2000年7月


「サイダーハウス・ルール」- The Cider House Rules - ☆

 ラッセ・ハルストレム監督、ジョン・アーヴィング原作脚本、トビー・マグワイア、シャーリズ・セロン、デルロイ・リンド、ポール・ラッド、マイケル・ケイン、キャシー・ベイカー、キーラン・カルキン。

 メイン州ニュー・イングランド、孤児院で生まれ育ったホーマー(トビー・マグワイア)は成人ののちも院長のラーチ(マイケル・ケイン)の手伝いをして暮らしていた。外の世界へ出たいホーマーは、手術に訪れたキャンディ(シャーリズ・セロン)とその恋人ウォリー(ポール・ラッド)に頼み、リンゴ農園での仕事を見つける…。
 アーヴィングはその小説に一種独特の世界観を作り出しているが、ハルストレム監督はそれを見事に描きだしている。無垢な人間が生きていく事によって生じる歪みを真っ向から描き出す事により、よりその純粋さの輪郭を切り出していく。あまりに性善説な世界ではあるのだけど、それが上手く収まった映画。面白かった。
 アーヴィング原作の映画は「ガープの世界」、「ホテル・ニューハンプシャー」、「サイモン・バーチ」とコレで4本目。

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「ザ・ハリケーン」- The Hurricane -

 ノーマン・ジュイソン監督、ルービン・"ハリケーン"・カーター原作、デンゼル・ワシントン、ヴィセラス・レオン・シャノン、デボラ・カーラ・アンガー、ジョン・ハンナ、ダン・ヘダヤ。
 
 1963年、ウェルター級チャンピオンとなった、ハリケーンのあだ名を持つルービン・カーター(デンゼル・ワシントン)。三年後、ニュージャージー州パターソンで、人種偏見を持つペスカ刑事(ダン・ヘダヤ)に3人の男女を殺した容疑で逮捕され、終身刑となる。カーターは、自ら無実を訴えるために、刑務所内で執筆を始める…。
  刑務所という過酷な条件の中で、なんとか正常な心を保とうとする姿が痛ましく、感動的。「囚人同盟」や「ショーシャンクの空で」を思い出させる。デンゼル・ワシントンも見事な演技。

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「マン・オン・ザ・ムーン」

 ミロシュ・フォアマン監督、ジム・キャリー、ダニー・デビート、コートニー・ラヴ、ポール・ジアマッティ、ヴィンセント・スキアヴェリー。
 スタンダップ・コメディを演じていた、アンディ・カフマン(ジム・キャリー)は、プロモーターの ジョージ(ダニー・デビート)の目に留まり、「サタデー・ナイト・ライブ」の第一回目ゲスト出演などTVで活躍する。しかし、男女混合プロレスなどその芸は次第に激しくなっていく…。
 1984年に35歳で世を去ったコメディアン、アンディ・カウフマンの実話であるが、本人のコトはまったく知らないので思い入れも無いし、なんかノレなかった。一番面白いのはオープニングかな。フォアマン監督の意図はまったく判らなかった。

 新宿のヒドい劇場ベスト3の、文化シネマ4で観たというのも最悪。
 
「マン・オン・ザ・ムーン」 Official Website


「レインディア・ゲーム」- Reindeer Games -

 ジョン・フランケンハイマー監督、アーレン・クルーガー脚本、ベン・アフレック、ゲイリー・シニーズ、シャーリズ・セロン、デニス・ファリーナ、ジェームズ・フレイン、ドナル・ローグ。

 アシュリー(シャーリズ・セロン)は、ニック(ジェイムズ・フレイン)の刑務所の中での文通相手。出所した車泥棒のルーディン(ベン・アフレック)は、出所直前に殺されたニックを待つアシュリーに出会い、ニックの振りをしてしまう。二人は犯罪に巻き込まれていくが…。意外な展開、ドンデン返しが繰り返され、まったく先が見えないスリルある話運び。なかなか面白かった。

