'98年10月


「ダイヤルM」 - A Perfect Murder -

 アンドリュー・デイビス監督、マイケル・ダグラス、グウィネス・パルトロウ。
 ヒッチコックの「ダイヤルMを廻せ!」- Dial M For Muder -のリメイク。

 第一印象的は「ダイヤルM」ってこんなのだっけ、という感じ。ヒッチの映画では、もっと夫と妻の駆け引き、心理的サスペンスがメインだったと思うけど、なんかそういう部分での面白さは感じられない。
 設定を現代に変え方、特に携帯電話などの小道具の使い方は面白いんだけど。結局、リメイクの意義は感じられなかった。

「A Perfect Murder」 Official Website
「ダイヤルM」 Official Website (ワーナー)


「モンタナの風に抱かれて」 - Horse Whisperer -

 ロバート・レッド・フォード監督、製作、主演。ヒロインはクリスティン・スコット・トーマス。
 乗馬中の事故で心に傷をおった娘と愛馬ピルグリムを連れ、馬に語りかける男、レッド・フォード演じる伝説の男トムを頼りにモンタナへ向かう。まあ、そこまでの設定は面白いんだけど…。

 結局、純愛物語の域を脱していない。なぜに名優たちも年を取るとこんな純愛物語ばかり作ってしまうのだろうか。クリント・イーストウッドの「マディソン郡の橋」(製作、監督、主演)といい、ウォーレン・ベイティの「めぐり逢い」(製作、脚本、主演)といい…。失敗はしないけど、こじんまりとまとまってしまって面白くないのばかり。

 話自体は悪くないのだけど、愛する二人の心理描写の冴えもみられないし展開は退屈。自然の風景や、娘の立ち直りなどはいいんだけど、結局メインとなっている部分はまるで面白くない。

「Horse Whisperer」 Official Website
「モンタナの風に抱かれて」Official Website


「相続人」 - Gingerbread Man -

 ジョン・グリシャム原作の法廷劇…というのは珍しくもないけど、ロバート・アルトマンがグリシャム原作の監督手がけるというのはちょっと驚き。主演はケネス・ブラナー、エンベス・デイビッツ、ロバート・ダウニーJr。
 映画全体にはアルトマンのシニカルな感じは無いけど、法廷劇、ミステリとしてはそこそこ面白かった。
 アルトマンらしい俳優の即興性を使っているというけど、さすがにケネス・ブラナーは堂々とした迫力を出している。

「Gingerbread Man 」 Offcial Website
「相続人」Official Website


「学校III」

 山田洋次監督、脚本、原作。大竹しのぶ、小林稔侍、黒田勇樹、ケーシー高峰、田中邦衛。

 「学校II」に続く「学校」シリーズの第三弾。今度は、下町の職業訓練校に集まる中高年の失業者ばかり。現実の不況を背景にしているだけにリアリティがある。職業訓練校という題材自体が新鮮だし、時代的にも面白いけど、結局一番目立っているのは大竹しのぶ、小林稔侍の恋愛絡み。ここがなんとも、こそばゆい感じがして、もう止めてくれと言いたくなる。もうちょっとすっきりと描かないとテーマが不明確になると思うのだけど…。そもそも、大竹しのぶが役の割に色っぽすぎる(^^;)。

 そこそこ及第点ではあるけれど、このシリーズは最初のが一番面白かったなあ。


「マスク・オブ・ゾロ」 - The Mask of Zorro -

 マーティン・キャンベル監督、スティーブン・スピルバーグ製作、アントニオ・バンデラス、アンソニー・ホプキンズ。

 ゾロ自体はおなじみのキャラクタであり、暴君総督との戦いという設定も同じ。ただし、今回はアントニオ・バンデラス、アンソニー・ホプキンズという新旧ゾロの世代交代を作り、総督の娘を絡めた人間関係の複雑さが面白さを倍加している。

 アクションもいいノリで、スタイリッシュな面白さが随所にある。実際、アントニオ・バンデラスよりも、アンソニー・ホプキンズのダンディな魅力の方がいい。ラストまで実にかっこいい。

「The Mask of Zorro」Official Website
「マスク・オブ・ゾロ」 Offcial Website


「CUBE」- CUBE - ☆

 カナダの監督、ヴィンチェンゾ・ナタリ監督。

 正体不明の立方体に理由も判らないままに閉じ込められた人びと。疑心暗鬼から生まれる人間関係の歪みが密室サスペンスを作る。立方体の正体、その理由、数字の謎、さらに脱出劇、さまざまな要素がラストまでグイグイと引っ張っていってくれる。観客は、実際、主人公の誰にも感情移入出来ない。それぞれに疑わしいので、新たな一人のメンバーとして映画の中に引き込まれる事になる。
 ラストは夢も希望も無いという気がするけど…嫌いじゃない。

