−序章−
今ここに一冊の本があります、発行日をみると昭和63年なので16年前になる(西暦1988年)。
感覚的にはもっと昔のような気がしますが、人間の記憶があてにならない証拠かもしれません。
本の題名は「プロ馬券師の極意・的中一本買い」で、著者は宮内剛です。
おそらくもう入手不可能な本だと思いますが、この当時の馬券は単勝と枠連の2種類だけなので現在の馬連などには対応できない内容ではあります。(したがって勝負は単勝だけです)
この本との出会いのおかげで馬券奮闘記がはじまったのです、ありがたいやら迷惑やらこれが人生と言うものか。
本の”はじめに”には「私の競馬歴はおよそ25年になるが、年間を通して黒字が出せるようになったのは、ここ数年である。やっとプロになりきったわけだ」と記述されている。
私はあと9年過ぎないと黒字が出せるようにはならないようです。
−投資競馬−
本に記載されている内容は予想方法と買い方です、俗に投資競馬と言われている方法について詳細に記載されています。
まずは初歩的な投資競馬のやり方を説明しましょう。
買目は新聞の◎(本命馬)を使い、買方はマーチンゲールの法則で買い続けます。
具体的にマーチンゲールの法則で本命馬を買い続ける手順を記述すると次のとおりです。
最初に100円購入する場合、次は200円、3レース目は400円、以降800・・・とはずれるたびに購入金額を倍にしていくというものです。オッズが2倍以上つけば的中した時点で利益が出ます。
しかし、本命馬を買い続けても、取れるのはいくらでも取れるが金銭的にはひき合わない。ご存知のように本命馬(単勝1番人気)の配当は安すぎるからです。
ときには超1番人気馬が1着にきて100円戻しなどと言うこともあります。
100円で倍々プッシュした場合の金額は(100・200・400・800・1600・3200・6400・12800・25600)9回でこの金額になります。
上記の金額はオッズが2倍以上ついた場合に儲けが出せる値です、150円でも損をしないためにはもっと高額になる。
オッズが1.5倍で損をしないための金額は(100・300・900・2700・8100・24300・72900・218700・656100)です。
これで儲けを出せないのは、これ以上説明する必要はないと思います。
−連勝式よりも単勝式で狙う(現在の枠連)−
連勝式で全枠に馬が入った場合、36通りの買い目があります。この中から一本を狙い打ちするには神ワザが必要です。
そのために3点・5点買うのが普通です、そして配当的に連勝式のほうが魅力的だと考え違いをしている人が多いのです。
3本買いで3,000円の馬券を取ったと言うことは、1本買いで1,000円の馬券を取ったと言うことと同じです。
5本買った場合には、1本買いで600円の馬券を取ったと言うことと同じです。
本では次のように締めくくっています「たまに遊ぶ程度の人には、それでもいいだろう。どっちでもたいした違いはない」。
−赤字を取り戻せるのは1本買いだけ−
1本買いと3本買いでは投資金額に大きな差が出てきます。つまり1本買いなら少量の資金で勝負できるが、3本買いだと膨大な資金が必要になります。
どのぐらい違いがあるかを表にすると一目瞭然です、例として1,000円の馬券を取るためにどのくらいの資金が必要かを比べてみましょう。
1本買いと3本買いで同時に買い始め、両方とも20回目に的中したと言う想定です。
1本買い
|
3本買い
|
|||||
回数 | 投資金 | 投資累計 | 投資金 | 投資金(3本分) | 投資累計 | |
1
|
1,000
|
1,000
|
1,000
|
3,000
|
3,000
|
|
2
|
1,000
|
2,000
|
1,000
|
3,000
|
6,000
|
|
3
|
1,000
|
3,000
|
1,000
|
3,000
|
9,000
|
|
4
|
1,000
|
4,000
|
1,300
|
3,900
|
12,900
|
|
5
|
1,000
|
5,000
|
1,900
|
5,700
|
18,600
|
|
6
|
1,000
|
6,000
|
2,300
|
6,900
|
