2000年9月


「オータム・イン・ニューヨーク」- Autumn in New York -

 ジョアン・チェン監督、リチャード・ギア、ウィノナ・ライダー、エレイン・ストリッチ。
 不治の病で余命わずかの23歳の美術学校の学生シャーロット(ウィノナ・ライダー)、プレイボーイな48歳独身のレストラン経営者ウィル(リチャード・ギア)が恋に落ちる。「ある恋の詩」と「プリティ・ウーマン」を足した様な話。恋と涙の物語だが、上っ面だけ。そこには恋の苦しみも、現実的な死も無く、オシャレな映像に隠蔽されている。こんなのに泣かされる様では情けない。

 リチャード・ギアのスノッブさとウィノナ・ライダーのポップさがまるで噛み合ってなかった。二人の気持ちも全く理解出来ない。「シュウシュウの季節」のチェン監督のハリウッド・デビューとしては、十分に自分の力を活かせなかった映画ではないかと思う。

 最近でも「プリティ・ブライド」など、リチャード・ギアも「女にモテる成功者、でも本気で好きになった女はいなかった中年男」という役柄から脱却しないと、ダメになるんじゃないか?

「オータム・イン・ニューヨーク」 Official Website


「60セカンズ」- Gone in Sixty Seconds -

 ドミニク・セナ監督、スコット・ローゼンバーグ脚本、ニコラス・ケイジ、アンジェリーナ・ジョリー、ジョバンニ・リビージ、デルロイ・リンドー、ウィル・パットン。
 「バニシング In 60」のリメイク。伝説の車泥棒メンフィス(ニコラス・ケイジ)は、弟を救うために、一晩で50台の高級車を盗む事になる…。ノリはいいし、メカニカルな車フェチっぽい映像や、カーアクションのスピード感はいい感じ。しかし、最後までどんでん返しも、裏も無いのに逆に驚いたが、まあ、まあ、楽しめる。

 「ザ・ロック」「コン・エアー」「フェイス/オフ」「スネーク・アイズ」と、アクションスターに転身しているニコラス・ケイジだが、どうもイメージがあわない。どう見ても志村けんの顔だけどなあ。
 
「60セカンド」 Official Website


「長崎ぶらぶら節」

 深町幸男監督、市川森一脚本、なかにし礼原作、吉永小百合、渡哲也、高島礼子、原田知世、藤村志保、いしだあゆみ。

 原作はなかにし礼、第122回直木賞に輝いた同名小説。明治から昭和初期、長崎の花街丸山の三味線引き愛八(吉永小百合)と、長崎の歴史研究家の古賀十二郎(渡哲也)の物語。熟年のプラトニック・ラブを主軸に物語は展開する…。
 思ったより面白かった。吉永小百合、渡哲也は、「時雨<しぐれ>の記」と同じ組み合わせだが、 今度のは物語的にしっかりしていて面白かった。 観客は年寄りばかりだった。
 原田知世の鉄火な感じがいい。

「長崎ぶらぶら節」 Official Website


「U-571」- U-571 - ☆

 ジョナサン・モストウ監督脚本、マシュー・マコノヒー、ビル・パクストン、ハーベイ・カイテル。

 第2次世界大戦中の大西洋、1942年、ドイツ最新鋭潜水艦U-571からエニグマを奪取する極秘任務を持って旧式の潜水艦S-33に乗り込む。この設定だけでも面白いが、敵味方双方から狙われる展開も、人間ドラマとしても面白い。潜水艦の閉塞感や、三次元的な戦闘の描き方も上手い。面白かった。
 史実を元にしている。
  
「U-571」 Official Website


「ワンダー・ボーイズ」- Wonder Boys - ☆

 カーティス・ハンソン監督、スティーブン・クローブス脚本、マイケル・ダグラス、トビー・マグワイア、フランシス・マクドーマンド、ロバート・ダウニーJr.、ケイティ・ホルムズ。

 処女作が絶賛されながら二作目の小説が完成しない大学教授グラディ(マイケル・ダグラス)、妻は家を出て、愛人は妊娠、作家志望の生徒のトラブルと災難続きの三日間の物語。不思議な感覚を持った映画で、楽しめた。
 
 トビー・マグワイアは「サイダー・ハウス・ルール」とほとんど同じ演技ではあるが、非常に存在感のあるいい感じを出していた。愛人役は何の映画に出ていたかなあと考えていたが、「ファーゴ」のフランシス・マクドーマンドか、意外な感じ。

「ワンダー・ボーイズ」 Official Website
原作「ワンダー・ボーイズ」感想


「ホワイトアウト」

 若松節朗監督、真保裕一脚本原作、織田裕二、松嶋菜々子、佐藤浩市、石黒賢、吹越満、中村嘉葎雄。
 厳冬の雪山、テロリストに乗っ取られた日本最大のダム「新潟県奥遠和ダム」を、只一人で取り返そうとする職員の富樫(織田裕二)。
 