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「宋家の三姉妹」- 宋家皇朝 -

 メイベル・チャン監督、アレックス・ロー脚本、マギー・チャン、ミシェル・ヨー、ヴィヴィアン・ウー、ウィンストン・チャオ。ロングランをしていたのは知っているが、岩波ホールはなかなか行きにくくて見逃していた。ちょうど立川のシネマシティのシネマテークでやってくれたので観る。

 19世紀末の中国、宣教師チャーリー宋の実在の三姉妹。長女の靄齢(アイレイ)は孔子の子孫の銀行家の妻に、次女の宋慶齢(ケイレイ)は革命家孫文の妻に、三女の美齢(ビレイ)は蒋介石の妻になった。
 辛亥革命、清朝の滅亡、中華民国成立、国民党/共産党の内戦、日中戦争、中華人民共和国成立と、中国の激動の現代史を描く。軽快さは無いが、歴史物としての重みがあって面白い。蒋介石が実物とすっごく似ていた。

「宋家の三姉妹」 Official Website


「ドグマ」- Dogma -

 ケヴィン・スミス監督脚本、ベン・アフレック、マット・デイモン、リンダ・フィオレンティーノ、アラニス・モリセット。

 聖堂に入っただけですべての罪が許される「特別の日」によって天国への復帰をもくろむ堕天使のバートルビー (ベン・アフレック) とロキ (マット・デイモン) 。一方、堕胎クリニックに勤めるベサニー (リンダ・フィオレンティーノ)は大天使メタトロンにより、堕天使が天国へ戻るのを予言者ともども、阻止するよう命令される…。
 全体にキリスト教一般をパロって、かなりバカバカしい内容だけど。全米各地で上映禁止運動が起こったらしい。しかし、キリストを馬鹿にしているけど、神は居ないとは言ってない。宗教的には、とりあえず最後には丸く治まっている。「スティグマータ」のラストの方が、よっぽどヤバい内容だと思うけど。特に教会から見ると。
 
→ 「ドグマ」Official Website


「ティガ・ムービー プーさんの贈り物[吹き替え版]」-The Tigger Movie -

 ジュン・ファルケンシュタイン監督脚本、声優は玄田哲章、八代駿、青森伸。

 主人公は、虎のティガー。ティガーの家族探しという、結構、シリアスな問題を扱いながらも、軽く笑えて最後には泣かせる、まあまあ楽しませてくれる。 ディズニーらしい、盛り沢山のエンターテイメントを期待してはいけないが、そこそこの仕上がり。 

「ティガ・ムービー プーさんの贈り物」 Official Website


「ジュブナイル」

 山崎貴監督、香取慎吾、酒井美紀、鈴木杏、遠藤雄弥、清水京太郎、YUKI、緒川たまき、吉岡秀隆。

 未来からやって来た小型ロボットのテトラ、それを匿う子供たち。さらに地球を狙うボイド星人、マッド・サイエンティストっぽい香取慎吾が絡む。
 クレジットに"藤子.F.不二雄に捧ぐ"とあるように、どうも「ドラえもん」へのオマージュという話らしいが、まあ、テトラや、人物構成は近いものはあるかも。しかしラストは、インターネットに流れて有名になった「ドラえもんの最終回」とまったく同じ。そのまま使わなくてもいいと思うんだけど。
 山下達郎の「アトムの子供」の合わせ方はいい感じ。
 
→ 「ジュブナイル」 Official Website


「人狼」

 沖浦啓之監督、押井守原作脚本、西尾鉄也作画監督キャラクターデザイン。

 架空の歴史の戦後の東京。治安部隊"首都警"は、反政府組織を壊滅させるべく戦い続けている。その隊員一人、伏が主人公。「赤い眼鏡」や「ケルベロス/地獄の番犬」に近い世界観。動画のクオリティは高いものの、全体に沈みこんだトーンで気分が盛り上がらない。ストーリもなんか救いの無いラストだし。
 