25,500
|
|
7
|
1,000
|
7,000
|
3,700
|
11,100
|
36,600
|
|
8
|
1,000
|
8,000
|
5,400
|
16,200
|
52,800
|
|
9
|
1,000
|
9,000
|
7,600
|
22,800
|
75,600
|
|
10
|
1,000
|
10,000
|
10,900
|
32,700
|
108,300
|
|
11
|
1,200
|
11,200
|
15,500
|
46,500
|
154,800
|
|
12
|
1,300
|
12,500
|
22,500
|
67,500
|
222,300
|
|
13
|
1,400
|
13,900
|
32,000
|
96,000
|
318,300
|
|
14
|
1,600
|
15,500
|
46,000
|
138,000
|
456,300
|
|
15
|
1,800
|
17,300
|
66,000
|
198,000
|
654,300
|
|
16
|
2,000
|
19,300
|
94,000
|
282,000
|
936,300
|
|
17
|
2,200
|
21,500
|
134,000
|
402,000
|
1,338,300
|
|
18
|
2,400
|
23,900
|
192,000
|
576,000
|
1,914,300
|
|
19
|
2,700
|
26,600
|
274,000
|
822,000
|
2,736,300
|
|
20
|
3,000
|
29,600
|
400,000
|
1,200,000
|
3,936,300
|
表の左側が1本買い、右側が3本買いです。
表の見方ですが、投資金額で購入して1,000円当たればそれまで投資した金額が返ってきて損はしないと言うふうに見てください。
比較すればすぐ分かるように20回目に1,000円の馬券を当てて元を取るためには、3本買いでは400万円近く必要ですが1本買いならば3万円弱ですみます。
普通の人にとっては3本買い勝負はとうてい負担できる金額ではありません。
−買いのタイミングがポイント−
競馬では”何を買うか”が大事なことは言うまでもないことですが、同時に”どんな買い方をするか”もそれに劣らず大事です。
基本は先に説明したマーチンゲールの法則で買い続ることです。
新聞の◎(本命馬)の出現確率は30%以上ですので、3回に1回はでる計算になります。
しかし、いつも平均値どおりに入るとは限りません。そこではずれるときは最悪どのくらいはずれるかが大切なのです。
”いつから買いに入るか”の目安はなかなかむずかしい。
早く買い始めるとあとで資金的に苦しくなるし、待ちすぎると勝負のタイミングを逃してしまう。
ただはっきり言えることは、勝負の機会を逃してもいいから焦って早く買いに入らないことです。
焦りや早とちりは絶対に禁物です。
買いのチャンスはいくらでもきます、何回かに一度のチャンスをガッチリ自分のものにすればいいのです。
毎回勝とうとか、一発大勝負をと言った考えは危険です。
−統計の数字を信じて勝負−
数字だけを信じてそれ以外のものは一切信用しないと言うのが、この本の競馬哲学であり同時に実戦での基本です。
もうすでにお解りだと思いますが、あるネタのデータを取り続けて1着にきたときの最悪回数を記録することです。
だが、こうして採取したワースト記録が更新されないと言う保証はありません。
そこに統計的な数字を基礎におく弱点もあります。
しかし、こういった数字を信じないことには勝負できないのです。
この数字を信じて熱くもならず淡々とやっていくと言うのが理想です。
統計の取り方ですが、全部のレースを対象にするだけではありません。
後半6レースだけ・メインレースだけ・最終レースだけといった統計の取り方があります。
−割増し買い−
マーチンゲールの法則はもともと丁半博打のような二つに一つを想定した必勝法です、つまり当たれば2倍になります。
しかし、先に説明したようにこの配当金額で儲けを出すことはできません。
そこでもっと配当が高い馬券を購入することになります。
