2001年6月 


「みんなのいえ」

  三谷幸喜監督脚本、田中直樹、唐沢寿明、田中邦衛、八木亜希子。
 家を建てる事になった30代半ばの脚本家の飯島直介(田中直樹)、妻民子(八木亜希子)。民子の後輩のインテリアデザイナー柳沢(唐沢寿明)に設計を、民子の父の大工の棟梁長一郎(田中邦衛)に施工を依頼する…。

 「ラヂオの時間」に続く、三谷幸喜監督の第2本目。「ラヂオの時間」は舞台劇のベースがあったけど、今度は映画用オリジナル。 自らのマイホーム建築という経験から映画の発想を得ている所が、伊丹十三の「お葬式」の様。対立する柳沢と長一郎の似た頑固さや、それに挟まれる八方美人の直介のキャラクタは抜群に面白い。ラストまでやや盛り上がりに欠けるが、面白かった。

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「デンジャラス・ビューティー」- Miss Congeniality -

 ドナルド・ピートリー監督、サンドラ・ブロック、マイケル・ケイン、ベンジャミン・ブラット。

 男勝り、色気なしの女性FBI捜査官グレイシー・ハート(サンドラ・ブロック)。キャシー・モーニングサイド(キャンディス・バーゲン)主催のミス・コンへの潜入捜査を命じられた、ビクター・メリング(マイケル・ケイン)の努力で華麗に変身、同僚エリック・マシューズ(ベンジャミン・ブラッド)らの居力で大活躍…。
 メガネを取ったら美人、という非現実的な設定に近いけど、まあコメディとしてはそこそこ見られる。爆弾犯シチズンなど、事件部分ではまったくのお粗末なのが残念。

「デンジャラス・ビューティー」Officiall Website


「ウェディング・プランナー」- The Wedding Planner -

 アダム・シャンクマン監督、ジェニファー・ロペス、マシュー・マコノヒー、ブリジット・ウィルソン=サンプラス、ジュディー・グリア。

 サンフランシスコのウェディング・プランナーのメアリー・フィオレ(ジェニファー・ロペス)は、令嬢フラン・ドノリー(ブリジット・ウィルソン=サンプラス)の結婚式という大仕事を得る。その頃、メアリーは事故に遭いかけた所を小児科医師のスティーブ・エディソン(マシュー・マコノヒー)に助けられる…。
 全体には、少女漫画的な甘ったるいラブ・ストーリ。好きになってはいけない人に恋をしてしまう古典的な設定ではあるけど、結構楽しめた。ジェニファー・ロペスも魅力的だし、わき役もいい味。ラストのまとめ方も上手い。自分より人を大事にする自己犠牲的なメアリーを、魅力的に描き出すのに成功している。

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「セシル・B ザ・シネマ・ウォーズ」- Cecill B.Demented -

 ジョン・ウォーターズ監督、スティーヴン・ドーフ、メラニー・グリフィス。
 "セシル・B・ディメンテッド"と名乗る狂信的映画マニア集団がハリウッド女優ハニー・ホイットロックを誘拐、予算ゼロ、ゲリラ的映画製作で映画界の権力に挑む…。
 ウォーターズ監督って忘れていたけど、「ピンクフラミンゴ」の監督か。映画的な完成度は随分と高くなったけど、テーマの割にはハリウッド的な映画構造自体から逃れていないのが残念。映画マニア好みのディティールは面白いけど。

「セシル・B ザ・シネマ・ウォーズ」Official Website


「マレーナ」- Malena -

  ジュゼッペ・トルナトーレ監督脚本、モニカ・ベルッチ、ジュゼッペ・スルファーロ、ルチアーノ・フェデリコ。

 ムッソリーニ政権下の1940年、シチリア島の漁村。マレーナ(モニカ・ベルッチ)は村一番の美人で人妻。彼女を密かに想うレナート少年12歳(モニカ・ベルッチ)。マレーナの夫の戦士の知らせにより、マレーナを狙う男たちの間でいさかいが起る…。
 トルナトーレ監督は「ニュー・シネマ・パラダイス」は良かったが、「海の上のピアニスト」は部分的には面白かったものの、全体ではピンと来なかった。この「マレーナ」はさらに直球勝負で、イマイチな印象。とにかく男は年寄りも子供もスケベで、女はイヤな奴という印象しかない。

