'98年3月


「フェイス/オフ」- Face/Off - ☆

 非常によかったです。まさにジョン・ウー印。サングラスにロング・コートをなびかせるニコラス・ケイジの姿なんか、そのまま挽歌シリーズのチョウ・ユンファ。この映画はジョン・ウーの映画だよ、って印が出ているみたいです。
 他にジョン・ウー的美学と言えば、拳銃の突きつけ合いもパロディ気味に決めてくれるし、鏡にむかった銃撃なんかも香港ノアールの対決シーンの美学の昇華された形に見えます。
 あと、気に入ったのは、「Over the Rainbow」のかかる中の銃撃戦の美しさ。ゾクゾクときました。

 ストーリ的にもなかなか見せてくれました。特に、ジョン・トラボルタ、ニコラス・ケイジが互いに深く憎しみながらも、入れ替わる事により、多少とも相手に感情移入する、いかにも香港ノワールな姿が気に入りました。


「コップランド」- Cop Land -

 社会派ドラマの割には、かなり豪勢なスターたち。シルヴェスター・スタローン、ロバート・デ・ニーロ、ハーヴェイ・カイテルなど。

  NY市警の警官が多く住む、川を渡ったニュー-ジャージーの街が舞台。誤射事件、もみ消し、と段々と街の腐敗が明らかになっていく。
 スタローンの朴訥としたイメージがいい。なんか、「ランボー」の時の無口で不器用なキャラクタを思い出させる。地味ながらなかなかいいドラマだった。


「マウス・ハント」 - Mouse Hunt -

 相続したオンボロ屋敷を売り払おうとする兄弟が、邪魔者のネズミを退治するドタバタ。

 ネズミの演技がいい。「ベイブ」のスタッフがやっているそうだから、CGも組み合わせているんだけど、ほとんど判らないほど上手い。本当に見事としかいいようが無い。
 ストーリはたわいも無いけど、ネズミは必見。あと、出番は少ないけど、クリストファー・ウォーケンのキャラクタは面白い。コメディ出演は初めてかな?


「PERFECT BLUE」☆

 今敏監督、江口寿史がキャラ原案、大友克洋もスタッフになっている。

 一言で言えば元アイドルを主人公としたサイコ・サスペンスだけど、なかなか面白い。脚本がいい。脱アイドル宣言をした主人公の回りで事件が起こりはじめる。主人公の精神の描き方も事件を複雑にしてうまい。ミステリーとしては単純だし、犯人も展開も始まって20分ぐらいで予想は付くけど、でもかなりワクワクさせられる展開で、ひっぱられる。しかし、こういうのが実写で出来ない日本の映画界はなさけない。特にアニメである必要性は感じないのだけど。

 かなり混んでいた。嫌いな新宿ピカ3で観てしまった。
 しかし、なんでR指定なんだろう??ヌード・シーンのせい??


「銀河鉄道999 エターナル・ファンタジー」

 捉えられていた鉄郎を救い、999号で新たな旅に出るメーテル。松本零士の書き下ろしによる新シリーズだけど、新たな旅への始まりだけで、なんとも物足りない。時間もわずか54分。始まったと思ったら終わりで、あれこれだけ、って感じ。

 随所にCGを使っているけど、なんか安っぽい印象しかなかった。


「長靴をはいた猫」

 1969年、矢吹公朗監督のリバイバル上映。しかし、今になって何故(^^;)?。

 ペローの童話が原作になっている事や、脚本を井上ひさしが書いている事よりも、宮崎駿が原画を描いているという事の方が有名になっているかもしれないけど…東映動画の中ではもっとも面白い歴史的価値があるアニメかも。

 シネスコサイズのパノラマ感がある画面構成はやはり劇場向きだし、いかにもディズニーっぽいキャラクタ構成や動きやストーリも、東映動画が当時目指していたものが判る気がする。
 いま見ると、それほどには感じないけど、凄く印象的なアングルとか面白い部分も多い。


