれのロンドン育ちの帰国子女で日本になかなかなじめなかった思い出など話してくれた。皇太子妃の雅子さんがその苦しみを味わっているのであろう。細木さんがロンドン駐在だったことちょうど私もあしかけ3年ロンドンにいた。しかし米国系企業のなかにドップリつかっていて互いに交差することはなかった。そういう意味で私も日本に復帰して帰国子女のような感じをもった思い出がある。

話題豊富でここでは紹介しきれない。最後に日本の人口密度はヨーロッパの6倍という彼の指摘は私も持っていた観察結果で嬉しかった。日本は傾斜の急な山岳地帯で人間が利用できる有効面積が少ないからである。英国とアイルランドの国土の合計は日本とほぼ同じ。人口は英国が5,500万人、アイルランド400万人で人口密度は2倍となる。しかし英国の山岳地帯は25%であるに対し、日本のそれは75%で有効面積は日本の三倍である。したがって英国とアイルランドの有効面積当たりの人口密度は6倍となるのだ。

著者が売り歩いた日本の造船業ももう終わりで戦艦大和をつくったIHI社の社員は今ではたったの4,000人だそうだ。現時点ではLNGタンクの世界最大のメーカーだが、なぜか赤字受注しているのだという。東京のウォーターフロントにあった造船所のドックを埋め立ててビルを建て、不動産業者としてこれを賃貸しした収入と ロールス・ロイス・ブランドのジェットエンジンの黒字で食べてゆけるので本業が多少不採算でも気にならないらしい。

同期会の中に北ラス・フォーラムという講演会が毎年同時開催されている。幹事がさっそく細木氏を講師に引っ張りだした。講師 達はその後自動的にNEWフォーラムに参加して くれる。その細木氏からこの本に書きそびれた話が幾つかありますといって。笑い話2つと小話を5つほど送ってくれた。すべて実話らしい。特に笑い話は爆笑してしまった。ここに彼の許可を得て収録させてもらった。K.T君とはalumniの一人。

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Rev. March 14, 2010


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