「マレーナ」 Officiall Website


「ホタル」

 降旗康男監督、高倉健、田中祐子、夏八木勲。

 登場人物は特攻隊の生き残りで桜島の漁師山岡秀治(高倉健)、妻の知子(田中祐子)、特攻隊仲間の藤枝、その娘の真美、"知覧の母"と呼ばれた山本富子などなど。山岡は富子の頼みで、戦友の金山少尉の遺品を釜山に持っていく事になる…。
 余りの混みようにびっくり。年齢層が平均55ぐらいかも(^^;)。 思ったより面白かったのだけど、そもそもの基本的テーマが伝わって来ない。細かい演技や編集で、日本のレベルの低さも判ってしまうのが悲しい。

「ホタル」Official Website


「誘拐犯」- The Way of the Gun -

 クリストファー・マックァリー監督、ベニチオ・デル・トロ、ライアン・フィリップ、ジュリエット・ルイス。

 その日暮らしで旅を続けるロングボー(ベニチオ・デル・トロ)とパーカー(ライアン・フィリップ)は、裏社会の顔役チダック夫妻が出産を依頼した代理母のロビン(ジュリエット・ルイス)を誘拐、1500万ドルの身代金を要求する…。

 「ユージュアル・サスペクツ」の脚本家マックァリー、自身の脚本による初監督作品。ドンデン返しはそれ程でも無いが、人間関係が絡みあった複雑プロットは巧み。ただ、単なるチンピラのはずのロングボーとパーカーが銃器や戦闘に妙にたけていたりするのがちょっと違和感があった。逆にチダック直属の"掃除屋"ジョー(ジェームズ・カーン)や相棒のアブナー(ジョフリー・ルイス)の老人勢はいい味が出ていた。

「誘拐犯」 Official Website


「15ミニッツ」- 15 Minutes -

 ジョン・ハーツフェルド監督脚本、ロバート・デ・ニーロ、エドワード・バーンズ、ケルシー・グラマー、カレル・ローデン、オレッグ・タクタロフ。

 タイトルは、アンディ・ウォーホールの「誰でも15分間は有名人でいられる時代がくる」というメディア社会の予見の言葉から来ている。
 銀行強盗の分け前を取りにやってきたチェコ人エミール(カレル・ローデン)とロシア人オレッグ(オレッグ・タクタロフ)が殺人を犯す。ニューヨーク市警殺人課の敏腕刑事エディ・フレミング(ロバート・デ・ニーロ)、消防局の放火事件捜査員ジョーディ・ワーソー(エドワード・バーンズ)は、殺人の目撃者ダフネ(ヴェラ・ファミーガ)を追う…。
 基本的には面白いのだけど、後味は悪いし雰囲気が重い。特に悪役のオレッグが衝動的で残忍な割には、ダプル・ジョパディー(映画にもなった)を駆使したり知能犯ぶりを見せるのが、キャラクタ的に掴みにくい感じがする。
 タイトルの割には、マスコミやメディア、社会のモラルに対するメッセージ性は低い。

「15ミニッツ」 Official Website


「ロスト・ソウル」- Lost Souls -

 ヤヌス・カミンスキー監督、ウィノナ・ライダー、ベン・チャップリン、ジョン・ハート、フィリップ・ベイカー・ホール。

 マヤ(ウィノナ・ライダー)、ラロー神父(ジョン・ハート)は元数学者のヘンリー・バードソンの悪魔払いを行うが失敗。マヤはヘンリーの元から盗み出した暗号の数字を解読し、悪魔の復活を知る。さらに犯罪研究のベストセラー作家のピーター・ケルソン(ベン・チャップリン)などが絡み、真相に近づいていく…。