「トゥモロー・ネバー・ダイ」- Tomorrow Never Dies -

 ピアース・プロスナン、二度目のジェームス・ボンド。
 いままで以上、アクション尽くめの展開が心地いい。最初から最後までアクションばかり。それぞれに趣向があって面白い。新ボンド・カーBMWでのカー・アクションや、バイクでの逃走劇など盛りだくさん。
 その分、ボンドガール(ミシェル・ヨー)との絡みなどは少ないけど。

 敵がメディア王というのも斬新で面白い。あまり悪役っぽくなくて、オタクっぽいキャラクタが今までになくて面白い。マードックやマックスウェルなどのメディア王を意識しているのだろうか。特にマクスウェルの最後を知っているとラストはニヤリと出来る。


「アミスタッド」- Amistad -

 スピルバーグ監督、モーガン・フリーマン、アンソニー・ホプキンス。
 「シンドラーのリスト」に続いて、実話をベースにした作品。確かにハードな内容ではあるけれど、スピルバーグらしいエンターテイメント性も十分にある。観客を楽しませるという点では、「シンドラーのリスト」よりずっと上。

 1839年、奴隷として売られた黒人53人が船内で反乱、鎮圧、投獄、裁判。この裁判劇がなかなか上手い。言葉を乗り越え、コミュニケーションが始まり、心を通じさせる様が実に上手い。

 元大統領のホプキンスはなかなかいい役だった。


「ナイスガイ」 - 一個好人 -

 「ファイナル・プロジェクト」に続く、ジャッキー・チェンの新作。サモ・ハン・キンポーの監督。今回は何故かオーストラリアが舞台。

 ジャッキーは料理番組のホスト。でも、何故かカンフーが強い(^^;)。
 偶然に美女を助け、ギャングの秘密のテープが紛れ込み、もう、典型的な巻き込まれ型のストーリで、ひねりはあんまり無い。

 でも、相変わらずアクションはいい。オーストラリアの街を使ったアクション、特に馬車のシーンとか、なかなかワクワクする。もう、その辺を見ていればそれなりに満足。
 ストーリ的には完成度は低いけど。やはり、サモ・ハンが監督だと、話がこじんまりとして、全体が甘くなってしまう。


「ウルトラマンディガ&ウルトラマンダイナ」

 小中和哉監督だからちょっと観る気になって行った。本物指向で、面白いという噂もあったので。 新「ガメラ」シリーズが、怪獣映画を徹底的に本格化すれば、どれだけ面白いものが出来るかを証明した。この「ウルトラマン…」にもちょっと期待していたんだけど、しかし、頑張ってはいるけど、それほど面白くは無い。
 着ぐるみでのアクション、CGの使い方など、確かに革新的な面はあるんだけど、まだまだ、努力不足、予算不足という感じ。


「ウルトラニャン2」

 「ウルトラマンディガ&ウルトラマンダイナ」の併映。ま、どーでもいいアニメ。
 環境破壊、食品添加物など、時事ネタを入れているのは好感持てるけど、ま、大した面白さは無い。


「ビーン」- Bean -

 メル・スミス監督、ローワン・アトキンソン。ロンドンのナショナル・ギャラリーの監視員のビーンが何故か米国出張を命じられる事から起きるドタバタ。

 「ビーン」が密かにブームになっていたのは、短編の機内上映だと思う。私もそうだった。去年に夜中でシリーズが放送されれ、さらにブームが広まり、今回の映画化。

 監督は、ローワン・アトキンソンが'89年に出演した「彼女がステキな理由」の監督、メル・スミス。「彼女がステキな理由」は公開当時、それほど評判にならなかったが、ジェフ・ゴールドブラムとエマ・トンプソンという凄い共演だったし、内容もなかなか面白かった。

 今回の「ビーン」は、確かにビーンの面白さはあるんだけど、やはり長編にする上でストーリ性を持たせるために、面白さが半減している気がする。ビーンを最終的には善人的に描いたりするのが、どうも無理がある。
 やはり、ビーンは短編が似合うという印象。チャップリンが短編から長編に見事に転身して見せた様な成功を、ビーンにも期待している。


