「VOW同人誌」連載エッセイ


人間・この彷徨の旅路

小谷 良子


(4)専業主婦の感性と問題意識


 さして不幸があるというのでもない、「幸せだな〜」と平和を感じる瞬間もかなりある。しかし、「人間としての存在感が少なく、何となくもの足りない日常生活」を感じている専業主婦は結構多い。
 しかも、「何か自分を夢中にさせるもの、生き甲斐を感じるもの」が見つからない。(参考:専業主婦の不満と問題意識)暗中模索をしながら何かを見つけようとしても、家庭の枠組みの中に多くの生活時間を拘束される主婦にとって、個々の力は微々たるものである。

 行政に頼ったり、地域コミュニティの中に自分のニーズにあったものを求めるのもよいが、主婦自身が協力しあって、積極的により充実した生活に向けて立ち上がればもっとよい結果が生まれるのではないかという発想で、ネットワーク作りの構想を考え始めたのは7年ほど前のことだ。

 次の世代を育て社会に送り出す責任を担った母親として、健全な家庭を運営する鍵を握る主婦として、そして社会の一員としての社会参加。
そのバランスを保ちながら自分らしい生き方を模索し、お互いを生かすことができる地域での支え合いの場として機能しなければならない。必要なことは「家庭」を忘れて突っ走らないことである。

 多くの国から多くの仲間が訪ねてくれるおかげで、いろいろな家庭のいろいろな主婦の生き方に触れさせてもらい、その痕跡を少しだけ我が家の暮らしの中に残してくれている。
 結局、多様な個性的な家庭のあり方や主婦の生き方を考えるには、オープンハウス形式のミニ・ミニ女性センターとして自宅を提供しようと考えるに至った。

 4年ほど前のそんな折、市立公民館の女性セミナーでの講演の機会に、受講していた人達や一般市民にもオープンハウスの提案を話した。
 自己啓発の場として自由に対等に積極的に誰でも参加できるように、第1〜第3回参加者のうち、趣旨に賛同する参加希望者全員が発起人として地域活動を展開し始めた。

 不思議と不安はなく、「また、新しい行き先の分からない一つの旅が始まった!」そんな気持ちだったと思う。

ポットラックのクリスマスパーティ・1997年12月

 自由意思で参加し、何の義務も負担もなく、オープンハウス開催時間内は自分の都合に合わせ出入りできる。
各自が生活上での質問・相談・提案・情報など自由に発言したり、備え付けのノートに書き込んだりし、お互いがもっているノウハウを交換し合っている。

決して団体活動ではなく、個人が精神的に自立し、個性を発揮するための様々な情報の相互提供の場を目的としてる。

 お互いに刺激し合い、助け合いながら心の通った暮らしの中で自分を再発見する。
無駄を省いて、より合理的な生活から生まれるゆとりを地域のボランティア活動に生かしたり、自分の特技や腕を磨いたり、新しいことへの挑戦を始めたり、各人のライフスタイルに合わせて受け止められれば当初の願いが叶ったということである。
いつも高尚な目的が必要なわけではなく、誰かとおしゃべりしたいなと感じたら、誰かがいる場としても開かれている。

 しかし、当然のことながら一朝一夕には、人々を取り巻く環境や意識が変わるわけはないのである。長い歴史をかけて、自分たちの環境を私達、人間が現在のように変えてきたのだから。
 それでも、何もしないよりは、いい方向に歴史を変えようとする努力は必要である。
主婦の精神的・質的レベルの向上と相互扶助の地域ネットワークを作り、社会参加・社会貢献を根差していくには、専門的な基礎知識も欠かせない。やり始めた責任もある。
そんなふうに感じだしたあたりから、私は新しい、また別の旅も始めようとしていた。オープンハウスを始めてから3年経ったときのことだった。(1998.12.25)


                               Part4終了・次回、Part5へ

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