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「ブリスター」

 須賀大観監督、伊藤英明、真田麻垂美、山崎裕太、櫻田宗久、関川陽子、岩永ヒカル、鮎貝健、大塚明夫。
 予告編をみてもまったく期待していない作品だったが、びっくり、意外な事にかなり面白い。
 フィギュア・コレクターのユウジ(伊藤英明)は、世界に一体と言われる激レア伝説フィギュア<ヘルバンカー>を探し求めている。同棲中の恋人のマミ、SF映画オタクのテラダ、ロボットアニメ・オタクのハサモトが絡み、そして未来世界のフィギュアの謎…。
  ユウジの成長物語としてもしっかり成立しているし、オタクの世界を上手く描き出し。多分作っている本人も十分なオタク。オタクらしいディティールまでの凝った作りで好感が持てる。
  
「ブリスター」 Official Website


「マネートレーダー・銀行崩壊」- Rogue Trader -

 ジェームズ・ディアデン監督製作脚本、ユアン・マクレガー、アンナ・フリエル、トム・ウー、ジョン・スタンディング。

 1995年2月27日、創業230年英国の名門ベアリングズ銀行が、約1,380億円(8.6億ポンド)の損失を出し破綻。この原因を作った一人のトレーダー、ニッ ク・リーソン。彼の獄中手記を映画化したもの。
 シンガポールのトレーダーに配属されたニックは、デリバティブ(金融派生商品)取り引きで莫大な利益を上げ、評価される。ところが、あるミスから高額の損失を出し、それを埋めるためにと、泥沼へはまっていく…。
 固い社会派サスペンスでありながら、エンターテイメント性も高く面白かった。実話ベースであるので盛り上げに欠けたりする面もあるが、逆に実話という重みが緊迫感を作っていた。観ていると、主人公と一緒で段々、金銭感覚が麻痺してくる所が恐い。特に悪人がいる訳でもないのに、1380億円が消えるというのはさらに恐い。
 
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「スチュアート・リトル」- Stuart Little -

 ロブ・ミンコフ監督、ジーナ・デイビス、スチュアート・リトルの声はマイケル・J・フォックス。
 
 養子に探しに養護施設に行った夫婦は、何故かネズミのスチュアート・リトルが気に入ってしまい養子に迎える事になる。しかし、家では兄には嫌われ、ペットの猫には憎まれる…。
 動物と子供を出して、いかにも子供向けの設定。そこそこに面白いけどやはり子供むき。動物を主人公にしても「デイブ」みたいな深いストーリは無い。
 ジーナ・デイビスが穏やかな母親役をやっているのが、なんとも不思議。子役のジョナサン・リップニッキーは、「ザ・エージェンント」の時みたいな純粋な感じが無くなってしまって残念。

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「ワンダーランド駅で」- Next Stop,Wonderland -

 ブラッド・アンダースン監督脚本編集、ホープ・デイヴィス、アラン・ゲルファント、ヴィクター・アーゴ。98年ドーヴィル映画祭グランプリ、観客賞受賞。
 同棲中の恋人が出ていったばかりのエリン、海洋学者を目指すアラン。同じ電車で通勤するが30代独身の見知らぬ同志。逢いそうでなかなか合わない、すれ違いを延々と描く手法はそれほど新しくないけど(「メイド・イン・ヘブン」なんか最高に上手い)、ほのぼのとした感じでよかったかも。

「ワンダーランド駅で」 Official Website


「ミッション・トゥ・マーズ」- Mission to Mars -

 ブライアン・デ・パルマ監督、ゲイリー・シニーズ、ティム・ロビンス。。
 2020年、火星調査隊からの通信が突然途絶える。生存者を救出して原因を探るため、宇宙飛行士のウッディらが火星へと向かう…。まるで「2001」と同じ様な設定のファースト・コンタクトもの。
 知的生命体の痕跡なんか、まるでお子様向けの作り方。宇宙ステーションではゼロGの描き方を頑張っているけど、1/3Gぐらいの火星では普通に戻ったり、なんとも雑な作り方を感じる。デ・パルマがこういう映画を作る事になったのが、一番の疑問だけど。

→ 「ミッション・トゥ・マーズ」 Official Website


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