配当が600円の馬券の場合には、1.2倍式の割増し買いで利益を出せます。しかし、配当が500円の馬券の場合には、1.25倍式の割増し買いにしないと利益を出せません。
さらに実戦では配当を見て割増率を増減して損をしないように配慮する必要があります。
−統計ネタ(その1)−
競馬新聞の予想印◎◯▲△、◎(本命馬)、◯(対抗馬)、▲(穴馬)、△(注意馬)を使う。
すでに何度か説明したように◎印では儲けをだせません、そこで◯▲△印について調べることにします。
◯(対抗馬):配当の妙味が少ない
この馬はたしかによく1着にくる、そういう点では安心して買っていける。といっても来ないときには来ないものです。
43回目に来たのが一番悪い記録です、勝負の相手として考えればさらにゆとりを持って50回ぐらいは外れると見込んでおいたほうが安全でしょう。
しかも◯印の泣きどころは配当が安いことです、平均すれば400円〜500円ですが100円台のこともあり妙味が少ない。
▲(穴馬):まずまずの配当
▲印でも他の新聞では◎印や◯印になっていることもあります、その場合には妙味のある配当は期待できません。
この▲印も悪くてもどのぐらいで来るかを調べておく必要があります。 だいたい60回ぐらいまでには入るようです。
◯印ほどではないにしても、▲印もさんざん焦らしたあげく低い配当で決着がつくことがあります。こういうときこそ資金が必要なのです。
どんなに安い配当でもしっかりと利益をのせて資金を回収できるようになれば1人前の勝負師と言えます。
そのためにはいざというときのために、大半の資金は温存しておくことです。
△(注意馬):1本買いの対象にならない
△印は勝負には使いにくい、何故ならどの新聞もひとつだけでなく2つか3つこの△印がついているのが普通だからです。
−統計ネタ(その2)−
これまでは単勝の勝負について説明してきましたが、馬連の勝負ネタも紹介します。
◎−▲の馬連、これで利益が出せるでしょうか?出せる、がしかしです。
◎−◯は本命・対抗の組み合わせなので配当が安すぎて話しにならないですが、◎−▲なら工夫しだいでやる価値はあります。
この◎−▲印は悪くても、大まかに80回以内には入るようです。 配当は600円ぐらいですので、この配当でこんなに外れることもあるのでは魅力満点とは言えません。
◎−▲の馬連が勝負できるのならば、◯−▲の馬連も勝負できるのではないか、と思う人は多いでしょう。
たしかに勝負に使えないことはないですが、あまりにもムラがありすぎて配当も思ったほどよくないのが弱点です。
−統計ネタ(その3)−
勝負の対象にするのは、単勝の3・4・5番人気馬です。
やりかたはこれまでに説明してきたのと同じです、単勝の3番人気の配当は平均550円ぐらいです。
新聞の▲印と違い安い配当を気にしなくてもよいのが利点です。
その代わりに直前までオッズとにらめっこする必要があるので実戦中はかなり苦痛がともないます。
−統計ネタ(プロ編)−
ここまでに紹介したやり方でもそこそこの利益は出せます、しかし、あくまでもアマチュア的な方法であってマニアやプロが熱中できる代物ではありません。
手頃な配当の◎を決める:「自分の◎を決めよ」
普通の◎とここで言う◎は少し違います、普通はいちばん勝ちそうな馬を◎にします、がここの◎は配当がいちばん手頃な馬を◎にします。
単勝で600円以上の配当を出す馬で、しかも勝っても不思議のない馬です。そして「自分の◎」の統計データを取り続けます。
次は、「自分の▲を決める」。
選択基準は単勝で800円以上の配当を出す馬、つまり「自分の◎」よりも配当の高そうな馬を探します。人気で言えば5番人気ぐらいに相当する馬です。
次は、「専門誌の◎」。
これは、専門誌が◎をつけている馬の中で穴っぽい馬と言う意味です、専門誌がズラリとデンデン虫をつけているような本命馬のことではありません。
この他にも色々な作戦がありますが、この辺で終わりにします。ようは自分で印をつけると言うことです。
たしかにプロ的な勝負方法ですが、そのぶんだけ準備に手間ひまがかかります。しかし、この程度のことはやらないと儲けを出せないと言うことでしょう。
−次は実戦明細表を記載することにします−