 スピルバーグの「シンドラーのリスト」、「プライベート・ライアン」、「ジュラシック・パーク」等の撮影監督。本作が監督デビュー。さすがに撮影監督だけあって、映像は素晴らしい。特に、悪夢の様な映像は抜群。銀残しを使っているのか、ざらついた重い映像も合っている。
 ただ、内容はというと、結構しようもない。「エクソシスト」の悪魔払い、「ローズマリーの赤ちゃん」の悪魔主義、「エンド・オブ・デイズ」の悪魔復活など、どこかで見たようなものばかりでいいトコ無し。ラストは最悪。
 「オータム・イン・ニューヨーク」と違って、ウィノナ・ライダーはいい味が出ている。顔色の悪さもいい(^^)。

「ロスト・ソウルズ」 Official Website
銀残し(Silver Retention) - IMAGICAのサイト


「シックス・パック」- Six-Pack -

 アラン・ベルベリアン監督、リシャール・アンコニナ、フレデリック・ディーファンタル。

 舞台はパリ。残忍な連続女性殺人事件を追う敏腕刑事ナタンは、わずかな手がかりから犯人を追い詰めて行く。やがて犯人は米国で"シックスパック"と呼ばれた連続殺人鬼であるという情報をつかむ…。
 真っ当なサイコ・スリラーではあるのだけど、なんか、ひっかかる。スリラーとしての怖さとは別な次元での生理的な不快感が伴う。面白いのではあるけど、なんかすっきりしないというか。結末も、後味がかなり悪い。


「JSA -Joint Security Area-」☆

 パク・チャヌク監督脚本、イ・ヨンエ、イ・ビョンホン、キム・テウ、ソン・ガンホ、シン・ハギュン

 南北朝鮮分断の地、板門店/共同警備区域(JSA)。ある晩、北朝鮮側歩哨所における事件は、南は拉致、監禁、自力脱出と主張。北は、奇襲テロ攻撃と主張。スイスとスウェーデンからなる中立国監督委員会捜査会、韓国籍の父を持ちスイス軍女性将校ソフィー・チャン(イ・ヨンエ)による調査が始まった。南のイ・スヒョク兵長(イ・ビョンホン)、ナム・ソンシク一等兵(キム・テウ)、北のオ・ギョンピル士官(ソン・ガンホ)、ョン・ウジン兵士(シン・ハギュン)たちの行動、その意味が明らかになっていく…。
 「シュリ」の記録を抜くヒットらしいが、確かに面白い。こういう切り口で南北問題を扱うという手際も見事だが、何しろラストのワンカットはお見事。参りました、と言うしか無い。
 それぞれ、俳優もみんないい演技。実際の板門店を再現したというオープンセットは見事。政治的な主張力もあるし、映画に対する意気込みもいい。韓国映画の威勢の良さに比べると、邦画は情けなくなる。

「JSA」 official website
「板門店ドットコム」


「ムルディカ 17805」

 藤由紀夫監督、山田純大、保阪尚輝、榎木孝明、藤谷美紀、ローラ・アマリア、ムハマド・イクバル、アウリア・アクサン。
 
 1942年オランダ領ジャワ島(インドネシア)、南方戦線進攻部隊の島崎中尉(山田純大)、宮田中尉(保坂尚輝)らは、奇策でオランダ軍を降伏させる。島崎中尉はインドネシアの青年らを集めを軍事教練する機関「青年道場」を開設。しかし1945年の日本敗戦で旧宗主国オランダ、英国がインドネシアに進行。島崎たちは元青年道場のヌルハディ、アセップたちが率いる独立軍部隊に入り、共に戦う事になる…。

 実話ベースであるのだけど、日本側の身勝手な視点が随所に感じられて素直に観られない。物語もメリハリが無く、エンターテイメントとして不合格。面白く無い映画だった。
 17805は、皇紀2605年8月17日の意味らしい。

「ムルディカ 17805」 Official Website


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