'98年6月


「中国の鳥人」

 三池崇史監督、椎名誠原作、元木雅弘、石橋蓮司、マコ・イワマツ。
 三池崇史は「岸和田少年愚連隊・血煙り純情篇」の監督。

 元木雅弘の商社マン、石橋蓮司のヤクザ、マコ・イワマツの中国人ガイド、この三人の組み合わせがバツグンに面白い。その部分はなかなかよいのだけど、中盤からのヤクザと商社マンの心理的変化が上手く描けていない気がする。ラストの方はバタバタしているだけで、感動出来ない。
 しかし、中国雲南省の奥地、自然の風景が素晴らしい。そこだけでも観る価値あるかも。

 ハリウッドでは妙な日本人役ばかりやっているマコ・イワマツの中国人ガイドのヘンさと奇怪な日本語が爆笑モノ。


「孤独の絆」 - No Way Home -

 バディ・ジョヴィナッツォ監督脚本、ティム・ロス、ジェームズ・ルッソ、デボラ・カラ・アンガー。

 主人公の出所から映画は始まる。兄夫婦の元で肩身が狭い思いをしながら新生活を送る。昔の知り合いに会ったりケンカに巻き込まれたり、やがて兄弟の関係や、過去の事件の秘密が明らかになっていく。このあたりの興味の引きつけ方がうまいし、ラストの畳みかけ方が見事。
 しかし、なによりよかったのは主人公のティム・ロス。「グリッドロック」でも見事だったティムロス、事故により障害を負った弟を演ずる彼の演技が素晴らしい。無表情で無感情にも見える演技ではあるけれど、時々、その奥底の心理が見え隠れする所が凄い。


「ジャッカル」 - The Jackal -

 マイケル・ケイトン=ジョーンズ監督製作、ブルース・ウィリス、リチャード・ギア、シドニー・ポワチエ、D・ヴェノーラ。

 「ジャッカルの日」のリメイクという事だと思うけど、基本的にまるで違う話。暗殺者の名前がジャッカルだという事ぐらいしか同じじゃない。あ、盗聴の所は「ジャッカルの日」と同じ台詞だったけど。
 派手なだけでいかにもハリウッドなリメイク。そもそも、ジャッカルが使う銃とその仕掛けがむやみに派手なだけで意味があまりないし、やたらに証拠を残していくのも荒っぽい、一方、追うリチャード・ギア、シドニー・ポワチエも行き当りばったりの捜査。追うもの追われるおのの繊細な駆け引きが無いのが残念。
 そこそこ面白いけど、いかにもハリウッド。やはり「ジャッカルの日」には遠く及ばない。


「ジューンブライド〜6月19日の花嫁」

 大森一樹監督脚本、乃南アサ原作、富田靖子、椎名桔平、野村宏伸、保坂尚輝、本宮泰風。

 結婚を前に記憶を失った富田靖子演ずる主人公が、本当の自分を探す事になる。そこから次第に判ってくる過去の事実。主人公とその回りとの人間関係も過去もかなり複雑だけど、それをすんなりストーリに出来ているかと言えば、それほどうまくは無い。確かにサスペンス仕立てで興味を引きつけていくけれど、ラストの謎の解明も、結末への盛り上げも鮮やかとは言えない。

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「追跡者」 - U.S.Marshals -

 スチュアート・ベアード監督、トミー・リー・ジョーンズ、ウェズリー・スナイプス、ロバート・ダウニーJr.。

 「逃亡者」で活躍したUSマーシャル、そのリーダーのジェラード連邦保安官が主人公。今度の逃亡者は、スナイプス演ずる元CIAの特殊工作員。
 「逃亡者」同様、追うもの追われるものの知的な駆け引きの妙、また感情の結び付きも同じ様な感じ。ジェラードの魅力がいっぱいで、なかなか面白かった。

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「黒の天使Vol.1」

 石井隆監督、脚本、原作。葉月里緒奈、椎名桔平、小野みゆき、山口祥行、高島礼子。

 いかにも石井隆監督らしい映画。部分部分はスタイリッシュでゾクゾクするほどいい映像になっているんだけど、全体に観てみると荒っぽい所や判りにくい所が多い。
 それでもラストの方に行くと複雑な人間関係が解きほぐれて面白いストーリだとは判るのだけど、もっと上手く表現するとよかったのに。残念。

 部分的にはかなり好きなシーンが多かった。特に、ビルの屋上をさらに俯瞰で撮るシーンが不思議。どうやって撮影したんだろう??