 しかし、お金をかけずにいい映画を作るなあという、作り手の側の工夫に感心した。同じセットをライトを変えるだけで違うセットに見せるというのは単純だけに、実に上手い。ある種、演劇セットの巧みな使い廻しの様。


「女優霊」(ビデオ)

 中田秀夫監督原案、高橋洋脚本。柳ユーレイ、白島靖代、石橋けい、大杉漣。
 劇場で観られなかったので、しょうがないのでビデオで観る。

 「リングより、「女優霊」の方が怖いという評判だったので、凄く期待していたが、噂ほどは怖くなかった。ちょっと影が見えるところとか、途中の何という事もない所の怖さは上手かったけど。

 ラストはちょっとハズしていると思った。「リング」のTVから出てくるシーンも似たようなモンかと思ったけど、これほど印象が変わるというのは不思議…。


「ザ・グリード」 - Deep Rising -

 スティーブン・ソマーズ監督脚本、トリート・ウィリアムス、ファムケ・ヤンセン。

 東シナで豪華客船アルゴノーティカ号が謎の怪物に襲われる、さらに強盗団、密輸船のメンバーが船の中で入り乱れる。映画的には粗雑な部分が多いけど、そこそこのノリで楽しめる。スプラッタが嫌いなら観ない方がいいけど。

 「90分で3000人を喰いまくる巨大モンスター」って予告で言っているけど、そこら辺はまるではしょられていて、誇大公告だな(^^;)。グチャグチャなスプラッタとしては、とにかく数で迫力はあった。


「カンゾー先生」

 今村昌平監督脚本、坂口安吾「肝臓先生」原作、柄本明、麻生久美子。

 前作の「うなぎ」が意外な評判で、作り手としては次回作はやりにくかっただろうけど、まあまあ面白かった。

 柄本明はややオーバーな演技ながら味があっていいかな。麻生久美子が、よく判りにくいキャラクタだけど、野性的美少女って感じで面白かった。

 顕微鏡や脱走捕虜のエピソードなどはよいのだけど、ラストの方でカンゾー先生が仕事をほっぽらかして暴走していく様の描写はちょっと頂けなかった。ラストはちょっと捉えどころがない。

→ 「カンゾー先生」 Official Website


「アベンジャーズ」- The Avengers -

 ジェレマイア・チェチック監督、レイフ・ファインズ、ユマ・サーマン、ショーン・コネリー。
 TVドラマ「おしゃれ(秘)探偵」のリメイク。

 異常気象を操る悪役科学者が元ジェームス・ボンドのショーン・コネリーというのがちょっとイカしている。主人公はレイフ・ファインズ演ずる極秘諜報機関ミニストリー・シークレト・サービスのジョン、ヒロインにユマ・サーマン演ずる気象学者のエマ。

 スタイリッシュと言うのは判るけど、それは部分、部分の話で、全体には退屈。感じのストーリ展開はまるでスタイリッシュじゃない(^^;)。 

 まるで「バットマン」の様にシリーズ化しようという雰囲気はあるけど、これは止めた方がいいと思う。

→ 「The Avengers」 Official Website
→ 「アベンジャーズ」 Official Website


「あぶない刑事フォーエヴァー」

 八月放映のTVスペシャルの続き、それは観てないので話はつながらないのだけど…ま、劇場でやるほどのものではない…まあ、いつも思う事ではあるけど(^^;)

 成田祐介監督、館ひろし、柴田恭平、加藤雅也、永澤俊矢、浅野温子、中村トオル、木の実ナナ。TVシリーズの残骸しか感じられない。シリーズ最終作となるらしいけど、ま、しょうがないでしょ。

「あぶない刑事フォーエヴァー」Official Website


「生きない」

 清水浩監督、ダンカン脚本主演、大河内奈々子、尾美としのり、左右田一平、村野武範。
 12月30日発二泊三日沖縄初日の出ツアー、実は借金苦に追い詰められた保険金狙いの自殺ツアー、そこに紛れ込んでしまった一人の娘、という設定がすべて。この設定自体、ワクワクさせる面白さ。後はどう料理出来るかの腕にかかっている。

 ちょっと北野武映画を思わせる間合いや、色彩豊かな映像が感じられる。展開や、ちょっとした笑いの入れ方などが実に上手い。
 後はラストをどう詰めるかだと思ったけど、実際、ちょっと甘いかなあと思う。もうちょっとラストをどうにか出来たら最高だと思うんだけど。