「アルビノ・アリゲータ」- Albino Alligator - ☆

 「ユージュアル・サスペクツ」のケビン・スペイシーが監督、マット・ディロン、フェイ・ダナウェイ、ゲイリー・シニーズ。

 「アル・パチーノのリチャードを探して」で知ったけど、ケビン・スペイシーは本質には舞台の人だと思う。この映画も、最初は映画的な展開をするけど、ある一つのバーでの密室劇と変わる。そこからは演劇的な展開で、より心理的な面に集中出来る。この演出がさすがに上手いと思った。

 ラストは、後味がいいとは思えないけどやるなあ、そーなるのかという意外性があってよかった。


「ブエノスアイレス」

 ウォン・カーウァイ監督、クリストファー・ドイル撮影、トニー・レオン、レスリー・チャン、チャン・チェン。

 ゲイカップルのストーリ。明確なストーリが有るわけでもなく、言ってみれば痴話げんかの数々を映画化してたと言ってもいい。「覇王別姫」があるから、レスリー・チャンはゲイ・カップルは二回目か(^^;)。トニー・レオンも「恋する惑星」の方がずっとよかった。

 全体には、あんまり面白くなかった。こんなもんかという感じ。その中、チャン・チェンはいい味が出ていたけど。


「Touch タッチ」- Touch -

  エルモア・レナードが原作、未読。
 ポール・シュレーダー監督、スキート・ウーリッチ、ブリジット・フォンダ。

 手を触れるだけで病人を治す力を持つ主人公。それを使って一儲けを企む、プロモータと詐欺師。演技はみんな悪くなかったけど、なんか展開にテンポがなくて退屈な脚本だった。予想通りの展開だし。

 ところで、週間ぴあの「公開初日にきいた新作映画の満足度は?」のアンケートに、この映画で初めてあったのだけど、ボロクソ言ってしまった。あのコーナーは、どう考えても点数甘すぎる。


「CURE」

 黒沢清監督、役所広司、萩原聖人、うじきつよし、中川安奈。
 再観。第七回日本映画プロフェッショナル大賞の上映で観る。

 最初に映画を観てから、原作を読んで、今度映画を観たが、あんまり印象は変わらない。ただ、ラストの方は、最初観た時よりはずっと判りやすいのかなあと思った。 でも、ラストの方の表現が不足しているという印象は変わらず。

 初めて観たとき、とてつもなく大事なシーンを見逃していた事に気が付いて唖然としてしまった(^^;)。ま、ラストの方は余りに退屈なので、早く終わって欲しいと集中してなかったからかな。


「燃えよピンポン」

 三原光尋監督、高田聖子、鴨鈴女、萩原圭、重定礼子。
 第七回日本映画プロフェッショナル大賞の上映で観る。東京では初の上映(16mm)。

 OLが社運をかけて卓球で勝負する。王子様的エリート(?)の取り合いもあるけど、ナンカその王子様が情けない。最後の対決はよく判らないし、何故かブルース・リーのりになったり、何か掴みがたいものがあるけど、まあ、そのノリだけで面白い。オールナイト上映には合ってる。昼間に1800円出して観たらちょっと怒る。

 次回作は室井滋主演のママさんバレー対決もの。多分、同じ雰囲気の様な気がするけど、メジャー・デビューして欲しい。


「鬼火」

 望月六郎監督、原田芳雄、片岡礼子、愛川翔、北村康。

 ちょっと雰囲気は重かったけど、面白かった。古いタイプの殺し屋、原田芳雄が出所、今のヤクザの世界には肌が合わない。ストーリ的には平凡ではあるんだけど、原田芳雄の渋さだけで十分に映画は持っている。

 「北京原人」に続いて、片岡礼子が無駄に脱いでいた(^^;)。もうちょっと片岡礼子との関係が面白ければよりいい映画になっとと思うけど。


「岸和田少年愚連隊 血煙り純情篇」

 三池崇史監督、千原浩史、千原靖史、鈴木紗理奈、中島ひろ子。

 ナイナイが主役やった前作でも感じたけど、このシリーズ、監督も俳優も凄くのびのびとやっていて、肩ひじ張った所が無く、気分よく観られる。千原兄弟も鈴木紗理奈もいい演技しているし、分度器や落雷のエピソードなどちょっとふざけた所も素直に楽しめる。


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