 吉川英治新人文学賞受賞作ではあるけれど、真保裕一の中では話にまとまりが無いと思っている。映画では、さらに映像にした事により陳腐化した部分(流されるトコ、雪崩れのトコ) を感じる。また、小役人シリーズと言われるように、もっとグズグズの弱虫でいいのに、富樫は強すぎで違和感がある。「ダイハード」は警官だからまだしも、今度は小役人なんだから。
 携帯の使い方とか、タイアップ的なモノの出し方がヤな感じ。一気に映画をホイチョイっぽくしている。
 まあ映画としては、ストーリも壮大で、映像も奇麗でよかったのだけど。織田裕二は「踊る大走査線」ぐらいの力が抜けた映画ならいいけど、シリアスなこういう映画では、まったく魅力が無い。
 
「ホワイトアウト」Official Website


「英雄の条件」- Rules of Engagement -

 ウィリアム・フリードキン監督、ステファン・ガーガン脚本、トミー・リー・ジョーンズ、サミュエル・L・ジャクソン、ガイ・ピアース、フィリップ・ベイカー・ホール。

 中東、米国大使館に押し寄せるデモ隊に発砲したチルダーズ大佐(サミュエル・L・ジャクソン)が非武装の市民に対する殺人を問われ軍法会議にかけられる。それを救うのが、かつてベトナムで命を助けられたホッジス元大佐(トミー・リー・ジョーンズ)。
 
 どうも好戦的映画過ぎるという感じがする。そもそも、他国でも武装しているデモ隊を殺す事が許されるという米国的な正義感が納得出来ない。それゆえ、結末まで違和感を感じてしまう。
 史実を元にしているらしいが、こんなんでいいのだろうか?

「英雄の条件」Official Website


「ミュージック・フローム・ハート」- Music of the Heart -

 ウェス・クレイヴン監督、メリル・ストリープ、グロリア・エステファン、アンジェラ・バセット、エイダン・クイン。

  二人の息子を残し夫に去られたヴァイオリン教師ロベルタ(メリル・ストリープ)が、仕事を得られずに、ハーレムの子供たちにヴァイオリンを教える事になる…。最近観る映画は、実話を元にしている映画ばかりだけど、これもその一つ。しかし、心に凍みるいい映画で、実話というのが嬉しく感じられる。

 ストーリとしては、やや説明不足の部分もあるけど、ヴァイオリンの素晴らしさと厳しさと共に、音楽教育が子供に与える影響の描き方は上手い。
 監督のウェス・クレイヴンは、「スクリーム」、「壁の中に誰かがいる」と、ホラー、サスペンスタッチのものばかりだと思っていたが、これはまったく逆のハートウォーミングという言葉がぴったりの映画。
 
→ 「ミュージック・フローム・ハート」Official Website


「ルール」- Urban Legend -

 ジャミー・ブランクス監督、アリシア・ウィット、ジャレッド・レト、ジョシュア・ジャクソン、レベッカ・ゲイハート。
 ペンドルトン大学では、都市伝説をモチーフにした謎の事件が続く。大学側が事件を隠ぺいしようとする中、ナタリー(アリシア・ウィット)は事件を解明しようとするが…。
 
 都市伝説をモチーフにしている所に引かれた。実際、映画の出だしから「都市伝説とは、ルールを知らない人へのお仕置きの様な意図が隠されている」という説明から入るが、そんな設定はそれ程活かされてはない。
 犯人は簡単に判ったしまった。動機の割にはあまりに人が死に過ぎるのも、この映画の難点。まあ「都市伝説」というものを知らしめた価値として評価したい。
 
「ルール」 Official Website 


「最終絶叫計画」- Scary Movie -

 キーナン・アイボリー・ウェイアンズ監督、ジョン・エイブラハムズ、カーメン・エレクトラ、シャノン・エリザベス、マーロン・ウェイアンズ。
 
 馬鹿らしいというのが最初の印象。オリジナリティもなく、「スクリーム」「ラスト・サマー」などのパロディをひたすらつなげたもの。内容的には文化祭レベルの作品だけど、それをちゃんと演技してちゃんと撮っている事には関心する。ハリウッドの懐の深さを逆に感じる。
 
 真犯人は簡単に判る。それでも、ラストだけはかなり面白かった。ここも単なるパロディなんだけど、ちょっと予想出来ない映画のパロディを持って来ている。ドンデン返しをやるのに、単にドンデン返しの映画を持ってくるという下らなさが逆に面白い。

「最終絶叫計画」Official Websie


Movie Top


to Top Page