「がんばっていきまっしょい」

 磯村一路監督脚本、周防正行製作、田中麗奈、中嶋朋子。

 テレビCMの露出度が高すぎるせいか、田中麗奈はあんまり好きになれない。女優としては花がない気がする、タレント性が感じられないし。まあ、それはいいとして…。

 主人公とは同じ世代(共通一次一期生)という設定なのに、時代的に共感を呼ぶ所はほとんどなかった。
 貧血とか中途半端な使い方、中嶋朋子演ずるコーチの意味有りげな存在も邪魔なだけだし、全体にあまりに中途半端なモノばかり。
 中心となるボートの描写も中途半端。過酷なスポーツであるボートでまるで苦しそうな感じがないし、過酷であると同時に美しい水面をすべるボートの映像もまるで美しさが感じられない。例えば、「ヘイ・バブリバ」「栄光と狂気」「激流」のファーストシーンなどの美しさのかけらもこの映画の中には無い。
  唯一、いいと思ったのは入学式の「がんばっていきまっしょい」の講堂に満ちた凛とした空気。ここの描写だけは上手いと思った。

→ 「がんばっていきまっしょい」 Official Website


「マーキュリー・ライジング」 - Mercury Rising -

 ハロルド・ベッカー監督、ブルース・ウィリス、アレック・ボールドウィン。

 米国の暗号を解読してしまう少年サイモン、それを保護するブルース・ウィリス演ずるFBIのアート。サイモンの命を狙うアレック・ボールドウィン。

 国家機密と暗号というちょっと新しい設定を入れただけで、話自体に新鮮さは無い。古臭い以前に、ストーリ展開にまるでサスペンスが感じられない。狭い範囲で数にがバタバタしているだけで、時間の割には展開がまるで無くて中ダルみする。
 敵役がまた迫力なかった。

「Mercury Rising」Official Website


「プライベート・ライアン」- Saving Private Ryan - ☆

 スティーブン・スピルバーグ監督製作、ヤヌス・カミンスキー撮影、トム・ハンクス、マット・デイモン。

 噂では聞いていたけど、最初の30分のノルマンディ上陸の戦闘シーンの迫力はホントに凄い。手持ちのカメラの利用、音とシンクロしたカメラの揺れ、耳をかすめて飛ぶ弾丸の音、足もとから響く迫撃砲の響き、ここまでリアリティを感じられる戦闘シーンは初めて。
 ロバート・キャパのノルマンディ上陸の映像を思い出させた。

 最初の上陸シーンがが凄すぎて、ラストの戦闘は迫力不足かと思わせたけど、ドイツ兵との人間関係を絡ませてドラマ性を膨らませているのが上手い。
 トム・ハンクスのミラー大尉が好演。ミラーの過去の職業が明かされるシーンがジーンとくる。

→ 「プライベート・ライアン」 Official Website(東宝)
→ ノベライズ「プライベート・ライアン」感想


「ライブ・フレッシュ」

 ペドロ・アルモドバル監督、リベルト・ラバル、ハビエル・バルデム、フランチェスカ・ネリ、アンヘラ・モリーナ。
 「神経衰弱ぎりぎりの女たち」「アタメ」「ハイヒール」のスペインの監督ペドロ・アルモドバル。実は劇場で観る彼の映画はこれが初めて。

 戒厳令の夜にバスの中で産み落とされたビクトルが主人公、彼の運命の女をめぐる愛と復讐。前半はちょっと退屈だったけど、後半に行くにしたがって、人間関係の絡み方が巧みで面白くなっていく。
 夜の描写の美しさなど、映像面で心に残る部分も多い。

→ 「Live Flesh」Official Website


「大怪獣東京に現る」

 宮坂武志監督、NAKA雅MURA(なかむらまさし)原案シナリオ、桃井かおり、吉行由実。

 怪獣が現れない怪獣映画…と評判だったけど、まるで映研が作った一発アイデアモノの怪獣映画という感じ。あるいは(古いけど)イカ天的(^^;)。
 そこそこは面白いのだけど、長い時間ではかなり退屈だった。アイデア倒れ。所詮、アイデアは出発点という事で、そこからの発展が無い。

 桃井かおりのオバさんぶりも面白いし、福井の田舎っぽさの描写が自虐的でちょっと面白い。それだけ。


「岸和田少年愚連隊 望郷編」

 三池崇史監督、中場利一原作、竹中直人、高岡早紀、長田融季、笑福亭松之助、安田義紀、烏丸せつこ 。
 「岸和田少年愚連隊」のシリーズ第三弾、少年時代の物語。

 子供たちよりも、父親を演ずる竹中直人の方に目がいってしまい、全体のポイントを見失わせてしまう。それでも三池監督、うまくまとめていて、それぞれのエピソードは面白かった。

→ 「岸和田少年愚連隊 血煙り純情篇」感想
→ 「どつきどつかれ」感想


「スピーシーズ2」

 ピーター・メダック監督、マイケル・マドセン、ナターシャ・ヘンストリッジ、ジャスティン・ラザード、ミケルティ・ウィリアムソン。

 監督は前作のロジャー・ドナルドソンから「チェンジリング」「蜘蛛女」のピーター・メダックへ。また、前作のシル役のナターシャ・ヘンストリッジが、今回はスピーシーズ対策用として新たに誕生させた"イヴ"役となる。
 前作よりはよかったけど、相変わらずまるでB級映画を脱していない。展開が詰らない。


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