「ニル・バイ・マウス」 - Nil By Mouth

 俳優のゲイリー・オールドマンが監督、脚本、「レオン」「フィフス・エレメント」で組んだリュック・ベッソンが製作、レイ・ウィンストン、キャシィ・バーク、チャーリー・G=マイルズ、英国映画。

 ロンドンの下町の市井の人びとが主人公。酒、麻薬、夫の暴力、ケンカ。主人公はみんなロクでも無いのばかり。そんな人びとを、ある種の温かい目で見ているのだろうか…。監督自身の自伝的要素が強いと言われているけど、物語としては特に面白くも感動的でもなく、なんとなくスクリーンの前を通りすぎて行ってしまう映像だった。個人的にはあまり面白くなかった。

→ 「Nil By Mouth」 - Cinema1 Home Page


「絆<きずな>」

 根岸吉太郎監督、白川道原作、役所広司、渡辺謙、麻生祐未。

 それなりにまとまっているけど、なんとも古臭い感じがする。このスタンダードさが根岸吉太郎と言えば、そうなんだろうけど。ストーリも古く臭ければ、演技もみんな古臭い。「てなもんや商事」ではいい演技だった渡辺謙はいい所がまるで無いし、役所広司もまるで駄目だし、音楽もいかにもな曲ばかりで、なんとも言えず20年前の映画を見ているような気分。退屈ではないけど、まあ、そういう映画だった。

→「絆<きずな>」 OFFICIAL SITE


「メジャーリーグ3」- Major League Back To The Minors -

 邦題自体は「メジャーリーグ3」となっているけど1、2での主役のチャーリー・シーン演じる"Wild Thing"リッキーを欠いているので雰囲気は随分と違う。制作は2と同じジェームス・G・ロビンソンだけど、監督、脚本は新しいジョン・ウォーレン。石橋貴明演じるタカ・タナカなど引き継いでいるメンバーはいるけど、そもそも舞台は1、2のインディアンズではなくマイナー3Aのバス(Buzz)。
 つまりは正当な続きでもなく、2/9ぐらいしか雰囲気は続いてないけど、これはこれで結構面白い。

 3Aのバスの監督を引き継いだガスは、ダメチームを立て直す。しかし、メジャーの監督との確執からマイナーVSメジャーの特別試合を行う事になり…。ってな話なんだけど、攻守双方でうまく盛り上がりを作るのは、1、2と同じでなかなか巧みな手腕。1、2ほどの派手さはないけど結構楽しめる。

 投球も打撃のボールも、多くがCGで合成されていると思うんだけど、これがかなりリアルだった。


「ラストサマー」 - I Know What You Did Last Summer -

 監督ジム・キルスピー、脚本ケビン・ウィリアムスン、ジェニファー・ラブ・ヒューイット、ライアン・フィリップ、フレディ・プリンゼJr、サラ・ミシェル・ゲラー。
 脚本が「スクリーム」のケビン・ウィリアムスン、「スクリーム2」出ているヒューイットと、期待させるのだが…。

 高校生最後の夏に轢き逃げ事件を起こすが、証拠隠滅をはかり4人の秘密にしてしまう。1年後、差出人不明のメッセージが届き、惨劇が始まる。それほど珍しい設定でも無い。脚本家の腕としてはミステリー的な要素を上手く出すかという事だったのだろうけど、結局、脚本家が張った罠というのは、ミス・ディレクションの山であって、構成的な面白さがまるで無い。終わった後も、え、謎ってホントこれだけだったのという疑問が残る。もしかしたら、見逃している部分があるかもしれないと後からも考えているのだけど、やはり話は単純だったのだろう。

 結局、ハズレな映画だった…と思う。


「ラブ・レター」

 森崎東監督、浅田次郎原作、中島丈博脚本、中井貴一、山本太郎、コン・チュウ、根津甚八。

 浅田次郎の「鉄道員<ぽっぽや>」に収録されている同名の短編の映画化。原作はそれほど好きではなかったし、あれほど短い話を映画に出来るのかと疑問だったのだけど、なかなか面白かった。原作よりも遥かに面白い。

 中井貴一演じるポルノビデオ屋の店長、吾郎は中国人の白蘭と偽装結婚するが、留置所にいる間に白蘭は死んでしまう。その後の吾郎の死の見つめ方が非常に上手い。一人の人間の死が事務的な流れに乗るのを見つめる吾郎の心理描写は、もう一つの「お葬式」を観るような巧みさがあった。
 原作に対して、話の膨らませ方も非常に自然だし無理が無い。

 何よりも、中井貴一のチンピラっぽい雰囲気が凄く上手くて感心した。

→ 原作「鉄道員<ぽっぽや>」感想


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